二次創作小説(紙ほか)

■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
 入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)

デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

102話「柚の憂い——市内にて」 ( No.314 )
日時: 2016/02/15 14:27
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)

 電車に揺られて数十分。
 駅を降りると、人込みが出迎える。日曜日という人類の休日に加え、今日はこの場所でなにかしらのイベントが催されるので、いつも以上に人が多い。
 雑踏をしばらく歩くと、黒髪をショートカットにした少女を見つける。デニムのショートパンツと薄手のパーカーにスニーカー。涼しげで動きやすそうな格好の少女だ。
 少女はしばらく壁にもたれていたが、雑踏の中になにかを見つけたのか、ハッと顔を上げて手を振る。
「恋! ここだよ!」
 その声に導かれて、雑踏の中から小柄な少女が出て来た。フリルのついた白いサマードレスに、大きなつばの帽子をかぶった少女。色白で艶やかな肌と髪の、人形のような姿をしている。
 少女はとてとてと小走りに駆け寄った。
「……おまたせ……あきら」
「そんなに待ってないよ。私もさっき来たとこだし」
 黒髪の少女は笑いながら、小柄な少女を上から下まで、それとなく眺める。
「その帽子、可愛いね」
「つきにぃがかぶってけって言ってた……今日は暑いからって」
「あー、確かに。私も帽子かぶってけばよかったかなぁ。うちのお兄ちゃんはそーゆーこと気づかえないから、なにも言ってくれなかったし」
 兄に不満を漏らす。当人が聞けば、確実に理不尽だと憤慨するような内容だが、本人がいなければ関係はない。
「そういえば恋って、服とかどこで買ってるの?」
「……さぁ」
「さぁって……」
「気づけば家にある……たぶんつきにぃ」
「あ、そうなんだ。一騎さん、意外と女の子の服選ぶセンスあるんだね」
 確かに、今彼女が着ている服も、よく似合っている。妙に感心してしまった。
 同時に、ふと思いついたことを口にするが、
「今度、一緒に服とか買いに行かない?」
「別にいらない……着れたらなんでもいいし……」
 即座に断られてしまった。
「そ、そっか……」
「それよりも……そろそろ、いこう……」
「う、うん。そだね」
 そう言って、二人は歩き出し、雑踏の中へと進んでいく。
 これほどの人込みだ。下手をすれば見失ってしまう。自分たちも早く動き出さなければいけない。
「柚ちゃん、カイ。ほら、早く早く」
「ま、まってください、ぶちょーさん……人が……」
「クソッ、なんで俺まで……」
 柚、浬の二人を従えて、沙弓も雑踏へと踏み込む。そして、先々へと進んでいく暁と恋を追っていく。
 有言実行。前日の宣言通り、この日、沙弓らは暁と恋を尾行していた。尾行なので当然、二人は遊戯部の面々がここに来ていることを知らない。
 人込みという強敵に抗いながら、沙弓たちは暁と恋を見失わないように進む。
「今日はマジコマのイベントがある日。イベント名は忘れたけど、確か、関係者とのデュエマに勝ったらプロモカードが貰える、とかだったかしら」
「ここまで来てまだデュエマかよ……」
 本当にそれしかすることないのな、と呆れたように言う浬。
 しばらく人込みと徹底抗戦していると、やがて一つの建物へと入る。そこで人込みも一気に途切れた。
「あ、カイ、ちょっとこっち来なさいっ」
「は? な、なんだよ」
 急に沙弓が鋭い声を上げたので、浬は素早く沙弓のいる物陰に入る。後から柚も続いた。
「どうしたんだよ、急に」
「あなた、背が高いから目立つのよ。見つかったらどうするのよ」
「……なんで俺を連れてきたんだよ」
「見つかったら全部あなたのせいだからね」
「もう帰っていいか? 俺がここにいることのメリットがないどころか、デメリットにしかなってないぞ」
「あ、あの……お二人とも、あきらちゃんと、ひゅうがさん、いっちゃいますよ……?」
 柚に指摘されて、我に返る二人。再び尾行を再開する。
 暁と恋は会場まで歩くが、その入口付近でしばらく立ち止まっていた。
「どうしたのかしら?」
「恐らく、まだ時間じゃないんだろう……イベント開始は二時から。あと三十分ほど時間がある」
 携帯でイベント情報を検索した浬が言う。
 三十分。わりと長い時間だ。
「この余った時間、あの子たちはどうするのかしら」
「……移動したぞ。どこへ行く気だ……?」
「あの方向……ショップかしらね。暇を持て余した時のグッズ物色は基本よね」
「そ、そうなんですか……?」
「間違ってるとは言わんが、あまり鵜呑みにしない方がいいぞ」
「さて、私たちも動きましょう」
 物陰に隠れながら、そそくさと三人は尾行を続ける。
 そして、沙弓の予想通り、二人はグッズ販売店へと入っていった。
「ここ……マジコマの関連商品が多いし、大抵のキャンペーンはやってるから……おすすめ」
「へぇ、そうなんだ。市内に出ても、あんまこっちの方まで来ないからなぁ。知らなかったよ」
「少し前には、伊勢誘のサイン会もやってた……あとは、こっち」
「わわっ、ちょっと恋、あんま引っ張んないでよっ」
 その細腕のどこにそんな力があるのか、恋は暁をずるずると引っ張っていき、店の奥へと消えていく。
「強引だな。どうするんだ?」
「とりあえず追跡続行よ。店内は広いし遮蔽物が多いから身は隠しやすいけど、動きにくいから逃げづらい。十分に注意して尾行するわよ」
「脳みそがだんだん戦略ゲーチックになってきたな……」
 言ってることは間違っていないので大人しく従うが、そののめり込み度合いに呆れる顔を見せる浬。
 同時に、大人しく従ってしまっている自分に対して、行き場のない悔しさも感じていることだろう。
「マジコマはデュエマ関連商品が多い……この店もそう。商品の取り揃えは随一……カードショップも併設してる謎施設だけど、シングルが置いてるのはいい……」
「本当だ、知らなかったよ……あ、このスリーブ可愛い」
「こっちのストレージはすごい……発売して一週間で完売して、再販した……今じゃかなり落ち着いてるけど」
「見た感じただの箱なのに、そんなにみんな欲しがるんだ? 私にはよく分かんないなぁ」
「私も完売直前に買った……」
「あ、そうなんだ……ごめん」
「別に……」
 それよりもこっち、とまた恋が暁の腕を引き、進んでいく。
「デュエマプレイヤーがストレージをただの箱とか言うなよ……」
「その辺あまり執着しない子だからね、暁は。良くも悪くも自分の技術を磨いてるのよ」
「そんな求道者的思考の奴でもないと思うが……」
「あ、二人とも。ターゲットが次の棚に移動したわ。こっちも行きましょう」
「ターゲットってな……まあいいが」
 そろそろ他の客の視線が痛くなってきたが、仕方なく沙弓の後に続く。
 暁と恋は、目的なくゆらゆらと店内を巡る。

