二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.194 )
日時: 2015/12/14 02:47
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

「——《天命王 エバーラスト》!」
 再び、彼女の切り札が降臨した。
 一度は滅した光の王の姿が、そこにはある。
 ラヴァーの場には、天命の王と、王に従う五体のクリーチャー。
 《バラディオス》がいる限り、残り一枚のシールドを破ったが最後、こちらのクリーチャーの動きはすべて封じ込まれる。
 《ヴァルハラナイツ》により、小型クリーチャーの展開と同時に、こちらの攻め手も止められる。
 《エメラルーダ》で追加したシールドも、S・トリガーを埋められた可能性が高い。
 《メダロ・アンドロム》の能力で、すべてがブロッカーになり、その根源は選ぶことができない。
 守りも、戦力も、暁とは段違いだ。
 ちっぽけな《コッコ・ルピア》と、建っているだけの《巨星城》では、とても太刀打ちできないほどに、その差は圧倒的だった。
「……私のターン……」
 もはや盤面も、この流れも、暁の敗色ばかりが濃くなっていく悪状況。
 それでも暁は、一縷の望みに賭けて、カードを引くが、
(《竜星バルガライザー》……)
 引いたのは、そんなカードだった。
 このカード一枚では盤面をひっくり返すことなど到底不可能だが、《バルガライザー》で捲れるカード次第では、なんとかなるかもしれない。
(でも、《バルガライザー》で捲れるカードも一枚……たった一枚で、この状況をひっくり返せるカードなんて……)
 そんなカードを入れた覚えは、暁にはなかった。
 どうすればこの状況を打開できるのか。考えても無駄だ。もう詰んでいる。
 やはり、自分では彼女を救うことなどできなかったのだ。一騎の意志を継ぎ、彼の願いを聞き届けることなど、できなかったのだ。
(……あれ?)
 だが、暁は思う。
 ふと気づく。
 自分が今、ここに立っていることに。
(私……なんのために戦ってたんだっけ?)
 ここに立っているということは、ラヴァーと——日向恋と戦うためだ。
 なんのために? なにがために? 誰のために?
(私があの子の戦う理由。それは、一騎さんのため……だったはず。あれ、でも、なんか違う……)
 どうにも腑に落ちない。自分があの時、太陽山脈で決意した時の気持ちとは、なにかが違う。
 彼女と戦う意志を、あの時に固めた。だが、あの時に抱いていた思いと、一騎から受け継いだ思いは違う。
 似ているようで、決定的に違う。
(私が戦う理由、あの子を救いたい理由……それは)
 それは——

「——仲間……だから……?」



 ——その通りだ——



 どこからか声が聞こえる。
 とても熱く、しかし優しく、まるで自分を勇気づけるかのような、太陽のような声だ。
「……ここは?」
 気づけば、暁は赤い場所にいた。
 上も下も右も左もない、めらめらと燃え盛る炎のような、すべてが赤い空間。
 まるで、太陽の中にでもいるかのようだ。しかし暑くはない、むしろ、暖かい。
 優しいぬくもりを感じる。
「……神話空間……?」
 ふとそう呟くが、しかし違う。
 似ているが、違う。ここは神話空間ではない。
 少なくとも、先ほどまで自分が戦っていた場所と、同じ場所ではない。それだけは、暁にもわかった。
 すると、めらめらと、目の前で炎が揺らめく。
 陽炎のようにゆらゆらと。その炎は、やがて一つの姿を成す。
『——やっと会えたな、空城暁』
 それは、人のような、クリーチャーだ。
 燃える炎のように熱く、照りつける陽光のように輝く、太陽の翼。
 強靭な肉体は薄い民族的な一枚布では覆い隠せないほどに、その存在を主張している。
 暁はその姿を、思わず見つめてしまう。彼の放つ、言いようもない覇気に——心を打たれたかのように。
「……あなたは?」
 暁は、彼の名を問う。
『アポロン』
 すると、即座に答えが返ってきた。
 そして続ける。
『太陽神話——アポロン』
 それが、俺の名だ。
 と、彼は締め括った。
「アポロンって、確か……」
 暁にはその名に聞き覚えがある。
 幾度となく、耳にした名前だ。
 《バトライオウ》《ガイゲンスイ》《ガイムソウ》《ドラゴ大王》——そして、《コルル》。
 他にも、暁のクリーチャーの口から、その名が出ないことはなかったほどに、聞いた名だ。
 太陽神話、アポロン。
 かつてこの世界を統治した、十二の神話の一柱。
 コルルが、太陽の語り手が、語り継ぐ神話。
「……アポロンさん」
『コルル……久しぶりだな』
 感極まったようにアポロンを見つめるコルル。アポロンも、どこか懐かしむような視線を、コルルに送っている。
 だが、しかし、
『悪いが、時間がないんだ。コルル、お前と語らいたいことも多いが、それだけの時間はない。それに、ここにいる俺はただの残響——神核の中にほんの少しだけ混ぜた、俺の意志の欠片だ』
「しんかく……?」
『ドラゴ大王にはもう会っただろう。俺がコルルを封じ、この世界を去る前に奴に託した、俺の力の象徴だ』
 言われて、暁は気づいた。
 黒翼に抱かれた太陽。あれがアポロンの言う神核であり、今ここに、アポロンを呼び寄せているものだと。
 いや、呼び寄せているという言葉は不適切だ。彼が言うには、彼自身はただの意志の欠片——俗っぽく言い換えれば、ある種のビデオレターのようなものなのだから。
 ゆえに、制限時間もあるのだろう。現にアポロンの姿は、少しずつ、淡く陽炎のように揺らいでいる。
『……暁、お前は、何のために戦う?』
 唐突に、アポロンは暁に問う。
 あまりに突然だったために、暁は面食らうが、答えは決まっていた。
「仲間の——」
 と、言いかけて、暁は言葉を止めた。
 その言葉は適当じゃない。もっと、自分らしい言葉があるはずだ。
 そう思って、暁は言い換えた。

