二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- Re: デュエル・マスターズ A・M —オリキャラ募集— ( No.74 )
- 日時: 2014/05/17 07:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
プツ男さん
まあ、語彙はともかくとして、文章に関してはモノクロは強調目的以外で行間を空けないので、少しでも見やすいよう文を揃えることを意識してはいます。
モノクロも忘れていましたが、《ガイア・エッグ》があればまだ出せそうな感じはしますね。それでもビートに特化した方がよさそうな感じはしますけど。
理論上は2ターン目に出せますが、《ハチ公》自体さほど重くないので、3ターン目に出れば十分だと思います。速攻なら少し重めですが、中速くらいのビートダウンなら、後続を呼べるアタッカーとハンデス対策として採用の余地はありますし。
とりあえず、ハンタービートということで採用を検討しますが……というか、ずっと考えているのですが、どうしようかな……人数増やそうにも、これ以上増えると集団として動かしにくくなるし……
- 21話 「ラヴァー再見」 ( No.75 )
- 日時: 2014/05/17 11:09
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
ラヴァーが去った後に《語り手》が眠る小部屋に向かったが、そこにはなにもなかった。恐らく、ラヴァーが目覚めさせたか、持って行ってしまったのだろう。もしかしたらあのキュプリスが目覚めさせたクリーチャーなのかもしれない。
なにはともあれ、結果として暁がラヴァーにやられただけで、アルト・エンパイアでの収穫はゼロだった。しかし、だからといって彼女たちの行動に変化があるわけではない。むしろ今まで以上に活発になっているとさえ言えた。
リュンが言うには、
「彼女がこの世界の混乱の元凶なら、今まで以上に凶暴化したクリーチャーを鎮圧しないと」
ということで、ラヴァーに叩きのめされはらわたが煮えくり返っている暁も半ば躍起になってクリーチャーを薙ぎ倒していた。
そして、早くも半月程時間が経ったある日——
「《偽りの王 ナンバーナイン》召喚」
暁とナンバーナインのデュエル。
ブロッカーを展開されて身動きの取れなくなった暁に対し、ナンバーナインは着々と準備を整え、遂に自分自身である《ナンバーナイン》を繰り出した。
「うわ、これはやばい……」
暁の場には《スピア・ルピア》が二体と《爆竜トルネードシヴァXX》の三体。シールドは五枚ある。
《ナンバーナイン》の場には《一撃奪取 アクロアイト》が二体、《幻盾の使徒ノートルダム》《宣凶師パルシア》《栄光の翼 バロンアルデ》そして《偽りの王 ナンバーナイン》。シールドは三枚だが、展開力では圧倒的に負けている。
『《アクロアイト》でシールドをブレイク』
「くっ、でもS・トリガー発動! 《スーパー炎獄スクラッパー》!」
一枚目からいきなりS・トリガーを引き当てる暁。しかし、そのトリガーは光を失う。
「え? な、なんで……?」
『無駄だ。《ナンバーナイン》が存在する限り、貴様は呪文を唱えられない』
偽りの王(コードキング) ナンバーナイン 光文明 (9)
クリーチャー:キング・コマンド・ドラゴン/アンノウン 9000
相手は呪文を唱えることができない。
W・ブレイカー
「マジで!?」
『マジだ。もう一体の《アクロアイト》と《ノートルダム》でもシールドブレイク』
これで暁のシールドは二枚。だが、三枚目のシールドブレイクで、新たなS・トリガーを引き当てる。
「S・トリガー発動《火焔タイガーグレンオー》! これはクリーチャーだから《ナンバーナイン》にも邪魔されないよ! 相手のパワー2000以下のクリーチャーをすべて破壊!」
《ナンバーナイン》《パルシア》《ノートルダム》を残し、《ナンバーナイン》のクリーチャーが焼き払われる。
「そして私のターン! 《トルネードシヴァ》で《ノートルダム》を攻撃! その時《トルネードシヴァ》の能力で、《トルネードシヴァ》と《パルシア》を強制バトル!」
《トルネードシヴァ》の鎖に縛られ、引き寄せられる《パルシア》。二体の強制バトルが発生し、《トルネードシヴァ》が一方的に討ち取った。そして、
「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」
暁の切り札《バトライオウ》が現れる。
《トルネードシヴァ》の攻撃はそのまま《ノートルダム》に放たれ破壊。さらに、
「《スピア・ルピア》で《ナンバーナイン》に攻撃!」
『効かん!』