「スリーブはカード保護の目的もあるけど、デザインが固定されているカードの中で、唯一自分が手を加えられるところ……自分で装飾して、個性を出せる……」
「んー、自分で唯一オシャレできる、ってこと?」
「だいたいそんな感じ……」
「それだったら、私もちょっと買ってみたいかも。あんまお金ないけど」
「私のおすすめは……あれ」
「へー、って高いよ! すぐには買えないなぁ」

「私のデッキも、もう少し改造した方がいいと思うんだよね。《コーヴァス》のこと抜きにしても、序盤の防御がやっぱり薄いから」
「あきらのデッキなら、トリガー積むしかないと思う……マナ武装の関係上、他文明のトリガーをタッチで積めないのは、わりと痛い……」
「だよねぇ。《ガイゲンスイ》や《ガイムソウ》も使いたいし、火文明のトリガーだけだと、対処できるクリーチャーが限られるから、恋みたいなデッキが相手だときついよ」
「だったら、あれとか……《メガ・ブレード・ドラゴン》……ブロッカーを一掃できる」
「わ、本当だ。こんなカードあったんだねぇ……ブロッカー破壊も《GENJI》にばかり任せてられないし、こういうのいいなぁ」
「買ってく……?」
「だからお金あんまりないんだって……」

「カード一枚なのに、こんなに高いんだね……」
「モードチェンジとか、ドラマティックカードとか……ホイルカードはたいてい高い……黒箱の封入率はコレクター泣かせ……ボーラス卿や先生のためにみんな泣いてる……」
「こんなに高いカードは買えないなぁ」
「……あきら、シングルで買わないの……?」
「汐先輩のとこでならたまに買うけど、あそこ安いし、おまけしてくれるから、こんなに高いことはないかな」
「……そんな店があるんだ……」
「うん。今度一緒に行こうよ」
「……うん。行く……」

「……あきら」
「なに?」
「楽しい……?」
「うん、楽しいよ」
「本当に……?」
「本当だよ。今まで恋のことって全然知らなかったけど、こうして一緒に出かけたり、話したり、遊ぶようになってから、少しずつ恋のことが分かってきて、私は嬉しい」
「……よかった」
「そんなこと心配しなくてもいいのに。それよりもさ、次はどこ見るの?」

 彼女が笑う。
 嘘偽りなく、心の底から楽しんでいる。彼女の喜びが、楽しさが、すべて伝わってくる。親友の幸せが、自分にも届く。
 なのに、なぜだろう。
 胸が苦しい。内側からざわざわとなにかが騒いで、不安にさせる。落ち着かない。
 もう、我慢が利かなくなってしまう。
「あきら……こっち……」
「今度はなに?」
「書籍のコーナー……スピンオフ作品もファンブックも全部揃ってる……」
「わ、わっ。だから引っ張んないでってばー」
 またも恋に引っ張られる暁。
 自分たちは、背後からそれをずっと見ている。
「……なんやかんや楽しそうにしてんな、あいつ」
「そうね。演技ができるような子じゃないし、本心から楽しんでるわね。ちょっと違和感あるけど」
「違和感? どういうことだ」
「んー、私も感覚的に感じてることだから、まだなんとも言えないわね。でも、暁は日向さんとずっと一緒で、どのくらい楽しいのかしら、って」
「……わけが分からん」
「ま、人の心が理解できない人でなしで根暗なカイには分からないでしょうね」
「なんで俺は今日こんなにも猛烈なバッシングを受けているんだ?」
「私にもよく分からないけど、暁をよく知ってる柚ちゃんなら、なにか感じるところがあるんじゃない? ねぇ、柚ちゃ——」
 沙弓の言葉が途切れる。
 彼女はキョロキョロと周囲を見回していた。
「どうした?」
「……柚ちゃんは?」
「は? そこにいるんじゃ……いねぇ」
 気づけば、そこに柚の姿はなかった。今までずっと一緒にいたはずだが、影も形もない。
 どこかではぐれたのだろうか。目先の暁と恋に集中しすぎて、彼女のことを置いて行ってしまったのだろうか。
 いや、そうではない。ショップの中まではそこまで込み合っていない。軽く近くを見て回るが、それらしき姿はない。沙弓が探しに行ったが、化粧室にもいなかった。
「どうだ?」
「どこにもいないわね」
「どこ行ったんだ、霞……ついでにあいつらも見失ったな。それに、もうイベントの時間だ」
 尾行はここまでだな、と浬が言った。
 その通りだ。追跡する相手も、追跡する理由も、いなくなってしまったのだから、これ以上尾行を続ける意味はない。
 沙弓は息を吐く。自分は正しかったのかと。
「柚ちゃん……」

103話「柚の憂い——屋敷にて」 ( No.315 )
日時: 2016/02/15 14:34
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)

