二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て41」 ( No.485 )
- 日時: 2016/09/13 08:22
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
「はぁ!?」
あまりに予想外のカードが飛び出し、素っ頓狂な声を上げるミシェル。
当然と言えば当然かもしれない。それはあるゲームとアニメのコラボカードであり、能力面でもジョークカードの一種なのだ。
それも、その能力というのが——
ロックマンエグゼ&勝太 水/火文明 (3)
クリーチャー:ヒューマノイド/キカイヒーロー 3000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
このクリーチャーを召喚する時、右のコードを読み取り、能力を相手に見せてもよい。そうしたら、このクリーチャーにその能力を与える。
——テキストに、QRコードがついているのだ。
しかもこのコードは日替わりで内容が変化し、曜日ごとに能力が変わる。ユニークかつ型破りではあるが、ある種、カードゲームの常識からはずれたカードである。
「また面白いカード使ってくれるわね、柚ちゃんは。今日は金曜日で、能力はブロッカー破壊だけど、一応、QRコードを読み取りましょうか」
読み取ったコードによって判明するのは、当然ながら金曜日の能力「このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、相手の「ブロッカー」を持つクリーチャー1体を破壊する。」だ。
「《ロックマンエグゼ&勝太》の能力で、《ラプソディ》を破壊しますっ」
「ちぃ、パワーが高い《ラプソディ》は痛いな。だが《クズトレイン》の能力でドローする」
「次に4マナで、《爆熱 タイガー・ヴァーム》を唱えます!」
間髪入れずに柚は、さらに呪文を唱える。
その呪文もまた、珍しい効果の呪文だ。
「わたしの墓地から、カードを一枚、ランダムで手札にもどします。一枚しかないので、《黄昏地獄拳》になりますけど。そして、多色クリーチャーがいるので、もう一つの効果も使います。山札からクリーチャーを一体、手札に加えますね」
火と自然で墓地のカードを回収する能力は、文明として見ても、カード指定で回収できるという点で見ても、かなり稀有だ。加えて墓地からランダムで回収というのも珍しい。実戦においては不確定さが足を引っ張ることが多いだろうが、今回の柚は、墓地にカードが一枚のときに使用したため、狙ったカードが回収できる。また《黄昏地獄拳》でブロッカーを吹き飛ばすつもりだろう。
そして、《タイガー・ヴァーム》のもう一つの効果。山札からのクリーチャーサーチ。柚はさらに手札を充実させる。
「……《煽動の面 フリント》を手札に加えます。さらに《ウツボカヅラ》で攻撃です!」
「《ピエール》は強制ブロック持ち、ブロックし、スレイヤーで両者相打ちだ。そして、二体死んだから二枚ドローする」
「まだまだですっ。《チュラロリエス》で攻撃する時、わたしのシールドを一枚墓地において、二枚ドローしますっ」
「その攻撃は……通す。トリガーはない」
「ターン終了ですっ」
結果として、ミシェルのシールドは二枚。柚のシールドも一枚減ったが、手札が大幅に増えてしまった。
これは、もっとハンデスカードを入れるべきだったかもしれないと、悔やみたくなるが、悔やんでいていも仕方ない。
次のターンには《黄昏地獄拳》が放たれ、ブロッカーがすべて吹き飛ばされるはずだ。そうなれば場のクリーチャーで一斉に攻めてくる。その前に、場数を少しでも減らしておきたい。
「《未来設計図》をチャージ。まずは3マナで《凶喜にして凶器なる一撃》! あたしの墓地のクリーチャーの数だけ、相手クリーチャー一体のパワーを下げる。あたしの墓地にクリーチャーは三体、《ガチャック》のパワーを3000マイナスだ!」
まずは厄介な《ガチャック》を破壊する。ターボラッシュ発動時限定で、ブロックされなかった時という条件がつくとはいえ、確定除去を放つクリーチャーは残しておきたくない。
「さらに4マナで《トラップ・チャージャー》! タップされている《チュラロリエス》をマナゾーンへ! ターン終了」
「わ、わたしのターンですっ」
ひとまず、除去を撃つ《ガチャック》と、ドローソースになる《チュラロリエス》を除去してターンを終えるミシェル。クリーチャーをすべて除去したかったが、《ロックマンエグゼ&勝太》だけが残ってしまい、まだ厳しい状況だ。
「《9月》をチャージ。4マナで《黄昏地獄拳》! ブロッカーを手札にもどして、二枚引きます。それから5マナで、《煽動の面 フリント》を召喚です!」
煽動の面(アジテイト・スタイル) フリント UC 自然文明 (5)
クリーチャー:ビーストフォーク號 5000+
自分のクリーチャーが攻撃する時、それがそのターンはじめての攻撃であれば、そのターン、そのクリーチャーはパワーを+5000され、シールドをさらにひとつブレイクする。
「《ロックマンエグゼ&勝太》で攻撃! 《フリント》の能力で、このターンはじめての攻撃のとき、そのクリーチャーのパワーを5000ふやして、ブレイク数も一枚ふえますっ! シールドをWブレイク!」
「これでシールドゼロか……だが、一応S・トリガーだ。《埋没のカルマ オリーブオイル》。あたしの墓地のカードをすべて山札に戻してシャッフルする」
《フリント》の能力でWブレイカーとなった《ロックマン》が、ミシェルのシールドをすべて打ち砕いていく。トリガーでブロッカーこそ出たが、また《黄昏地獄拳》でも撃たれようものなら、そのブロッカーも意味がない。
正直、かなり追いつめられている。
「あたしのターン……これはいらないか? 《フォーチュン・スロット》をチャージ。まずは4マナで《爆熱 矛盾のスカイソード》を唱える。シールドを一枚追加だ」
《爆熱》の名を持つ呪文は、場に多色クリーチャーがいれば二つの効果が使える。ミシェルの場に多色クリーチャーはおらず、いたとしてもブレイク数を増やす効果なので、使うつもりはないが。