《スピア・ルピア》が突貫するも、《ナンバーナイン》はそれを一蹴する。光線に貫かれた《スピア・ルピア》は、墓地へと落ちていくが、
「《スピア・ルピア》が破壊されたから、能力発動! 《バトライオウ》のパワーをプラス2000、さらにアンタップクリーチャーを攻撃できるようにするよ!」
『だが、そいつは召喚酔い。攻撃はできまい』
「《バトライオウ》はね! でも、この子は攻撃できるよ。もう一体の《スピア・ルピア》で《ナンバーナイン》を攻撃!」
《スピア・ルピア》はアンタップクリーチャーを攻撃できる。だがそのまま突っ込んでも、また一方的にやられるだけ。
しかし、今度は違う。
「《バトライオウ》の能力発動! 《スピア・ルピア》の代わりに、《バトライオウ》がバトルだ!」
『なにっ……グアァァァ!』
《スピア・ルピア》の能力でパワーが10000となった《バトライオウ》が、《ナンバーナイン》を討ち取る。これで、相手の場にクリーチャーはいなくなった。
「さらに《タイガーグレンオー》でシールドブレイク!」
「ぐぅ、まだだ! S・トリガー発動《霊騎コルテオ》を召喚! さらに《ガガ・ピカリャン》を召喚し、一枚ドロー! さらにさらに《幻盾の使徒ノートルダム》と《光陣の使徒ムルムル》を召喚! 《コルテオ》でシールドをブレイク!」
「無駄無駄! 《GENJI・XX》召喚! スピードアタッカーの《GENJI》で攻撃して、《ムルムル》を破壊! Wブレイク!」
「《ノートルダム》でブロック!」
これで、ナンバーナインの場からブロッカーはいなくなった。
「《トルネードシヴァ》でWブレイク! 《バトライオウ》でダイレクトアタックだ!」
「よし、終わりっ!」
「お疲れ様です、あきらちゃん」
クリーチャー世界での活動にも慣れた頃、いつものように暁たちは、不法にテリトリーを拡大するクリーチャーを抑圧していた。今回は、光文明の治める小さな人口浮島に来ている。
「それにしても、ここ半月で随分とクリーチャーを倒したわねぇ……」
「それでもこの世界は広大だからね。まだまだ荒れてるエリアはいくらでもあるよ」
「だが、こうして何度もクリーチャーと戦っていると、その経験が身についているのが分かるな」
一同が頷く。毎日のように幾度となくクリーチャーと戦っているので、否が応でも鍛えられるのだ。
「これなら、あのラヴァーって人にも勝てる、でしょうか……?」
「そりゃ勿論、次こそ絶対に——」
「難しいな」
暁の言葉を遮る浬。暁が反発しようとするも、その口を押さえて続ける。
「確かに俺たちは強くなっているだろうが、それはあいつにも言えることだろう。それに、今のままでも前のあいつに勝てるかどうかと言われたら、難しいものだ」
「——ぷはっ! そんな弱気でどうするのさ! 次は絶対に勝つんだよ!」
浬の手を振り払い、捲し立てる暁。だが、暁自身がよく分かっているはずだ、ラヴァーの強さは。
しかし、だからこその発言だろう。暁自身、よく分かっているからこそ、負けられないという思いが強い。
「まあでも、あの子は私たちにもうこの世界に来るなって言ってたわけだし、また戦うこともあるでしょうね」
むしろ今まで姿を見せていないのが不思議なくらいだ。
「もしかしたら、また今日も来るかもしれません……」
「上等だよ、今度こそ返り討ちにしてやるさ」
「できればいいがな」
「なにさ!」
皮肉気に言う浬に噛みつく暁。
その時だ。
「まだ……いたの……」
いつの間にか、暁たちから10メートルほど離れた位置に何者かが立っていた。その呟きは酷く小さく、風に乗ってかき消されてしまいそうだが、しかしはっきりと暁たちの耳に届く。
華奢で小柄な体躯。世界を見限ったような昏い瞳。確認するまでもない、それは今まで暁たちの話題の中心にいた少女。
ラヴァーだった。
「っ、来たね……!」
真っ先に反応したのは暁だった。もうデッキケースに手をかけており、やる気満々だ。
「警告、したのに……分からないの……意味、不明……」
「まあまあ、彼女たちにも彼女たちなりの考えみたいなものがあるだろうし、あの時の君の行動から考えれば、君のいうことを素直に聞き入れるとは思わなかったけどね」
ラヴァーの背後から、キュプリスが顔を出す。
「……なんでも、いい。どの道、支配が乱れるから、やめてほしい……警告の次は……制圧」
「やるの?」
「……うん」
静かながらも、ラヴァーから交戦の意志が見えた。
「いいよ、私が相手——」
「待て」
前に出ようとする暁を、浬が制止する。
「な、なんなのさ……」
「俺が行く」
「いや、でも……」
暁を下がらせて、浬が代わりに前に出た。また反発しそうになる暁だが、今度は沙弓がそれを制する。
「まあまあ、ここはカイに任せましょう」
「部長……」
「あの子もあの子で、結構負けず嫌いなところあるからね。ただ見てるだけじゃいられないんでしょう」
