二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- 51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.189 )
- 日時: 2015/06/28 19:45
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
そこは、荒野のような場所だった。
かつて自然文明が光文明に侵攻された森。
かつて光文明が火文明と鎬を削った土地。
かつて火文明が闇文明に怒りを向けた場。
かつて闇文明が闇文明の力を略奪した地。
今はなにもない、不毛の大地だ。
そこで、二人の人影が向かい合っていた。
どちらも、この世界には存在しないはずの、人間。
一人は、黒髪をなびかせる、普遍的な少女。平凡で、普通で、少し元気が過ぎるだけが取り柄の、なんでもない少女。
一人は、儚さすら感じさせる華奢な少女。昏き瞳に絶望を宿し、光を失った輝きを放つ、世界のすべてを捨てた少女。
「……懲りない……」
少女は言った。吐き捨てるように、無感動に。
日向恋——ラヴァーは言った。
さらに、目の前の少女、さらに向こう——十人程度の集団を一瞥する。
「ギャラリーまで……」
「安心してよ。私も一騎さんと同じ——デュエリストは、私一人だから」
少女は答えた。確かな意志と、決意を持って。
空城暁は、はっきりと、言い放った。
リュンがどのように手回しをしたのかは分からないが、再び暁たちはラヴァーと合い見える機会を得た。
一騎の時の教訓もあり、今回は遊戯部も、烏ヶ森も総動員しているが、実際に対戦する者はただ一人。
暁だけだ。
これについては、一部の者——頭の固い浬や美琴など——は異議を唱えたものの、それ以外のほとんどの者は賛同の意を示し、多数決の原理によって押し切られた。
それに、もし仮に反対意見が多かろうと、暁は止まらなかっただろう。
今の彼女の決意を揺るがすことのできる者は、何人たりとも存在しない。
それほどに、彼女の決心は固かった。
「……ねぇ、一つ、聞いてもいい?」
「…………」
ラヴァーは反応を示さない。だが暁は、構わず続けた。
「なんで、一騎さんを拒絶するの?」
「…………」
ラヴァーは答えない。それでも、暁は言葉を紡ぐ。
「あなたのことは、一騎さんから全部聞いた……一騎さんは、あなたのことを話す時、とっても申し訳なさそうで、悲しそうで、辛そうだった……一騎さんは今も昔も、そしてこれからも、あなたを思い続けている。なのに、なんで——」
「……つきにぃは関係ない」
「それだよ」
暁は鋭く、彼女の言葉を拾う。
「つきにぃ、それって一騎さんのことだよね? 私もこのみさんに「きらちゃん」ってあだ名をつけられて、お兄ちゃんもその呼び方をしてた時期があったんだよね」
恥ずかしいからって、すぐにやめちゃったけど、と暁は少し残念そうに言う。
「名前って、いつも私たちが思ってる以上に、すごく大事なものなんだよね。私もそんなことがあるから分かるの。あなたが一騎さんのことを、そうやって昔と同じように呼んでいるのは、あの人を拒みきれていないからじゃないの?」
「…………」
ラヴァーからの言葉は、なかった。
それが否定を意味する沈黙か、肯定を否定したい沈黙かは、この際どちらでもいい。
彼女の本心がどうであれ、その果てにあるものがどうであれ、暁は一騎の意志を継ぎ、自分自身を貫き通すだけだ。
「……ねぇ」
「…………」
再び暁は、ラヴァーに呼びかける。
彼女はやはり黙殺するが、暁もやはり、そのまま続ける。
「デュエマをしよう」
そうすれば、分かることがある、と。
彼女はそんな期待を持ち、デッキを取り出した。
彼女も同様に、カードを握る。
「……行こう、コルル」
「……キュプリス……」
「おう、いいぜ」
「……了解した」
暁にはコルルが、ラヴァーにはキュプリスが。
それぞれ、付き従った。
そして、開かれる。
戦いの場。かつての神話たちの戦場となった亜空間。
熱血の火と、正義の光が、雌雄を決するために。
意志を継ぐ少女と、何者もを閉ざす少女の、すべてを決するために。
暁とラヴァーのデュエル。
どちらも立ち上がりは静か。ただし、静かなまま、淡々と軍勢を築き上げるラヴァーに対し、暁の静かに燃える炎は、だんだんとその炎を燃え上がらせてゆき、果ては爆炎のような大火となる。
