二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.244 )
- 日時: 2015/10/02 03:44
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)
どうも、感想を書き込みに来ました、タクです。いやはや遅くなってしまって申し訳ない。
というわけで、まず遅ればせながら金賞おめでとうございます!!
本編より先に金賞取るスピンオフとは一体……うごご。これは流石に予想外でした、当初。まあ爆更新しまくっていましたしね。読者の目にもつきますか。
というわけで、タクの方からもイラストを描こうと思っています。
さて、遡りますは暁対恋の最終決戦。此処までで、読者からも恐らくもうトラウマになっているであろう《アポカリプス・デイ》が決まったときは、これまた負け戦にならないよね? と思ってしまいました。場もガッチガチでしたしね。
しかし。此処で彼女の戦う理由に呼応したか、まさかのアポロンの登場。やはり、あれですかね。後々でも語られていますが、”後継者としての自覚?”みたいなものがキーポイントであると自分は睨んでいます。意思を告ぐ者、ということですか。
そして、遂に覚醒した《コーヴァス》ですが、はっきり言います。こいつ、やばい。vaultで何度か対戦していますが、かなり容赦無い効果です。登場時、アタック時、とかなりドラゴンを踏み倒すチャンスが多いです。しかも、SAとパワーアタッカー追加、はっきり言おう。お前アポロンより強くねえか、と。間違いなく神話クラスであることは確実です。しかも、非進化クリーチャーとしても扱えるってもうこれ分かんねぇな。というわけで、恋の包囲網をひっくり返すことに成功したわけです。ドラゴ大王とのやりとりも印象的でした。
何であれ、炎を嫌い、全てを拒絶しようとした彼女に。暁の、コーヴァスの炎は何よりも暖かく、何よりも明るく見えたはずですね。まるで、太陽のように。いや、正にと言うべきですか。
これで一件落着----------------
-----------と思ったら、結局新しい敵みたいなのが出てきやがる展開っていうね。ですが、こういう展開は嫌いではありません。
○○がやられたか、しかしあいつは所詮四天王の中でも云々みたいな、どっかのソードマスターみたいな展開はベタですが好きです。
ゾルゲの尻拭いをする13とシャーロックみたいな感じですかね。
何であれ、これで新作案の1つだった小アルカナは自分の中で潰えた訳ですがね。
ユースティティアとチャリオットの2体によって大敗を喫す主人公達。まあ負けイべなのは何となく予想はつきましたがね。
しかし。もう少しこの2人は引っ張ると思ったのですが、思ったよりも早く決着がつきそうで少々驚きました。そして、クリーチャーだから、彼女達のカードも出るものかと思っていましたが、この辺も少し残念だったり。
ただ、チャリオットと《クロムウェル》の組み合わせは、戦車好きの自分としては印象的でした。巡航戦車クロムウェル、WOTでも人気の、軽装甲高速のイギリス中戦車ですね。意図したのか、知っていたのかは知りませんが。まあ、自分はドイツの方が……ってこれは本当にどうでも良いか。でも戦車といえば、ドイツだよドイツ。
コホン。何よりも語るべきは恋の決別をするための戦いともいえる、あのデュエルシーンですか。ユースティティアとの最終決戦ですね。
《エバーラスト》の次は《ネバーラスト》……ああ、何この上位互換の敵が出てきました感。当初は《ジャスティス》が切札だったようですが、そっちでも良かったやもしれません。今更感漂う上に、どっちでも良いんですけどね。ただ、DSがメインというこの作品では、《ネバーラスト》はこの上ない切札だったのでしょう。
そして、突っ込もうか。キュプリス---------------お前も女だったんかいいいい!? ああ偶然は恐ロシア……、まさかこっちでもボクっ娘クリーチャーが出てきてしまうとは……。
しかもやたら肉感的で体に鎖を巻いてある!? ふざけんな!! なんてけしからん!! 畜生、礼を言いますよモノクロさん、何が高潔だ、こんなやらしい娘、全力でけしからんイラストを描くっきゃね------(このコメントは正義に則り粛清されました)
いかんいかん、シリアスな感想を書いていたはずなのに、ついつい悪い癖が……。
それはともかく、《キュテレイア》の鎖は無秩序な正義、つまりはユースティティアのような自分勝手な正義を束縛する、ということですか。
光の慈悲、慈愛の面を表した、正に《慈愛神話》の語り手に相応しいデザインでしょう。効果は、ブロッカーを持たないにも関わらず、ブロッカーと同じ効果を持つこと。これは、ブロッカーを対象にした破壊効果を避けられるということですか。
そしてもう1つは、タップ時に相手を1体フリーズすること。わお、これ《キュテレイア》だけで2体止められますね。
極めつけは自分のターンの終わりに、自軍を全てアンタップ。きつい……これはどぎつい……しかも、メソロギィ・ゼロの条件が何気にメカ・デル・ソルと光のコマンド・ドラゴンになってるし。
自らの恩人とけじめをつけるため。そして、真の仲間と真の道を進むため。
そして、見事に決着。消える中でユースティティアが何を思ったのか--------------それは神のみぞ知るところではありますか。
そして、恋は新たな仲間と新たな道を歩むことに。
さて、これでデュエル・マスターズ Another Mythologyは完結------------------な訳ありませんでした。
第二章開始って感じですね、此処から。
まず、プライドエリアに現れる死神のような存在。後々で語られていますが、こいつもやはり語り手のクリーチャーか、それとも----------何であれ、こいつが次に立ち塞がることになるのでしょうか。
そして、マージャンやっている謎の人物達。”カザミ”がキーワードですね。というか、作者の趣味出てるな結構これ……人のことは言えませんが。
次に、なにやらエヴァに出てきそうな会議をやっている、いかにも怪しそうな人ら。こいつら絶対ボスとかですね、分かります。”世界”で、完全に小アルカナモチーフであることは確信しました。
その次に、革命軍と侵略者がまさかの同盟関係を-----------って、えええー!? 世界が違うとはいえ、革命編の真っ只中で、これはゆゆしき事態、一体何があったんだコレ。革命編の連中はここで出てくるとタクは予想しました。
最後に、スプリング・フォレストで、また波乱を生みそうな予感の謎の人物。大体正体は掴めましたが、英雄の力でどうこうしようとしているらしいですね。”ガジュマル”という名前とこれまでの流れから察するに、自然の語り手……?
とまあ、ここまでが今後のAMのポイントになるわけですか。
とりあえず、次は日常編。とはいえ、結構vaultとかで話したところもありますし、申し訳ないですが重要そうなところから。
まず、合同合宿と早速次のイベントの始まりの予感ですが、後述する恋のキャラを知ってから、いやーな予感しかしなくなってしまいました。おい、本当に大丈夫かコレ。
そして、度々一騎を襲う発作ですか。やっぱりあれですかね。何かの覚醒が暴走フラグは立っていますが、それよりも気になったのは、あの夢というか回想のようなものですか。怒っている……あれですかね、恋とのデュエルでガイハートまで覚醒させたのに、結局不甲斐なく負けたから、勇んで行ったのにチャリオットにも負けてしまったから---------いや、それは流石に無い?