今回は譲ってあげなさい、と沙弓は姉のような口調で言う。その口振りに暁は、毒気を抜かれ大人しくなった。
「そういうわけだ。今回は俺が相手だ」
「……どうでも、いい……早く、始める……」
向かい合う浬とラヴァー。その横に侍る《語り手》も、同じように身構える。
「ご主人様、準備はいつでもできています!」
「こっちもだよ、ラヴァー」
プレイヤーとクリーチャー、双方の準備が完了した。
そして次の瞬間、浬とラヴァーは、二人だけの空間に飲み込まれる——
- 22話「結晶龍vs天聖龍」 ( No.76 )
- 日時: 2014/05/18 00:15
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「俺のターン《アクア隠密 アサシングリード》を召喚! 《ピース・ルピア》をバウンスし、《アクア・ブレイド》でシールドをブレイク!」
「私のターン……再び《ピース・ルピア》を、召喚……ターン終了」
浬とラヴァーのデュエル。
浬の場には《アクア・ティーチャー》《アクア戦闘員 ゾロル》《蒼狼アクア・ブレイド》《アクア隠密 アサシングリード》。シールドは五枚。
ラヴァーの場には《幻盾の使徒ノートルダム》《ピース・ルピア》。シールドは四枚だ。
「攻め手は緩めない……《ゾロル》を進化! 《超閃機 ジャバジャック》!」
浬の攻めはどんどん激しくなる。《ジャバジャック》の登場時能力でカードを四枚引き、その後手札二枚を山札の底へ沈める。手札補充と共に、手札の質も良くすることができるのだ。
「《ジャバジャック》でWブレイクだ!」
「ん……S・トリガー、ない……」
「なら、ターン終了だ」
怒涛の攻めを見せる浬に対し、ラヴァーは静かだ。冷静さを保っていると言えばその通りだが、浬の猛攻に対しなんの反応もない。
「……《束縛の守護者ユッパール》を召喚、《ジャバジャック》を、フリーズ……《ノートルダム》も召喚して……ターン終了」
「俺のターン! 《アクア・ハルカス》を召喚し一枚ドロー。《ゾロル》を召喚し一枚ドロー。さらに《アクア・ガード》を召喚!」
次々とクリーチャーを展開する浬。対するラヴァーも、クリーチャーを展開してくる。
「《栄光の翼 バロンアルデ》を召喚……マナを増やして、《不屈の翼 サジトリオ》を召喚……ターン、終了」
とはいえ、やはり展開力は浬に劣る。《ユッパール》のフリーズも解け、これで《ジャバジャック》がフリーに。
「まだだ! 俺のバトルゾーンにリキッド・ピープルは七体! よって、コスト1でこいつを召喚する!」
リキッド・ピープルを大量展開した後は、このクリーチャーの出番だ。浬の切り札が現れる。
「海里の知識よ、結晶となれ——《龍素記号iQ サイクロペディア》!」
数多のリキッド・ピープルの力が結晶となり、誕生したクリスタル・コマンド・ドラゴン《サイクロペディア》。登場時の能力で、カードを三枚引ける。
「さらに《アクア監視員 リツイート》を二体召喚! 《ジャバジャック》でWブレイク!」
「《サジトリオ》でブロック……《サジトリオ》が破壊された時、山札の上から三枚を、見る……」
そして、その中のコスト3以下の光のブロッカーをバトルゾーンに出せるのだ。
「……《サジトリオ》を、バトルゾーンに……」
「削れなかったか……ターン終了だ」
ラヴァーの場にはブロッカーが多いが、しかしそれ以上に浬の場にはクリーチャーがいる。これらのクリーチャーが一気に攻めて来れば、流石のラヴァーでも耐えきれないだろう。
「……うん、そう……」
「?」
「分かった……なら……もう少し、耐える……うん……」
ふとラヴァーを見ると、彼女はぶつぶつと呟いていた。
「なんだ?」
「……私のターン」
浬が疑念をぶつける前に、ラヴァーは自分のターンを進める。
そしてこのターン、彼女のマナは7マナとなった。つまり、
「私が世界を支配する——《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》」
「っ、出たか……!」
ラヴァーの切り札《ヴァルハラナイツ》。登場時とコスト3以下の光のクリーチャーが出るたびに、相手クリーチャーをフリーズするエンジェル・コマンド・ドラゴンだ。
「《ヴァルハラナイツ》の能力で……《ジャバジャック》を、フリーズ」
「そう来るか……だが、そのカードの弱点は見切っている」
《ヴァルハラナイツ》の支配力は確かに高い。だが、その支配を発動するためには、コスト3以下のクリーチャーを出さなければならない。クリーチャーを召喚し続けなければ支配できず、それ以上の軍勢を相手にすれば支配力は及ばない。
つまり、《ヴァルハラナイツ》の支配力を上回る展開力で攻めれば、押し切れるはずだ。