「はぁ……」
 柚は溜息を吐く。自分に対する呆れ、嫌悪感、後悔……様々な負の念が渦巻いて出て来る。
 思わず、走り出してしまった。いてもたってもいられなくて、家まで帰ってきてしまった。
「結局、逃げちゃいました……」
 我慢できなかった。
 見ていられなかった。
 楽しそうな彼女を見ると、自分も楽しくなる。彼女の嬉しさは、自分の嬉しさだ。
 だが、楽しさを、嬉しさを、幸せを享受する彼女の隣には、違う少女がいる。
 そこに、自分はいないのだ。
 今までずっと、彼女の隣には自分がいた。それが心地よく、幸せだった。
 しかし、もう彼女の隣に自分の居場所はない。
 そのことを、思い知らされているようで、耐えられなくなった。
 だから、逃げてしまった。
「わたしは、弱いままです。ずっと。ずっと、いつまでも——」
「柚」
「ひゃぅ……っ!」
 襖越しに声をかけられる。厳かだが、その裏には気遣うような声色が含まれている、落ち着く声。
 柚は、ゆっくりと襖を開く。するとそこには、
「お、おにいさん……」
 と、そこには柚の義兄、橙がいた。
「ど、どうしたんですか? わざわざ部屋までくるなんて、わたしに、なにかご用事ですか?」
「用事と言うほどでもないが、やけに慌ただしく帰ってきたと思ったら、すぐに部屋に入り、挙句は俺が呼びかけても反応がなかっただろう。少し心配になってな」
「そ、そうだったんですか……」
 全然気づかなかった。
 橙は鋭い眼差しで柚を見つめると、おもむろに口を開いた。
「なにか悩みか?」
「え? えっと、いえ、あの、その……」
 なんと言えばいいのだろうか。この胸のざわつきを。彼女の幸せを、同じように享受できないこの感情を。
 それとも、自分が乗り越えるべきは、もっと別のことなのだろうか。
 少し考えて、柚はゆっくりと言葉を紡ぐ。
「……おにいさん」
「なんだ」
「わたしは、どうして弱いままなんでしょう……」
「……どういうことだ?」
「わたしも、もっと強くなりたいんです。おにいさんや、あきらちゃん。ぶちょーさんやかいりくんたちのように……でも……」
 強くなれない。
 自分の弱さに打ち勝てない。
 今日も己の弱さが、逃避という選択肢を選んでしまった。
 だから、強くなりたい。
 しかし、弱い自分は強さを理解できていない。強くなるためには、強さを知らなくてはならない。これは、それを知り合いがための問いであった。
 橙はしばし考え込むようにして黙する。そして、やがて開口した。
「俺も言うほど自分が強い人間だとは思っていないんだがな。それに、お前の言う強さ、お前が求める強さがなんなのか。俺にはそれが分からない。お前自身も、恐らくよく分かっていないだろう」
「は、はひ……そうかも、しれません……」
「強さの形は人それぞれだ。だがそれでも、それを踏まえたうえで、俺がお前に対していつも思っていることを、一つだけ言ってやろう」
 一拍おいて、橙は続けた。
「お前は、もっと我儘になってもいいんだ」
「え? わ、わがままに、ですか……?」
 思わぬ言葉に、目をぱちくりさせる柚。
 我儘になること。それが、強さにつながるのだろうか。想像もつかない。
「我を通せ、と言うべきか。自分がしたいと思ったことを、もっとやってもいいんだ」
 お前を束縛していた俺が言うのは不適格だがな、と橙は自嘲気味に言う。
「お前はよく、自分のしたいことを犠牲にして、他人に譲る」
「そ、それは、そうですけど……」
「言っておくが、自分の意思を犠牲にして他人に譲歩することは、美徳ではないからな」
「……っ」
 心臓を鷲掴みにされたようだった。
 核心を突かれた、と言うべきか。自分の無意識の中での行いを、すべて否定されたかのようだった。
「過ぎたるは及ばざるが如し。お前の譲り癖は度が過ぎている。他人を立てたがる性質なのか、我を出すのが怖いのかは分からないが、そうやって自分を出さず、他人に譲ってばかりのお前は、俺からすれば“悪”とさえ言える」
「あ、悪……ですか……」
 悪、と橙は言った。
 正義とは違う、善悪の二極で示されるもの。
 譲ることが悪なのであれば、自分はその悪を内包しているということになる。
 誰がどうあっても、千人が千人、忌み嫌う悪。
 自分は、悪人なのだろうか。
「自己犠牲は美徳ではない。逃避と萎縮だ。そして度が過ぎれば、悪になる。自分自身を、己の意志を無意識のうちに殺す、恐ろしい悪だ」
 橙はさらに続ける。
 逃避、萎縮。
 今までの、そして今日の、自分そのものだ。
 いずれ、自分は殺されるのだろうか。
 自分自身という、悪に。
 言葉を失った柚が呆然としていると、ふと橙が目を伏せる。
「すまん。言いすぎた」
「い、いえ……その……」
 言葉が続かない。橙の言葉は、あまりにも深く突き刺さりすぎた。
 反論の余地がない。反駁しようがない。それほどに、彼の言葉は的確に今の柚を表していた。
 今まで自分が気づけなかった面が露呈して、惰弱で醜悪な面が晒される。そして、気づかされた。
 自分がどれだけ醜く弱い人間であるかを。
 自分が思う以上に、思い知らされた。
「……これだけ言っておいてなんだが、抱え込みすぎるなよ。いや、抱え込んでもいいが、ちゃんと消化しろ。少しずつでいい。一つずつ、お前の中で答えを見つけていくんだ。誰しもそんな弱い面、悪い面はある。大事なことは、それをどうやって自分の中で折り合い付けるかだ。お前はまだ若い。あまり深刻に考えるな」
 顔が蒼白になりつつある柚を気遣ってか、橙はつとめて穏やかに言う。
「最後にもう一つ、言っておくか」
「もう一つ、ですか?」
「さっきのは、お前の弱い部分を指摘しただけだからな。強さについての言及ではない。だから、俺の思う強さについて、一つだけ言っておく」
 また、一拍おいた。
 しかし今度は、先ほどよりも力強い声で。それが、自分の中で絶対の信条であるかのように、橙は告げた。

「譲れないものは、絶対に譲るな」

「ゆずれない、もの……?」
 そう、彼は言った。
「お前にも、一つくらいはあるだろう。自分の身をすべて投げ出してでも、守り抜きたいものが。それは富であったり、名誉であったり、友であったり、人によって様々だが、人が生き、そして高みへと目指すうえでは、必ず持つことになるものだ」
 誰もが持つ、なにか。
 酷く曖昧だが、はっきりと、それは存在している。
「譲れないものは絶対に譲らない。その意志があるから、譲れないほど大切なものがあるから、人は強くなれる。譲りたくないから、強くなる」
 少なくとも俺はそう思っている、と橙は締め括った。
 譲れないものがあるから、人は強くなれる。
 自分が強いと思う人たちには皆、譲れないものがあるのだろうか。
 少しだけ、希望の芽が見えた。
「おにいさん……ありがとうございます」
「俺みたいな奴の言葉で良ければ、いくらでも聞かせてやる」
 もう大丈夫そうか? と問われたので、はい、だいじょうぶです、と答えると、彼は安心したように去っていった。
 譲れないもの。
 なにがあっても、自分の意志を貫きたいと思えるもの。
 それが、強くなるために必要なものだという。
 ふっ、と。
 言葉が零れ落ちる。