でも、少し思ってしまいました。結構、ここ最近不甲斐ない負け方が多かったですからね……。
そんな彼も、更に恋と実質同居することになり、いよいよラノベみたいになってしまいましたが、肝心の恋はああなるとは此処までは思っていませんでしたよ。ええ、本当……。それはまた後ほど。
さて、今回の大目玉、アカシック∞編。アカシックといえば、例のクリーチャー郡を思い出しますね。《レールガン》をうちの作品で出したのも大分前だな懐かしい。他のアカシックシリーズもいつか出したい……。
それはさておき、恋も登場して、まさかまたクリーチャーが出てきてドンパチするのかと思ったらそんなことはありませんでした。はい。
そんなことより、もっとやばいことになりましたけどね。まず、自分の中での恋への認識が変わりました。
いや、何を今更って話ですが。
百合キャラだったのかお前……。ああ、修羅る予感しかしない。主に柚子と。しかも根が純粋でしかも世間知らずだから、まあどうなったかのか一体……。
そういえば、遊戯部サイドは4人中3人が女で、しかも恋も入れたら男女比が恐ろしいことに。どんだけ百合の花園を造りたいんだこの作品。
それはともかく。
重要なのはこっちですね。浬とエリアスです。
彼の、エリアスへの知りたい、という欲求と、それを拒む気持ちがぶつかって、とうとう出てきてしまいましたか。
凶悪神話カード、《ヘルメス》が。
いやもう、こいつがかなーり邪悪なのは今までの所業から察するとおりですね。カードとしても、その本質としても。
大体、この流れに入ったら、浬の性格上、素直には力を受け取りはしないだろうなと大方察しはついていました。
結果。デュエマになる、と。この辺りからだんだん嫌な予感がしてきましたが、《ヘルメス》は作者からも嫌われているだろうし、まさかカードとしても出てくるわけは-----------はい、出てきやがりました。出てこないわけがありませんでした。本当に出てきやがりました。
さっさと退場したとはいえ、流石にこのときはえげつなさを感じましたね。もう《ホーガン》どころじゃねえよ。本編でも遺憾なく発揮した凶悪能力によって蹂躙される前に、何とか浬が山札の下に封印してくれたので良かったですが。
それでも、浴びせられる呪文と《ホーガン》によるアド稼ぎで浬は劣勢になっていきますか。
そんな中。浬はエリアスを”知りたい”という気持ちを自覚する----------愚かしく、そして賢い《賢愚神話》の力を受け継ぐトリガーになったわけですか。知りたくなくても、知らなければならないことがある。知らねばならない義務、禁忌と知っていても踏み込まねばならない覚悟。それを自覚することで、今度はエリアスが神話継承し、《エリクシール》と成ったわけですが-----------まず1つ言うと、今度こそこいつはやばい。浬が多色デッキを使っていたら、間違いなく作中でも最凶クラスになっていましたよ。そのクリーチャーを召喚する代わりに、または呪文を唱える代わりに同じ文明のカードを山札から出せるって普通に考えてやばいです。
魔術的な水文明の中でも、際立って特異ですし、革命的な能力だと思います。《転生プログラム》とか論外のレベルで。
とはいえ、扱いが難しそうなのもまた事実ではありますが。
というわけで、今度は尽く彼の戦術を打ち破っていき、逆転、と。
しかし結局は複雑なものですね。まあ用は目を背けるな、肯定した上で前に進め、ということなのでしょうが。
相手を知り、理解すること。大切なことですからね。
あのエリアスの言葉は、浬を純粋に主としてパートナーとして好いていることの表れでしょう。彼も、ゆっくり共に歩んでいくことでしょう。
さて、次回はいよいよ死神絡みか、それとも別件か……今後のAMから目が離せません。それでは、また。
- デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.245 )
- 日時: 2015/10/04 21:02
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
タクさん
ありがとうございます。こちらも、なんというか、催促してしまったみたいで申し訳ない。
そして、重ねてありがとうございます。皆様方のお陰で、金賞をいただくことができました。
言われてみれば確かに、本編より先ですが、モノクロはもうこの作品は、メソロギィとは別作品みたいになっていると思っているので、問題はないです。たぶん。
イラストもありがとうございます。またも描いていただけるだなんて、光栄です。そちらの感想については、別の場で。
恋……いや、この時はまだラヴァーですが、彼女の対戦を描くうえで大変なのが、「どうやって彼女の防御に風穴を空けるか」または逆に「どうやって崩された防御を立て直すか」の二点です。
前者は《バトライ武神》の大量展開で、後者は《アポカリプス・デイ》によるリセットで、それぞれ描写したわけですが。ただ《アポカリプス・デイ》で明らかな破壊による全体除去を描いたのは、やはりこれが最終決戦で、ラヴァーの感情の高ぶりとか、そういった変化も込めた、というのはあります。
そうですね、これから特に大切になっていくのは、やはり“自覚”と“意志”ですね。十二神話それぞれの意志は当然ながら違うわけで、それに対応する自覚と意志を強く持つことが、今後の焦点になってきます。それぞれの神話ごとに、これらは全く異なっているので、その点もお楽しみください。
そして、やっと登場できた《コーヴァス》ですが……はい、モノクロ自身も、こいつヤバすぎるだろ、と後から思いました。出し難さとか考慮しなくても、普通に主人超えてると思います。
デザイン当初は、相手の場にクリーチャーがいないと踏み倒せないとか、殴り倒せないほどの大型がいると突破できないとか、スレイヤーや《シルヴァー・グローリー》のような無敵化で撃沈するなどの穴があるから大丈夫だと思ったんですが……そんなことないですね。パワーアタッカーはおまけとしても、スピードアタッカーは《アポロン》のような全体付加ではなく、こいつで踏み倒したクリーチャーのみに付加なので大丈夫だと思いましたが、それだけでも十分強いっていう。いや、そんなことは考えるまでもなく分かることですけど。
継承神話の共通のデザインとして、バトルゾーン以外のゾーンにある時は、すべからく非進化クリーチャー扱いにできます。まあ要するに、各種踏み倒しがしやすいってことなんですが、これのせいでさらにヤバいことになっていますよね……これくらいしないと、進化元が限定されすぎている分、出せる機会がなくなるかと思ったんですが、そんなこともなさそうで……ちょっとやりすぎました。
ちなみに《コーヴァス》が受ける非進化の恩恵は、まずは作中でもあった各種バルガですね。《バルガゲイザー》は進化でも出せますが、《バルガライザー》に対応できるようになったのは大きいかと。あとは《ジャックポット・エントリー》にも対応しています。ギリギリコストは8ですし。
《ドラゴ大王》はモノクロが好きなクリーチャーというのもありますが、やはり彼は、なんだかんだで火文明の仲間なんですよ。《ジャクポット・バトライザー》同様、《コーヴァス》とはコンボが成立するようにデザインしました。
ちょっとベタかな、とは思いつつも、まだ終わりませんよ、ラヴァーの因縁は。
タロット絡みのネタは、色んな作品で使われますからねー……言うまでもないと思いますが、ラヴァーも「恋人」に相当しますしね。その時点で既に、彼女の裏にある組織の存在は設定していました。