「G・ゼロで《巡霊者ウェビウス》を二体召喚……《アクア・ガード》と《アクア・ティーチャー》を、フリーズ。《ユッパール》と《ノートルダム》で、それぞれ攻撃……」
「なに?」
相打ちとなる《ユッパール》と《アクア・ティーチャー》。そして《アクア・ガード》は破壊される。
少々おかしなプレイングだ。浬のクリーチャーを減らしたいと思うのは分かるが、打点が高くアンブロッカブルの《サイクロペディア》を差し置いてその二体をタップキルすることに大きな意味があるとは思えない。しかも破壊された二体は、攻撃不可能なブロッカーだ。
「《ウェビウス》を握っているとは思ったが、また妙なプレイ……まあいい。俺のターン《アクア・アナライザー》と《アクア・ブレイド》を召喚。《サイクロペディア》でWブレイク!」
《サイクロペディア》はブロックされない。大量のブロッカーをすり抜け、ラヴァーの残る二枚のシールドを叩き割った。
「さらに、残るクリーチャーで総攻撃だ!」
総攻撃と言っても、攻撃する意味のないクリーチャーは攻撃しない。破壊された《サジトリオ》は不発に終わり、《ウェビウス》も一体破壊する。対するこちらの損害は、《リツイート》一体だけだ。
「……ターン終了だ。なにを考えているかは知らないが、俺の展開力はお前の支配力を上回る。このまま攻め続ければ、俺の勝ちだ」
「…………」
その言葉に対し、ラヴァーは黙っている。
しかしその沈黙は、浬の言葉を受け入れたということではなかった。むしろ逆だ。
浬の言葉を否定する、沈黙だった。
「……《ヴァルハラナイツ》を進化——《聖霊龍王 ヴィブロス・ヘブン》」
刹那、聖なる光がバトルゾーンを支配する。
「なんだ……!?」
そして次の瞬間、浬のクリーチャーがすべて消え去った。
「っ、俺のクリーチャーが……!」
しかも見れば、浬のシールドが凄まじい数になっていた。その枚数は、なんと十四枚。
「《ヴィブロス・ヘブン》は、登場時……光以外のクリーチャーを、すべてシールドに、送る……」
聖霊龍王 ヴィブロス・ヘブン 光文明 (8)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 15000
進化—自分のエンジェル・コマンドまたはドラゴン1体の上に置く。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある光以外のクリーチャーをすべて、新しいシールドとして持ち主のシールドゾーンに裏向きにして加える。
T・ブレイカー
「なんだと……っ!」
《ヴィブロス・ヘブン》の能力により、浬の八体のクリーチャーがすべてシールドにされてしまったのだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》で、Tブレイク」
「ぐぁっ!」
「ご主人様!」
《ヴィブロス・ヘブン》の一撃でシールドが三枚砕け、その衝撃で浬の眼鏡が吹っ飛んだ。さらにラヴァーの攻めは続く。
「……《ノートルダム》二体で、シールドブレイク」
一気に五枚のシールドが削られる。それでもまだ九枚残っていた。
「くそ……!」
手札は大量にあるが、しかし選別されてブレイクされたシールドは、どれもこれもバニラクリーチャーばかり。マナはそれなりにあるが、この大量の手札を使い切ることなど不可能だ。
「こうなったら、やるだけやるしかない……《アクア・ブレイド》二体と《ゾロル》を召喚!」
「私のターン……《ヴァルハラナイツ》を召喚」
能力で《アクア・ブレイド》がフリーズする。さらに、
「G・ゼロ……《ウェビウス》を召喚……《ゾロル》も、フリーズ。《ノートルダム》で、攻撃」
《ゾロル》は殴り倒された。浬が展開するクリーチャーを、殴って潰すつもりのようだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》で、Tブレイク……《ノートルダム》で、シールドブレイク」
これで残り五枚。
「俺のターン! 《ゾロル》二体と《アクア・ビークル》、そしてシンパシーでコストを下げた《サイクロペディア》を召喚!」
なお増え続ける手札。しかし、もう手遅れだ。
「……《ヴィブロス・ヘブン》でTブレイク……二体の《ノートルダム》で、シールドブレイク」
遂に十四枚のシールドがすべて破られた。
そして最後。シールドを失った浬に、正義の鉄槌が下される。
「……《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》で、ダイレクトアタック——」
「……この程度の相手なんて……話に、ならない……」
「くそ……っ」
神話空間が閉じ、浬とラヴァーが戻ってくる。
跪く浬と、それを冷たく見下ろすラヴァー。かなり身長差があるので目線の高さは近いが、その瞳の昏さには有無を言わさない圧力があった。