「わたしにとっての、ゆずれないもの……」

 それは、やっぱり——



「柚ちゃん、きっと日向さんに嫉妬してるのよね」
「嫉妬? 霞がか?」
 沙弓と浬は、リビングで言葉を交わす。
 あの後、結局柚の姿は見つからず、しばらくしてメールが来た。それのメールによると、先に帰ったらしい。
 それを見て、沙弓は今日の尾行は失敗だったかもしれないと、少しばかり後悔した。彼女のためにと思ったことだが、逆に彼女を追いつめてしまったようだ。
「嫉妬なんてする奴には見えないが……」
「これだからカイは。女心や乙女心どころか、人の心ってものが分かってないわね。あなたは機械なのかしら? メカニカルなハートの持ち主?」
「生憎ながら心理学はこれっぽっちだ。女心も乙女心も知らん」
「人は見かけによらないなんて、使い古された言葉だけど、その通りよ。嫉妬心は西洋じゃ人を罪に導く罪源とさ言われていたほど、ありふれている感情なの。柚ちゃんみたいないい子でも、多少なりとも嫉妬心は持ってる。まあ、あの子の場合はやきもちって感じだから、可愛いけど」
「字面の問題か? しかしそう言われると、納得できなくもないが……」
「やきもち?」
「普遍的な感情って意味の方だ」
「あらそう。ま、柚ちゃんは暁が大好きだからね。ちょっと依存しがちにも見えるけど、今は日向さんが暁を独占状態だから、寂しいんでしょう」
 寂しさ。孤独。
 時として人を殺す凶器にさえなり得る狂気。精神を摩耗させ、肉体を蝕み、心身共にゆっくりと死に追いやる負の感情。
 今、彼女はその寂寥に襲われている。嫉妬心と孤独の二重苦に苛まれている。
「流石に放っておけないから、たまに慰めてあげてるけど、私が胸を貸したくらいじゃ、あの子の辛さは解消されないわ」
「確かに、根本的な解決にはなっていないな」
「私もなんとかしようと色々考えてはいるんだけど、これはどうしても、あの子自身で解決しなきゃいけないと思うの」
 だからこその、今日の尾行であったのだが、彼女はまだ踏み出せていないようだ。
 自分が手にしたいこと、自分が求めるものを、追えていない。いまだに足踏みをして、とどまっている。
「きっかけはどうにかして作れるけど、問題はあの子自身が動けるかどうか」
「霞は引っ込み思案だからな。難しそうではあるな」
「だから、起爆剤が欲しいのよね。あの子を突き動かす、なにかが」
 今日はそれに失敗した。嫉妬心と寂寥感を煽るだけで、起爆しなかった。
 また、考えなくてはいけない。
 それとも、もう自分たちは手を出すべきではないのだろうか。
 彼女自身が次に進むために、彼女自身が一歩を踏み出すために、彼女自身にすべてを委ねるべきなのだろうか。
 時間が解決することなのか。それとも、もう既に始まっているのだろうか。
 ひょっとすると、彼女が動くのは、もうすぐそこにある未来なのかもしれない——

104話「譲れないもの」 ( No.316 )
日時: 2016/02/17 00:47
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)