ユースティティアの方はともかく、チャリオットと暁の対戦は、少しあっさりしすぎたかな、と思ったり思わなかったり。ちなみにチャリオットは某ゾロスターさんをイメージしながら書いています。
引き伸ばす案もなくはなかったんですが、ラスボスかと思ったら実は真のラスボスがいた展開だと、引き伸ばしてもぐだつくだけだと思ったんですよね。後述しますが、彼らの組織の構成員は、まだたくさんいますし。というわけで、恋の神話継承も含めて、今回はスピーディーに終わらせました。
一応、チャリオットもユースティティアも、カードデザインはしていますし、実際に連中のデッキに入っているという設定ですが……せっかくですし、雑談板の方にでも、その案だけ載せましょうかね。
《クロムウェル》がイギリスの巡航戦車っていう知識はありましたが、正直そんなに詳しくは知りません。ただ、チャリオットは戦車の意味なので、それに合わせて戦車をモチーフとしたクリーチャーの《クロムウェル》を、そしてその《クロムウェル》を軸としたヒラメキクロムウェルのデッキをチョイスしたのは確かです。
ユースティティアのデッキは本当に悩んだんですよ。最初は正義に対する善悪論として《究極神アク》《超絶神ゼン》に、《ジャスティス》とその他ゴッド・ノヴァを加えたゴッドデッキを考えていたんですが、なにがしたいデッキなのかだんだんわからなくなって、当時はコンセプトが意味不明になって使いたくなかったんですよね。ジャスティス知新ループを知ったのは、ユースティティアのデッキと対戦が決定した直後くらいでしたし。まあ、あのデッキはループデッキなので、一度嵌ってしまえば恋の勝ち目はほぼなかったと思いますが。
そんなわけで結局、《エバーラスト》の上位種……ではないですけど、設定上では各上の《ネバーラスト》を使わせるという形に。ドラゴン・サーガでは光文明は正義を謳っているので、まあ筋は通っているだろう、という半ば妥協案だったのですが、それでもこれにはそれなりに納得しています。《天獄の正義 ヘブンズ・ヘブン》とか、ユースティティアの正義の形そのものなネーミングしてますしね。
キュプリスは女です、はい。これが叙述トリックというやつです。ボクっ娘はちょっと卑怯だと我ながら思いますけど。ちなみに作中の人たちは彼女が女であることは分かってます。一人称がボクなだけで、見た目は女の子です。ボーイッシュなのは口調だけ。
そしてキュテレイアについては……モノクロも意図してなかったというか、言われて初めて気づきましたが、確かに絵面ヤバいですね……正にヴィーナスな肉体美までならともかく、そこに鎖はヤバかった。もう一度言い訳しますと、そんなにギッチリ巻いているのではなく、もっと余裕を持って、ゆったり巻いているイメージというかつもりではあったんですけどね……纏っている、と言った方が伝わりやすいかもしれません。
まあともかく、彼女はそういう役柄ではなく、芸術的な美を持つだけ、ということにしておいてください。彼女は高潔かつ純潔です、はい。
正義は善悪と違って、一般論ではなく個人で語るものですし、対立が起こって当たり前のものではあります。なので、ユースティティアの正義を一方的に非難はできませんし、モノクロとしても彼女の正義が間違っているつもりで書いてはいませんが、恋の意志を貫き通すためには、彼女の正義を縛るしかなかった……といったところですかね。
ちなみにキュテレイアのイメージは裁判官です。まったくイメージにないとは思いますが、彼女の鎖は、イメージとしてはもっと精神的なもので、法で縛る、と言えば伝わりやすいですかね。あまり言いすぎると、ちょっとネタバレになりかねないので言い難いですが……
カードデザインに関しては、《ヴィーナス》の能力を意識しつつ、鎖で縛るイメージを、フリーズとして導入しました。
ヴィーナスが異常にブロッカー絡みの能力(ただしダイヤモンド状態はない)を持っていたので、《キュテレイア》にもブロッカーを持たせたかったのですが、仰る通り《ヴィーナス》のような除去耐性を持たない《キュテレイア》は、ブロッカー除去で瞬殺されるので、それだけは避けたかったということもあり、ブロッカーというキーワード能力を使わず、ブロッカーの能力を与えました。
あとは、《ヘブンズ・ゲート》による踏み倒しを規制するためですね。手札にいる時も非進化扱いなので、《ヘブンズ・ゲート》で簡単に踏み倒せるのはまずいと思い、ブロッカーをキーワード能力としてつけませんでした。ただし《ドラゴンズ・サイン》には対応させてます。
自軍アンタップは《ヴィーナス》意識ですね。彼女よりは弱体化していますが、《キュテレイア》自体が相手への抑止力として強く働くので、まあこのくらいが妥当かな、と。
メソロギィ・ゼロ条件は、メカ・デル・ソルとアポロニア・ドラゴンにすると、恋のデッキで出すのはきつい……というか、メソロギィ・ゼロで出すことを考えていない最初の段階では、メソロギィ・ゼロは達成できないと思ったので、このように設定しました。
いや、彼女の場合はまだマシなんですが、中にはコマンド・ドラゴンをありにしないと、てんで出せない奴が出て来るので……ちなみに種族にドラゴンを含む十二神話の語り手は、《コーヴァス》を除き、メソロギィ・ゼロ条件の二つ目はコマンド・ドラゴンです。
恋から見て、ユースティティアは恩人であり仲間であったように、ユースティティアとしてもラヴァーはかつての仲間だったわけで。まあ、彼女の思いは、読者に託すとしましょう。モノクロの答えを聞いても、面白くないでしょうしね。
流石にここで完結にはしません。アニメだったら確実にここで一期終わってますけど、原作はそうはいきませんよ。まだ他に神話継承していない語り手もいますし、そもそもまだ登場していない語り手もいますし。
それでもここが一つの区切りで、プロローグっぽく各シーンを流してはいますけどね。
最初にあいつを見て死神を想起させるとは……こいつについては、近々描写することになると思いますよ。
麻雀はモノクロの趣味の一つですからね。高校時代の文芸部誌では、文化祭用に作品を書くときは毎回麻雀をネタにしてたくらいですからね。ただし顧問の先生曰く、モノクロの作品は「妹」らしいです。妹キャラが印象的なんだとか。
それはともかく、暗闇の会議は、概ね予想通りかと。こいつらは隠すかどうかちょっと迷ったんですが、変に隠すより、もういっそ開き直って出しちゃいました。
次いで、革命軍と侵略者の同盟は、これは流石に読めなかったんじゃないですかね。自分でも、これは正に革新的発想だと自負しております。まあでも、革命軍と侵略者って、そんなに相性悪くないですけどね。《シリンダ》は侵略者と組めますし、《ドギラゴン》と《レッドゾーン》は共存できますし、《メラッチ》も進化サポートを革命軍と侵略者で共有できますし。
最後のスプリング・フォレストでのやり取りは、察しの良い人なら、こいつらがどのような奴らが、少しは分かるかもしれません。“ガジュマル”の名は、まあこれも今後の展開をお楽しみに、ですね。
合同合宿は自分で計画しておきながら、正直迷っていますが、いつかは書きます。いつかは。
形としては短編……いや、短編には収まらないから、番外編ですかね。本筋のストーリーからは独立して、別個に書いていく形になると思います。
予定としては、ライトでコメディなタッチの作品に仕上げたいんですが……モノクロのコメディです。期待はできませんです。はい。
一騎については、これも烏ヶ森編の大きな山の一つになりますかね。詳しくはまだ伏せます。わざわざサブタイにも伏字使ってますしね。あまり意味ない感じになっていますが。
一騎と恋の同居は、言えばこれが初めてではないですけどね。一騎が小さい頃とかにもあった設定です。むしろ一人暮らしを始めたのは、中学上がってからですね。