「——友達のためだよ」

『……ふっ、プロセルピナみたいなことを言うな、お前は』
 アポロンは笑った。とても神話と呼ばれるような、大仰な者とは思えない、普通の笑みだった。
『いいだろう、合格だ。ドラゴ大王に託した俺の力、今のお前たちなら、その力の本質を感じることができるはずだ』
 アポロンの姿が、どんどん揺らいでいく。
 今にも、消えてしまいそうなほどに、淡く、ゆらゆらと。
「あ……」
「アポロンさん……っ」
 暁とコルルは思わず手を伸ばすが、その手が彼に届くことはない。
 消えゆく中、アポロンは告げる。
『俺は、お前たちを信じる』
 そして、彼は、太陽の如き明るい火をもたらす。
『コルル、暁。お前たちに、俺の神話の力を託す。そして、コルル』
「はい……!」
『お前には、枷を外そう』
 パキン、と。
 どこかで、何かが外れるような音が聞こえた気がした。
『さぁ、行け。今のお前たちなら、どんなに高い壁であろうと乗り越えられる。どんなに強固な守りでも、打ち砕ける。お前たちが、お前たちの光を放つというのならば、それはあらゆる万物を超越する、輝く太陽となるだろう』
 だから、
『お前たちの熱き意志を、陰気な光の小娘に見せつけてやれ』
 最後にアポロンは、微笑んだ。
 太陽の光を残して——



 気づけば、暁は神話空間の中にいた。
 先ほどまでの、太陽のように赤く燃える場所ではない。
 目の前にはシールドが、手元には手札が、真下にはマナが、両横にはデッキと墓地が、それぞれあった。
 そしてずっと先には、一人の少女。
「——まだ……?」
「え、あぁ、うん。ごめん……」
 どのくらいこうしていたのだろう。彼女は痺れを切らしたかのように催促し、思わず普通に応答してしまう。
 だが、それでいいのかもしれない。自分は普通で、彼女もまた、普通の少女なのだから。
 そんなことを思いながら、暁は手札に残るたった一枚のカードを繰る。
「……《コッコ・ルピア》でコストを2、下げて、6マナで《竜星バルガライザー》を召喚。そして——攻撃」
 暁はデッキに手をかける。
 あたたかい。めらめらと燃えているような、それでいて勇気を与えるようなぬくもりがある。
 さっきの空間での出来事を、アポロンとの邂逅を思い返す。
 そして、彼女はその手に力を込めた。
「コルル……行くよ!」
「おぅ、暁!」
 彼女の呼びかけに、コルルは答えた。
 そして、一体の龍が飛翔する。
「《バルガライザー》の能力発動! 山札の一番上を捲って、進化でないドラゴンをバトルゾーンに!」
 迷いはない、不安もない。自分を、仲間を信じて、彼女はカードに呼びかけるだけだ。
 龍の咆哮がデッキに、彼女の心に響く。
 そして、

