二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.496 )
日時: 2016/09/23 19:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: Fbf8udBF)

では、最近まったく動かしてませんけど、モノクロの雑談板に来てください。
「DM第弐談話室」という雑談スレです。もう埋もれちゃってると思うので、検索かけた方がすぐに発見できると思います。

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て49」 ( No.497 )
日時: 2016/09/24 13:10
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

神羅ドラグ・ムーン SR 火文明 (7)
進化クリーチャー:ルナティック・エンペラー/アーマード・ドラゴン 15000
究極進化—自分の進化クリーチャー1体の上に置く。
このクリーチャーが攻撃する時、パワー6000以下の相手のクリーチャーを2体まで破壊する。
T・ブレイカー



 進化の先にある進化。究極の進化。
 赤く光る月を背に、《神羅ドラグ・ムーン》が究極進化した。
「出たな、ダーウィンの切り札……!」
「やっぱり、究極進化のクリーチャーは、威圧感も違うわね……!」
(《ギラギラ・ドガッツ》の方が使いやすいというのは、黙っておいた方がいいんだろうな……)
「《ドラグ・ムーン》で《ディス・ガジラ》を攻撃……能力発動、《チックチック》と《ディス・ボクサー》を破壊……」
 恋は攻撃の矛先を沙弓に向ける。流石に、クリーチャーを展開して脅威と見られたのだろう。
 《ドラグ・ムーン》の火力で二体、《ドラグ・ムーン》自身の攻撃で一体。一撃で三体のクリーチャーが消し飛んだ。
「まとめて消されたわね……これは痛い」
「ターン終了……」
「俺のターン。シンパシーでコストを2軽減、8マナで《サイクロペディア》を統率者領域から召喚! 三枚ドロー!」
 浬は再び《サイクロペディア》を呼び出すが、いくら統率者と言えど、究極進化のカードパワーには対抗できない。特に浬は、早くに決着をつけるビートダウンデッキ。ここまで大型が出てしまうと、まともに対応できない。
「《スタローン》を召喚し、ターン終了」
 なので、手札を増やし、守りを固め、受け身の姿勢のままターンを終えた。
「あたしのターン! 9マナで、統率者領域から召喚! マナ進化GV! 《グランドクロス・アブソリュートキュア》!」
 守りに入った浬とは対照的に、ミシェルは攻勢を見せる。
 もっとも、ミシェルのデッキは攻防一体なので、攻撃とは即ち防御を固める行為でもあるのだが。
 なんにせよ、沙弓にシールドを焼却されたミシェルは、ここで反撃に出る。
「《アブソリュートキュア》で攻撃! メテオバーンでシールドを三枚追加! Wブレイク!」
「やっぱり私なのね……とりあえずトリガーね。一枚目は《特攻汽車ジェニー》、シェリーの手札をハンデスよ。二枚目は《デーモン・ハンド》。《ドングリ軍団》を破壊」
「《俊足の政》でシールドをブレイク!」
 これで沙弓のシールドはゼロ。ミシェルにはまだアタッカーが残っているため、ここでS・トリガーを引けば、まだ生き残れるが、
「……《エマージェンシー・タイフーン》ね」
 一応と言って、二枚カードを引いて一枚捨てる。しかし、カードを捨てても、それは《キューブリック》でも《バイケン》でもない。
「はぁ、火のカードだったら、《フレイムランス》で生き残れたんだけどね」
「それは残念だったな。《ムラマサのコンセント》でダイレクトアタックだ!」