妹のような幼馴染のような異性と同居と言えばラノベ的展開ですが、肝心の恋があれですからね……一騎の方もあれですけど。
まあ、恋がどうなるかは、今後をお楽しみに。ヤバい方向に進む可能性の方が高いですが。
暁、恋と続いて、次のメインは浬です。
アカシック・∞の元ネタは、《インビンシブル・テクノロジー》のイラストに描かれている、かつての水文明の拠点『アカシック3』と、この世界のあらゆる物事を記録する概念であるアカシック・レコードからです。
ちなみに個人的にアカシックシリーズは好きです。《レールガン》が《オーロラ》に一目惚れした《ドラポン》に理不尽に怒られてたシーンとか、よく覚えています。ただ《アカシック・サード》だけは、使うのが凄い難しそうですけど。
恋は今まで敵サイドとしての登場だったので、これからは味方サイドとしての面をガンガン見せて行きますよ。その一面が今ですけど。
ただまあ、恋も元からレズだったわけではないと言いますか、彼女はただの百合ではないと言いますか、彼女の同性愛にはそれなりに理由があるんですよ。暁のこととか。これはもっと後で描写しますが、まあ今言えるのは、恋はただのレズではなく、北上様に対する大井っちということです。暁視点で見れば、島田美波に対する清水美春の方が正しい気もしますが。
確かに遊戯部は浬が黒一点でハーレムになりつつあるんですが、まあそんなものは形だけです。それは今回の浬とエリアスを見てもらえれば、少しは分かってもらえるかと。
アポロンとヴィーナスが力を受け継がせるだけだったのに対し、ヘルメスは一捻り加えて、本人との対戦まで持っていきました。
そして、《ヘルメス》としても登場です。
ただし今回の目玉はこいつではないので、とっとと退場してもらいましたが、いやぁ、《ヴェール・バニロニア》って強いですねぇ。
まあ、《ヘルメス》を野放しにはできないとはいえ、奴を除去した弊害として、《ホーガン》で¥を使い回されるという悲劇が起こってしまったわけですが。
浬とエリアス、そしてヘルメス。この三方における、神話継承の引き金は、ヘルメス自身が言っていたように、知識欲。
デジモン風に言えば、知りたがる心、ですね。
世の中、知らなくてはならないことがあるわけで、知るということは一種の義務でもあると思うんですよね。まあ正確には、神話継承自体が、権利ではなく義務である、ということなんですが。
浬が隠していた己の本心を自覚して、出て来た《エリクシール》ですが、こいつのモデルは以前も言ったように、錬金術師です。
本人がヘルメスの血肉から創られたホムンクルスのような存在であるということもあり、設定のイメージとしては『マナケミア』のヴェインみたいな感じですね。まあ、なんで錬金術師かと言いますと、モノクロがアトリエに嵌ってたこともありますが、ギリシア神話のヘルメスとはちょっと違いますが、ヘルメス・トリスメギストス錬金術師からですね。
能力も、アンチヘルメスと言いますが、彼とは逆の方向性にしています。《ヘルメス》がクリーチャーの召喚と呪文の詠唱を無力化するのに対し、《エリクシール》はクリーチャーや呪文を別の姿に創り変える。打ち消す《ヘルメス》に対して、創り出す《エリクシール》、といったところでしょうか。
その結果、主人共々物凄い能力になってしまいましたが。ただし、《エリクシール》はこれでもかなり調整したつもりなんですけどね。呪文アンタッチャブルが何気にヤバいですが、それでも《バトクロス・バトル》や《シュトルム》の火力には引っかかるようにしているので。
浬とエリアスについても、これからゆっくりと描写して行きたいですね……
次回は今日中にでも上げると思います。一応、多少ストックはあるので。少なくとも対戦シーンはほとんど書けてます。
なにはともあれ、コメントありがとうございました。
ではでは。
- 69話 「強欲街道(グリードストリート)」 ( No.246 )
- 日時: 2015/10/03 17:42
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
大罪都市グリモワール。
闇文明の牙城にして、悪鬼羅刹と混沌が支配する、完全独裁自治地区。
その一角の大街道を、暁たちは訪れていた。
「不気味なところだなぁ」
「すこし、こわいです……」
空は常に暗雲が覆い尽くし、空気が淀んでいる。不快感のみを催す臭気が漂っており、常に怖気が走るような雰囲気があった。
「この前の図書館も大概だったが、今回もまた妙なところに連れていかれたな」
「そうね……それと」
ふと、沙弓は暁へと目を向けた。
正確には、彼女にぴったりと寄り添うように隣を占めている少女へと。
「今回も来たのね、日向さん」
「ん」
短く声を発して答える恋。
「そんなに引っ付かれると、ちょっと動きにくいよ、恋」
「ん」
やや弱ったような暁。しかし恋は彼女の腕を離さず、彼女から離れようともしない。恐らく、なにを言っても無駄だろう。
「……そろそろ、本題に入ってもいいかな」
咳払いして場を仕切り直しつつ、リュンは一同へと口を開く。
「とりあえず、歩きながら話そう。この地区の広さを考えたら、そっちの方が効率的だ」
まずはそういって、歩き出す。その後に、暁たちも続いた。
「恋、ちょっと歩きにくいんだけど……歩く時くらいは離れない?」
「ん……問題ない、このままでも」
「うーん、参ったなぁ、どうしよ……」
恋が腕から離れないため、弱った表情のまま歩を進める暁。しかしそんな暁のことなど目もくれず、リュンは今回の目的を語り始める。
「今回、この場所——大罪都市グリモワールの一区画、強欲街道(グリードストリート)——を訪れたのは、あるクリーチャーを探すためだ」
「あるクリーチャーを探す? 人探しってこと?」
「人じゃないがな」
「まあ、そういうことかな。より詳細に言えば、そのクリーチャーは近頃この大罪都市に現れては、何体ものクリーチャーを惨殺していると噂のクリーチャーでね」
「ざ、惨殺!?」
「ひぅ……っ」
「なにその殺人鬼……」
淡々と語るリュンだが、言ってることは相当だ。
クリーチャーの惨殺。弱肉強食、生きるか死ぬかという自然界の法則のような一面も持ち合わせている今のこの世界だからこそ起こりうることなのだろう。今まででも起こっても不思議はなかったが、しかし今までそんな話がまったく入ってこなかったということは不思議である。
それでも自分たちの世界との相違は大きい。リュンの言葉に、竦まずにはいられなかった。
「ちなみにそのクリーチャーは、巷では『死神』という異名で知られているよ」
「『死神』、ねぇ……」
「厨二病感あるのにひねりがまったくない……いまいち」
しかし異名にひねりなんて求めるものではない。
そう呼ばれているということは、そう呼ばれるだけのことをしてきたということだ。軽く『死神』などと言われてもピンと来ないが、その言葉の意味を考えると、文字通り死の神。
獣も、人間も、クリーチャーをも超越した存在。その上で、死を司る者。
これまで多くのクリーチャーを抹殺してきたという行いから見ても、その力の強大さは、推察することができる。それこそ本当に、神に匹敵するほど、強大な力を持っていてもおかしくない。
「……そんな奴を探して、どうする気だ? 俺たちが襲われて、無事で済む保証はあるのか?」
「保証って言われると難しいけど、僕は君たちの保護を最優先で動くつもりだよ」
それに、とリュンは続け、
「相手が死の神でも、君たちにはかつてこの世界を統治した“神話”の力を受け継いでいるじゃないか。もしもの時は、彼らが戦ってくれるよ」
凄まじく他人事で他力本願のように言うリュンだったが、語り手たちは意気揚々と勇み出る。