「進化——」

 暁の先へと、突き進む。
 勝利を刻むように。
 世界を創るように。
 歴史を残すように。
 武装を為すように。
 彼女は前へ進む。
 すべてを照らし、あらゆるものに輝く希望を与える。
 神話の太陽のように。
 彼女は——暁の太陽となる。



「——メソロギィ・ゼロ!」












 炎が晴れる。
 そこにあるのは、漆黒の翼。
 強靭な肉体。
 そして、仲間と共に戦う、受け継がれた神話の力。
 かの者は《太陽神話》の継承者。
 かつての神話にはなかった黒翼を羽ばたかせ、灼熱の太陽となりて、輝きを放つ。
 そう、かの者こそは——



『——《太陽神翼 コーヴァス》!』

52話/烏ヶ森編 19話 「太陽神翼」 ( No.195 )
日時: 2016/03/15 03:33
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Ak1jHfcH)

太陽神翼 コーヴァス 火文明 (8)
進化クリーチャー:ファイアー・バード/アーマード・ドラゴン 11000+
進化—自分の《太陽の語り手 コルル》1体の上に置く。
メソロギィ・ゼロ—バトルゾーンに自分の《太陽の語り手 コルル》または《コーヴァス》と名のつくクリーチャーがおらず、自分のファイアー・バードまたはアーマード・ドラゴンを含む火文明のカードのコストの合計が12以上なら、進化元なしでこのクリーチャーをバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーはバトルゾーン以外のゾーンにある時、進化でないクリーチャーとしても扱う。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、またはこのクリーチャーが攻撃する時、相手のクリーチャーを1体選びこのクリーチャーをバトルさせてもよい。
このクリーチャーがバトルに勝った時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せ、その中から火のドラゴン、またはファイアー・バードを1体選びバトルゾーンに出してもよい。その後、残りを好きな順序で山札に一番下に置く。この能力でバトルゾーンに出たクリーチャーは、このターン「スピードアタッカー」と「パワーアタッカー+5000」を得る。
バトル中、このクリーチャーのパワーは+4000される。
W・ブレイカー



 燃え盛る太陽が、黒き羽を舞い散らし、その姿を現す。
 それは太陽の化身。黒翼を広げ、輝くもの。
 太陽神話を継承する者だった。
「コルル……その姿は……」
『……思い出した』
 彼は、コルルは——否、《コーヴァス》は、語るようにぽつぽつと言葉を紡ぐ。
『これが、俺の本来の姿……太陽の語り手の、本当の姿……コルルじゃない、真の太陽の語り手、《コーヴァス》だ……!』
 《コーヴァス》は拳を握り締め、黒翼を羽ばたかせる。
 あたたかい風が、暁の頬を撫で、彼女の黒髪をなびかせた。
『これが……俺の真の姿。そして、アポロンさんの力を得た、本当の語り手としての、神話を継承する者としての、あるべき姿だ』
「……よくわかんないや」
 暁は《コーヴァス》の言葉を、そんな風に投げてしまった。
 難しいことは、彼女には分からない。それが空城暁という少女なのだから仕方ない。
 ただ、今の彼が、とても頼もしい存在であることだけは分かった。
 暁は、自分自身と、共に戦う仲間のすべてを、彼に託す。
 黒翼を抱く、太陽の継承者に。
「お願い、コルル——いや、《コーヴァス》!」
『あぁ——任せろ!』
 刹那、爆風が巻き起こった。
「《コーヴァス》がバトルゾーンに出た時、相手クリーチャー一体とバトルする! 《バラディオス》とバトル!」
 瞬く間に《コーヴァス》は《バラディオス》へと肉薄していた。
『俺のパワーは、バトル中+4000! 《バラディオス》を破壊だ!』
 そして、轟々と燃え盛る鉄拳を、その身に叩き込む。
 その一撃で、《バラディオス》の身体は粉々に砕け散った。
「な……っ」
「さらに! 《コーヴァス》がバトルに勝った時、山札の上から三枚を見て、その中の火のドラゴンかファイアー・バードを一体、バトルゾーンへ呼び出せる!」
 《コーヴァス》の羽ばたきによって巻き起こる黒き旋風が、暁のデッキを吹き飛ばす。
 宙を舞うカードは、《超竜サンバースト・NEX》《超熱血 フルボコ・ドナックル》そして——