「……考えすぎた、かも」
ふと、ラヴァーは独り言のように呟く。
「この前は、ちょっとムキになってた……支配の邪魔だから、取り除くつもりだった、けど……この程度なら、放っておいても大丈夫、かも……」
「そうだね。彼らにはカード化したクリーチャーの声が聞こえないみたいだし、その程度の力しかないのはもう証明されてるよね」
「うん……」
なにやらラヴァーとキュプリスの間でやり取りが交わされる。そして次に暁たちを見た時のラヴァーの目は、道端の雑草でも見るかのような眼差しだった。
「そういうわけ、だから……あんまり邪魔、しないで欲しい……目障りすぎると、気、変わるかも……しれないから」
刹那、ラヴァーとキュプリスの姿が消える。
- 23話「霧島家の会合」 ( No.77 )
- 日時: 2014/05/18 22:30
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
「カイ!」
ラヴァーが消え、残された浬に沙弓が駆け寄る。続けて、暁と柚もだ。
「カイ、大丈夫?」
「……ええ、まあ」
「ほら、眼鏡だよ……レンズ割れて、フレーム潰れてるけど」
「というか、原型とどめてません……」
「はぁ……また買い直すのか」
壊れた眼鏡はその辺に投棄し、浬は立ち上がった。
「奴の弱点は見抜いていたつもりだったが……抜かったな」
まさかあんな方法で浬の展開力に対抗して来るとは思わなかった。それは全員が感じていた。
「かいりくんまでやられちゃうなんて……どうすればいいんでしょう……?」
「また見つけてぶっ飛ばせばいいんだよ。簡単簡単——」
「とは行かないから、なにか対策を講じないとね」
暁の楽観視を、華麗に沙弓が一蹴する。
「私の見立てだと、今の私たちじゃあの子には勝てないわね。特に、実際に戦ったカイと空城さんはよく分かってるんじゃないかしら?」
「そうですね」
「むぅ……」
認めたくはないが、暁だって分かっている。
ラヴァーは強い。自分よりも、ずっと高い場所にいる存在なのだ。
「それに、あの子はもう私たちに干渉する気がないみたいだし、こっちから探すのは難しそうね」
「で、でも、この世界の抱えている問題の原因が、あの人にあるのなら、各地の騒動を治めていればいつか会えるんじゃ……?」
「どうだろうな。向こうからこっちに出向く気はなくなったみたいだし、仮に奴の尻尾が掴めたとしても、それがいつになるかは分かったもんじゃない」
「そもそも私たちって、リュンに言われるがままにこの世界に来てるだけで、あんまりこの世界のこと知らないのよね」
「う……まあでも、一度に説明できるような世界じゃないし、少しずつ覚えてもらうしか……」
「別に怒ってるわけじゃないから。で、今現在、私たちに求められていることは二つね」
一つは、ラヴァーを倒せるだけの力を身につけること。
もう一つは、ラヴァーの居場所を見つけること。彼女が本当にこの世界を支配しているとなれば、拠点のようなものが必ず存在するはずだ。その場所を突き止められれば、こちらから殴り込みをかけられる。
「……その辺の話は、また明日にしましょうか。みんな疲れてるでしょうし。リュン、転送を——」
「部長。明日は土曜日です、学校は休みですよ」
すかさず浬の声が届く。
学校が休みなら、部活はできない。月曜日に回すこともできると言えばできるが、
「あ、そうね。じゃあカイの家に集まりましょう」
「なんでそんな綺麗な流れで俺の家を会議場に!?」
沙弓の部長権限により即座に明日の予定が決定された。
「浬の家かぁ、どんなとこなんだろ」
「普通の家だ。っていうか、勝手に決めるな」
「別にいいじゃない。明日はおばさんたちもいないって言ってたし」
「そういう問題じゃ……」
最後まで抵抗を試みる浬だったが、しかし沙弓にはどうしても強気になれないようで、そのまま多数決の原理に押し切られてしまう。
そしてなんやかんやあり、土曜日。
暁と柚は、二人で霧島家を訪れていた。
「……普通の家だ」
「そう……ですね」
特徴と言える特徴がないほど、普通の一軒家だった。浬自身が言っていたことだが、少々がっかりである。
「まあいいや。とりあえず入ろう。インターホンは……」
門扉の近くを探すが、しかしそこにはインターホンも呼び鈴らしき物体もない。
「あきらちゃん。あそこです、玄関の扉の近くに付いてるみたいです」
「あ、本当だ。ここだけ変わってるね」
そう言いながら門を潜り扉の前に立つ。そして、今まさにインターホンを押そうというその時、扉がひとりでに開く。
「あ、来たわね二人とも。いらっしゃい」
「うわっ、部長!?」
「こ、こんにちは……」
勿論、扉が勝手に開くなどということはなく、中から沙弓が出て来た。
「もう来てたんですね」
「まあね。当然よ」