Lose沙弓



 これで沙弓は脱落。厄介だと思って最初に削った甲斐があった。
 いや、それが結果的に良かったのかは、まだわからない。
 なにせ、恋の場には《ドラグ・ムーン》が残っているのだ。ミシェルはトリガーでカウンターできるかもしれないが、浬にとっては対処困難な大型クリーチャーで、厄介な存在でしかない。
 プレイヤーが、それも除去カードを多く抱えているであろう沙弓が消えてしまったことは、本当に良かったのか。
「私のターン……《ベガ》を召喚……シールド追加、ハンデス……《メガ・イノセントソード》をクロス」
 恋は豊潤なマナを使い、場を固め、新しい進化元を作り出す。
 また、進化論が書き換えられた。
「《ベガ》を進化……《聖霊王アルカディアス》」
 《アルカディアス》が戻ってきて、またも光以外の呪文を封殺される。
「《ドラグ・ムーン》でメガネに攻撃……《リツイート》《スタローン》を破壊……」
「やっぱりこっちか……!」
 ドローソース兼アタッカーの《リツイート》だけでなく、ブロッカーの《スタローン》も破壊されてしまった。
 ブロッカーが潰されたところで、《ドラグ・ムーン》のTブレイクが容赦なく襲い掛かる。
「S・トリガー! 《アクア・サーファー》だ! 《アルカディアス》を手札に!」
「む……」
「さらにもう一枚! 《スパイラル・ゲート》! 《ドラグ・ムーン》もバウンス!」
「……うざい……」
 なんとか二枚のS・トリガーが、順序良く出てくれたおかげで、再び恋の場を空にできた。
 しかしこれも一時凌ぎだ。次のターンにはまた《ドラグ・ムーン》がやって来る。
 どうにかして、この時間で逆転の一手を指さなければ、押し負ける。
 どうやって切り抜けるか。しばし考え込んで、浬は一つの計画を立てる。
「あまり、こういう不完全なプランは好きじゃないが……仕方ないか。4マナで《龍覇 ガンバランダー》を召喚し、《ウルオヴェリア》を装備! さらに8マナ! 《アクア・スナイパー》を召喚だ! 《アブソリュートキュア》と《ムラマサのコンセント》をバウンス!」
「……ハンデスされると回収できないからな。《アブソリュートキュア》は統率者領域へと戻す」
 シールドがなくなり、守りが手薄になったことで、浬はミシェルにもやられる可能性が出て来た。
 恋にばかりうつつを抜かして、二人で浬を殺しにかかってはたまったものではない。なので浬は、ミシェルの場も掃除する。
「《アクア・サーファー》で《ムラマサのコンセント》を攻撃!」
「殴り返しもか……徹底してるな」
「次はお前だ! 《サイクロペディア》で攻撃! シールドをWブレイク!」
「……トリガー、ない……」
「《ナルトサーファー》でブレイクだ!」
 立て続けの恋のシールドを砕いていく浬。
 そして、この《ナルトサーファー》のブレイクは、《ピーピング・チャージャー》で確認したシールドだ。
「S・トリガー……《スーパー・スパーク》……相手クリーチャーすべてをタップ」
 知っている。予想通りのS・トリガーで、浬のクリーチャーがすべて寝かされる。
 とりあえず、これで第一タスクはクリアした。
(流石に疲労が溜まってるな……ここでトリガーを使われて助かった)
 恋のミスに感謝しながらも、浬は場のウエポンに手をかけ、そのままひっくり返した。
「ターン終了時、《ウルオヴェリア》を《ウルティマリア》に龍解だ」
「あたしのターン……ここは、こいつか。《躍喰の超人》を召喚。マナを追加し、ターン終了だ」
「《ベガ》を召喚……《メガ・イノセントソード》をクロス……《リョクドウ》に進化……2マナ追加。《バロム》を回収して、《ドラグ・ムーン》に究極進化」
 恋はバウンスされたカードを使い回して、再び場に《ドラグ・ムーン》を呼び出す。
 そして、浬へと攻撃しようとするが、
「……スパスパ唱えたの、ミスった……」
 《ドラグ・ムーン》で小型クリーチャーを薙ぎ払いながら突破するつもりだったが、ここでブロッカーが邪魔になる。
 《スタローン》程度の小さいブロッカーなら問題ないが、今の浬の場にいるのは、パワー7500の《ウルティマリア》だ。パワー6000以下でなければ、《ドラグ・ムーン》で焼き払えない。
 浬の攻撃時、効果の薄い《スーパー・スパーク》を撃ったのは、完全にミスだった。これが《ガンバランダー》だったら、余裕で薙ぎ払っていたというのに。
「しょうがないか……《ドラグ・ムーン》でメガネにダイレクトアタック……《ナルト・サーファー》と《スナイパー》を破壊」
「《ウルティマリア》でブロックだ!」
「ターン終了……」
 結果として、浬に1ターンの猶予を与えてしまった恋。
 こうして得た1ターンで、浬は反撃に出る。
「《アクア傭兵 スタローン》、《アクア隠密 アサシングリード》を召喚! 《アサシングリード》の能力で《躍喰の化身》をバウンス! さらに《アサシングリード》を《クリスタル・ランサー》に進化だ!」
「《クリスタル・ランサー》……」



クリスタル・ランサー R 水文明 (6)
進化クリーチャー:リキッド・ピープル 8000
進化—自分のリキッド・ピープル1体の上に置く。
このクリーチャーはブロックされない。
W・ブレイカー



 《クリスタル・ランサー》。デュエル・マスターズ初期の進化クリーチャーで、スペック自体は淡白ながらも、堅実でアタッカーとしてのポテンシャルは高い。今でこそ採用は厳しいものがあるが、リキッド・ピープルの攻撃性をさらに高めてくれる、優秀なフィニッシャーであった事実は揺るがない。
 その性質が今、この場でも現れる。
「《アクア・サーファー》でシールドをブレイク!」
「ニンジャ・ストライク4……《ハヤブサマル》召喚……ブロック」
「だったら《ガンバランダー》でブレイクだ!」
「もう一枚、ニンジャ・ストライク……《光牙忍ライデン》……《サイクロペディア》をタップ……」
 浬のクリーチャーの動きを止めつつ、最後のシールドを砕かれる恋。
「……S・トリガー」
 その最後のシールドから、S・トリガーが飛び出した。
「……《アクア・リバイバー》を召喚」
 しかし出て来たのは、ブロッカーの《アクア・リバイバー》。
 防御手段がブロックしかないのであれば、問題ない。
「除去ではなかったか……なら、これでとどめだ!」
 浬残った最後のアタッカー——《クリスタル・ランサー》は、アンブロッカブル。
 ブロッカーによる守りであれば、貫ける。