「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」

 龍のみが存在することを許された王権が、その主が、君臨する。
 赤黒い巨大な翼を広げ、《ドラゴ大王》は静かに、それでいて厳かな重圧をもって、戦場へと降り立った。
 そして、《コーヴァス》の姿を一瞥し、口を開く。
『《コーヴァス》……遂にその姿を取り戻したか』
『《ドラゴ大王》……お前は、俺のこの姿を知っていたのか?』
『ふん、当然だ。むしろ腑抜けた貴様の姿を見て、なにゆえあれほど惰弱であったのか、不思議に思った』
『そうか、そいつは悪かった……が、今の俺は、もうあの時の俺じゃないぜ』
 それは《ドラゴ大王》と出会った《コルル》としての自分ではない、そして“ただの”《コーヴァス》でしかなかったあの時とは違うということ。
 今の自分は、《太陽神翼 コーヴァス》。
 太陽神話の力を受け継いだ、黒翼の太陽なのだから。
『その態度といい、物言いといい、奴を思い出す……ふん、我は貴様も好かんな』
『俺はあの人の意志を受け継いでいるんだ、そいつは当然だし、光栄なことだ』
『減らず口を……貴様がどう思おうと、我は我の王権を振るうまでよ』
『あぁ、そうしてくれ。頼むぞ——《ドラゴ大王》』
『抜かせ。我に指図をするな』
 いつもの傲岸不遜な態度のまま、《ドラゴ大王》は咆哮する。
 戦を告げるかのように。
 火蓋を切るかのように、戦闘を、引き起こす。
『指図をしてよいのは、大王たる我だけだ! 行け、《コーヴァス》!』
『大王様に言われるまでもねえぜ! 行ってくる!』
 《コーヴァス》は《ドラゴ大王》の咆哮と共に、再び飛翔する。
「《ドラゴ大王》の能力で、もう一度バトルを起こすよ! 《コーヴァス》と《エバーラスト》をバトル!」
 戦闘を引き起こす雄叫びにより、《コーヴァス》と《エバーラスト》の一騎討ちが始まった。
 《エバーラスト》は巨大な槍を鋭く突き出すも、それは《コーヴァス》には当たらない。掠りもしない。
 横に薙ごうが、縦に振り下ろそうが、前に押しても後ろに引いても、その攻撃が当たることはない。
『——ここだぜ』
 どころか、《コーヴァス》はいつのまにか、《エバーラスト》の死角に回り込んでいた。
 そして、爆炎を灯した拳を——叩き込む。
 その一撃で、《エバーラスト》は爆散した。
「《エバーラスト》……! そんな、まさか……!」
 狼狽えるラヴァー。先ほどの、怒りがこみ上げたようなそれではなく、現状を許容できなくなったかのように、混乱している。
 もしくは、太陽のような光に、戸惑っているのかもしれない。
 昏い光を明るく照らす、太陽の光に。
「《コーヴァス》が再びバトルに勝利! 山札から《熱血龍 バトルネード》をバトルゾーンへ! そして!」
 遂に、漆黒の翼を持つ太陽が、戦場を駆け抜ける。
「《コーヴァス》で攻撃、能力発動! 《コーヴァス》は、《コーヴァス》自身が攻撃する時にも、相手クリーチャーとバトルできる! 《ヴァルハラナイツ》とバトル!」
 黒羽を散らしながら、大空を舞い、《コーヴァス》は三度その拳を燃え上がらせ、《ヴァルハラナイツ》を捉える。
 《バラディオス》《エバーラスト》を粉砕したその拳は、世界を支配する天使龍、《ヴァルハラナイツ》をも——打ち砕いた。
「まったまた《コーヴァス》がバトルに勝利! 《真実の皇帝 アドレナリン・マックス》をバトルゾーンに!」
「く、ぐぅ……っ!」
「まだまだ! 《ドラゴ大王》《バトルネード》《アドレナリン・マックス》——《コーヴァス》の能力でバトルゾーンに出たクリーチャーは、すべてスピードアタッカーだよ! 《バトルネード》で攻撃!」
 またしても大風が巻き起こる。爆風のような、熱き烈風が、追い風のように吹き荒ぶ。
 そして、戦闘龍による熱血の戦が、幾度となく行われる。
 《バトルネード》から伸びる竜巻のような鎖が、《エメラルーダ》を引き寄せる。
 そして、引き寄せられた《エメラルーダ》を、《コーヴァス》の拳が木端微塵に粉砕した。
「《コッコ・ルピア》をバトルゾーンに!」
 ラヴァーのクリーチャーが、瞬く間にいなくなった。
 そして暁の場には、次々とクリーチャーが、龍たちが現れる。
 まるで、彼女に引き寄せられるかのように、太陽に向かって行くかのように。
 数多の龍たちが、火の鳥たちが、暁の太陽の下に集う。
「……S・トリガー、《マスター・スパーク》……!」
「効かないよ! 《アドレナリン・マックス》の能力で、私のドラゴンはすべてアンタップ!」
 砕かれたシールドから眩い閃光が放たれ、あらゆる生命の動きを封じてしまう。
 だが、暁はそれでも止まらない。《アドレナリン・マックス》の力で、すべての龍は滾る熱血の魂を再燃させる。
「っ……《キュプリス》!」
 もはや打つ手のないラヴァーの手札から飛び出したのは、《キュプリス》だった。
 しかしたった一体のブロッカーでは、暁の攻め手を止められようはずもない。
『……ごめん、君を守ることが、ボクの使命だった。でも、これは……!』
 彼女を守ろうという《キュプリス》の意志は、暁の意志には敵わなかった。
 ただ、それだけだ。
「なんで……なんで、こんな……こんな、火、なんて……!」
「——いい加減、前を見なよ!」
「っ……!」
 迫り来る怒涛の爆炎、爆風に気圧される彼女を、暁は叱咤するかのように、叫ぶ。
「これは一騎さんの言葉だ! ちょっと私の言葉も混じってるけど……そんなことは関係ない! 過去のことを忘れろなんて言わない、あなたが味わってきた痛みは私にも分かる……でも!」
 爆発するかのように、暁は己の内に秘めた言葉を、思いを、すべて吐き出す。
「だからって、こんなことをしてなにになるの!? 一騎さんは、ただあなたに幸せになってほしくて、その一心であなたに尽くしてきたんだよ! それが分からなかったなんて言わせない、それが邪魔だったなんて、言わせないからね! あの人の思いを拒絶したこと、それだけは許さない!」
 それは、暁の怒りだった。
 あらん限りの力で叫んだ暁は、肩でを息をするほどに、息が上がっている。
 だが彼女が次に見せた表情は、期待と、希望に満ちた——微笑みだった。
「私はもっとあなたのことが知りたい……今までの戦いでも分かったことはたくさんあるけど、それ以上に、もっと、もっと、もっと! あなたと分かり合いたい。分かり合えることが、絶対にあるはずなんだ!」
 感情のままに叫ぶ暁。その言い分は、どこか支離滅裂だった。
 だが、彼女の思いは、これでもかというくらいの熱い意志は、彼女の心を焦がすかのように、強く、強く触れている。
「私は一騎さんじゃない。だから、あなたに戻って来いだなんて言えない。それは、あの人の言葉だから、あの人が言うべきことだから。だから!」
 だから、
「私は、こう言う!」
 《コーヴァス》が飛翔する。
 黒き翼を羽ばたかせ、太陽の如き炎と、輝きを放ち、大空を舞う。
 ——数多の仲間と共に。
 そして、暁の言葉が、紡がれる。
 太陽神話を受け継ぐ者と、共に。