「前々から行こう行こうと思って結局行けなかったんだけど、今回はスプリング・フォレストの奥を調査しようと思うんだ」
 とリュンに言われて、スプリング・フォレストの奥地に連れてこられた遊戯部の面々+α。
 ただし今回は、+αが三名になっていた。
「わぁ、一騎さん! お久し振りです!」
「久し振り、暁さん。いつも恋をありがとう」
「いえいえそんな。とゆーか、なんで今日はこっち来たんですか?」
「大した理由はないよ。今日は部活が休みになったから、少し恋の様子を見ておこうと思って。それと」
 一騎は流し目で、いつもは+αに含まれない彼女を見遣る。
「氷麗さんが、なにか用事があったみたいだから、ついでにね」
 視線の先にいたのは、氷麗だった。彼女は基本的に烏ヶ森の方で動いているので、暁たちと行動することは滅多にない。リュンとはよく情報交換などで交流しているようだが、それも暁たちがいないところで行うことがほとんどだ。
「それなのに、わざわざ氷麗さんまで来るなんて……なにかありました?」
「えっとですね、リュンさん。ちょっとお話が……奥の方で、いいですか?」
「? 別に僕は構いませんが、急ぎの用とかですか?」
「えぇ、まあ……」
 なにか重要なことなのだろうか。氷麗は暁たちを気にするようにちらちらと視線を向け、言葉もかなり濁している。
 それを察したリュンは疑問符を浮かべながらだが、氷麗に引かれるままに森の奥へと消えていく。
 その前に、とリュンは暁たちに言った。
「えーっと、とりあえず、適当にその辺を調べてもらえると助かるかな。それらしい建造物とか、遺跡とか、祠とかあったら、後で教えてね」
「適当すぎるだろ」
「ここは僕もほとんど踏み入ったことがないから、よく分からないんだよね。だからこその今回の調査なんだけど」
「私たちだけに任せてもいいのかしら?」
「今の君たちなら、大抵のことならなにがあっても大丈夫だと思うよ。継承神話の力もあるしね」
 ピクリ、とその言葉に、柚だけが反応する。
「それじゃあ、よろしく」
「失礼しますね」
 一通り言うべきことを言うと、リュンは今度こそ、氷麗と共に森へと消えていく。
「さて、リュンが役に立つのか立ってないのかよく分からないところで、どうしましょうかね」
「リュンすらよく分かってない場所だろ? できるだけ効率的に調べたいな」
「俺としては皆で固まってた方がいいと思うけど、できるだけ短時間で広い範囲を動くなら、二人のペアを三組作った方がいいかな」
 暁、浬、沙弓、柚に、恋と一騎を合わせてこの場には六人。
 二人でペアを作り、三組に分かれて行動するという案は、最低限の安全性の保持と、広範囲を捜索する際の効率性を考えたら、最良の選択であると言えるだろう。
 しかし、この場にいるメンバーのことを考慮すれば、火種ともなりかねない。
 一騎の提案に真っ先に飛びついたのは、恋だった。
「じゃあ……あきらと」
「え? わ、私? また?」
「ダメ……?」
 恋は素早く暁の腕を取る。
 今までもこのようにペアに分かれて行動することは多々あったが、そのたびに暁と恋は一緒に行動している。恋が毎回、暁を引っ張っていくのだ。
 そろそろ暁もその頻度が気になりだしたのか、少しばかりの抵抗を見せる。
「いや、ダメっていうか、たまには他の人と組みたいなーっていうか、ほら、一騎さんもいるし。恋、一騎さんとは?」
「つきにぃは……別にいい」
 恋が相手ではあまり強く出れず、一騎を引き合いに出してみるも、即座に切り捨てられる。向こうで彼が引きつった笑いを浮かべていた。
 暁の腕から離れようとしない恋。無理やり振り払うわけにもいかず、暁は困り気な表情を見せていた。
 それを見つめる柚の眼は、揺れ動いていた。
 半歩、足が前に出ているが、それ以上先には進まない。
「…………」
 迷い、惑い。
 いつもと同じだ。
 ここで一歩が踏み出せない。
 頭に中で、なにかが蠢く。
 後悔。惰弱で醜悪な自分自身という負の存在が、その思念が、ぐるぐると渦巻いて、大きくなる。
 巨大な負の念は凶器だった。その渦中にいる自分は、少しずつ蝕まれ、やがては殺されるのだろう。
 ——自分自身の弱さに。
 その、ビジョンが見えた。
(わたしは、やっぱり——)
 半歩だけ出た足を引っ込めようとした、その時。
 ポンッ、と柚の肩に手が置かれた。
「っ……ぶちょーさん……」
 彼女はなにも言わなかった。ただ、こちらを見つめていただけだ。穏やかで、優しく見守るような目。
 それだけだが、彼女の言いたいことは分かった、気がする。
 軽く背中を押された。
 また、少し戸惑う。しかし、踏みとどまらなかった。
 そのまま、一歩を踏み出す。
「あ、あのっ」
「……なに……?」
「ゆず……?」
 二人がこちらを向く。意外そうな暁の表情が見えた。まさか、ここで柚が出て来るとは思わなかったのだろうか。
 自分でもそう思う。自分がこの一歩を踏み出したことは、自分でも驚きだ。
 だが驚いてばかりではいられない。暁の横で、無表情なままこちらを見つめる彼女がいる。
「えっと、その、ひゅうがさん……そのくらいにしては、どうでしょうか? あきらちゃんも困ってますし……」
 少し、気圧されてしまった。
 ここぞというところで強気になれない自分を嘆きたくなるが、ここで嘆いていては、本当に今までと同じになってしまう。
 精一杯の勇気を振り絞って、柚は気丈に振舞う。
「……困ってない」
 対して恋は、気後れも萎縮も、微塵も感じさせない。単純な意志の強さでは、柚がスポンジなら、彼女は超合金の如き強固さを持っている。
 その意志が、果たして正しいのかどうかは、別の話であるが。
「ねぇ……あきら?」
「え!? えーっと、どうだろう……」
 露骨に目を逸らす暁。恋は邪険にできないが、柚の言うことを否定もできず、本当に困っていた。
 柚はそこで、さらに一歩を踏み出す。
「ひゅうがさんは……ちょっと、自分勝手、です……」
「……喧嘩売ってる……?」
 恋の目が、さらに鋭くなったような気がした。
 暁に向けられていた関心が、ベクトルを変え、敵意という形で柚へと向けられる。今までよりもさらにはっきりした攻撃の意志が、目で伝わってくる。柚のことを敵とみなしたかのような、そんな目だ。
 その変化に柚は、槍を突きつけられたような気分になり、焦りが募る。
「そ、そんなつもりじゃ……でも……」
 言葉が上手く続かない。しかし、それでも、目で対抗した。
 無感動で、今にも射殺してきそうなほど、冷たい目。見られるだけで萎縮してしまいそうなほど怖いが、その恐れを断ち切って、柚は睨み返す。
 見つめあう二人。その間には、猛烈な火花がスパークしている。火種を投げ込めば、すぐに爆発してしまうほど大きな火花が。
「……文句があるなら、かかってくればいい……叩きつぶすだけだけど……」
「おい、恋。ちょっと言い過ぎ——」
「つきにぃは黙って……」
 流石にこの剣呑な雰囲気をまずいと判断したのか、一騎が恋の肩を掴んで止めようとするも、その手は即座に払い落とされる。
 一旦、暁の腕からも離れ、恋は柚へと近づいていく。柚よりもさらに小柄な恋だが、威圧感は尋常ではない。
「前から思ってた……少し、めざわり……あと、あざとい……いっぺん、死んでみる……?」
 静かで、淡々と言い放つ恋だが、彼女の周囲を漂う空気は威圧的で、敵意が剥き出しになっていた。
 彼女はもう、柚だけを直視している。それも、完全に柚を敵とみなした目でだ。そこに槍があれば、彼女は今すぐにでも柚の喉笛にそれを突き立てるだろう。そう思わせるほどの空気を、彼女は纏っていた。
「こ、恋……私も、ちょっと言いすぎだと——」
「わかりました。うけてたちます」
「ゆずまで!?」
 恋を宥めようとする暁だが、柚の一言によってそれは瓦解した。
「ちょ、ちょっと二人とも……やめようよ、こんなこと……」
「ごめんなさい、あきらちゃん。あきらちゃんと同じで、お友達どうしでケンカするのは、わたしでも嫌です」
 でも、と柚は続けた。

「わたしにだって、ゆずれないものがあるんです……っ!」

 この上ない力強さと、覚悟を持った声で、彼女は言った。
「ゆず……」
 暁はそれ以上、なにも言わなかった。
 これ以上は言っても無駄だと諦めたのか。それとも、今までとは違う彼女に、なにかを感じたのか。
 どこか呆然としたまま、立ち尽くしていた。
「……止めなくていいのか? ゆみ姉」
「ええ。あの子が、遂に踏み出した瞬間だからね。見届けたいのよ」
 結果がどうあってもね、と沙弓は言った。
 無謀であれ、蛮勇であれ、その一歩には大きな意味がある。
 そしてそれを促した者として、最後まで見届ける義務がある。
 そう信じて、沙弓は後輩の成り行きを静観する。
「神話継承もできない雑魚に負けるつもりはない……キュプリス」
「はーい。ま、恋敵との衝突は免れないよねぇ」
 今まで黙っていたキュプリスは、茶化すように言いながら恋の横につく。彼女としては、やはり自身の主に付くことが正義であるのか。
 しかしそれは、柚も同じだった。
「ルールー!」
 キュプリスと同じように、プルも柚の傍に付く。
「プルさん……いっしょに、戦ってくれますか?」
「ルー!」
「……ありがとうございます」
 自分勝手なのは、自分も同じなのかもしれない。こうして彼女と対立しているのも、結局は自分の我儘なのかもしれない。
 だが、それでもいい。
 自分自身を殺すことになるよりは、この我を通す方が、よっぽどマシだ。
 それに、
「神話継承できなくても、みなさんよりも弱くても……それでも……」

 ——譲れないものは、絶対に譲るな——

 義兄の言葉が蘇る。
 どれだけ我儘になっても、どれだけ強引でも、自分の意志を通したい時。通すべき時。
 それは今だ。
 譲れないもののために、戦う時が来たのだ。
 だから、自分は戦う。
 弱い自分との決別、強い自分との邂逅。
 その一歩を踏み出すために。
 譲れないものを、譲らないために。
「勝負です……ひゅうがさんっ!」
「……つぶす」
 そして。