「《クリスタル・ランサー》でダイレクトアタック!」



Lose恋



 恋が敗北し、残ったのは浬とミシェル。
 《スタローン》《ガンバランダー》《サイクロペディア》《クリスタル・ランサー》と、バトルゾーンに多くのクリーチャーを並べた浬は、シールドがゼロ。
 場にクリーチャーはおらず、手札も枯れているが、ミシェルのシールドは四枚。そしてこのシールドには、どれだけのS・トリガーが入っているのかわからない。しかし、トリガービートである以上、ゼロという可能性は期待できない。
 どちらが有利とも不利とも言えない状況。いや、シールドの内容次第なため、ミシェルは運の要素が強く絡む。加えてマナもかなり削れており、ミシェルの方が不利ではある。
 裏を返せば、シールドの内容次第では、どんなカウンターパンチが飛んでくるのかわからないという、ハイリターンな側面もあるのだが。 
「あたしのターン。《跳喰の超人》を召喚。マナを追加してターン終了だ」
「俺のターン。呪文《ブレイン・ストーム》で三枚ドロー……手札を二枚トップに置いて、《アクアーミー》を三体召喚」
 とりあえず、増えた手札から小型クリーチャーを展開する浬。
 問題は、この後だ。
(俺の場のアタッカーは《ガンバランダー》《サイクロペディア》《クリスタル・ランサー》の三体。四天寺さんのシールドは四枚だから、とどめまでは行けるが……)
 四枚のシールドに、トリガーがゼロということはあり得ないと思っていい。踏んだトリガーが防御用のトリガーとは限らないにしろ、どのくらい防御トリガーを積んでいるかが分からない以上、その可能性も考慮しなくてはならない。
(ジャスキルではとどめはさせないと考えた方がいいな。かといって、《アクアーミー》が三体増えて押し切れるかどうかはわからないが……)
 こればかりはトリガー次第としか言えない。
 ミシェルのデッキカラーは光、火、自然。光ならスパーク呪文などですべてのクリーチャーの動きを止めることもある。自然も同じように、攻撃を不能にしてくるトリガーがあり、火には全体火力がある。
 小型を三体増やしても、とどめを刺せる保証はない。
(特にスパーク呪文と、エタトラ、《チャケの応援》みたいな攻撃を止めるトリガーが怖いな……それを踏んだら、ターンを稼がれる)
 問題は、それが今のミシェルのシールドに埋まっているかどうかだが。
 このターンに攻撃して、それらのトリガーを消費させるか。それとも、そういったトリガーはないと信じて、次のターンに物量で殴るか。
 どちらが、勝てる可能性が高いか。浬は思考に思考を重ね、そして、
「……《サイクロペディア》でWブレイク!」
 浬は、攻撃することを選択した。
「殴るか……S・トリガー、一枚目だ。《エクスプレス・ドラグーン》を召喚」
 一枚目のトリガーは、ただの準バニラのアタッカー。まだ問題はない。
「二枚目……いいカードだ。《爆発のベイリーフェン》! バトルゾーンに出た時、あたしの場のティラノ・ドレイクの数だけ2000火力を放つ! あたしの場にティラノ・ドレイクは一体だから、《ガンバランダー》を破壊だな。さらにコスト7以上のクリーチャーがバトルゾーンに出たため、《跳喰の超人》の能力でマナ加速だ」
「っ、これでこのターンには倒しきれないか……!」
 しかし破壊されたのは《ガンバランダー》のみだ。
 まだ《クリスタル・ランサー》は残っているため、シールドをすべて割り切って、スパーク呪文などの可能性を潰せる。
 もうこのターンにとどめは刺せないので、浬は諦めて全力で殴る。
「《クリスタル・ランサー》でWブレイク!」
「S・トリガー! 《スーパー炎獄スクラッパー》! 《スタローン》と《アクアーミー》三体を破壊! さらにS・トリガーだ」
「四枚ともトリガーか……」
 並べた《アクアーミー》も、ブロッカーの《スタローン》も薙ぎ払われてしまい、何気に困る。
「……まさかこいつが出るとはな。まぁ、いいか」
 ミシェルは四枚目のトリガーを出す前に、そのカードを見て、神妙な面持ちで呟いた。
「S・トリガー……進化V」
 そんな風に口走って、ミシェルは場のクリーチャー——《エクスプレス・ドラグーン》と《爆発のベイリーフェン》の二体を重ね、その上にもう一枚のカードを重ねる。
 それは燃える彗星。竜になり切れない竜が夢見た先にある、不死鳥の姿。
 轟々と燃え盛る炎の中で、惑星が羽ばたき、飛翔する。

「——《炎彗星アステロイド・ガウス》!」

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て50」 ( No.498 )
日時: 2016/09/25 13:45
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

炎彗星アステロイド・ガウス UC 火文明 (7)
進化クリーチャー:フェニックス 11000
S・トリガー
進化V—自分のティラノ・ドレイク、ブレイブ・スピリット、アーマード・ドラゴンのいずれか2体を重ねた上に置く。
W・ブレイカー