「おうよ! 任せとけ、暁!」
「まあ、それがボクたちの役割だしね。やることはやるさ」
「ご主人様は私がお守りします! それが従者としてのつとめです」
「……と、いうことらしいよ」
なんとも頼もしい限りだった。
そんな皮肉めいた言葉はさておくにしても、確かに相手が死神だろうと、神話空間の中では平等だ。こちらの土俵に持ち込んでしまえば、相手がいくら危険な存在でも、対抗することができる。
そこに加えて神話の力まであるならば、むしろ怖いものはないとさえ言えた。
「で、でも、わたしはまだ、プルさんを進化させられません……」
「私に至っては、神核だっけ? とかいうものも持ってないんだけど」
「まあ、それはそれだよ」
「適当だな……」
なんにせよ。
今回はその『死神』と呼ばれるクリーチャーを捜索することが目的のようだ。闇文明の荒れた自治区とはいえ、そこで問題を多発させていることは、リュンにとっても看過できる問題ではないのだろう。
「それで、その『死神』とやらはどこにいるんだ? まさか、なんの手がかりもなしに来たわけじゃあるまい。目星くらいはついているんだろう」
「うん、そうだね。今まで『死神』は、プライドエリア、怠惰の城下町と、大罪都市の南端を始点に北上している。加えて、今まで通過した主要な地区はすべて、大罪の七龍が管理している場所だ。そこから考えたら、次に『死神』が通るであろう場所も予測できる。それは城下町に最も近くて、大罪龍が治めている地区。即ちここ、強欲街道(グリードストリート)だ」
強欲街道(グリードストリート)。その名の通り、この区域は町ではなく、道である。大罪都市を大きく縦断する大街道だ。
「グリード……強欲……」
「そこらに散らかってる金銀財宝はそういうことね」
ちらりと、流し目で荒れ果てた道路を見る。そこには、ゴミでも捨てるかのように、金貨や宝石が転がっていた。しかも、それがあちこちにだ。
「あまりに扱いが雑すぎて、というか怪しすぎて手をつけなかったけど、これって貰っちゃっていいのかしら?」
「君らの世界の価値と僕らの世界の価値にどれくらいの差があるか分からないから、持って帰ってもなんにもならないかもしれないけどね」
「そうでなくても得体の知れないものを持って帰るのはやめとけ、部長。流石に危険だ」
「分かってるって、冗談よ」
パタパタと手を振りながら笑う沙弓。彼女とて、異世界の未知の物体の危険性くらいは理解している。
「そういえばさ、その『死神』って、どんなクリーチャーなの?」
「こわいクリーチャーなんでしょうか……?」
『死神』の姿。確かにそれが分からなければ探しようがない。
「どんなクリーチャーかぁ……噂は色々聞くけどね。影のような姿をしているとか、亡者のような顔をしているとか、真っ白なクリーチャーだったとか。とりあえず一番有力なのは、黒い外套に身を包み、巨大な鎌を携えているって情報かな」
「外套に鎌……案外、私たちの想像するような死神の像に近いわね」
「安直……テンプレ」
しかし分かりやすいのはよいことだ。ターゲットの姿が分かりやすければ、それだけ探しやすくなる。
「……なにか感じるな」
ふと、ドライゼが漏らすように呟いた。
「しかも、向こうになにか見える。近いぞ」
「え? なんも見えないけど……」
「あなた目いいわね」
「禍々しい気配だ。かなりの大物だぞ」
「早速、例の『死神』とやらが見つかったか?」
「単にこの地区を治める悪魔龍かもしれないけど、とりあえず行ってみよう」
リュンが促し、一同は駆ける。路傍に散らばる金貨や宝石を蹴り飛ばしながら、強欲街道を走る。
「あ! 誰かいるよ!」
暁が真っ先に声を上げ、すぐに視界に何者かが飛び込んでくる。顔ははっきり見えないが、恐らくは女、それも少女と言ってもよさそうな人物。華奢な身体に身につけた黒いローブと、長い黒髪が、影を纏うようにそこにあった。
それに加え、その何者かと相対するように立つ、巨大な影。
「あれは……《強欲の悪魔龍 アワルティア》か。この地区の統治者だよ」
「……襲われてる?」
一見すると、そのように見える。
だが、威嚇するように大口をあけるアワルティアに対して、少女は微塵も動じた素振りは見せていない。
むしろ、彼女自身の意志でそこに立っているというように、そこに存在していた。
暁たちが少女と悪魔龍に近づいたところで、ゆらり、と。
「っ、これ……!」
空間が歪む気配を感じた。
「……神話空間」
ゆらりゆらりと、揺らめくように空間が歪み、飲み込んでいく。
強欲の悪魔龍と、真っ黒な少女を。
「……?」
二つの存在が消えていく。空間から離れていく。その刹那。
暁は見た。少女の手元で光るそれを。
黒い光を放つ、閃きを——
- 69話 「強欲街道(グリードストリート)」 ( No.247 )
- 日時: 2015/10/04 13:52
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「貴様、何者だ。誰の許可を得てこの街道を通っている。関税は払ったのか?」
「…………」
「答えないか、まあいい。貴様がなにを考えているかは知らんが、貴様を処分した後、貴様のすべてを奪い尽くしてやろう」
それが私の存在理由だ、と言って、アワルティアは長い長い舌を出す。
現在、少女とアワルティアのデュエルは、どちらも攻めを見せず、準備を進める形となっている。
少女の場には《絶叫の影 ガナル・スクリーム》が一体。墓地を肥やしつつ、《特攻人形ジェニー》で手札を削っている。
対するアワルティアの場には《オタカラ・アッタカラ》《コッコ・ドッコ》の二体。序盤から積極的にカードを使用し、手札破壊も受けた影響で息切れしているが、《ブラッディ・クロス》《ボーンおどり・チャージャー》《プライマル・スクリーム》と、墓地を肥やす呪文を連打しており、墓地が非常に多い。
「私のターン……《龍覇 ウルボロフ》を召喚」
少女が繰り出すのは、闇のドラグナー、《ウルボロフ》。
ぬいぐるみのような姿をしているものの、両手にはめた赤いグローブと、飢えた狼のようにギラギラと輝く獰猛な眼差しが、ただのぬいぐるいみではない狂気を感じさせる。
「《ウルボロフ》がバトルゾーンに出た時、超次元ゾーンより、コスト4以下の闇のドラグハートを呼び出せます。地獄より、罪の凶器をここに——《獄龍刃 ディアボロス》」
龍覇 ウルボロフ 闇文明 (6)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア/ドラグナー 4000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト2以下のドラグハート1枚、または、コスト4以下の闇のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。
スレイヤー
獄龍刃 ディアボロス ≡V≡ 闇文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、クリーチャーを1体、自分の墓地から手札に戻す。
龍解:自分のターンのはじめに、クリーチャーを2体、自分の手札から捨ててもよい。そうした場合、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
地底に封じられし、龍の魂を秘めた破壊の刃《ディアボロス》。
呪符によって封印されていたその刃は、龍と心通わせる者の雄叫びを聞き、今、目覚める。
すべての束縛を引きちぎり、その刃は戦場へと赴いた。
「《ディアボロス》を《ウルボロフ》に装備。能力で墓地の《特攻人形ジェニー》を回収。ターン終了」