 それぞれの意志を貫き通そうとする二人の間に、神話空間が開かれる——

105話「柚vs恋」 ( No.317 )
日時: 2016/02/17 01:37
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)

 柚と恋のデュエル。
 互いにシールドは五枚
 柚の場にはなにもなく、恋の場には《制御の翼 オリオティス》が一体。
「わたしのターンですっ。《龍覇 ケロスケ》を召喚!」
 マナを伸ばす柚は、一旦加速を止め、攻勢を見せた。
 現れたのは、蛙の面を付けたドラグナー。
「《ケロスケ》の能力で、超次元ゾーンからコスト2以下のドラグハートを呼べます。《卵殻塊 ジュラピル》を出して、《ケロスケ》に装備ですっ!」
 超次元の彼方より、一振りの槌が落ちる。卵殻を被る古代龍を模した打撃部を持つ、原始的な槌だ。
 今はまだ卵の姿をしたその槌を、《ケロスケ》は掴み取った。
「呪文《ジャスティス・プラン》……山札の上三枚から、エンジェル・コマンドとジャスティス・ウイングを、すべて手札に……」
「《養卵類 エッグザウラー》を召喚ですっ。続けて《ケロスケ》で攻撃! そのとき、《ジュラピル》の能力で、山札からマナをふやしますっ」
 《ケロスケ》が《ジュラピル》を振るう。すると、槌から剥がれ落ちた卵殻が地に落ち、それが大地の肥やしとなって、新たなマナを生み出した。
「そして、ターン終了するときに、《ジュラピル》を装備した《ケロスケ》がタップしているので、龍解条件成立ですっ!」
 《ジュラピル》が姿を変化させる条件は、一度でもその槌を振るうこと。その条件が満たされた《卵殻塊 ジュラピル》は、武器としての形を捨てる。
 そして、武器の姿を捨てると、次は要塞の姿へと成り代わる。
 生命誕生の神秘を喚起させる、遺跡という要塞へと。

「2D龍解です——《生誕神秘 ル=ピラッジュ》!」



卵殻塊(エッグ・ハンマー) ジュラピル 自然文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
龍解:自分のターンの終わりに、これを装備したクリーチャーがタップされていれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。



生誕神秘 ル=ピラッジュ 自然文明 (4)
ドラグハート・フォートレス
自分の自然のクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をマナゾーンに置いてもよい。
龍解:自分のターンのはじめに、自分のマナゾーンにカードが12枚以上あれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。



 地面に振り降ろされ、地中に埋まった《ジュラピル》。母なる大地の中で、一身にその恵みを受け、マナを吸収し、《ジュラピル》は《ル=ピラッジュ》として立ち上がる。
「……呪文《トロワ・チャージャー》で、《ティグヌス》をバトルゾーンに」
 2D龍解、ドラグハート・フォートレス。それは決して無視できない要素ではあるが、しかし恋は静かだった。
 小さなクリーチャーを並べるだけで、ターンを終える。
「呪文《セブンス・タワー》! メタモーフで3マナふやして、《地掘類蛇蝎目 ディグルピオン》を召喚! ドラゴンがいるのでマナを増やして、一枚ドローですっ!」
 対する柚は、攻めの姿勢をキープ。
 一度は止めた加速を再開し、むしろその加速度を上げていく。
「さらに《ケロスケ》で攻撃です! そのとき、《ル=ピラッジュ》の能力も発動しますっ。山札の上から一枚目のカードをマナへ!」
 《セブンス・タワー》《ディグルピオン》《ル=ピラッジュ》、あらゆるカードを用いて、柚はマナを増大させる。
「続けて《エッグザウラー》でも攻撃です! 《ル=ピラッジュ》の能力で、マナをふやしますっ」
 まだ加速を止めない柚。このターンだけで6マナも増やしており、そのマナの数はとうに十を越えている。
「私のターン……《龍覇 セイントローズ》を召喚」
 だが、その加速にストップをかけるかのように、恋も動き出した。
 彼女のさらなる“正義”の力。《セイントローズ》は、武器ではない龍の魂を呼ぶ。
 それは今、柚の場にそびえ立っているものと同質の存在。
 一筋の光が射し込む時、“天獄”の箱船が、地上へと降下する。
「私の正義をここに。来て……《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》」
 雲間をかき分けて、神々しい光を放ちながら、《ヘブンズ・ヘブン》がその姿を現す。
「ターン終了時、《ヘブンズ・ヘブン》の能力で、手札からブロッカーを呼び出す……《高貴の精霊龍 プレミアム・マドンナ》をバトルゾーンに」
 そして、箱船から天空の使者、聖なる精霊龍も舞い降りる。
 すべては主の正義を果たすため。その命に従い、彼らは地上へと侵攻するのだ。
「わ、わたしのターンです……」
 たった一枚のカードだが、それでも《ヘブンズ・ヘブン》の強力さは、柚も理解している。それが出てきてしまったということは、柚にとって良い状況ではない。
 だが、しかし、
「で、でも、わたしだって……」
 柚にだって、手がないわけではないのだった。
「わたしのターンのはじめに、わたしのマナゾーンのカードが12枚以上あるので、《ル=ピラッジュ》の龍解条件成立ですっ!」
 遺跡が揺れ動く。
 《ル=ピラッジュ》は、大地の偉大なる恵みを受け、龍の魂を解放するための力を十二分に溜め込んだ。その力は生命の活力を促進させるエネルギーとなり、大きな力を与える。
 化石から蘇り、最初は小さな卵だった命が、成長する。そして、大いなる力を得た。
 自らの受けた成長と、復活の力を。

「3D龍解——《成長類石塊目 ジュランクルーガ》!」



成長類石塊目 ジュランクルーガ 自然文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:ジュラシック・コマンド・ドラゴン 9000
自分のターンに、クリーチャーを1体自分のマナゾーンから召喚してもよい。
W・ブレイカー



 《ジュラピル》《ル=ピラッジュ》と生誕し、成長し、遂に古代龍としての姿を取り戻した《ジュランクルーガ》。
 毒々しいほどに凶悪な鱗を纏い、大地から巨大な鉄槌を引きずり出して、《ジュランクルーガ》は吼えた。
 その雄叫びは、大地を揺るがし、地中深くに沈んだ、化石たちの眠りを覚ます。
「《ジュランクルーガ》の能力で、わたしは1ターンに一度だけ、マナゾーンからクリーチャーを召喚できます! 出てきてくださいっ!」
 これが、成長した《ジュランクルーガ》の力。自分がこの姿にあるために経た記憶を、一瞬のうちに他の生命に与える力だ。
 大地に眠る化石を呼び覚まし、急成長させ、栄光の時代とまったく同じ姿で、復活させる。
 そのために《ジュランクルーガ》は、最後の仕上げを施す。そのホウコウで化石は目覚めた。次に為すべきは、成長。
 巨大な槌の一振りで、神秘的なまでの成長の記録を、化石の中に叩き込む。
 そして、古代龍が復活した。