 シールドから飛び出たのは、まさかのフェニックスだ。
 《炎彗星アステロイド・ガウス》。彗星の名を冠する、比較的小型な惑星型フェニックスの一体にして、数少ないS・トリガーを有する進化クリーチャーだ。しかも唯一無二の、進化Vのトリガー獣。
 といはいえ、進化元を二体要する進化Vのギミック自体が廃れつつある中で、《アステロイド・ガウス》は特殊な能力もない準バニラタッカー。S・トリガーの奇襲性を、進化Vというディスアドバンテージを負うような進化方法で潰してしまい、かなり肩身の狭いクリーチャーであるのだが。
「《アステロイド・ガウス》……まさかそんなカードが入っているとは」
「色合わせとパワー不足解消程度のつもりでしか入れてなかったんだが、まさか役立つ時が来るとはな……進化元はティラノ・ドレイクの《エクスプレス・ドラグーン》と、ブレイブ・スピリットの《ベイリーフェン》だ。コスト7以上のクリーチャーが出たため、《躍喰の超人》の能力でマナを追加」
 《アステロイド・ガウス》は、クリーチャー二体を進化元にしてWブレイカーなので、打点自体は変わらない。パワーが一体のクリーチャーに集約されて、強化されただけだ——本来なら。
 しかし今のミシェルの場には《躍喰の超人》がいる。大型クリーチャーが出るたびに、マナが増えていく。
 そしてマナが増えるということは、ミシェルにとっては攻撃にも防御にも繋がる行為なのだ。
「総合的な打点こそ変わらない進化だが、こいつを出す意味はあったな。これでマナは溜まった……11マナをタップ! マナ進化GV! 《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》!」
 《躍喰の超人》でマナを溜めていたミシェルは、遂に四回目の《アブソリュートキュア》を、統率者領域から召喚する。
「ハンデスを恐れてバウンスに対して統率者領域に戻したのは失敗だと思ったが……結果オーライか。ほぼこれで終わりだと思うが、《アブソリュートキュア》で攻撃する時、一応メテオバーンでシールドを三枚追加する」
「くっ……ニンジャ・ストライク7、《斬隠オロチ》! 《サイクロペディア》を統率者領域に戻し、山札を捲ります……」
「……シノビ、あったのか」
 それも《オロチ》だ。
 ここで現れる《オロチ》には、大きな意味がある。
「山札を捲り、《クロック》をバトルゾーンへ! このターンは終了する!」
「都合よく《クロック》が捲れた……わけじゃないよな。仕込んだか」
 浬は攻撃を耐えられたときのために、保険をかけておいた。
 前のターン、《ブレイン・ストーム》で山札上のカードを操作している。その時点で、手札に《オロチ》を、山札に《クロック》を用意しておいたのだ。
 これでミシェルのターンは終わり、浬のターンへと移ったが、
「シールドが増えたのは、少し想定外だったな……やはり賭けて突撃するしかないのか。11マナで《サイクロペディア》を召喚! 三枚ドロー!」
 まずは統率者領域から、三度目となる《サイクロペディア》を召喚し、手札をさらに増やす。
「《アクア忍者 ライヤ》を召喚。《サイクロペディア》を手札に戻し、2マナで《ライヤ》を進化! 《クリスタル・ブレイダー》!」
「打点が増えた……」
 これで浬の場には、《クリスタル・ランサー》《オロチ》《クロック》《クリスタル・ブレイダー》アタッカーが四体で、五打点ある。三枚のシールドをすべてブレイクし、ダイレクトアタックまで届く確率は高まった。
 やはり、“高い確率”までしか価値の目を引き上げることはできないが。
「《クリスタル・ランサー》でWブレイク!」
「S・トリガー……《無頼護聖サソリスJr.》を召喚!」
 先んじて殴った《クリスタル・ランサー》からは、S・トリガーが一枚。それも、ブロッカーだ。
「《クロック》でシールドをブレイク!」
「こっちもS・トリガーだ! 《降臨の精霊 トリガブリエ》! 能力で自身をブロッカーにする!」
 続く《クロック》が割ったシールドも、S・トリガー。
 そして、浬にとっては絶望的な、二体目のブロッカーである。
「ブロッカーが二体……くっ」
 浬に残されたアタッカーは、《オロチ》《クリスタル・ブレイダー》。
 ミシェルには、《サソリスJr.》と《トリガブリエ》、ブロッカーが二体。
 どうしたって、とどめまで届く計算はできなかった。
 浬は一瞬、手札に目を落とすと、足掻くように《クリスタル・ブレイダー》に手をかける。
「……《クリスタル・ブレイダー》でダイレクトアタック」
「…………」
 ミシェルはその攻撃を、すぐにブロック宣言しなかった。
 浬を——彼の手札に視線を向けてから、ブロッカーに手をかける。
「……《サソリスJr》でブロック」
「ぐ……!」
 当然の結果だが、浬は呻く。
「《トリガブリエ》にブロックさせるために《クリスタル・ブレイダー》で殴ったんだろうな……《ジャニット》でも握ってるんだろ? 《オロチ》の直後だ。そのくらい、見抜けないと思ったか」
「……ここまでか」
 浬は静かに手札を置く。
 《サイクロペディア》から引き入れた《テンサイ・ジャニット》も意味をなさず、万策尽きてしまった。
 これで、決着だ。

「《超神星グランドクロス・アブソリュートキュア》で、ダイレクトアタック!」

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て51」 ( No.499 )
日時: 2016/10/01 13:07
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

「——むぅ……」
「ふぅ。これでなんとか、れんちゃんも脱落させたわね」
 だいぶ日が傾いた頃。五人目の脱落者として、恋が破産した。
 これで残りは、沙弓、浬、ミシェル、空護、美琴の五人となる。
 ちょうど、半数まで人数が減った。
「さぁ、ここで人数が半分になったから、追い込み戦になるわよ!」
「なんだよ、追い込み戦って」
 人数が半数になると追加される特別ルールらしい。そういうルールは最初に言っておけ、と注意する気も、もはや起きなくなっていた。
「追い込み戦のルールは単純よ。ここからは一気にゲームを加速させるわ。対戦におけるお金の移動額が、1〜6倍になるの」
「1から6倍?」
 支払額が増えることは予想できたが、その幅が奇妙だった。
 2倍、3倍ではなく、1〜6倍という振れ幅は一体どういう意味なのか。
「対戦で支払額を決めた後、サイコロを振って、出た目の数字を支払額にかけるのよ。つまり、サイコロで2が出たら2倍、3が出たら3倍って具合にね」
「最高で6倍まで支払額が加算されるのか……恐ろしいな」
 1倍で加算額がゼロの場合もあるとはいえ、2倍になるだけでもかなりの痛手だ。最高額の6倍になろうものなら、下手すれば一撃で破産しかねない。
 ここからは、より一戦一戦の重要度が増すことになるだろう——