《ウルボロフ》は地中より飛び出した《ディアボロス》を掴み取り、そして《ディアボロス》が引き連れる死者の魂を取り込む。
「また手札を破壊する作戦か? だが、もう遅いぞ」
アワルティアは少女を見透かしたように言うと、手札を切った。
「《コッコ・ドッコ》により、私のコマンド・ドラゴンを召喚するコストは3軽減される。コストを引き下げ、4マナを支払う」
悪夢のぬいぐるみによって、マナの消費を抑えるアワルティア。
そしての己の罪を顕現させる。
「出でよ、我が罪の証にして、私自身——《強欲の悪魔龍 アワルティア》!」
現れたのは、七体存在すると言われる大罪の一角、《アワルティア》。
その罪は、強欲。
すべてを手に入れ、すべてを奪い、すべてを我が物とするために、どのような罪をも犯す、貪欲なるもの。
彼は価値のあるものならば、どんなものでも求める。それはたとえば財宝という富であり、それはたとえば支配者という名声であり、それはたとえば——死者という魂である。
『私の能力で、私の墓地に存在するファンキー・ナイトメアをすべて手札に!』
強欲の悪魔龍 アワルティア 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 6000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、ファンキー・ナイトメアをすべて、自分の墓地から手札に戻す。
W・ブレイカー
《アワルティア》は長大な舌を伸ばして、墓地に落とされたすべてのファンキー・ナイトメアをすくい取ってしまう。
そして、その命を、彼の手中に収めた。
「…………」
少女は、そんな彼を、無感動に見つめていた。黒く深い、その瞳で。
《アワルティア》は序盤からかなり墓地肥やしに力を入れており、墓地に落ちていたファンキー・ナイトメアの数は相当多い。ゆえに、その能力で手に入った手札の量も膨大だ。
これでは《ジェニー》で一枚一枚ちまちま手札を落としていてはキリがない。それよりも早く、《アワルティア》が物量で押してくるに決まっている。
『さらに余ったマナで《強襲のボンスラー》を召喚! ターン終了だ』
「……私のターンの初めに、手札のクリーチャーを二枚、墓地へ」
少女は手札にある、先ほど回収した《特攻人形ジェニー》と、元々手札にあったらしい《ガナル・スクリーム》を墓地へ置いた。
『自ら手札を……一体なにをするつもりだ?』
「《ディアボロス》の龍解条件は、ターン初めに手札のクリーチャーを二体、生贄に捧げること……さぁ、始めましょう」
断罪を、と少女は宣告する。
そして、巨大な大鎌を振り上げた。
それが、断罪の合図だった。
「貴方の罪を、数えましょう」
まるで歌うように、彼女は罪状を述べる。
「私の罪と、比べましょう」
そして——
「——二人一緒に、罰しましょう」
時が来た。
断罪の時が。
「強欲の罪に、地獄の罰を——龍解」
《ディアボロス》に秘められた、破滅の魂が、解放される——
「——《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》」
破滅の悪魔龍 ディアジゴク ≡V≡ 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーのパワーは、自分の墓地にある闇のカード1枚につき−1000される。
W・ブレイカー
地獄の刃は瘴気を放ち、龍の力と共にその姿を現す。
煌びやかな黄金の装飾が施された刃は、魔眼が開かれ、大鎌の如く反り返り、その異質さを誇示している。
全身をうねる鎖。蝙蝠のように広げられた深い青の翼。禍々しさを放つも、均一に整えられた装備は一種の美を備えており、高貴さすら感じさせる。
とても地獄の魂の姿とは思えない。しかしそれでも、こうして存在している。そんな豪奢な異常さを備えた龍こそが、《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》だった。
そしてこの瞬間から、地獄の使者による、破滅へと向かう道は完成していた。
「《ディアジゴク》で攻撃……そして、能力発動」
突如、少女の墓地のカードが、暗い光を放つ。
「私の墓地に闇のカードは十四枚。よって、《アワルティア》のパワーを−14000……破壊します」
『な……っ!?』
《ディアジゴク》が鎌を一振りすると、黒い瘴気が放たれる。
瘴気は《アワルティア》を包み込むと、その身を蝕んでいった。
《アワルティア》の身体が変色していく。黒ずんでいく肉体は朽ちていき、やがて泥のように崩れ落ちていく。
『ぐ、お、あ、あぁぁぁ……!』
そして、やがて《アワルティア》の全身を侵食し、罪によって穢された身体は完全に朽ち果てた。
「……W・ブレイク」
「ぅぐぁぁ……《ボンスラー》でブロック!」
アワルティアのパワーを極限まで落として墓地に送り込んだ後、《ディアジゴク》の鎌はアワルティアのシールドに向く。
その攻撃は《ボンスラー》が決死で止めたものの、しかし《ディアジゴク》は、少女の場で重苦しい威圧感を発している。
まるで、アワルティアに破滅の種を撒いているかのような、徐々に迫りよる重圧を。
「ぐぬぬ……! 《オタカラ・アッタカラ》を二体と《爆弾魔 タイガマイト》を召喚!」
「呪文《リバース・チャージャー》。墓地から《タイガニトロ》を回収。そして、そのまま《爆霊魔 タイガニトロ》を召喚。《ディアジゴク》で攻撃、能力で《タイガマイト》のパワーを−13000し、破壊。シールドをWブレイク」
「ぬぅ……!」
「続けて《ウルボロフ》でもシールドをブレイク」
《ディアジゴク》の鎌が二枚の盾を切り裂き、《ウルボロフ》の拳が一枚のシールドを砕く。
一気に三枚のシールドを削り取られたアワルティア。しかし手札は多いため、なんとか攻撃を凌ぐことができれば、どこかで活路を見いだせるかもしれない。
だが、しかし。
「ターン終了……その時、《タイガニトロ》のマナ武装5、発動」
少女はそんな希望をいとも容易く、そして躊躇いなく、刈り取るのだった。
爆霊魔 タイガニトロ 闇文明 (4)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア 4000
マナ武装 5:自分のターンの終わりに、自分のマナゾーンに闇のカードが5枚以上あれば、相手は自身の手札から1枚選び、残りを捨てる。
「手札を一枚選んでください……それ以外をすべて、墓地に落とします」
「なに……!?」
アワルティアの手札は、自身の能力によって大量に増えている。息切れはまずありえないほどの量だ。もとより後半から物量で巻き返す作戦だったのだろう。
しかし、少女はそれを許さない。《タイガニトロ》はマナ武装によって、相手の手札を一枚残してすべて爆破する。シールドブレイクで増えた手札も関係ない。残るカードはたった一枚だけ。
死霊を炸薬に、マナを火種に、《タイガニトロ》はアワルティアの手札に爆弾を設置する。
そして、次の瞬間。
彼の手札が、爆散した。
ただ一枚のカードを残して。
「よくも……よくも私が掻き集めた魂を……! 許さん……許さんぞ! 小娘!」
「私はただ、貴方の強欲の罪を裁くだけです」
「抜かせ! 《ポーク・ビーフ》と《ハサミ怪人 チョキラビ》を召喚!」
アワルティアは、強欲という衝動のままに収集した数多の魂をほぼすべて消し炭にされ、激昂する。
しかしいくら睨みを利かせようとも、アワルティアの手札はこのターンのドローを含めて二枚しかない。彼が取れる行動は限られている。
「二体の《オタカラ・アッタカラ》でシールドを攻撃だ!」