「《聖龍の翼 コッコルア》を召喚……」
まず、ラヴァーは下準備として、ドラゴンの召喚を補助する《コッコルア》を呼び出すが、
「呪文《メテオ・チャージャー》! 《コッコルア》を破壊!」
返しの暁のターン、隕石に押し潰されて、あっという間に破壊されてしまった。
だがまだ序盤。たかだか一体のクリーチャーが破壊された程度では、ラヴァーは揺るがない。
「《ジャスティス・プラン》を発動……《龍覇 アリエース》《聖鐘の翼 ティグヌス》《高貴の精霊龍 ペトローズ》を、手札へ……」
「だったら私は、呪文《ネクスト・チャージャー》を発動! 手札をすべて入れ替えるよ!」
手札を補充するラヴァーに対抗するかのように、暁は手札を交換し、手札の質の向上に賭ける。
しかし同時に似たようなことをやっても、先行するのはラヴァーだ。
彼女は暁に先んじて、動き出す。
「《龍覇 アリエース》を召喚……能力で、コスト2以下のドラグハートを、バトルゾーンへ。来て……《神光の龍槍 ウルオヴェリア》」
軽量型だが、ラヴァーはドラグナーを呼び出した。光文明の一軍隊を率いるドラグナー《アリエース》。
彼の登場と共に、天から一筋の光が落下する。
「《ウルオヴェリア》を、《アリエース》に、装備……」
光は龍の槍となり、《アリエース》はそれを掴み取る。
これで《アリエース》はパワー4000のブロッカーとなった。
「……私のターン」
手札を入れ替えるも、暁の手はいまいちパッとしない。まだまだ十分戦えるが、今一つ、なにかが足りない。
そう、思った時だった。
「! これは……」
あのカードを、引き当てた。
“彼”から受け取った、大切なカードを。
——このカードを、君に託す——
——俺の言葉は、恋には届かなかった——
——でも、暁さん、君なら——
——あいつを、恋を、救ってくれるはず——
あの時の、彼の言葉を思い返す。
彼の言葉と共に、思いと共に、託されたこのカード。
暁は、願うように目を閉じた。
「……一騎さん、力を、貸してください……!」
暁は迷わなかった。ここでこのカードを引いた意味。それは考えるまでもなく感じられる。
自分の頭が良くないことくらいは自覚している。だからこそ、感覚で、自分の思うままに、戦う。
そして、そうなれば、ここでこのカードを出さない理由はない。
マナゾーンのカードを静かにタップすると、暁は激しく、力強く、そのカードを繰り出す。
「《龍覇 グレンモルト》召喚!」
- 51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.190 )
- 日時: 2015/06/28 21:04
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
「《龍覇 グレンモルト》召喚!」
爆発するような炎をかき分けて現れたのは、火文明のドラグナー《グレンモルト》。
登場時にコスト4以下のドラグハートを呼び出し、それがウエポンならば自分自身が装備する能力を持つ。そんな彼の獲物は、剣だ。
火文明の龍の力が込められた数々の剣を操る彼だが、《グレンモルト》が剣を振るえても、暁が呼ぶ《グレンモルト》が同様に剣を振るうことができるわけではない。
ゆえに、今回ばかりは、暁なりの、暁だからこその剣を、彼に授ける。
「来て! 《爆熱剣 バトライ刃》!」
遥か彼方の銀河の先にある、太陽の如き爆熱の中から、一振りの剣が解き放たれる。
それは剣というにはあまりに荒々しく無骨だが、しかし、同時に熱い魂を感じ取ることができた。
「《バトライ刃》を《グレンモルト》に装備!」
《グレンモルト》は、友の魂が込められたその剣を、しっかりと握りしめる。
「続けて、私の場には火のドラグナーがいるから、G・ゼロ発動! 呪文《暴龍警報》! 《グレンモルト》をスピードアタッカーに!」
これで、暁の攻撃準備は整った。
「さぁ、行くよ! 《グレンモルト》で攻撃! その時、《バトライ刃》の能力発動!」
爆熱剣 バトライ刃 ≡V≡ 火文明 (3)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せてもよい。それが進化でないドラゴンか進化でないヒューマノイドであれば、バトルゾーンに出す。それ以外なら山札の一番下に置く。