「お呼びします、お頭さん——《仁義類鬼流目 ブラキオヤイバ》!」

 《ジュランクルーガ》によって復活したのは、仁義の古代龍、《ブラキオヤイバ》。
 《ピーア》の能力でコストが下がり、さらに減らしたマナが補填される。実質的に召喚コストが2下がっているような状態で、柚はさらに切り札を呼び出す。
「続けて《四牙類 クアトロドン》を、《ディグルピオン》から進化です! カード引いて、《土隠類 ハコオシディーディ》も召喚!」
 次々とクリーチャーを展開する柚。大量のマナを存分に使い、場には何体もの古代龍が並ぶ。
 恋へと牙を剥く古代龍たち。見る者を竦ませてしまいそうなほど、恐ろしく、そして巨大な龍だ。
 しかし、それらの龍がいくら並ぼうとも、今のままでは恋の守りを突き崩すには至らない。
 むしろ逆だ。
 恋の天使龍たちが、柚の古代龍の牙を砕く。
「その程度のクリーチャーが出ても、関係ない……私のターン」
 恋のターンが訪れる。それと同時に、宙に浮かぶ《ヘブンズ・ヘブン》が光り輝いた。
「この時……私の場に、ブロッカーは三体……《ヘブンズ・ヘブン》の龍解条件成立……」
 場に揃ったブロッカーたちが、箱舟に光を与える。
 彼女の正義を、命という形にするための光を。
「世界の王よ、正義の名の下に、勝利、封印、加護の三つの盟約をここに誓う。龍解——」
 箱舟は形を変える。彼女の正義としての姿を現す。
 龍の魂が解放され、天から讃美歌が響き渡る。命という魂は華々しく散る花弁の如く美しい。
 そして、ただ一つの正義の名の下に、彼女の世界の王が君臨した。

「——《天命讃華 ネバーラスト》」

105話「柚vs恋」 ( No.318 )
日時: 2016/02/18 13:37
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 9Mczrpye)

 《天命讃華 ネバーラスト》が、己の正義を誇示するべく、その姿を現す。
「龍解……完了……」
 小さく呟くと、恋はすぐさま次の行動に移った。
「まずは……制圧。呪文……《マスター・スパーク》」
 閃光が迸る。
 同時に、柚のクリーチャーたちの身体が硬直し、動きを封じられ、地に伏してしまう。
「あ……」
「一体ずつ、つぶしていく……《ネバーラスト》で、《ブラキオヤイバ》を攻撃……」
 《ネバーラスト》の槍が《ブラキオヤイバ》に襲い掛かる。《ブラキオヤイバ》は鋭利な鉤爪を振るうが、地上を駆け回る古代龍の刃は、天空を舞う王には届かない。
 勝利をもたらす王は、大きく槍を振りかぶると、《ブラキオヤイバ》の身を一突き。
 心臓から、貫いた。
「おにいさんの《ブラキオヤイバ》が……!」
 《ネバーラスト》に貫かれた《ブラキオヤイバ》が崩れ落ちる。《ハコオシディーディ》の力によって、《ブラキオヤイバ》の身は土に還るが、
「まだ、終わらない……《ティグヌス》で《ハコオシデイーディ》を攻撃……」
「《ハコオシディーディ》……!」
 彼女の制圧は終わらない。
 《ジュランクルーガ》《クアトロドン》《エッグザウラー》——柚の展開したクリーチャーが、次々と屠られていく。
 《ネバーラスト》の天命は絶対だ。勝利という運命を決定づけられた光の軍団は、古代の力など関係なく、その導きのままに彼らをねじ伏せる。
 絶対的な勝利を確約された恋のクリーチャーたちが、柚のクリーチャーを一掃する。
「あ……あぅ……」
 残ったのは、《ケロスケ》一体のみ。しかしそれも、殴り手の数と、殴られ手の数。たまたま後者が一体多かっただけというだけにすぎない。
 そんなことは些末な問題。少なくとも、一体のクリーチャーが残ったくらいでは、恋の牙城を崩すことはできない。
「わ、わたしのターン……《龍覇 ケロスケ》と《王龍ショパン》を召喚……《ケロスケ》に《龍棍棒 トゲトプス》を装備して、ターン終了です……」
「《龍覇 エバーローズ》を召喚。来て……《不滅槍 パーフェクト》」
 返す恋のターン。《エバーローズ》と《パーフェクト》、さらなる王の到来を予感させるクリーチャーが現れ、容赦なく柚へと槍の先を突きつける。
 そして、突きつけられた槍は、彼女を射殺すべく、放たれた。
「《天命讃華 ネバーラスト》でTブレイク」
 一瞬のことだった。
 眩く光る槍が、柚のシールドを三枚、貫いていた。
「ぁ、ぅ……し、S・トリガーですっ! 呪文《古龍遺跡エウル=ブッカ》!」
「無理……《ネバーラスト》が存在する限り、光以外のコスト5以下の呪文は、唱えられない……」
 気づけば粉々になっていたシールドから、柚は一枚のカードを掴み取るが、それは光によって縛られる。《ネバーラスト》のもたらす、封印の光によって。
「《プレミアム・マドンナ》でWブレイク……《セイントローズ》で、とどめ——」
「……まだですっ! S・トリガー《瞬撃の大地 ザンヴァッカ》! クリーチャーなので、《ネバーラスト》でも無効化できませんっ!」



瞬撃の大地 ザンヴァッカ R 自然文明 (8)
クリーチャー:ガイア・コマンド 5000
S・トリガー
ガードマン
このクリーチャーがバトルゾーンに出た時、タップしてもよい。
相手のクリーチャーは、もし攻撃するのであれば、可能ならこのクリーチャーを攻撃する。