二体のクリーチャーを並べつつ、先に並べていた二体のクリーチャーでシールドを割るが、しかしだからといって大勢は変わらない。
「《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。そして《爆弾団 ボンバク・タイガ》を続けて召喚。《チョキラビ》のパワーを−3000、破壊」
「ぐ……だが、《チョキラビ》の能力でドローだ!」
「《ディアジゴク》で攻撃……《ポーク・ビーフ》のパワーを−15000、破壊」
黒い瘴気がブロッカーを根絶し、鋭利な刃がアワルティアの残った二枚のシールドをすべて刈る。
だが、彼もやられてばかりではなかった。
「っ、来た、S・トリガーだ! 《地獄門デス・ゲート》! 《ウルボロフ》を破壊し、墓地から《墓標の悪魔龍 グレイブモット》をバトルゾーンへ!」
「…………」
「さらにもう一枚! 《インフェルノ・サイン》で《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》をバトルゾーンに!」
最後に割られた二枚のトリガーで、巻き返しを図るアワルティア。
少女は《グレイブモット》が睨みを利かせているため、《タイガニトロ》では攻撃せず、ターンを終える。
「ターン終了……《タイガニトロ》のマナ武装5、発動」
「癪な能力だ……だが、今はもういい。私のターン! 《ボンスラー》を二体召喚! そして、《トラトウルフ》で攻撃し、能力発動! 今度は貴様の手札を奪わせてもらうぞ!」
雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。その後、その捨てたカードよりコストが小さい闇のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
雷鳴が轟き、少女の手札が貫かれる。
貫かれたカードは、コスト7の《惨事の悪魔龍 ザンジデス》。
《トラトウルフ》が放つ稲妻は、敵の命を知識ごと奪い、それを糧に死者を蘇らせる。
「墓地から《ボンバク・タイガ》をバトルゾーンに! マナ武装3で貴様の《ボンバク・タイガ》を破壊! どうだ、なにかを奪われるという気分は!?」
手札を奪われ、それによりアワルティアの場数を増やされてしまった。
《トラトウルフ》の攻撃を《ホネンビー》でブロックしながら、少女は囁く。
「……最悪です」
少女は小さな声で、しかし確かな嫌悪を見せた。
だが、アワルティアに向けられた悪意は、まだぬるい。
「しかし、最も罪深く、悪であるのは、私自身……」
「なにを訳の分からんことを。《オタカラ・アッタカラ》二体でシールドをブレイク!」
連続で砕かれるシールド。だが少女は、傷つく身には目もくれず、さらなる闇を、強欲の化身に見せつける。
「呪文……《魔狼月下城の咆哮》」
「な……っ!」
血に飢えた狼が咆哮する。月の下に集う、悪魔的な力を得たその雄叫びは、殺意と悪意によって弱者を食い殺す。
二体の《ボンスラー》は、少女が発する闇の瘴気に耐え切れず、消し飛んだ。
「……終わりにしましょう」
そう彼女が宣告した刹那、《ディアジゴク》が動く。
《グレイブモット》を闇の瘴気に包み込み、存在を消した。
「《破滅の悪魔龍 ディアジゴク》で——ダイレクトアタック」
そして、少女と共に、命を刈り取るようにその鎌を、振るう——
「強欲の罪、断罪しました——」
- 70話 「冥界の語り手」 ( No.248 )
- 日時: 2015/10/05 15:30
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: .HplywZJ)
「——強欲の罪、断罪しました」
少女は、その手に握った大鎌を振るう。
闇夜よりも暗く、地の底よりも深く、死者の蠢きよりも悍ましい、断罪の刃を。
そして、強欲に塗れた悪魔龍は、虚無へと姿を変えて、裁かれた。
「……強欲には、無の罰。なにも存在しない、無のみが支配する世界で、その罪を償ってください……」
消滅したアワルティアの残滓を見つめて、少女は鎌を一振りする。
そして身体を翻すと、こちらに気付いたように視線を動かした。
「……人間、ですか……珍しいですね、こんなところに」
「…………」
淡々と、少女は言葉を紡いでいく。そこには一切の感情が含まれていない。
ただ感じるのは、彼女の声の裏に潜む、暗黒のような陰りのみだ。
(この人……ちょっとだけ、昔の恋に似てる……)
その無感動さに、暁は過去の恋——ラヴァーと呼ばれていた頃の日向恋を想起する。
「たまたまここを通りかかった……ということは、ないですよね。強欲の大罪龍は既に存在していませんが、如何なる用件でこの地を訪れたのでしょうか」
「……その前に、一つ。聞いてもいいかな?」
少女の問いに、リュンが質問で返す。
少女は無感動な眼を、ほんの少しだけ細める。そして、やや間を置いて、口を開いた。
「君の名前は?」
「……ライです」
ライ、と少女は静かに名乗った。
「そうか」
対するリュンも、静かに頷く。
頷いて、そして、
「——で?」
「…………」
さらに、問い返した。
いやさ、問い続けた。
「君の、君に与えられた役割としての、その名前は?」
「リュン? ちょっと、どうしたの?」
執拗と言えるほどに、リュンはライへと問いかける。もはや、すべてを知っているかのように。
ライはまったく表情を変えないまま、しかし小さく口を口腔内で動かし、呟く。
「……そうですか、ということは、貴方は……」
どこか納得したようなライ。
彼女は、手にした鎌を引き寄せながら、さらに言葉を紡ぐ。
「もう一度、名乗ります。私はライです」
その名は、先ほど聞いたばかりの名だ。
「私の名前はライ——」
同じ名を続け、そして彼女は、名乗りを続ける。
彼女の役割。この世界に生を受けた理由。その存在証明。
彼女は語る、己の名と共に。
「——《冥界の語り手 ライ》です」
「《冥界の語り手》……? え? ってことは、ライも語り手のクリーチャーってこと?」
「はい、その通りです」
彼女、ライ——《冥界の語り手 ライ》は、小さく首肯する。
暁はそれを見て、目をぱちくりさせていた。暁だけではない、浬や沙弓も柚も、驚いたように目を見開いている。恋だけが、あまり興味なさそうな眼をしているが、それでも今まではずっと暁に向けていた視線を、今はライに向けていた。
「……いや待て。確か《語り手》のクリーチャーは、十二神話とやらに封印されていて、他の世界の生命体じゃないとその封印が解けないんじゃなかったのか?」
「そのはず、ですが……」
「それに、コルルたちみたいな感じじゃないよ。私よりも背ぇ高いし」
「見たところ、人間はいないわね。たった一人で、ここにいるみたい……」
どこを見ても、他に人影はない。ただ目の前に、ライが一人いるだけだ。
「やっぱりね。予想通りだ」
「リュン。あなた、なにか知ってるわね」
「知ってると言えば知ってるかな。正確には、そう予想していたってだけだけど。とりあえず事実は確認できた。少し、腰を落ち着けて話がしたいな。君——ライさんも一緒に」
「……私は、構いません」
この地の罪は罰しましたから、と言って、ライは鎌を下す。
そして、くるりと回したかと思うと、いつの間にかその手からは消えていた。
「わ、凄い。手品?」
「……服の中に仕舞っただけです」
「そんなことより、適当な建物の中に入ろう。もうここの統治者はいないみたいだけど、その辺のファンキー・ナイトメアたちが暴れても困るし」
リュンは手を振って、一同を先導する。
そして、一同はすぐ近くにあった廃ビルへと駆け込んだ。窓はほとんど砕かれ、タイルは剥がされ、どこか埃っぽい廃屋同然の建物だ。