これを装備したクリーチャーは攻撃されない。
龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、ドラゴンをバトルゾーンに出していれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。
《バトライ刃》から放たれる熱気が、暁の山札を飛ばす。そして、暁は飛ばされた一枚のカードを、掴み取った。
これが《バトライ刃》の熱血に応えられるクリーチャーであれば、その熱き魂に続くことができる。そしてそれがドラゴンならば、龍解条件も満たされるのだ。
果たして、捲られたカードは、
「……ドラゴンじゃないけど、ヒューマノイド爆! ニ体目の《グレンモルト》だよ!」
残念ながら《バトライ刃》で捲れたのは、ヒューマノイド爆の《龍覇 グレンモルト》。ドラゴンではないため、龍解条件が満たされないが、ヒューマノイドではあるので、問題なくバトルゾーンに現れる。
そして《グレンモルト》が場に出たということは、またドラグハートが出現するということだ。
「《グレンモルト》の能力で、今度は超次元ゾーンから、コスト4のドラグハート・フォートレス——《大いなる銀河 巨星城》をバトルゾーンに!」
今度呼び出すのは、武器ではなく、要塞。
銀河を内包したかの如き火文明の巨大な城、《巨星城》だ。
《巨星城》を呼び出すと、一体目の《グレンモルト》が《バトライ刃》を振りかざす。
「続けるよ。《グレンモルト》でシールドをブレイク!」
《バトライ刃》を振り下ろし、《グレンモルト》はラヴァーのシールドを一枚、切り裂いた。
しかしそのシールドは、瞬く間に光の束となり、収束する。
シールドから飛び出たのは、一体の龍だった。
「……S・トリガー、発動……《記憶の精霊龍 ソウルガルド》」
「!」
「《バトライ刃》を、超次元ゾーンに……」
《ソウルガルド》の光を浴び、《グレンモルト》に装備された《バトライ刃》が、超次元ゾーンへと還ってしまった。
本来《ソウルガルド》は、コスト5以下のカードをシールドに埋める能力を持つが、この能力の真価は、選ぶ対象がクリーチャーではなく、カードであること。
つまり、除去することが難しいドラグハートを、直接除去できるのだ。特に《バトライ刃》は装備したクリーチャーの殴り返しを防止する能力があるが、武器を失ったグレンモルトは、これで無防備なった。
「……ターン終了だよ」
「私の、ターン……《高貴の精霊龍 ペトローズ》を召喚……」
これで、ラヴァーのドラゴンはパワーが4000上昇する。バトルが得意な火文明とはいえ、これは苦しいだろう。
しかも《グレンモルト》は《バトライ刃》を失い、殴り返しへの耐性がなくなっているのだ。
「《ソウルガルド》で、《グレンモルト》を攻撃……」
「くぅ、《グレンモルト》……!」
《ペトローズ》によって強化された《ソウルガルド》が、《グレンモルト》を破壊する。
《グレンモルト》はバトル時にパワーが3000上昇し、7000となるのだが、《ペトローズ》によって《ソウルガルド》のパワーは10000。《グレンモルト》は簡単に討ち取られてしまった。
「さらに、《アリエース》で、シールドをブレイク……ターン終了、する時」
ターンの終わりに、《ウルオヴェリア》を装備した《アリエース》がタップされているので、龍解条件は満たされた。
《ウルオヴェリア》に秘められた、天使龍の力が解放される。
「《神光の龍槍 ウルオヴェリア》、龍解……《神光の精霊龍 ウルティマリア》」
神光の龍槍 ウルオヴェリア 光文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーは「ブロッカー」を得る。
龍解:自分のターンの終わりに、これを装備したクリーチャーがタップされていれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
神光の精霊龍 ウルティマリア 光文明 (5)
ドラグハート・クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 7500
ブロッカー
このクリーチャーは、相手プレイヤーを攻撃できない。