「——とか言ってるそばから、四人も対戦マスを踏むなよな……」
「まあ、仕方ないですよねー」
「不可抗力です」
「面白いじゃない」
 人数が半数になった途端、ミシェル、空護、浬、沙弓の四人が同じマスに止まり、四人対戦が勃発した。
「私だけ外された……」
「まあ仕方ないわね。それじゃあ、引くわよー」
 沙弓が例の箱から、レギュレーションを決めるために紙を引く。
 四人対戦で行うとなれば、今度はなんなのか。タッグ戦や単なるバトルロワイヤルなら割合マシだが、また『EDH』のような特殊ルールになると面倒だ、と思いつつ、成り行きを見届ける。
 そして、沙弓が引いたレギュレーションは、
「……最高に面白いものを引いたわね。今回のレギュレーションは、『計略デュエル:魔王戦』よ」
「また計略デッキを使うのか? だが、魔王?」
 『計略デュエル』は既に一度行っている。しかし今回は、『魔王戦』と銘打たれている。
 響からして、嫌な予感しかないが、諦めるしかなかった。
「じゃあ、対戦前にじゃんけんしましょう」
「じゃんけん? 先攻後攻を決めるものじゃないよな?」
「違うわ。単なるチーム分けよ。最終的に勝った人が一人だからね」
「?」
 沙弓の言っている意味がわからない。しかし、まともに説明しないまま、じゃーんけーん、などと言い始めて、慌てて各々が手を出す。
 結果。沙弓一人がチョキで、残りの三人がパー。沙弓の一人勝ちだった。
「ふふふ、私が魔王ね」
「だから魔王ってなんだよ」
「じゃあ説明するわ。『計略デュエル:魔王戦』。これは三人以上限定の特殊レギュレーション。今回は四人だから、四人のうち一人が魔王、他の三人は愉快な勇者と仲間たちという設定よ」
「……一対三ってことか?」
「そゆこと。ターン進行も、魔王側と勇者側って分かれて、勇者側は三人で同時進行よ」
 変な設定は単なるイメージだとして、要するにこれは多数対一人の対戦であることがわかる。
 魔王が一人で、勇者はパーティーを組んで複数で戦う。RPGの王道的展開から着想を得て、このような名前なのだろう。
 今回の場合は、沙弓が魔王として一人で戦い、浬、空護、ミシェルの三人が勇者一行という設定になる。
「タッグマッチとか、バトルロワイヤルとかは考えていたが、まさか複数人で一人をボコるのかよ。シールド枚数とかで多少の差をつけても、流石に三人相手に一人はきつくないか?」
「あらら、シェリーもう忘れちゃったの?」
「あん?」
「これは『計略デュエル』よ。だから当然、計略デッキが使えるわ……私だけね」
「あ? ……あぁ、成程な」
 細かいルールはわからないが、人数の差は、例の計略デッキによって埋める。
 前回の『計略デュエル』は、なにが起こるかわからない、常に盤面に影響を及ぼすパンドラの箱のようなものだったが、今回は沙弓だけが計略デッキを用いることで、人数で不利な状況を覆すということなのだろう。
 いや、むしろ沙弓が有利になるくらいの調整かもしれない。なにせ、魔王なのだから。
「もう少し細かい説明をするわね。『計略デュエル:魔王戦』は、一対複数人の特殊レギュレーションで、魔王側のプレイヤー一人に対し、勇者側のプレイヤーは複数、今回は三人ね。この組み合わせで対戦するわ」
「それはさっき聞いた」
「流れとして順番に言ってるだけだから。一応、確認も含めてね。それで、シールド枚数は、魔王側が七枚。勇者側は、今回の人数は三人だから、一人五枚ね」
 二人の場合は七枚になるんだけどね、と沙弓は言う。
「で、ここからがこのレギュレーションの肝よ。魔王側は、ハンデとして計略デッキが使用可能なの。計略デッキのルールは、個人戦の時と同じ。毎ターンの始めにトップを捲って、そのカードは強制発動よ」
 だが今回は、魔王側のハンデのための計略デッキだ。個人戦の時のように、自らにデメリットを振りかけるようなカードはないはず。
 つまり沙弓は、毎ターン有利な恩恵を受けることが可能なのだ。
「大体のルールはこんなもんね。それと、魔王戦における、魔王様からのささやかな温情よ」
「ん?」
「この計略デッキは、魔王側のプレイヤーが使用するデッキカラーと一致しなくてはならず、最初にデッキカラーを公開するわ。つまりあなたたちは、最初から私のデッキにどの文明が入っているのかを知ることができるってわけ」
「へぇ……」
 デッキカラーを最初に知れる。これは大きな情報アドバンテージだ。
 沙弓は最初に宣言したデッキカラーでデッキを組まなければいけない制限が生まれるが、逆に勇者側は、魔王のデッキカラーから推察されるデッキタイプを予想して、メタを張ることができる。
 これも、魔王の弱点を探って戦うRPGになぞらえているのだろうか。
「でも、そのデッキに含まれているカードでも、その文明のカードがデッキに一枚しか入ってなければ、そこは反映されないわ。二枚以上入って初めて、その文明を使っていると言える」
「つまり、青黒デッキに《ハヤブサマル》をピンで入れても、計略デッキは白青黒ドロマーにならず、青黒のままということか」
 ピン挿しはOKというルール。これも、気に留めておいた方がいいのだろう。
 必ずしも、シノビだけがピン挿しで活用されるとは限らないのだから。
 そんなことを考えていると、沙弓が早速、自分のデッキカラーを発表する。
「と、いうわけで。私が使用する計略デッキはこれよ! [計略デッキ:魔王クローシス]!」
 ババン! と効果音を鳴らしたそうに、計略デッキを掲げる沙弓。しかし、周りからの反応は冷ややかだった。
「……デッキカラーは青黒赤クローシス、ということでいいのか?」
「その解釈でオーケーよ」
 その反応をある程度予想していたのか、沙弓も特になにも言わなかったが。
「あ、そうだ。言い忘れてたけど、この対戦での支払額は、ちょっと変わるから」
「変わる? どう変わるんだ?」
「魔王側が勝った場合、支払いは勇者側のプレイヤー全員が、最初に決定された額をそれぞれ払うこと」
「つまり、魔王の手に入る収入は、単純に三倍になるわけか」
 これは今までの複数人の対戦と同じだ。トップ総取りの法則である。
 だが今回は、四人の個人戦ではなく、個人戦はあくまでも魔王のみ。勇者側はチーム戦なのだ。
 当然、支払い方も変わってくる。
「魔王側は大きな変化はないけど、勇者側の場合は話が変わるのよね。勇者側のプレイヤーが勝った場合、魔王側のプレイヤーは、勇者側のプレイヤーそれぞれに決定された額を払わなければならないわ」
「えっと、つまり、仮に100万の支払額だとすると、魔王は負けたら勇者側のプレイヤーに100万ずつ支払う——三人いれば、合計で300万の出費になるわけか」
「魔王は三倍の収入を得られる代わりに、負けたら三倍の支出になるということですかー。ハイリスクハイリターン、ですねー」
 四人分の金銭が移動するだけあって、かなり大規模な対戦を予感させる『計略デュエル:魔王戦』。
 だが、今回はそれだけではない。
 ゲーム参加者の総数が半数以下の今は、追い込み戦。支払額がサイコロの出目によって、さらに上乗せされる。
 沙弓がサイコロを振る。カラカラと音を立て、一つの数字を示した。
「出目は……6よ」
 支払額は6倍。
 よりにもよって、最高額を引き当てた。
 魔王からすれば、勝てば元の18倍の金額が支払われ、逆に負ければ、18倍の支出となる。
 一撃でプレイヤーを破産まで導きかねない。この一戦がトップを走る沙弓の行く末を左右すると言っても過言ではない、大きな一戦となる。
「……デカいなぁ。これは流石に、負けられないか」
「ですねー。いつまでもトップを走られると、困りますからねー」
「そろそろ、部長にも退場してもらわないとな」
 ミシェル、空護、浬の三人が結託して、魔王たる沙弓に挑む。
 『計略デュエル:魔王戦』。ラスボスとの戦いの火蓋が、切って落とされた。