各々、バラバラになったベンチらしきものに車座のように腰掛ける。
「……さて、それじゃあ話そうか」
一同をぐるっと見回してから、リュンはおもむろに口を開いた。
「まず、僕が今回の目的とした『死神』だけど、これはライさんのことだ」
「えぇ!? そうなの!?」
「……まあ、そんなところだろうとは思っていたがな」
「さっきのデュエル……強かった」
「『死神』と呼ばれ、恐れられるほどの力はあるようには感じたわね」
吃驚する暁。そして周囲は、さも当然のようにリュンの言葉を飲み込んでいた。
「……そうなの?」
「あきらちゃん、気づいてなかったんですか……?」
「……あきら……うっかり」
ポカンとした暁に、苦笑いを浮かべる柚。他の者は呆れてものも言わない。
「一応、ライさんにも確認を取ってみるけど、今までプライドエリアと怠惰城の主に会ったことは?」
「……あります。プライドエリアの傲慢の罪は、他者を虐げる圧政の罪。穢れた誇りと共に裁きました。怠惰城の怠惰の罪は、民の生すらも停滞させる怠慢の罪。不動の意志と共に断罪しました」
ぼんやりと回想するかのように語るライ。
事実確認はできた。ライは、既にプライドエリアと怠惰城の統治者を抹殺している。
つまり、彼女が噂の『死神』なのだ。
「ほへー、なんか思ってたのと違うなぁ、『死神』って。肌とか真っ白だし、すごいきれいだね」
「わたしも、もっとこわいクリーチャーだと思ってました……」
身の丈ほどもある大鎌に、闇夜よりも深い漆黒のローブ。確かに、暁たちが漠然と抱く死神のイメージに近い部分はあるが、顔、身体、声、そして人格——それらは暁たち、人間に近い性質がある。
これまでクリーチャーを惨殺したというのも、断罪という名の下、大罪の統治をしていたクリーチャーたちを裁いたことに起因しているのだろう。
少なくとも、今こうして相対している限りは恐ろしいクリーチャーとは思えない。こちらに刃を向けるようなこともしない。
もっと危険なクリーチャーだと思っていたが、目の前にいるのは一人の少女でしかなかった。
「……それで。そんな事実確認が主目的じゃないでしょう」
「そうだね、ここから本題だ」
それは、ライにパートナーがいないこと。それ以前に、どうやって封印を解いたのか。
さらに言えば、彼女は語り手でありながら、コルルたちとは姿が異なる。明らかに他の語り手とは違う、異質な存在であった。
これらの謎を、ライにぶつける。彼女はどうして封印を解いたのか、彼女自身は如何なる存在なのか。
「……私が独力で封印を解いた理由、からお答えしましょう」
ライは静かに、懺悔するかのように、語り始める。
「それは、酷く単純です……《冥界神話》の力が弱く、そして私の力が彼よりも強かった。ただそれだけです」
「え? 《冥界神話》って、ライよりも偉いんじゃないの? それなのに、ライの方が強いって……?」
「それはちょっと説明が難しいね。詳しいことはライさんに説明してもらう方が分かりやすそうだから任せるけど、その前に軽く言うなら、《冥界神話》とその語り手の関係は、他の神話たちとは一線を画していたんだよ」
普通、十二神話とその語り手の関係は、主従関係。程度差や微妙な認識の違いはあれど、基本的には主とそれに仕える従者、というような関係だ。
表向きでは《冥界神話》とその語り手も、その点では相違ない。しかしその実態と、《冥界の語り手》の生まれた経緯は、明らかに他と異なっていた。
「まず、《冥界神話》——私の主、ハーデスについて、お話します」
ライは最初に、そう切り出した。
「《冥界神話》、ハーデス。彼は、とても弱かった。十二神話、ひいてはすべての神話のクリーチャーの中でも一際力が弱い存在でした。ゆえに彼は、『最弱神話』と呼ばれ、蔑まれた。それゆえ、でしょうか。彼は力に貪欲だった。力への渇望が、並はずれていた……一歩でも道を踏み外せば、その渇望が暴れ出しそうなほどに、彼は危険な衝動を抱えていました。しかし彼は、力は弱くとも、非常に聡明でした。死者や亡霊を扱う術に関しても、どの闇のクリーチャーよりも巧みで、繊細だったのです。それゆえに、十二神話に選ばれた。そして彼は、聡明だったがゆえに、己の危険さを自覚していた。そんな彼を抑圧するために生まれたのが、私です。ハーデスは己にない力を私に与えた。彼が渇望のあまり暴走することを止めるために、私は存在していたのです」
それが《冥界神話》と《冥界の語り手》の関係。
ライは己の暴走を未然に防ぐために、《冥界神話》が生み出した存在。
つまり、従者が主のストッパーなのだ。ライは《冥界神話》の渇望を抑えるための、枷なのだ。
ライが自力で封印を解いたのも、《冥界神話》の力がそもそも弱かったから。そして、そんな弱い《冥界神話》を抑えるためのライが強かったから。単純に、ただそれだけのことだ。
力量が逆転した主従関係。その異質さがために、ライはこうして、単独で動くことができている。
「……しかし」
そこでライは、声のトーンが低くなる。
変わらず淡々とした口調だが、それでも彼女の声色が暗くなった。それは、しっかりと感じ取ることができる。
「彼は、暴走しました」
「…………」
「私は無力でした。彼の暴走を止められず、被害を抑えることもできず……結局、十二神話たちの戦争は激化するばかり。結局、私はなにもできなかった。使命を全うすることが、できなかった」
それが私の罪です、と。
ライは静かに締め括った。
しばし一同に沈黙が訪れる。
一つの目的、使命を持って生まれた存在にも関わらず、その役割を遂行できなかった。
それが己の存在する意味だったにもかかわらず。己の無力さを痛感した彼女は、なにを思ったのだろう。
与えられた役目すらも果たせない、無力なだけの存在に価値はない。それを宣告されたかのような結末には、悔いと自責の念。
そして、罪悪感のみが募る。
「……それゆえに、私は罪を償わなければなりません。《冥界神話》がこの世界に残した傷痕を巡り、罪なる存在を裁く。それが私に課せられた、唯一の役目にして罰……この身と、心と、命——すべてをかけて、私は《冥界神話》の犯した罪と、無力であった私自身の罪を、償います」
そう言って、彼女は静かに締め括った。
《冥界の語り手》の語り話が、閉じられた。
使命を全うできなかった彼女の、罪。
それを償うために、彼女は彷徨う。
贖罪こそが、今の彼女の存在理由。
それゆえ、だろう。
罪なる存在を裁く行為。
そして——
「……ドライゼ」
「なんだ?」
唐突に、ライに呼びかけられるドライゼ。
何気なく返答した彼に、彼女は、求める。
——罪を償なわせることを。
「貴方のその銃で、私を撃ってください」
「な……っ!」
吃驚するドライゼ。いや、ドライゼだけではない。その場にいた全員が、驚きのあまり、言葉がなに一つとして出てこない。
しかしライはそれを気にする風もなく、続けた。
「頭蓋でも、腹でも、この胸でも——」
「おいおいおい! ちょっと待て!」
淡々と続けるライを、慌てて止めるドライゼ。やっと彼女の言葉を聞き取り、頭が理解を始めた。
「俺がそんなことできるわけないだろう? 野郎ならまだしも、女に銃を向けられるかよ」
「ですが、私は……《冥界神話》は、貴方の主を——」
ライは無感動のままに、言葉を返す。
ただ事実を述べているだけであるが、その事実があるからこそ、彼の言い分が受け入れられないとでも言うように。
彼女は語る。
己の神話ではない神話を。
己の罪によって引き起こされた惨劇を。
己の語るべき神話が為した惨憺たる大罪を。
一人の語り手として、語る。
「——殺したのですよ」
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