「《太陽神翼 コーヴァス》で——」

 私と——



「——ダイレクトアタック——!」



 ——友達になろう——












 ——恋

Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.196 )
日時: 2015/06/29 02:32
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: oLjmDXls)

どうも、第四章を完結させてきたタクです。やったぜ、8話更新だ--------と自慢しに来たのですが、そちらはどうやら此処までに10話連続で更新していたようで。いやはや負けました。本当、御見それしましたとしか言いようがありません。

さて、今回はガイギンガを出すも敗北してしまった一騎に代わり、遂に暁が恋に最終決戦を挑むというものでしたが----------熱い、そして長い、このデュエルシーン。自分には此処まで描写できた試しがありません。
何度も現れる《エバーラスト》に《アポカリプス・デイ》、それに対抗するかのように必死の猛攻を続ける暁の戦闘龍は、まさに彼女の重いが具現化したそれと言っても過言ではありませんでした。熱血主人公が書けないと言っていましたが、恐らく今回の暁、今までで一番熱血主人公やってたと思っています。グッジョブ。
そして、アポロンの神メンタル……じゃなかった神核で(どうしてもデジアド02がチラつく。何故だ)、遂にコルルが真の姿へ成った訳ですね。
しかも、効果が容赦ないと言うか、何と言いますか。強い、それだけに尽きますね。バトルに勝ったら3枚捲ってドラゴンか焼き鳥出して、それらに皆スピードアタッカーとパワーアタッカー与えるって、本当に主人公やってるとしか言いようが。仮にもアポロンに一番近いクリーチャー、弱いわけが無かったわけですね。