「さらに5マナ、《連唱 ハンゾウ・ニンポウ》! 相手クリーチャー一体のパワーを6000下げるぞ。《フリント》のパワーをマイナスして破壊だ!」
とりあえずクリーチャーを強化してくる《フリント》は破壊した。ブロッカーのパワーラインを越えられると面倒なので、早めに処理しておく。
「《クズトレイン》で一枚ドロー。そして《クズトレイン》で《エグゼ&勝太》を攻撃だ!」
「あぅ、クリーチャーが……」
とりあえずこれで、柚のクリーチャーは殲滅した。ブロッカーがいて、シールドも増やしたので、スピードアタッカーが来て即死することもない。
「わたしのターン……《電脳聖者エストール》を召喚します。シールドをふやして、相手のシールドを見ます」
柚は《チュラロリエス》で減ったシールドを補充しつつ、増えたミシェルのシールドを見る。
「……はい。では、《地獄のケンカボーグ》を召喚して、《猛攻と進撃のアシスト》を唱えます。このターン、わたしのクリーチャーはぜんぶ、スピードアタッカーになりますよっ」
「マジか……」
スピードアタッカーが来て即死することはない。確かにこのターンは耐えられるが、かといって増やしたブロッカーもシールドも、すべて1ターンで持って行かれるのは辛い。
《進撃と猛攻のアシスト》で、柚のクリーチャーはパワーアップしている。《オリーブオイル》のパワーでは、簡単に突破されてしまう。
「《エストール》で攻撃です!」
「一応、ブロックせずに受けるが……トリガーは、まあないよな」
「《ケンカボーグ》でダイレクトアタック!」
「《オリーブオイル》でブロックだ!」
少しずつ盛り返すつもりが、たった1ターンでシールドもブロッカーもなくなった。
加えて柚の場のクリーチャー二体も倒さなくてはならない。防御札、除去札が尽きそうだ。
「《ディープ・オペレーション》をチャージ……むぅ……」
ミシェルはマナを溜めてから、唸る。
どうしようか悩んでいる、と言わんばかりの唸りだ。
しかしそれは、どのカードを使うか悩んでいる悩みではなく、今この手にあるカードを使うべきかを悩んでいる。
戦術的に、この状況においてそのカードが戦局を左右する可能性を考える。それは当然だが、それだけではない。
倫理的に、常識的に、モラルなどの面から、使っていいものか悩ましい。
しかしこのゲームでモラルやらなんやらを気にしていても仕方ない。そもそも自分のカードではないのだ。と、適当なところで割り切ってから、ミシェルはマナのカードを3枚倒す。
「……3マナタップ」
そして放たれるのは、禁じられた一手。
魂を、資産を、希望を喰らう、失われた闇の秘術。
嘆きが、怒りが、妬みが、あらゆる悪意が言の葉となって吐き出される——
「——《ロスト・チャージャー》」
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て42」 ( No.486 )
- 日時: 2016/09/13 23:47
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)
ロスト・チャージャー R 闇文明 (3)
呪文
自分または相手の山札を見る。その中からカードを1枚選び、持ち主の墓地に置いてもよい。その後、そのカードの持ち主は山札をシャッフルする。
チャージャー
※プレミアム殿堂
ミシェルが唱えたのは、3マナのチャージャー呪文、《ロスト・チャージャー》。
自分、相手問わず山札をすべて確認し、その中から好きなカードを落とすことができるチャージャー。単純なアドバンテージはそれほど大きくなく、墓地を増やす目的であれば、後に出た《ボーンおどり・チャージャー》の方が、枚数だけなら上回る。
しかし《ロスト・チャージャー》の恐ろしさは、ピンポイントで、好きなカードを、落とせ、それが自分と相手どちらに対しても使える、という点だ。しかもチャージャーなので、本体はマナに行く。かつては3→5の流れで《インフェルノ・ゲート》へと繋がり、問答無用でデッキのどんなクリーチャーでも出すことが可能だった。
僅か3ターン目に山札の内容を確認し、どのカードがどこにあるのかをすべて把握できる。それに加えてキーカードを墓地に落とし、チャージャーでマナも伸びるという、一見するとわかりにくいが、このカードが及ぼす影響は非常に大きい。
また、相手のデッキに触れることもできるため、相手のデッキのキーカードを潰したり、相手のデッキ内容を早期に把握することが可能なので、この一枚は痛烈だ。しかし相手のデッキに触れる以上、カードの取り扱い、マナーについての問題などももあり、以上の影響力と相まってプレミアム殿堂となっている。
「このゲームのためのカードとは言え、他人のデッキに触るのはあまり気が進まないが……お前の山札を見せてもらう」
ミシェルが見るのは、柚の山札。このデッキでは墓地肥やしに対して意味はなく、《オリーブオイル》を出した以上、デッキ圧縮も効果は薄い。シールドもないのでトリガーの確認も無意味だ。
ならば、柚のデッキを削り、キーカードを潰し、かつ内容を把握するために、柚へと撃つ。相手のデッキに触るので、あまりいい気分ではないが。
「この中身なら……《混沌の獅子デスライガー》だ。こいつを墓地に置いてもらう」
柚のデッキを見てみると、全体的に青黒緑カラーのカードが多かった。それ以外の文明もそれなりには多かったが。
その中で目立つようなカードパワーのカードはなく、正直、どれを落としても大差はない。なので、単純にパワーが高くて対処が面倒そうなクリーチャーを落としておいた。それだけだ。
そもそも、この《ロスト・チャージャー》はあまり意義のある一手ではない。マナがあまるから使った、その程度の呪文だ。
「さらに8マナ! 《天地爆炎》! タップ状態のパワー6000以下のクリーチャーをすべて破壊だ!」
本命はこちらだ。柚のクリーチャーをすべて破壊し、場を空にする。
「スピードアタッカーは見たところいなかったな。ターン終了だ」
再び場をリセットするミシェル。マナは使い切った。これ以上、このターンにできることはない。
シールドもブロッカーもいないが、《ロスト・チャージャ》で山札を見る限り、スピードアタッカーはいなかった。なのでスピードアタッカーに奇襲されるという懸念もなく、安心してターンを終了できる。