「当然なんですか……?」
どこか含みのある言葉に聞こえるが、沙弓の口振りからはそれ以上は分からない。
沙弓に促され、霧島宅へと入る。すると、今度は浬が出て来た。
「ちょっ、部長……あんまり動き回らないでくださいよ」
「なんで? 別にいいじゃない、困ることなんてないし」
「そういうことじゃないというか、俺が困るんですよ」
本当に困ったような浬の表情。というより、どこか必死な感じだった。
その表情がなんとも言えない、なにかの極みのような顔になるのは、この直後だ。
「それより、どの部屋で話し合いましょうか。私の部屋でもいいけど、やっぱり面白そうだからカイの部屋にする?」
「……私の部屋?」
暁が反応する。沙弓は、確かにそう言った。
そして浬は、やっちまった、とでも言うように顔を手で覆っていた。
「部長」
「なにかしら」
「私の部屋ってどういうことですか?」
「そのまんまの意味よ。この家の、私の部屋」
神経は常人よりもかなり図太い暁だが、それでも思考が少しの間フリーズする。
情報を整理しよう。ここは霧島家で、浬の家だ。なので浬の部屋があるというのは頷ける。だがここに、沙弓の部屋もあるのだという。
それは、つまり、
「ぶちょーさんとかいりくんって……同じ家に住んでる、ってことですか……?」
「正確には私が居候してるんだけどね。まあ概ねそういうことよ」
「…………」
非常に虚無感の漂う表情を見せる浬。彼としては、沙弓と同居しているという事実は知られたくはなかった。ゆえにこの家での会合を拒否したのだ。
年頃の男女が一つ屋根の下、となれば騒ぎ立てる輩は多い。特に暁のような種類の人間には絶対に知られたくないことだったのだが、その努力は中学進級後、僅か一ヶ月ちょっとで水泡に帰したのだった。
「へぇ、浬って部長と一緒に住んでたんだ」
「あの、あきらちゃん、そんな軽く流せるものじゃないような……」
しかし、暁の反応は思った以上に淡泊だ。馬鹿だからこの事実の重大性が理解できないのか、と浬は暁の非常識的なところに少しだけ感謝した。
「とにかく、もう俺の部屋でいいから、さっさと話し合いをとやらを始めるぞ」
これ以上あれやこれやと詮索されたり、沙弓に余計なことを言われたくないので、浬はさっさと本題に入ることにした。
霧島家、浬の部屋。
暁がリュンを携帯で呼び、役者が揃った。
「……で、まずはどうすればいいのかな?」
「とにかく、クリーチャー世界の地図が欲しいかしら。あとは連絡手段ね。柚ちゃんの時みたいなときや、この前みたいに分断されたりすることもあるかもしれないし、手分けして行動することもあるかもしれないし」
敵の居場所を突き止めるなら、地図が必要だ。さらに各自の連携を崩さないために連絡手段も欲しいところである。
「ふむ……そういうことなら、やっぱあの人に頼むしかないよね」
「ウルカさんですか?」
「人ではないと思うんだがな……」
「えーっと、電話の使い方って……こうだっけ?」
「ウルカ、電話持ってるの?」
「自分で作ったんだって」
メールの使い方は理解したようだが、電話はまだ不慣れなようで、たどたどしい手つきで操作する。
「こういう連絡手段はあった方が便利だし……あ、繋がった。もしもし、ウルカさん?」
『なーにー? 今、作業中だからあんまり邪魔して欲しくないんだけど』
間違ってスピーカー機能をオンにしてしまったのか、ウルカの声がこちらまで聞こえてくる。だがリュンは気にせず、もしくはこれが電話の素の音量なのだと思い込み、そのまま続ける。
「実は、かくかくしかじかで」
『は? かくとかしかとか言われても分かんないよ。なんなの?』
説明の省略は許されず、リュンはクリーチャー世界の地図や連絡手段が必要なことを伝える。
『あー、なーるほど。まーあたしたちの世界を救ってくれる勇者様ご一行の頼みなら? 聞かないこともないのかなー?』
「はっきりしないですね……」
『いやいや、作るよ作る、作りますよー。パパの大事にしてた世界だしねー。じゃ、明後日までには作っとくから、できたら連絡するねー』
そして、電話は切れてしまった。
「……と、いうことらしいよ」
「じゃ、次のタスクね」
もう一つの目的。というより、こちらの方が重要だ。
地図や連絡手段は、ラヴァーを探すためのツールにすぎない。だが、そもそも暁たちはラヴァーを倒せるほどの実力に達していないのだ。
「ひたすら私たちで対戦し続けるっていう手もあるけど、流石にそれじゃあ限界があるわね」
沙弓の言うとおりだった。
非常に悪い言い方になるが、弱い者どうしがいくら騒ぎ立てたところで、個人の力に大きな影響を与えることはまず不可能。
なので強くなるためには、遊戯部の部員以外の、もっと強い人物の協力が欲しいところだ。
「……ま、アテがないわけでもないけど」
「そうなんですか?」
「ええ。ね、空城さん」