さて、こちらも8話連続更新でめっさ疲れています。休日をフルに使いましたからね、本当。疲れました。そちらに食らい付く勢いで意地の更新でしたからね。
近々コメントにでも何でも来てください、メンタルが持ちません。うーん(卒倒)

それでは、また。

結論:やっぱり、モノクロさんには勝てなかったよ、バトラッシュ

デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.197 )
日時: 2015/06/30 03:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 数えてみたら確かに28日から29日の間に十話更新してますね。モノクロが最盛期の時並みの更新速度です。
 つっても、これ全部書き溜めですし、ほとんどが暁vsラヴァーの対戦を分割しているにすぎないので、ストーリーが滅茶苦茶進んでいるわけではないっていう。

 ただ、それでもこの二人の対戦はかなり前からどうするか、対戦内容を練りに練り、出来上がったものに加筆、修正を加え続けてやっとこさ完成した一品ですからね、それなりに自慢の回ではあります。
 ちなみに《バトライ武神》に3D龍解するも、《アポカリプス・デイ》から逆転されそうになる流れは、一騎vsラヴァー戦の《ガイギンガ》登場からの流れと重なるように意識しています。一騎では届かなかったものが、暁には届いた、というような感じでしょうか。
 暁は確かにモノクロが描く主人公の中では一番熱血気質かもしれませんが……うーん、でもどうなんでしょうね。ベクトルこそ違えど、メソロギィで言うひまりとジークの対戦ばりに重要な一戦だと個人的には思っているので、自然と中身は熾烈に、そして激化していくものだと思いますが……それ以前にこの締めくくり方というか、暁のラヴァーに対する意識というか、その辺は熱血というより、モノクロの回りくどさとか分かりにくさが出てしまっているような気も……自分じゃ分かりませんね、結論。
 まあ、事実02意識した展開ですしね、ここまでのAMは。神核は今になると別にいらねんじゃね? と思わないでもないんですが、何の前触れもなくアポロンが出て来るのもどうかなぁ、とも思いますし、やはりパワーアップの伏線は張っておきたかったんですよね。
 ちなみに神核のモデルはデジメンタルですが、コルルから《コーヴァス》への進化バンクのイメージ映像はジョグレス進化のあれみたいな感じで、挿入歌のイメージも「Break up!」ではなく「Beat Hit」っていう。これ聞きながら展開を考え、執筆してました。
 そしてコルルの真の姿であるコーヴァスに、アポロンの力が加わった《太陽神翼 コーヴァス》ですが、これは出しにくすぎる『神話カード』をもっと出しやすくしよう、とか、真の姿を取り戻す前のクリーチャーから進化する進化クリーチャーにしよう、とか、元の『神話カード』の能力も盛り込みつつオリジナル感を出そう、とか考えてたらこうなりました。出しやすさは知りませんが、まあ『神話カード』よりは出しやすいと思います。進化元はクリーチャーの名前指定という《ケングレンオー》システムですが、メソロギィ・ゼロというキーワード能力により、指定された種族、文明のカードのコストさえ場に揃えれば、展開を阻害することなく切り札が出せます。
 ただその性質上、どちらかというと自分が優勢の時に働く能力になることには変わりないので、結局使い方は『神話カード』とそこまで変わらない気が……

 そしてその《コーヴァス》は、言うなればドラゴン・サーガ版《アポロン》のようにしましたが、まあ強いですよね。これについては自分もこのままにしようか、かなり悩みました。
 しかし結局、それなりに重いコストときつい進化元をデメリットとして、バトルする相手がいなければ能力が発動できない、踏み倒しができなければ《アポロン》ほどのフィニッシャーにはなれない、ということで、このままにしましたが。バトルを絡む以上、《シルヴァー・グローリー》などの戦闘無敵系や、スレイヤ—なんかにも弱いですしね。
 一応、バルガの流れを汲む山札からの踏み倒し能力や、味方にスピードアタッカーを付加する能力で《アポロン》を再現しつつ、《コーヴァス》独自の要素としてバトルを盛り込んで色々考えた結果、こうなったのですが。
 ちなみに《コーヴァス》の能力は、分かりやすいところでは《ジャックポット・バトライザー》、分かりにくいところでは《熱血星龍 ガイギンガ》なんかをイメージしています。前者は踏み倒し、後者はパンプアップですね。《バトライ武神》で《ジャックポット》が出たり、一騎が《ガイギンガ》へ龍解させたりしていたのは、地味に今回までの伏線だったり。
 なお焼き鳥は実際の対戦ではまともな戦力にならないのでまず出ない模様。今回はお情けみたいな形で《コッコ・ルピア》を出しましたが。連ドラのイメージが強い《アポロン》ですが、あいつの本来のメイン種族はファイアー・バードですからね。