「わたしのターン、《ガールズ・ジャーニー》をチャージ……2マナで《闇からの復権》! 墓地の《デスライガー》を手札にもどして、相手よりシールドが多いので一枚ドローしますっ」
「山札から落としたことが、裏目に出たか……まあしょせんは《デスライガー》なわけだが」
「7マナで《デスライガー》を召喚ですっ! ターン終了!」
《混沌の獅子デスライガー》。コスト7、パワー9000、Wブレイカーの闇のデーモン・コマンド。デュエル・マスターズ初期のスーパーレアというだけで、そのスペックは想像がつくだろう。ただの準バニラ系ファッティだ。上位互換に位置するようなカードも多いため、スペックは残念と言わざるを得ない。
イラストの派手さ、豪快さ、フレーバーテキストの秀逸さなど、別の視点からの人気は高く、再録限定エキスパンションでアルトアート版が出たり、ジョークエキスパンションで再録されたりと、わりと優遇されていたりする。
対戦における影響を考えるなら、柚の場にアタッカーが一体増えたというだけだ。問題があるとすれば、パワーがそこそこ高めなので、対処には若干苦労しそうなくらいか。
「まあ、どんな奴にしろ、アタッカーってだけで排除対象なんだがな。しかしこの場合は……こうか? 5マナで《鎧亜戦隊ディス・マジシャン》を召喚。3マナで呪文《ザ・ストロング・ガード》。手札を一枚シールドに置き、2マナで《ピエール》を召喚。ターン終了だ」
ミシェルは《デスライガー》を直接除去することなく、シールドとブロッカーを増やして場を固める。
ただし、そのブロッカーがスレイヤーの《ピエール》だ。殴って来ればすぐさま相打ち。間接的な除去を狙っているのだろうか。
「じゃあわたしは……3マナで《コダマの気合掘り》! 墓地から《ロックマンエグゼ&勝太》を手札に加えて、シールドも一枚手札に。それから3マナで《ロックマンエグゼ&勝太》を召喚、もう3マナで《妖魔賢樹フライ・ラブ》を召喚! 《ロックマンエグゼ&勝太》の能力で、ブロッカーの《ピエール》を破壊です!」
「またそいつか……《ピエール》がやられたのは、少し痛いか」
「《デスライガー》で攻撃、シールドをブレイクです!」
「これはS・トリガー、《神託の守護者 胡椒》だ! そのまま召喚する」
ミシェルのシールドから《胡椒》が捲られ、召喚される。
破壊されると、墓地のクリーチャーを回収するトリガーブロッカーだ。
「あたしのターン。まずは《剛勇傀儡ガシガシ》をチャージ。黒緑のカードをチャージしたため、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージ発動だ。まずは墓地から《ピエール》を回収!」
《鎧亜戦隊ディス・マジシャン》。コンボのために使えと言わんばかりの、墓地回収とコスト軽減のスペース・チャージを併せ持つクリーチャー。
闇のマナを置けば墓地からクリーチャーを回収し、自然のマナを置けば次に召喚するクリーチャーのコストが2下がる。二つの文明を持つカードをチャージすれば、当然、両方発動する。
ミシェルは先ほど破壊された《ピエール》を回収しつつ、クリーチャーの召喚コストも下げ、戦線を拡大させる。
「4マナで《封滅の大地オーラヴァイン》を召喚! コスト3以下のクリーチャー二体をマナ送りだ!」
封滅の大地オーラヴァイン SR 自然文明 (6)
クリーチャー:ガイア・コマンド 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある、相手のコスト3以下の進化ではないクリーチャーを2体まで選び、持ち主のマナゾーンに置く。
W・ブレイカー
《オーラヴァイン》の能力で、《ロックマン》と《フライ・ラブ》がマナへと封じられる。シールドがない現状、数で攻められるのが最も困るので、しょせん《オーラヴァイン》でも、複数除去できるカードはありがたい。
「まだだ。2マナで《ピエール》を召喚、6マナでリサイクル! 《ハンゾウ・ニンポウ》を唱えて《デスライガー》をパワーダウン! 《クズトレイン》で突撃だ!」
「《デスライガー》のパワーは9000ありますけど……」
「《ハンゾウ・ニンポウ》で6000下がって3000、《クズトレイン》はパワー5000だ。当然、こっちの勝ちだな。バトルで勝ち、破壊して一枚ドローする。ターン終了」
「わたしのターン……うーん、《有毒目 ヴェスプトックス》《防御の面 ミラミッケ》を召喚です」
「面倒そうなのが増えたな……」
タップされていれば、バトルに勝った相手をマナ送りにする《ヴェスプトックス》、エスケープを持つWブレイカー《ミラミッケ》。
強力かといわれるとそうでもないが、相手にするのは面倒だ。
「《ソイル・チャージャー》をチャージ。これで次の召喚するクリーチャーのコストが2下がる。1マナで《邪法カルネイジ》を召喚! さらに《両断のスカルセドニー》を召喚!」
《カルネイジ》のシールド・フォースは、当然ながら残った一枚のシールドが選択される。これで《カルネイジ》がブロックするたび、墓地のクリーチャーを回収できる。《胡椒》と合わせれば互いに回収し合い、軽いループの完成だ。これで柚の攻撃を止める。
「ついでだ。6マナで《強襲する髑髏月》を発動! 手札を二枚捨てもらうぞ!」
「あぅ……っ」
「さらに《髑髏月》の効果で、あたしの闇のクリーチャーを破壊すれば、《髑髏月》は手札に戻る。《スカルセドニー》を破壊!」
柚にハンドキープもさせない構えを見せるミシェル。場のクリーチャーをコストにするので、そう何度も使える手ではないが、柚のデッキは残り少ない。下手にドローもできず、ハンデスを抱えてハンドキープさせない心理的ロックは、見た目以上に有効だろう。
それにミシェルは、なにも柚の動きを制限したいがためだけに《髑髏月》を回収したのではない。
「ここで《スカルセドニー》の能力だ。《スカルセドニー》は破壊されてもマナに行く。そして黒緑の《スカルセドニー》がマナに置かれたことで、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージ発動! 墓地の《オリーブオイル》を回収し、コストが下がった《オリーブオイル》を召喚!」