「? ……ああ!」
一瞬疑問符を浮かべる暁だったが、すぐに理解したように手を打つ。
「あの人ですか?」
「そう、あの人よ。連絡先、分かるかしら?」
「もっちろん! 今からかけます」
「頼むわ」
そんなやり取りがあり、暁が携帯を取り出し操作する。そしてややあって、
「……あ、もしもし。ちょっといいですか——シオ先輩」
- 24話「御舟屋の特訓」 ( No.78 )
- 日時: 2014/05/18 22:30
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
そこは『御舟屋』という、カードショップだ。
およそ客に来て欲しいとは思えないような最悪な立地であり、見つけにくい入り組んだ裏路地の先に存在している。
その『御舟屋』の狭い店内にいるのは、遊戯部の部員たち——と、一人の少女だった。
小柄で華奢な体躯、黒い髪を細いサイドテールにしており、幼い容貌だが、その表情は鉄面皮。幼さを否定するかのような無表情だ。とはいえラヴァーのような昏い眼はしておらず、単純に表情が出ていないだけのように見える。
彼女の名は御舟汐。暁たちと同じ東鷲宮中学の生徒であり、こんな容姿ではあるが沙弓よりも一つ上の三年生だ。
「——事情は飲み込めたです」
少女、汐は遊戯部の部員を前にして、静かに言葉を紡ぐ。その言葉もどこか淡々としており、無機質だ。
「要するに、皆さんはデュエマで強くなりたいとうことですね」
「はい。絶対に負けられない相手がいるんです。どうにかならないですか? シオ先輩」
暁が懇願する。
少し話が逸れるが、汐は暁の兄、夕陽と関わりが深い。暁が入学する前の東鷲宮で先輩後輩の関係で、兄を経由して暁も汐と交流があった。
「……まず、最初に言っておくですよ」
そう言って、汐は前置きをする。
「デュエマに限らず、どんなものでもすぐに上達するということはないのです。デュエマにおいては小手先のテクニックこそ存在するですが、基本的には対戦経験と知識と読みがものを言う世界です。数回の対戦、一朝一夕で強くなるという考えは、甘いとしかいいようがないですよ」
「あぅ……それは、そうかもしれませんけど……」
返す言葉がなかった。
汐の言う通り、すぐに強くなるという考えはぬるい。だがラヴァーも、いつまでも放ってはおけない存在だ。さらに言うと、今回は汐を頼ったものの、彼女だっていつでも付き合ってくれるというわけではない。
今日だけでは劇的な強化は見込めない。もっと長期的なスパンでものを考えなければならないが、その余裕が今の暁たちにはない。
「……ですが」
黙り込む暁に対し、汐はそう逆接し、
「強くなりたいと思うことは素晴らしいです。その心意気は称賛に値するものですよ。向上心を持っていても、行動に移さなければなにも始まらないです。その辺、あなたはお兄さんよりも優れていると、私は思うですよ」
「シオ先輩……」
「中学生とはいえ、一応、私も三年です。いつも相手をできるというわけではないですが……少なくとも、今日一日くらいは付き合うですよ」
「……はいっ、ありがとうございます!」
そうして始まった、汐とのデュエル。まず最初は、暁が相手だった。
暁のシールドは五枚。場には《爆槍 ヘーゼル・バーン》と召喚したばかりの《スピア・ルピア》。
汐のシールドは四枚、場には《電脳封魔マクスヴァル》が二体だ。
「ガンガン攻める! 《ヘーゼル・バーン》でシールドブレイク!」
「私のターンです。《マクスヴァル》でコストを下げ《ブラッディ・イヤリング》と《凶刻の刃狼ガル・ヴォルフ》を召喚です」
「遂に出たわね、御舟先輩のデーモン・コマンド……!」
汐のデッキは、デーモン・コマンドを中心に据えたデッキ。今までは防御に回っていたが、ここから攻めるつもりのようだ。
「《ガル・ヴォルフ》は選んだ種族のカードが相手の手札にあれば、そのまま破壊し、シールドも墓地送りにする」
「そ、それ、すごく強いですね……」
「ああ。だが、選んだ種族が手札になければ意味がない。種族デッキ相手なら有効だが、空城のデッキは比較的種族がばらけているうえに、手札も一枚。そう簡単には当たらないだろう」
観戦している浬は言う。確かにその通りだが、彼は汐のことを知らないからこそ、そんなことが言えるのだ。
汐は暁の場とマナゾーンを一瞥すると、静かに告げる。
「アーマード・ドラゴン」
「っ、《バトライオウ》が……!」
暁の手札から《バトライオウ》が叩き落とされた。同時にシールドも墓地に送られる。精度の高い読みと鋭い観察眼を持つ汐だからこそと言ってもいい結果だ。
「《スピア・ルピア》で《バトラッシュ・ナックル》を呼び、コンボで私のクリーチャーを除去しながら《バトライオウ》を出すつもりだったのでしょうが、見え見えですよ。この辺りは流石兄妹、似ているですね」