 そして自分勝手かつ自己満足に語りますが、《コーヴァス》という名前は、流石にもう分かる方もいるでしょうが、烏座のことです。
 コルルという名前自体は、このコーヴァスという名前をもじっただけで、こっちが本当の名前です。
 そんでもってコーヴァスのモデルは八咫烏。日本神話では太陽の化身であり、烏座の神話としてもアポロンの使いの鳥なので、彼の配下にするならこれっきゃないと思いましたね(なお実際の神話では烏のせいでアポロンが憤激して追放された模様)。
 ただそのまま烏座モチーフであることを明かすのも面白くないと思って最初は伏せていたんですが、タクさんにいきなりコルルのモデルが烏座であることを見抜かれた時は流石にビビりましたね。コルルという名前は烏座あんまり関係なく、かなりもじってつけたはずだったので。

 さて、そちらへのコメントについてですが……どうも行き違いのような形になったみたいですね。そうでなくても更新中も競い合うみたいに更新してましたしね……
 なんか、こっちが書き溜めてたのをちょこちょこ修正して投稿しつつ、半ば片手間にやっていただけにちょっと心苦しいというか、申し訳ないですね……

 ともあれ、コメントありがとうございました。
 ここからがAMも本格的に始動していくはずなので、今後もよろしくお願いいたします。
 ではでは。

53話/烏ヶ森編 20話 「ユースティティア」 ( No.198 )
日時: 2015/07/12 17:27
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 燃え盛る炎。
 本来、自分が忌避するはずの大火。
 しかし今この時に見たその火は、あの時のような不安、恐怖、絶望を感じさせなかった。
 むしろ、輝いている。
 道を照らして、指し示す標のように。
 燦々と煌めく、太陽のように。
 光り輝いている。
 それはただの火ではなく。
 熱いほどに、あたたかい火だった。
 少女は今、その太陽に触れた。
 そして、



 少女の何かが、変わった——



「……最初に君と対戦した時はね、普通に楽しかったよ」
 まだなにも分かっていなかった頃、最初に対戦したあの時のことを、暁は回想する。
 ラヴァーという少女も、日向恋という少女も、なにも分からなかったあの時。その時の暁の心は、純粋に彼女との対戦を楽しんでいた。
「でも、その対戦で負けて、すごく悔しくて、次こそは絶対勝つぞ! ってずっと思ってた。君に勝つことが私の目的になってたはずなんだけど……一騎さんと話して、自分と向き合って、気づいたよ」
 自分の本当の気持ちに、と。
 暁は、彼女に語りかける。
「私は君と仲間に——ううん、それは私らしい言葉じゃないな。だから、えーっと……そう。友達になれるんじゃないかって、思ってたんだよ」
 あれだけ対抗意識を燃やして、噛みつくように勝つことばかりを考えていた者の台詞とは思えない言葉が、暁の口から出て来る。
 だがそれは彼女の本心。一直線になりすぎて、彼女のことだけを見ていたせいで、気づけなかった本当の気持ちだ。
「だって、君とのデュエルはこんなに楽しいんだもん。次にどんなカードを引けるのかわくわくして、次にどんなカードを使われるのかはらはらして、次にどんな手を使えば逆転できるのかどきどきして……こんな熱い気持ちにしてくれる君だもん、友達になれないはずがないよ」
 暁は、スッと手を差し伸べる。
「私は空城暁。君の名前は?」
「……恋」
 少女は、言葉を紡ぐ。
 自分の本当の名前を、かつて呼ばれていた、その名を。
 彼女自身の口で、名乗る。
「日向……恋……」
 その名を聞き、暁は笑顔を見せる。

「これからよろしくね、恋っ!」

 太陽のような、満面の笑みを。
 慈愛を失った少女は、その太陽に、手を伸ばす。

「……あきら——」



 ——ドンッ



 鈍い音が響いた。
「……え?」
 焦げたような臭いが鼻を刺す。
 彼女の、恋の髪が、宙を舞う。
 その後ろで、黒煙が立ち上る。
 そして、その小さな身体が、ぐらりと揺れる。。
 暁の手を取ることはなく、彼女を押し出す運動エネルギーの勢いのままに、彼女は暁の胸に倒れ込む。