《スカルセドニー》を破壊することで、闇と自然文明を持つ《スカルセドニー》をマナに置き、《ディス・マジシャン》のスペース・チャージを発動。墓地のカードを山札に戻しつつ、ブロッカーを並べていく。
ミシェルの布陣はどんどん盤石なものになっていく。《黄昏地獄拳》のようなブロッカーメタか、アンブロッカブルでもない限り、この数のブロッカーを捌ききることは不可能だろう。柚のデッキには水の有するアンブロッカブルはいなかったはず。《黄昏地獄拳》を唱えられても厳しいが、墓地の呪文を回収するようなカードもない。なので、この陣形を突破することは、柚には不可能なはずだ。
『ジェドルール』の時には、脳への負担という意味で苦しめられたが、こうして一方的に有益な情報があるというのは、やはり重要だ。情報アドバンテージは直接の利得には繋がらないが、持っているのといないのでは、作戦の組み立てがまるで異なる。
「《トゲ刺しマンドラ》を召喚です。墓地の《エストール》をマナにおきます」
手札がなく、ミシェルが《髑髏月》を抱えている以上、柚はトップを捲る作業のようなことしかできない。
一枚一枚のカードパワーが高くないこのデッキだ。コンセプトも一定しておらず、トップ解決でどうにかなるということもないだろう。
「ブロッカーが多すぎます……ターン終了です」
《ピエール》《カルネイジ》《胡椒》らが睨みを利かせていることもあり、柚は殴れずターンを終えた。
今この場は圧倒的にミシェルが有利。シールドゼロの状況から場を固め、柚の動きを完全に封じた。
「……まあ、ギリギリ打点も足りないから、やることがないな……《ザ・ストロング・ガード》で手札を一枚シールドに置き、一枚ドロー……《道化人形ペケ》を召喚して、ターン終了だな」
ミシェルとしても、下手に柚に手札を与えることはできない。山札こそ見たが、シールドの内容まではわからないので、トリガーや、奇襲してくるスピードアタッカーが埋まっていることなどを考慮すると、軽々しく攻撃できない。打点をしっかりと揃えてから攻撃した方がいい。
このまま長引いても、不利なのはデッキ枚数が残り僅かな柚だ。ずるずると引き延ばせば、デッキが切れて負ける。ミシェルは《オリーブオイル》で回復する手段があるが、柚にはそれがない。
だからミシェルは、守りを重視しつつ、じっくりと攻めていくつもりだったのだが、
「わたしのターン……あ」
「ん? どうした?」
柚が声をあげる。なにを引いたのだろうか。
流石にマジマジとデッキを見るのは失礼だと思い、《ロスト・チャージャー》使用時もサッと確認して返したため、すべてのカードを完全完璧に把握しているとは言い難い。それでも、この盤面を一枚で返せるようなカードはなかったはずだ。
すると、
「……《トゲ刺しマンドラ》を進化」
柚は、一輪の獰猛な花を、世界を覆い尽くすほどの大樹へと、進化させた。
「——《世界樹ユグドラジーガ》!」
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て43」 ( No.487 )
- 日時: 2016/09/16 14:51
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
世界樹ユグドラジーガ R 自然文明 (6)
進化クリーチャー:ツリーフォーク 7000+
進化—自分のツリーフォーク1体の上に置く。
パワーアタッカー+2000
W・ブレイカー
闇ステルス
《トゲ刺しマンドラ》から進化したのは、唯一のツリーフォークの進化クリーチャー、《ユグドラジーガ》。
ツリーフォークという種族自体がマイナーで数も少なく、かつどのクリーチャーも非力だ。デュエル・マスターズ黎明期から存在しているが、途中で廃れた種族なので、カードパワーは現代のカードと比較すると、非常に低い。種類が少なく、有能な進化元もいない。ゆえに《ユグドラジーガ》も使いにくい進化クリーチャーだ。
たとえ出せたとしても、《ユグドラジーガ》そのもののスペックも、お世辞にも高いとは言えない。ただし、それは状況にもよる。
少なくとも今この場において、ミシェルにとっては、厄介なクリーチャーであった。
「《ユグドラジーガ》は闇ステルスです! 闇のカードがマナゾーンにある時、ブロックされません!」
「おいおい、マジかよ……ツリーフォーク進化なんてまずないと思って無視してたが、このタイミングで出るのか?」
《ユグドラジーガ》の能力は闇ステルス。相手のマナゾーンに闇のカードがあればブロックされない。
ミシェルのマナには闇のマナが大量に埋まっており、かつ少ないシールドをブロッカーを並べて守っているので、このクリーチャーの登場は、痛恨の一撃だ。
さらに追い打ちをかけるのが、《ユグドラジーガ》のパワー。《ユグドラジーガ》の素のパワーは7000とそこそこあるのだが、ミシェルのアタッカーは皆、このパワーラインを越えられない。最高パワーの《オーラヴァイン》でもパワー6000だ、相打ちにすらできない。手札には除去カードもなかった。
防御はできず、処理もできない。もたもたしていると、ブロッカーをすり抜けて殴り切られてしまう。
「いきますっ! 《ユグドラジーガ》でシールドをブレイク!」
「トリガーはない……!」
最後のシールドは、とりあえず埋めた《髑髏月》。当然トリガーなどではない。
「まずいな……」
シールドはゼロ。《ユグドラジーガ》は除去できず、ブロッカーは意味をなさない。
長引けばデッキ枚数的に柚が不利、などと言える状況ではなかった。柚は勝負を決めにかかっている。
制圧したと思ったら、その隙間を潜り抜けられたこの状況。
こうなってしまった以上は、もう、
「……殴るしかないか。2マナで《マジェスティック・サンダー》! 《ユグドラジーガ》をフリーズ!」
ミシェルはゆっくりと盤面を制圧する作戦を放棄して、打点が足りずとも、殴り切る方針に切り替えた。
ひとまず、このターンにはとどめは刺せないので、次のターンにダイレクトアタックを決めて来る《ユグドラジーガ》の動きを止める。これで1ターンは持つはずだ。
後はただひたすらに、殴り続けるだけ。
「行くぞ! 《オーラヴァイン》でWブレイク!」
「トリガー……ないです」
「《クズトレイン》でシールドをブレイク!」