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て52」 ( No.500 )
日時: 2016/10/01 22:40
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

『計略デッキ:魔王戦』ルール
・参加プレイヤーは三〜四人。
・プレイヤーは「魔王側」一人と、それ以外の「勇者側」のチームに分かれる。
・「勇者側」のシールドは、プレイヤーが二人なら一人七枚、三人なら一人五枚。「魔王側」は人数関係なく七枚。
・「勇者側」のプレイヤーは、チームで共有するターン、ステップで同時に進行する。ただしカードの使用、攻撃の処理は一人一つずつ行う。
・「勇者側」のプレイヤーのマナ、手札、墓地、山札、シールド、バトルゾーンは共有されない。
・「勇者側」のプレイヤーは、プレイヤー間での相談可。
・先攻は「魔王側」のプレイヤー。ターン最初のドローあり。
・「魔王側」のプレイヤーは「計略デッキ」を有する。
・「魔王側」のプレイヤーはターンの始めに「計略デッキ」の一番上を公開し、そのカードを使用する。カードは使用後「計略デッキ」の一番下に置かれる。
・「計略デッキ」に含まれるカードは、使用時を除き、「計略デッキ」以外のゾーンに存在できない。
・「計略デッキ」からクリーチャーを公開した時、そのクリーチャーのコピーであるトークンを生成する。
・トークンはカードに付属している数字の数だけ生成される。
・「魔王側」のプレイヤーは、先に自分のデッキの文明を公開し、その文明と同色の「計略デッキ」を使用する。
・「魔王側」が勝利した場合、「勇者側」のプレイヤーがそれぞれ定められた金額を支払う。「勇者側」のプレイヤーが勝利した場合、「魔王側」のプレイヤーは「勇者側」のプレイヤーそれぞれに定められた金額を支払う。