 彼女は——動かなかった。



「——恋!」
 焦燥感の募った叫びとともに、瞬く間に一騎がが駆け寄ってきた。その後に、他の者たちも続く。
「恋! 恋! しっかりしろ! 恋!」
「……つきにぃ……」
 一騎は彼女を揺さぶる。彼女の意識をとどめておくかのように。
 恋は虚ろな目で一騎を見つめ返す。
 その奥には確かな光が宿っていた。昏いあの光ではない、彼女の光が。
 しかしその光はとても小さく、微かで、今にも消えてしまいそうだ。
「……あいつらが……来たんだ……」
「あいつら……?」
 恋はとても、とても小さな動きで、指差す。
 そこには、二つの人影があった。

「——よくやった、チャリオット」
「お褒めに与り光栄の至りでございます——ユースティティア様」

 二つの人影は、こちらに近づいて行く。それにつれ、少しずつその姿が明らかとなる。
 赤い総髪を流した、中性的な顔立ち。ベージュ色で、軍服のような意匠。両腕は機械のようなもので覆われており、右腕から、黒煙を吹いていた。
 白い、真っ白なローブのような衣服に身を包んでいる。その眼は、人を裁く者の眼。彼は絶対的な眼で、恋を射抜くように見下ろす。
「役立たずのラヴァー。失敗と失態を繰り返すのみならず、我らすらも裏切るか——裏切り者を野放しにすることは、我が正義に反する。故に、我が正義に則って、貴様を裁いた」
「……ユース……ティティア……」
 恋は力ない瞳で見つめ、かすれた声で、その者を——ユースティティアを呼ぶ。
 だが、その声は、ユースティティアには届かない。
「裏切り者に呼ばれる名は持ち合わせていない。貴様は今この時点で我らの敵。我ら敵は、我が正義によって裁かれる定め——その結果が、今だ」
 一切合切、恋の言葉を切り捨てたユースティティア。
 彼女から言葉はなかった。もう、言葉を紡げなくなってしまったのか。
 だがそんなユースティティアに、立ち向かう者がいた。
 スクッと、彼は立ち上がる。
 剣崎一騎が、ユースティティアへと迫る。
「お前が……!」
「……なんだ、人間。今は貴様に用はない」
「お前が! 恋を!」
 突如。
 一騎のデッキから、一本の剣が飛び出した。
 その剣は一直線に、ユースティティアへと飛んでいく——
「……ふん、所詮は人間の児戯か」
 ——が、その剣は、ユースティティアが——“握り潰した”。
 刀身を掴み、粉々に砕いた。
 刃に触れた手には、傷一つ残っていない。
「本来ならば勝利を約束する聖剣でも、貴様らのような惰弱な人間が使えばこの程度の鈍にしかならない……こんな人間がクリーチャーたちを使役するなど、真に信じ難い事実だ」
 掌から零れ落ちる剣の破片を見つつ、ユースティティアは嘆くように言う。
 そして、糾弾するような、非難するような、侮蔑するような眼を、向ける。
 しかしその眼に怯む一騎ではない。逆に、猛々しい眼光で、睨み返す。
「……ほぅ、我とやり合う気か」
 ユースティティアはそこで、珍しそうな表情を見せた。
「ラヴァーとは違うな……惰弱であれど、我に立ち向かう“蛮勇”を持つか。身の程を弁えないと言えばそれまでだが、その勇猛さは悪くないぞ、人間」
 ほんの少しだけ微笑みを——称賛するようで、それでいて嘲笑するような微笑みを見せ、ユースティティアは一騎を見据える。
 一人の戦士を見る目で、彼を見据える。
「いいだろう。一度、貴様に我が正義を刻み込もうぞ。たった一人で我に立ち向かったことを後悔するがいい」
「一騎さんだけじゃないよ」
 スッと。
 一騎の横に、暁が進み出た。
「怒ってるのは一騎さんだけじゃないんだ……私も戦う」
「暁さん……」
 暁の手には既にデッキが握られている。そして、彼女の眼も、非常に険しい。
 だがしかし、ユースティティアは微塵も動じない。どころか、値踏みするように、暁を見つめている。
「……貴様の意志、そしてラヴァーを下した力は、“それなりに”認めるところだが、しかし我は、我に斬りかかったこの男を裁くと決めた。娘、貴様を相手にする暇はない」
 そして、横目で隣に侍るように立つ青年を流し見た。
「チャリオット」
「何で御座いましょうか、ユースティティア様」
「娘の“処理”は貴様に任せる」
「御意」
 チャリオットと呼ばれた青年も、前に進み出る。
「さぁ……始めるか。惰弱な人間どもよ」

 そして——神話空間が、開いた。


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