「S・トリガー! 《共倒れの刃》です! 私の《ミラミッケ》と《ディス・マジシャン》を破壊しますっ! でも、《ミラミッケ》はエスケープで、破壊される代わりにシールドを一枚手札に加えますよ」
トリガーで《ディス・マジシャン》を破壊されたが、柚はエスケープで《ミラミッケ》を守ったので、結果としてシールドは割り切れた。
これで次のターン、とどめを刺すことができるのだが、
「わたしのターン! 《スターピッピー》を召喚! さらに《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚ですっ! タップされているクリーチャーをすべて破壊しますっ!」
「……ヤバいな」
ここでシールドを削って《ミラミッケ》を残すということは、なにか考えているのだと思っていたが、アタッカーが全滅してしまった。
ミシェルのデッキにスピードアタッカーはいない。このままだと、次のターンにやられるのはミシェルの方だ。
「攻撃は……このターンはしません。ターン終了です」
「《クズトレイン》のドロー警戒か……」
どちらにせよ次のターンには《ユグドラジーガ》が起き上がり、とどめを刺しに来るのだ。ここでブロッカーを削る意義は薄いだろう。
逆に言えばミシェルは、このターンで《ユグドラジーガ》を処理するか、シールドを増やすかしなければ、負けになるのだが、
「あたしのターン……まだギリギリ耐えられるか? 4マナで《矛盾のスカイソード》を唱え、シールドを追加。《ドリリング・イヤリング》を召喚し、ターン終了だ……」
この時点で、ミシェルは殴り切ることをほぼ放棄した。
柚のデッキは残り三枚。あと2ターン耐えきることができれば、デッキ切れを起こして柚は負ける。
アタッカーが引けない以上は、殴るという手段は取れない。最初に殴ったことが完全に裏目に出てしまい、方針もぶれぶれで、悪いプレイングの見本のようになってしまったが、仕方ない。
とにかく2ターン耐える。それだけでミシェルの勝利だ。
「わたしのターンです。《ユグドラジーガ》は起き上がります」
《ユグドラジーガ》のフリーズが解け、攻撃に参加できるようになる。どれだけブロッカーを並べても、このクリーチャーだけはどうしようもないので、このクリーチャーをどうにかして処理することが、一番の課題だった。
しかし、ミシェルが並べたブロッカーを無為にする手段は、なにも《ユグドラジーガ》だけではない。
「《クアトロ・ブレイン》をチャージ。《黒神龍ベルザローグ》を召喚! さらに2マナで呪文、《パワー・パズル》ですっ!」
パワー・パズル UC 光文明 (2)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある自分のクリーチャーを1体タップする。その後、合計パワーがそのクリーチャーのパワー以下になるように、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを好きな数選び、タップする。
《パワー・パズル》、変則的なタップ呪文だ。自分のクリーチャー一体を寝かせることで、そのパワーを参照して、割り振り火力のようにタップを放つ。
普通に使えば、自分のクリーチャーに隙を与えてしまう上に、使い終わった登場時能力持ちのクリーチャーでは、大した効果は期待できない。
相手ターン中では自分のクリーチャーがタップしていることが多く、殴り返しの隙を生む。自分のターン中なら、アタッカーを一体潰しかねない。非常に使いどころの難しいカードなのだが、今の柚の場には、うってつけのクリーチャーがいる。
このターン攻撃できない、パワーだけが高い、大型クリーチャーが。
「わたしがタップするのは《ベルザローグ》! パワーは14000ですっ! それ以下になるように、ミシェルさんのクリーチャーをタップします!」
ミシェルのクリーチャーは、パワー4000の《ドリリング・イヤリング》、パワー3000の《カルネイジ》、パワー2000の《胡椒》《オリーブオイル》《ミケ》、パワー1000の《ピエール》。
合計パワーはピッタリ14000。綺麗に《ベルザローグ》のパワー内で収まり、ブロッカーがすべてタップされる。
「そのカードも知ってたが、まるで考慮してなかったぞ……まさか《ベルザローグ》がいたとはな」
恐らく、シールドから手札に来たのだろう。《ロスト・チャージャー》でこのファッティが見えていれば、《デスライガー》より優先して捨てていたはずだ。
なんにせよこれで、ミシェルのブロッカーはいなくなった。もはや《ユグドラジーガ》もステルスも関係ない。並んだ大型アタッカーに踏みつぶされるだけだ。
「決めますっ。《ヴェスプトックス》で最後のシールドをブレイクです!」
「……S・トリガー、《スローリー・チェーン》。このターンの攻撃はもう不可能になる。が……」
なんとかS・トリガーで延命はできたが、1ターン耐えただけだ。
シールドはゼロ、柚の場には《ユグドラジーガ》が残っており、アタッカーも多い。
次のターンも耐えきれる自信はなかった。
(あと1ターン、及ばずか……)
《ユグドラジーガ》を処理できれば、まだ耐えられる可能性はあるのだが、構築段階で既に、ハンデスとブロッカーで耐える方向にデッキを持って行ってしまったので、除去が少ないことが裏目に出た。
シールドを増やすカードも使い切ってしまい、ここから《ユグドラジーガ》をどうにかしようとするなら、《ハンゾウ・ニンポウ》を引いて二連打するくらいしか方法がない。
これ以上、この対戦を引き延ばすことはできなさそうだ。
そう思ってカードを引く。すると、
「……ん?」
そのカードに、目が留まった。
一瞬のうちに、思考が繋がる。ミシェルは迷いなくそのカードを引きぬいた。
「8マナタップ、《アクア・デフォーマー》を召喚だ」
アクア・デフォーマー R 水文明 (8)
クリーチャー:リキッド・ピープル 3000
このクリーチャーがバトルゾーンに出たとき、各プレイヤーは自分自身のマナゾーンからカードを2枚ずつ選び、それぞれの手札に戻す。
「こいつの能力で、互いのプレイヤーはマナゾーンのカードを二枚、手札に戻す」
「マナゾーンから、ですか? えっと、じゃあわたしは、《血風神官フンヌー》と《ロックマンエグゼ&勝太》を手札に加えます」