「ふふふ……それじゃあ、始めましょうか?」
 魔王へと相成った沙弓が、悪戯っぽく、ともすれば邪悪な微笑を浮かべる。
 単なる雰囲気作りだと思ったので、三人は無視した。
「先攻は私。まずは計略を使わせてもらうわ」
 一対三という数で劣勢な沙弓は、ハンデとして先攻を取る権利がある。先攻ドローも有効なので、単純に先手を取れるメリットになる。
「計略一枚目、《ネクスト・チャージャー》……まあ、普通ね」
 最初に計略デッキから捲られたのは、《ネクスト・チャージャー》。手札をすべて山札に戻し、同じ枚数だけ引き直す呪文だ。
 本来ならこの呪文を唱えるために手札を一枚消費しているので、ハンドアドバンテージはマイナス、代わりにマナを伸ばせるのがこの呪文なのだが、今回は計略デッキから唱えているため、チャージャーは発動せず、手札の損失もゼロなので、純粋な手札交換のみとなる。
「チャージャー効果は使えないけど、手札も微妙だし、入れ替えるわ……《執拗なる鎧亜の牢獄》をチャージじて、ターン終了」
「ここで、あたしたちのターンだな」
 1ターン目は特に動きもなかった。肝心の計略デッキも、やったことは手札交換のみだ。
 最初から妙なことをされると困るところだったが、これなら安心して序盤を乗り切れそうだ。
 とりあえず今後の方針をどうするか、三人は小声で耳打ちし合う。
(さて、どうしましょうか)
(どうするもこうするもねぇな。それぞれできることをやるしかないだろ)
(そうですねー。一応、僕のデッキがバニラビート、四天寺先輩のデッキが連ドラ、霧島君のデッキが……)
(青黒緑アナカラーで呪文やらなんやら詰め込んだ、よくわからないデッキです……一応、リキピーの種族デッキみたいにはなってますけど)
 全体的にビートダウンに寄った編成だった。序盤で勝負を決めなければ、厳しそうだ。
 しかし、ビートダウンと一口に言っても、その速度や攻め方は大きく異なる。
(……なら、こうしましょう。序盤は僕が展開して注意を引き付けておくので、中盤以降は四天寺先輩にお任せします)
(連ドラの一撃はデカいからな。決まればかなりの打撃になる……わかった。序盤は任せていいんだな?)
(はい)
(じゃあ、俺はサポートに回ります。コンセプトとしてあんまり一定してないですし、主軸になって攻める自信はないです)
(お願いしますねー)
 それぞれのスタイル、スピードの違いを利用して、状況とターン経過によって軸となって攻めるプレイヤーを変える方針を取ることにした。
 空護が盗賊シーフ、ミシェルが戦士ファイター、浬が魔法使い(メイジ)となり、パーティーを組んで魔王に立ち向かう。
「じゃあ、僕から動き始めますねー。《ポッツーン》をチャージして、《駱駝の御輿》を召喚!」
「焔君は早速、バニラ展開の準備ね。でも、そう上手くはやらせないわよ。私のターン、計略発動!」
 言って沙弓は計略デッキの一番上を捲る。
「計略呪文《策略の手》! とりあえず焔君の手札を見せてもらうわ」
「計略なのか策略なのか……ややこしいな」
 基本的にはほぼ同義であり、細かなニュアンスの違い程度しかないだろう。
 もっとも、その細かなニュアンスの違いですらも、使い分けるには微妙なものだが。
 なんにせよ、沙弓は空護の手札を見て、その中にあるカードを一枚選択する。
「やっぱり持ってたわね。《アクア・ティーチャー》を墓地へ!」
「ピーハンは痛いですねー……」
 計略デッキから放たれる《策略の手》が、空護の手札から《アクア・ティーチャー》をピンポイントで叩き落す。
 バニラビートは《アクア・ティーチャー》と《駱駝の御輿》、二体のバニラサポートをエンジンにして動くデッキだ。特に《アクア・ティーチャー》は後続を呼ぶ、いわばガソリン。給油できなければ、すぐに燃料が切れて息切れしてしまう。
 それをハンデスされたのは、かなり大きな痛手だ。
「《アクア・サーファー》をチャージして、《飛翔する啓示 ゼッツー》を召喚よ。ターン終了」
 そして沙弓自身も動き出した。準バニラの《ゼッツー》なので、まだ脅威というほどではないが、計略デッキからどのような恩恵を受けるかわからない。油断はできなかった。
「俺から行きます。《フェアリー・ライフ》をチャージ。2マナで《鼓動する石版》! マナを追加する」
「じゃあ次は僕ですねー。いいカードが引けたので、まずは《イソロック》をチャージ。そして呪文、《番長大号令》!」
 空護が唱えるのは、ハンターを呼び込む《番長大号令》。《アクア・ティーチャー》も《駱駝の御輿》もハンターで、ハンターにはバニラクリーチャーも数多くいる。たった1コストでバニラビートのメインエンジンを引き込め、それでいてはずれも少なくできるため、自然が入るバニラビートでは非常に重要な潤滑油となる呪文だ。
「山札を五枚見て……《アクア・ティーチャー》を手札に加えますよー。そのまま1マナで《アクア・ティーチャー》を召喚!」
「あらら、結局《駱駝の御輿》と《アクア・ティーチャー》を揃えられちゃったわね。まあでも、計略力でいくらでも巻き返せるわ」
「なんだよ計略力って……」
「ほら、次の計略よ!」
 沙弓のターン。計略デッキから、次の計略カードが捲られる。
 次に捲られたのは、クリーチャーだった。
「計略発動《ダーク・クラウン》! 計略クリーチャーが捲られたから、《ダーク・クラウン》トークンを生成! 生成数は2よ!」
 『計略デュエル』における計略デッキ独自のルールとして、クリーチャーが捲れた場合、そのトークンを場に生成し、カードそのものは計略デッキに戻すというものがある。
 これは、計略デッキで次に捲られるカードがある程度ランダムになるよう、シャッフルカードが用意されているためである。常に計略デッキの枚数が一定でなければその意義が薄れてしまう。
「つまりこれで、《ダーク・クラウン》が二体出て来たわけか……」
「そうね。分かりにくいから、適当な紙に書いて、場に置いときましょう」
 言って、沙弓はルーズリーフを持って来て、それをカードサイズに二枚に千切ると、《だーくくらうん》などと書いて場に置いた。ずいぶんと緊張感のないファンシーな《ダーク・クラウン》だ。
「《ゴースト・タッチ》をチャージ。3マナで《ローズ・キャッスル》を要塞化よ!」
 沙弓のシールドに、茨の城が張り付く。
 これで、勇者側三人のクリーチャーのパワーは常に1000低下し続ける。
 それにより、パワー0のクリーチャー、特にシステムクリーチャーに被害が現れる。
 そう、空護の場だ。
 パワーが1000しかない《アクア・ティーチャー》のパワーが0になり、死滅する。
「また《アクア・ティーチャー》が……!」
「《ゼッツー》で……そうね、シェリーのシールドをブレイクするわ」
「こっちか……トリガーはない」
 除去と同時に、攻撃の姿勢も見せる沙弓。ブレイクするシールドが単純に十五枚と多いので、ワンショットなんてやっていられない。加えて、プレイヤーを一人減らせばそれだけ沙弓は有利になる。
 先に動きの鈍そうなミシェルから倒そうという算段なのだろう。
「薔薇城は面倒だな……《コッコ・ルピア》が出せなくなった」
「《アクア・ティーチャー》がもう二枚もなくなってしまったんですけど……まずいですねー」
 システムクリーチャーを根こそぎ死滅する《ローズ・キャッスル》に。二人は参っていた。ミシェルは《コッコ・ルピア》からのコスト軽減でドラゴンを出す流れが出来ず、空護はメインエンジンの片割れである《アクア・ティーチャー》でドローが出来なくなった。
「ここは致し方ないですねー。《イソロック》をチャージ。《駱駝の御輿》でコストを2軽減、それぞれ1マナで《アクア・ブレイド》と《デュナス》を召喚」
「……《トリガロイド》をチャージ。3マナで《アクア鏡師 パワードミラー》を召喚」
「《パワードミラー》? へぇ……」
 浬の出したクリーチャーに、小さく反応を見せる沙弓。
 《アクア鏡師 パワードミラー》。相手の呪文に反応して、カードを一枚ドローできるクリーチャーだ。それほど大きなアドバンテージを得るわけでもなく、パワーが貧弱で場持ちは悪いが、場に維持できれば手札を多く供給できる可能性がある。
「私のターン……うん、悪くないわね。計略呪文《キサナティック・X》! クリーチャー二体を強制バトルよ。《駱駝の御輿》と《アクア・ブレイド》で仲間割れをしてもらおうかしら?」
「どちらもパワー3000……同士討ち、ですかー……」
 わかっていたことだが、毎ターン確実にアドバンテージを取られている。ノーコストでこちらのリソースを削られ続けるというのは、やはり辛いものだ。
「だが、《パワードミラー》の能力は使わせてもらうぞ! 相手プレイヤーが呪文を唱えたことで一枚ドローだ!」
「《惨劇のアイオライト》をチャージ。3マナで《レールガン》を召喚よ。《ゼッツー》でシェリーのシールドをブレイク! ターン終了よ」
「あたしもやっと動けるな。《バルガザルムス》をチャージ! 4マナで《ルピア・ラピア》を召喚!」
「《ゴースト・タッチ》をチャージ。4マナで《デス・スモーク》! 《レールガン》を破壊だ!」
「僕はなにもしませんが……せめて数だけでも減らしますよー。《デュナス》でシールドをブレイク!」
「《ダーク・クラウン》トークンでブロック! 《ダーク・クラウン》のパワーは6000だからこっちの勝ちだけど、バトル後に《ダーク・クラウン》は破壊されるわ」