 恋が《セイントローズ》に手をかけた刹那、柚の最後のシールドから巨大なクリーチャーが飛び出した。甲虫のような角や外殻、翅を持つ大地の化身。
 《ザンヴァッカ》は大地に降り立つと、その身を伏せる。
「《ザンヴァッカ》は、バトルゾーンにでたときに自分をタップできます。そして相手は《ザンヴァッカ》しか攻撃できませんよっ」
「……それなら破壊すればいいだけ……《オリオティス》で《ザンヴァッカ》を攻撃」
 攻撃を誘導する《ザンヴァッカ》。恋は《セイントローズ》にかけた手を離すと、《オリオティス》に攻撃を命じる。
 小さな翼のクリーチャーだが、光のクリーチャーである限り、《ネバーラスト》の恩恵を受けた精鋭だ。勝利という運命に定められ、《オリオティス》は光線を放つ。
「《ショパン》のガードマンで、《ザンヴァッカ》を守りますっ!」
「なら……《ティグヌス》で攻撃」
「《トゲトプス》を装備した《ケロスケ》もガードマンですっ! 攻撃対象をこちらへ!」
「……ち」
 小さく舌打ちする恋。《ザンヴァッカ》を倒しきる前に、攻撃可能なクリーチャーが切れてしまった。
 残っているのは《セイントローズ》のみ。
「……《セイントローズ》で《ザンヴァッカ》を攻撃」
 これで《ザンヴァッカ》は破壊されたが、結果的に柚は生き長らえることができた。
 しかし、ただそれだけだ。
 生き長らえるからと言って、生き続けられるとは限らない。ましてや、勝利を手にするなど、まったく別の話だ。
 それを教え込むかのように、《エバーローズ》は槍を——《不滅槍 パーフェクト》を掲げた。
「ターン終了時、私のクリーチャーが五体以上……《パーフェクト》の龍解条件成立……」
 《エバーローズ》は手にした槍を、天高く撃ち出す。一筋の光となったそれは、天空で龍の魂を解放し、地上へと舞い降りる。

「世界の王よ、正義を掲げ天より降り立ち、不滅の生と命を授ける。龍解——《天命王 エバーラスト》」

 《パーフェクト》が龍解し、《エバーラスト》の魂が解放される。
 威光を放つその姿は神々しく、そして猛々しい。
 己の正義のために、あらゆる外敵を排除せんとする“光”が、そこにはあった。
「しとめそこなったけど……これで終わり」
 《ネバーラスト》《セイントローズ》《プレミアム・マドンナ》《オリオティス》《ティグヌス》、そして《エバーラスト》。
 恋を守り、柚を射殺す光の精鋭たちが、ここに集った。
 《エバーラスト》が降り立つと同時に、睨むように柚を見据えていた恋は、静かに開口する。
 彼女に突きつけた槍を、さらに押し込むかのように。
「あきらといっしょにいても、この程度の強さ……まだ、ネクラメガネの方がマシだった……さゆみは、ミシェルが認めてたから強いんだろうけど……あなたは弱い」
「……っ」
「そんなに弱いのに、いつまでもあきらにくっついてて、恥ずかしくないの……?」
 それは怒りなのか、それを通り越した呆れなのか。
 恋は続ける。遥か高みから、柚を見下して。
「私はあきらに救われた……あきらが私の暗雲を払ってくれた……あきらのおかげで、私には光がさした……チャリオット、ユースティティア、そしてデウス……【秘団】と決別したのも、あきらが好きで、あきらと一緒にいたいから……そして、あきらと肩を並べて、強くなりたいから……」
 それが、恋がここにいる理由。
 暁に執着し、暁の仲間でありたいと願う、自分自身への理由だった。
 強さ。それが物事を測る指標の一つ。
 少なくとも彼女から見た暁は強い人間だ。デュエリストとしても、人としても。その強さによって、恋は暁に惹かれた。
 だからこそ、恋は強さを求める。暁にある、自分が惹かれたものを。
 そう、だからこそ、だった。
 その強さの逆に位置する存在に、嫌悪感を抱くのは。
「弱くて、めざわり……こんなに弱いんじゃ……話にならない……」
 突き放して、切り捨てて、見下す。
 恋の眼に映る柚は、もはや敵ではない。
 ただの惰弱な生物。目にするという意識もなく、踏みつけたという感覚もない。雑草同然の認識だ。
 恋にとっての柚は、もはやその程度の価値しかなかった。
「う、うぅ……」
 もう、嗚咽を漏らすことしかできない。
 盤面でも、気持ちでも、完全に打ち負かされていた。
 恋から浴びせられる罵詈雑言の数々も、今までの流れと、今の場を見れば、否定材料が見当たらない。
 《天命讃華 エバーラスト》《天命王 エバーラスト》。恋の有する最強レベルの切り札が、ニ体とも揃ってしまったこの状況。
 これで恋は、バトルやマナ送りでクリーチャーを除去できず、実質的に恋のクリーチャーを退かす手段を失った。しかも、呪文を唱えることすらままならない。
 なんとか攻撃を凌ぐも、シールドはゼロ。場に残ったクリーチャーもわずか。
 圧倒的不利。絶望的盤面。こんな状況では、
(……勝てません)
 虚無が心を満たす。
(このままじゃ、勝てません……)
 いわゆる、詰みの状況。恋の防御を突破するだけの攻撃力を柚は持ち合わせていない。破壊も、マナ送りも、その他の呪文も、小細工はすべて封じ込まれてしまう。
 希望に縋っても、いくら考えても、逆境に抗おうとしても、活路が見出せなかった。
(わたしじゃ、ひゅうがさんには勝てない……あきらちゃんだって、ひゅうがさんに勝ったことは、ちょっとしかないのに、わたしが勝てるわけがなかったんです……)
 今まで膨らんでいた気力が、一気にしぼむ。勇気を振り絞って食いかかったが、蓋を開ければ、呆気なく返り討ちだった。
 情けないことこの上ない。譲れないもののために、意地を通しても、無理は無理だった。道理を引っ込ませるほどの力は自分にはなかったのだ。
 虚無感がじわじわと広がってくる。
 なにもかもが、薄らいでいく。
 意識もぼんやりとして、なにがなんだか分からない。
 視界が霞む。その奥に、陽炎のような像が浮かんできた。
「……あきらちゃん」
 幻覚か、幻想か。夢か現か幻か。
 はっきりしない自我の中で、混濁する五感が、在りし日の記憶を掴む。
(わすれません……あのときのあきらちゃんも、わたしにとっての、太陽でした——)
 なぜ今になって……などと考える余裕もなかった。ただ今は、そのままに受け入れていく。
 明るい兆しが見え、希望の光として、春のような、あたたかな太陽が照らした日。
 自分はあの日を決して忘れない。
 あの日があるから、今の自分があるから。
 そして。

 それが自分にとっての、ゆずれないものだから——


Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114



小説をトップへ上げる
題名 *必須


名前 *必須


作家プロフィールURL (登録はこちら


パスワード *必須
(記事編集時に使用)

本文(最大 7000 文字まで)*必須

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


名前とパスワードを記憶する
※記憶したものと異なるPCを使用した際には、名前とパスワードは呼び出しされません。