スピードアタッカーとブロッカー破壊を回収する柚。やはり、次のターンで殴り切る気だ。
しかし、もう遅い。
ミシェルは既に、決着をつけるためのカードを手中に収めることができるのだ。
「ならあたしは《トラップ・チャージャー》と——」
ミシェルは柚の攻撃を耐え切れない。これ以上、この対戦を引き延ばすことができない。
だが、それでも勝つ方法は存在する。
時間の経過で目指す結果があるのであれば、どのような過程であっても、どのような速度であっても、その結果は同じ。時間を引き延ばせないのであれば、その逆を行えばいいだけだ。
時間を長引かせることができないから、その逆のベクトルで攻める。
つまり、
「——《ロスト・チャージャー》だ」
「あ……」
時間を、加速させればいい。
ドローのための時間を稼げないのであれば、そのドローを加速——もとい、山札そのものを削ればいいだけだ。
「悪いな、こんな勝ち方で。3マナで《ロスト・チャージャー》だ。残り山札は二枚。どっちでもいいが、とりあえず《戦略のD・Hアツト》を墓地に……これでお前の山札は残り一枚だ」
ターン終了、とミシェルは宣言する。
柚の山札は、残り一枚。デュエル・マスターズのルールにおける敗北条件の一つは、山札がなくなること。
最後の一枚を引いたその瞬間に、敗北する。
柚は、最後のカードを引いた。
そして、
「……わたしの、負けです」
ミシェルが勝利した。
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て44」 ( No.488 )
- 日時: 2016/09/17 21:34
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
「——はい、じゃあ私の勝ち。ハチ君から1200万デュ円徴収ね」
「自分の手持ち、残り900万デュ円なんすけど……破産っすね……」
「ハチくんも負けちゃいました……」
「ハチもこっちの仲間入りだねー」
モノポリー開始から、六時間ほど経過した頃。
一騎に始まり、暁、柚、八と、続々と脱落者が現れてくる。
残っているのは、いまだトップを走る沙弓、その後を空護、ミシェル、浬、恋、美琴の順で追っている形だ。
「3マス進む……う、また沙弓の土地ね」
「序盤の下積みがちゃんと効いてきたわね。美琴から400万デュ円を徴収ー。次はシェリーね」
「あたしはそろそろ疲れてきたんだが……えーっと、5マス進むのか」
ルーレットの指示に従って、マスを五つ分進むミシェル。進んだ気にあるのは、対戦マスだった。
対戦は、対戦前の準備、対戦中の思考、対戦結果による金銭の移動と順位変動など、1アクションに対して考えることが非常に多くなるため、労力がかかる。ミシェルにとっては、あまり踏みたくないマスだった。
しかし今回の対戦マスは、今までと少し違った。
「対戦マスかよ……ん? なんか他にも書いてあるな」
「『後方三人と四人対戦』? 人数指定があるのか?」
「少しだけね。えーっと、後方四人って言うと……」
まず、対戦マスを踏んだミシェル。
その後ろには浬、沙弓、そして恋がいる。
「厄介そうな奴ばっかりだな……まあいいか。とっととレギュを決めるぞ」
「せっかちねぇ。はいどうぞ」
沙弓に渡された箱から、レギュレーションの書かれた紙を引くミシェル。
四人対戦用のレギュレーションは、今までだと『ワンデッキデュエル:タワー』ぐらいしかなかったが、他にはなにがあるのか。
タッグマッチくらいなら覚悟しておいた方がいいだろうと思いつつ紙を開く。そこにそこに書かれていたレギュレーションは、
「『DM EDH』……? なんだこれ?」
「あぁ、それは『EDH(エルダー・ドラゴン・ハイランダー)』……通称、統率者戦よ」
「統率者……?」
まるで知らないレギュレーションだった。
ただし、エルダー・ドラゴンという名前だけは、ほんの少しだが、理解できる。
「エルダー・ドラゴンって……まさか、マジックのか?」
「元はそうね。計略デッキとかのギミックも、あれがモデルだったりするし」
「それで、統率者戦ってなんだ?」
「んーっとね、今はざっくりとした概要だけ説明するけど、統率者戦っていうのは、統率者を軸にしてデッキを構築するレギュレーションよ」
「その統率者っていうのはなんだ?」
「デッキを組む際に、統率者としてクリーチャーを一体だけ選択するのよ。いわばプレイヤーの相棒ね。デッキ構築の際は、デッキ枚数60枚、ハイランダーという制限の他に、選択した統率者が持っていない文明のカードは使えない、っていう制約もつくの」
「つまり、デッキの内容は統率者に左右される、ってことか」
「その統率者っていうのは、ゲーム前に公開するだけなのか?」
「まさか」
そんなわけないでしょう、と沙弓は悪戯っぽく微笑む。
「統率者は、統率者領域という別ゾーンに置いておくのよ。召喚する際は、手札にある時のように、普通にコストを支払って召喚するんだけどね。だからコスト軽減、増加、G・ゼロなんかの影響も勿論受けるわ。バトルゾーンを離れる時は統率者領域に戻せるから、何度でも出し直せる。ただし、一度統率者領域から出るたびに、召喚コストは2ずつ上昇していくわ」
「なるほどな……ということは、その統率者をどう扱うかが、鍵になりそうだ」
統率者は常に手札にあるようなカードなので、できるだけデッキの核になるようなキーカードを据えたいが、デッキカラーが統率者に左右されるので、その点も考慮しなくてはならない。ハイランダーという安定性を欠く構築に、統率者に左右される文明縛り。
強力な統率者を軸として、その文明に合わせるような構築が基本になるのだろうが、統率者を選択するだけでも考え物だ。何度も出し直すことを考慮して、低コストで出せるクリーチャーを選択するべきか。それとも、ハンデスなどの影響を受けず、常にハンドキープして好きなタイミングで出せる確実性を生かすべきか。
また、構築に頭を悩ませそうなレギュレーションだった。
「詳しいルールはこんな感じね。ちょっと複雑だから、ちゃんと目を通しておいてね」
『DM EDH』ルール
・参加プレイヤーは四人。時計回りでターンを進める。