ダーク・クラウン R 闇文明 (4)
クリーチャー:ブレインジャッカー 6000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
このクリーチャーがバトルする時、バトルの後、このクリーチャーを破壊する。



「私のターン! さぁ、次の計略よ! 《拳撃と混乱のアシスト》! シェリーの《ルピア・ラピア》を破壊して、一枚ハンデス!」
「《ルピア・ラピア》は破壊されてもマナに行くぞ。マナ回収はしない」
「それと、《パワードミラー》の能力でドローする」
「《ゼッツー》をチャージして、《死海竜》を召喚!」
「大きいのが出ましたねー……これは殴りにくくなりました」
「ほらほら、もたもたしてるとあっという間に仲間が一人死んじゃうわよ? 《ゼッツー》でシェリーのシールドをブレイク!」
 沙弓がミシェルを攻撃し、どんどん攻めたてる。
 しかし、
「ポカスカ殴るのは結構だが、あんま調子に乗んなよ。S・トリガー、《ナチュラル・トラップ》! 《死海竜》をマナゾーンへ!」
「あっと、踏んじゃったか……まあいいわ。ターン終了」
「《刃隠・ドラゴン》をチャージし、やっと6マナだ! 《紅神龍バルガゲイザー》を召喚!」
「僕も一応、《駱駝の御輿》を召喚しておきましょうかねー」
「《エナジー・ライト》をチャージし、4マナで呪文《ポイズン・ティー》! 《ゼッツー》のパワーを4000下げて破壊だ!」
 ミシェルはデッキの核である《バルガゲイザー》を召喚。さらに浬の援護でアタッカーも潰し、徐々に沙弓の盤面が制圧され始める。
「これはなかなかに面倒なことになったわね……とりあえず計略発動よ」
 どれだけ窮地に立たされても、沙弓には計略デッキがある。
 毎ターンなにかしらのカードによって、盤面を覆す可能性を秘めているのだ。
「お? 面白いカード引いたわ……計略呪文——」
 そうして沙弓は、なにかいいカードを引いたのか、不敵な笑みを零して、捲ったカードを場に繰り出す。
 それは、最悪にして凶悪な、地獄のような一閃だった。

「——《ヘル・スラッシュ》!」


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