「うぅ、でも、まだですよ。私のターン!」
威勢よくカードを引く暁だが、
「ん……ターン終了です」
引いたカードは今使えるカードではなく、マナにしてターンを終える。
「では私のターンです。呪文《エナジー・ライト》で二枚ドロー。続けて呪文《リバース・チャージャー》で《ブラッディ・イヤリング》を回収。そのまま《ブラッディ・イヤリング》を召喚し、《ガル・ヴォルフ》でWブレイクです」
「S・トリガー発動! 《火焔タイガーグレンオー》召喚! 相手のパワー2000以下のクリーチャーをすべて破壊!」
《タイガーグレンオー》が現れ、汐の《マクスヴァル》二体が消し飛んだ。
「私のターン! シオ先輩、《バトラッシュ・ナックル》がいなくても、私の切り札は出せるんですよ! 暁の先に勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》召喚!」
暁は二枚目の《バトライオウ》を引き当て、普通に召喚する。これで暁のクリーチャーは、実質パワー8000となった。
「行っけぇ! 《スピア・ルピア》で《ブラッディ・イヤリング》を攻撃!」
そしてそのバトルは、《バトライオウ》が代わりに引き受ける。それにより、《ブラッディ・イヤリング》が一方的に破壊された。
「さらに私の火のクリーチャーがバトルに勝ったから《ヘーゼル・バーン》の能力でシールドをブレイク! 《タイガーグレンオー》で《ガル・ヴォルフ》を攻撃! 《バトライオウ》が代わりにバトって、バトルに勝利! 《ヘーゼル・バーン》の能力でもう一枚ブレイク!」
汐のクリーチャーが次々と破壊され、シールドも次々とブレイクされていく。
「《ヘーゼル・バーン》でシールドをブレイク!」
「……S・トリガーです。《インフェルノ・サイン》で、墓地の《ガル・ヴォルフ》をバトルゾーンに」
「でも、《ガル・ヴォルフ》だけじゃあ私は倒せませんよ。ターン終了」
汐のシールドは一枚、場には《ガル・ヴォルフ》と《ブラッディ・イヤリング》のみ。
確かにこれだけでは、暁の《バトライオウ》には太刀打ちできない。
「……呪文《地獄門デス・ゲート》、《バトライオウ》を破壊です」
「う……っ」
「そして墓地から《マクスヴァル》をバトルゾーンに。続けて《死神の邪険デスライオス》を召喚。互いにクリーチャーを破壊です。私は《デスライオス》を破壊」
「なら私は《スピア・ルピア》を破壊。そして山札からドラゴンをサーチ!」
持って来るのは、暁のもう一つの切り札《爆竜 GENJI・XX》だ。
「なら、《ガル・ヴォルフ》で《ヘーゼル・バーン》を破壊。ターン終了です」
「私のターン! 《GENJI》を召喚! そのまま攻撃して、《マクスヴァル》を破壊、シールドをブレイク!」
「《ブラッディ・イヤリング》でブロックです」
「だったら《タイガーグレンオー》でシールドブレイク! これでシールドゼロですよ!」
ブロッカーはおらず、シールドもない。肝心のクリーチャーは《ガル・ヴォルフ》のみ。
場だけ見れば、暁の圧倒的優勢。そして実際その通りなのだが、汐には逆転の一手がある。暁はそれを呼び出すまでの時間を、汐に稼がれてしまったのだ。
「私のターン……行くですよ」
マナチャージする汐。見れば汐のマナはかなりあり、その数10マナ。
「10マナ……まさか」
「ええ、たぶん来るわね……!」
汐の場には《ガル・ヴォルフ》のみ。だが、それだけで十分だった。
悪魔神を呼び出すための悪魔が、一体でもいれば、十分なのだ。
「《ガル・ヴォルフ》を進化」
すべてのマナを使い切り、汐は切り札を降臨させる——
「——《悪魔神ドルバロム》」
次の瞬間、暁の場が吹き飛んだ。
いや、消滅したと言うべきか。気付けばクリーチャーもマナも、なにもなくなっていた。
「マナが……やば……!」
「Tブレイクです」
さらに、シールドもなくなってしまう。S・トリガーもない。
「私のターン……終了です……」
暁のターンだが、マナがないのでなにもできない。
そして、凶悪なる悪魔神が、暁にとどめを刺す。
「《悪魔神ドルバロム》で、ダイレクトアタックです」
「うぁー、負けたー……やっぱシオ先輩強いなー……」
「いえ、あなたとは久し振りに対戦したですが、以前よりもかなり強くなっていたです。この調子なら、一気に化けるかもしれないですね」
その言葉が本音か建前かは判断つかないが、しかしまったくの世辞というわけでもないだろう。
微かでも、希望の光が見えてきた。
「……次、俺といいですか?」
「勿論です。今日一日くらいなら、いくらでも付き合うですよ」
こうして、たった一日だが、暁たちと汐との特訓が行われたのだった。
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