・カードの効果は原則として、プレイヤー一人、またはそのバトルゾーンを指定する。
・勝利条件は、他のプレイヤーをすべて倒すこと。最後まで残ったプレイヤーの勝利とする。
・敗北したプレイヤーは、自身のカードをすべて場から除外する。ただし、バトルゾーンはプレイヤーに及ぼした効果は継続する。
・初期シールドは七枚。
・先攻ドローあり。
・デッキは「統率者」を含むメインデッキ60枚、超次元ゾーンは最大8枚のハイランダー(全カード一積み)構築。
・「統率者」に含まれていない文明のカードはメインデッキに入れることができない(無色カードは「統率者」の文明関係なく投入可能)。
・ゲーム開始時に「統率者」として選択したクリーチャーを「統率者領域」に置く。
・「統率者」は通常通り規定のコストを支払うことで、「統率者領域」から召喚できる。
・「統率者」の召喚タイミングは、通常の召喚タイミングが適用される。
・「統率者領域」から「統率者」を召喚するたびに、「統率者」のコストは2ずつ上昇する(この上昇コストは累積する)。
・「統率者」がバトルゾーンから離れる時、「統率者」を「統率者領域」に戻すことができる。
・「統率者」が相手プレイヤーを攻撃してブロックされなかった時、デッキからカードを一枚引くことができる。
・支払いはトップに対して下位の三人がそれぞれ支払う。
沙弓に示されたルールを見て、ふと浬が尋ねた。
「部長。カードの効果とゲームのルールがかちあった時は、どちらが優先されるんだ?」
「え? そりゃあ、カードの効果でしょうね。召喚酔いっていうルールは、スピードアタッカーっていう効果に上書きされて、後者が優先されるわけだし」
「そうか。なら、カードに書いてある効果であれば、ルールは無視できるんだな」
「? まあ、乱暴に言ったらそうなるかしら……?」
念を押すように問い詰める浬。いまいちその意図は掴みかねるが、沙弓は答えた。
「そうか……なら、大丈夫だな」
最後にそう言うと、浬は自らのデッキ構築に戻っていった。
やがて、ミシェルが対戦を起こしてから、順番が一巡した。
全員デッキは組みあがり、対戦が始まる。
各々が自分の相棒として選んだ統率者。
パートナーとの連携を魅せ、頂点に立つのは、誰になるのか——
対戦が始まる。まずは通常より二枚多い、七枚シールドを展開し、手札を五枚取る。
そして、統率者領域のカードが公開され、各人の統率者が明らかとなる。
浬
統率者《龍素記号IQ サイクロペディア》
ミシェル
統率者《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》
沙弓
統率者《死海竜》
恋
統率者《星龍グレイテスト・アース》
「浬君は《サイクロペディア》か。浬君らしいチョイスだね」
「でも、60枚のハイランダーで青単……単色は基本的にビートのカラーですし、構築段階で辛そうですけどねー」
「沙弓は青黒赤カラーで予想通りだけど、四天寺先輩は、アブキュア……?」
「恋って火文明単色じゃなかったっけ? 《グレイテスト・アース》って、五色レインボーだよ?」
四人がそれぞれ選択した統率者。それだけでデッキカラーが分かるのだが、それ以外にも、選択された統率者に首を傾げる。
60枚ハイランダーというビートには不向きのレギュレーションでありながらも、ビートダウン向きのスペックを持ち、そのうえデッキカラーを単色にしてしまう《サイクロペディア》を選んだ浬。
あまりメジャーではない文明の組み合わせである白赤緑カラーに加え、比較的マイナーどころにあるフェニックス《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》を選んだミシェル。
赤単速攻だったはずが、いつの間にかビートダウンではありえない五色デッキを構築する、五文明を併せ持つ大型ワールド・ドラゴン、《星龍グレイテスト・アース》を選んだ恋。
この三人が、寄って集って異彩を放っていた。
そのせいか、トップを走り余裕をかましていた沙弓が戸惑っている。
「なんか皆の統率者が意外過ぎるのだけれど……カイの青単はまだマシとしても、シェリーは白赤緑だし、れんちゃんに至っては赤単速攻とはまるで関係ない五色クリーチャーって……私も、もっと変な統率者連れて来ればよかったわ」
「別に意外性の勝負をしているつもりはないんだがな」
むしろ、沙弓がわかりやすすぎるのかもしれない。
ここまで、沙弓はほとんどの対戦において、青黒赤の除去コントロール、または中速ビートを使用している。今回もその文明に合わせるためなのか、統率者は準バニラの《死海竜》だ。
予想通りのデッキカラーである。
「なーんか出だしから負ける気分ね……まあいいわ。始めましょう」
対戦の準備は完了し、いよいよ対戦が始まる。
統率者に先導され、統率者を操りて戦う、『DM EDH』——対戦開始だ。
- 番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て45」 ( No.489 )
- 日時: 2016/09/18 00:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
遂に始まった『DM EDH』。
ターンの順番は、浬→ミシェル→沙弓→恋となった。
「俺のターンからか。先攻ドローありだったな……《クリスタル・ツヴァイランサー》をチャージ。終了だ」
「あたしのターン。《蝙蝠の面 トーブ》をチャージして、終了だ」
「当然だけど、1ターン目は動きがないわね。私のターン……じゃあ、《レールガン》をマナに置いて、ターン終了よ」
「……《希望の守り手クラップ》をチャージ……終了」
1ターン目は、沙弓の言う通り誰も動きはない。
しかし、次の2ターン目からは、誰かしらは動いて来るだろう。
「俺のターン。《アクア潜入員 トリガロイド》をチャージし、2マナで《アクア戦士 ドリルゲッター2号》を召喚。ターン終了」
早速、浬が《ドリルゲッター2号》を召喚。
ブロックされない軽量リキッド・ピープルだ。
(《サイクロペディア》を統率者に選んでいる時点でわかってはいたが、やはりリキピーのビートダウンみたいだな……それなら、矛先があたしに向いても、むしろカモか)
浬のデッキは、リキッド・ピープルで種族を固めた、ビートダウン。
小型リキッド・ピープルを並べながらビートしていき、シンパシーで《サイクロペディア》の早期召喚を狙うのだろう。《サイクロペディア》は登場時の能力でドローするだけでなく、アンブロッカブルでプレイヤーへの攻撃を通しやすい。統率者は相手プレイヤーを攻撃してブロックされなければ一枚ドローできるため、さらにドローを加速させ、手数を増やすことが可能だ。
下手に放置すれば、大群を形成してタコ殴りにされるが、そうだとしても問題ないと判断し、ミシェルはカードをマナに置く。
「《居合のアラゴナイト》をチャージして、ターン終了だ」
「あらら、シェリーは動かないの。動きが鈍いわね。私は《闘凶ディス・チキンレーサー》をチャージして終了よ」
「お前も動いてねぇじゃねぇか」
「やっぱりこのカード資産だと、三色にするだけで初動が遅れちゃうのよね」
「……《希望の守り手ペッパー》をチャージ……終了」
あっという間にターンが回ってくる。結局、2ターン目にアクションを起こしたのは浬だけだった。
「俺のターン。《アクア・ハルク》をチャージ、3マナで《アクア・シャークス》を召喚。《ドリルゲッター2号》で部長を攻撃だ」
「私なの?」
「あぁ。あんたが一番面倒そうだからな。先に潰す」
「うーん、買いかぶりな気もするけど、一応、光栄ですってことで、そのブレイクは受け取っとくわ。トリガーはなしね」
浬が真っ先に矛先を向けたのは、沙弓だった。
最初にシールドを一枚失ったが、まだシールドは六枚ある。
「あたしも動くか……《アキューラ》をチャージし、3マナで《ピュア・ランダース》を召喚。シールド・プラスで、シールドにカードを一枚重ねる。ターン終了だ」
「早速狙われちゃったけど、どうしようかしら……とりあえず、《ギーガ》をチャージして、《遥か寸前 ヴィブロ・ブレード》を召喚。カードを一枚引いて、ターン終了かしらね」
「……《スパーク・チャージャー》をマナに置いて、終了……」
3ターン目の動きも大人しい。クリーチャーこそ並んできたが、他の三人は三色以上なだけあって、腰が重いようだ。
ならばやはり、今のうちに攻めるべきだ。
「俺のターン……さて、ここからだな」
浬が選択したこのデッキの本領を発揮する。
そのタイミングは、今だ。
「《エナジー・ライト》をチャージ。2マナで《遊撃師団 アクアーミー》を召喚」
「ん? 《アクアーミー》……?」
「このレギュで《遊撃師団》、だと……?」
浬が召喚したクリーチャーに、疑問符を浮かべる沙弓とミシェル。
《遊撃師団》は複数体の同名カードが場に存在することで強化されるクリーチャー群。ハイランダー構築のこのレギュレーションにはそぐわないように思われる。
しかし、その考えは、ルールを理解していないに等しい思考だ。
浬は更なる援軍を、盤上に叩きつける。
「さらに2マナ! 二体目の《遊撃師団 アクアーミー》を召喚!」
現れたのは、“二体目”の《アクアーミー》だった。
そのプレイングに、慌ててミシェルがストップをかける。
「っ、ちょっと待て! このルールはハイランダー戦だったはずだろ? 同名カードを二枚以上入れることをできない。ルール違反だろ」
「いいや、これはルール違反にはならない。部長は言ったよな。ルールよりもカードの効果を優先する、と」
「確かに言ったわね」
「《遊撃師団 アクアーミー》の能力は、四枚より多くデッキに入れることができる、というもの。俺はこのデッキに、四枚を超える《アクアーミー》を投入している。カードテキストがルールより優先されるなら、なんら問題はないはずだ」
同名カードは一枚しかデッキに入れられないという対戦ルールと、四枚より多く投入可能というカードテキスト。同名カードの投入枚数という点においてこの二つはかちあったが、後者が優先されるというのであれば、前者のルールを無視して後者のルールを適用できるということになる。
それならば、《アクアーミー》が何枚入っていようと、ルールには抵触しないことになる。
「変なこと聞くと思ったけど、最初に確認したのはこういうことね……いいわ。続行しましょう」
「いいのか?」
「通常ルールであっても、《遊撃師団》は四枚までしか同名カードを入れられないというルールを、自分たちのテキストで上書きしているわけだし、その理屈が統率者戦でも通用しないなんて道理はないわ」
「……わかった。止めて悪かったな。続けてくれ」
「じゃあ、ターンを続行で。《アクア・シャークス》で部長を攻撃だ!」
「やっぱり攻撃方向はこっちなのね。トリガーはないわ」
「なら、ターン終了だ」
「あたしのターンだな」
カードを引き、一度思考に入るミシェル。
浬の攻撃の方向が明確になったところで、自分のプレイングを考える必要が出たからだ。
(霧島の矛先はこっちへは向かない、か……それならそれで構わないんだがな。二人でぶつかり合ってるところだし、下手に首突っ込んで怪我したくはない。ここは静観だな)
殴られればそれでも良いが、攻撃を受けないなら、今はまだそちらの方がいい。下手に動かず、様子を見ることにした。
「《クラッシャー・ベア子姫》をチャージ。《怪盗パクルパン》を召喚して、ターン終了だ」
「《パクルパン》? んー……とりあえず私のターンね。できることがなくて辛いわ。《アクア・サーファー》をチャージして《ブレイン・チャージャー》を唱えるわね。一枚ドローして、チャージャーをマナへ。《ヴィブロ・ブレード》で《シャークス》を攻撃!」
「相打ちだな。破壊された《シャークス》の能力で、一枚ドローする」
「ターン終了よ」
「《ロードリエス》をマナに置いて、《ネクスト・チャージャー》……手札を入れ替えて、ターン終了……」
「俺のターン。《アクアーミー》をチャージ……ここだな」
浬の場には、《ドリルゲッター2号》に二体の《アクアーミー》。リキッド・ピープルの数は三体。
そして、今のマナ数は5。仕掛けるなら、このタイミングだ。
浬は統率者領域に置いた相棒を手に取り、戦場へと送り出した。
「シンパシーでコストを3軽減し、統率者領域から召喚! 《龍素記号IQ サイクロペディア》!」
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