「っ、まだ、まだだよ! 私のターン! 《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! その能力で《ペトローズ》とバトル!」
号砲のような《バトラッシュ・ナックル》の雄叫びがこだまし、《バトラッシュ・ナックル》はその鋭い鉤爪で、《ペトローズ》を引き裂く。
《ペトローズ》の能力は、自分自身には適応されないため、《バトラッシュ・ナックル》に戦闘破壊されてしまった。
さらに、ここからが、戦闘龍たる彼らの本領発揮だった。
「まず、私の火のクリーチャーがバトルに勝ったから、《巨星城》の能力発動! カードをドローするよ!」
《巨星城》は味方の火のクリーチャーがバトルで勝利するたびに、恩賞として、カードを引くことができる。
血気盛んゆえに、バトルが得意だが手札が枯渇しやすい火文明にとっては、非常にありがたい一枚だ。
そして、《バトラッシュ・ナックル》の勝利は、《巨星城》の能力を発動させるだけにとどまらない。
仲間の勝利は、さらなるドラゴンを呼び出す引き金となる。
「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」
- 51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.191 )
- 日時: 2015/06/28 22:46
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」
《バトラッシュ・ナックル》の勝利に呼応して、《バトライオウ》が戦場へと赴いた。
彼は両腕の刃を打ち鳴らし、大地を震撼させるような咆哮を放つ。その勢いや、燃え盛る炎と同じ、いやさそれ以上の気迫であった。
「《グレンモルト》で、《ソウルガルド》を攻撃!」
攻撃可能な《グレンモルト》は、《ソウルガルド》へと素手で特攻する。ラヴァーの場にはパワー7500のブロッカー、《ウルティマリア》が存在するが、そんなものはお構いなしだ。
なぜなら、《バトライオウ》がこの場にいるから。《バトライオウ》が存在する限り、味方の火のクリーチャーのバトルは、すべて《バトライオウ》が肩代わりすることができる。なので、仮に《ウルティマリア》が出張ってきても、パワー8000の《バトライオウ》に打ち負かされるだけだ。
そのためラヴァーは、素直に《ソウルガルド》を破壊させた。
そして、返しのターン。
「……《純白の翼 キグナシオン》を召喚……さらに、《龍覇 レグルスピア》、召喚……」
再び、ドラグナーを呼び出す。しかも今度は、《アリエース》よりも上級のドラグナーを。
《アリエース》が呼び出せるのは、コスト2以下のドラグハート。だが《レグルスピア》は、コスト3まで出せる。
そして、ラヴァーのコスト3のドラグハートと言えば、
「来て……《浮遊する賛美歌ゾディアック》」
天より、賛美の歌が響く。
一つの島のようになった、浮遊する教会が、天をかき分けて現れた。
これでラヴァーの光クリーチャーはすべてパワーが1000上昇し、《ウルティマリア》のパワーが《バトライオウ》を上回ってしまった。
《キグナシオン》によってシールドへの攻撃も躊躇われる状況。暁は一気に苦しくなってしまったが、
「……ここは攻める。ブロッカーもトリガーも関係ない! 呪文《メテオ・チャージャー》! 《ウルティマリア》を破壊!」
まず《メテオ・チャージャー》で《ウルティマリア》を破壊する。これでパワー負けする心配はなくなった。
「さらに、《爆竜 GENJI・XX》召喚! スピードアタッカーの《GENJI》でそのまま攻撃して、能力発動! ブロッカーの《キグナシオン》を破壊! Wブレイク!」
続けて、《GENJI》を呼び出して《キグナシオン》を破壊。ブロッカーを一掃し、そのまま攻め入る。
だが、その攻め方は非常に危険なものだ。
「《キグナシオン》が破壊されたターン、私のシールドはすべてS・トリガーになる……S・トリガー……《天運の精霊龍 ヴァールハイト》《ジャスティス・プラン》……」
突如、ラヴァーのシールドが純白の光で輝く。
《キグナシオン》の能力によって、ラヴァーのシールドに奇跡の力が宿り、すべてS・トリガーとなったのだ。
《GENJI》の刀が二枚のシールドを切り裂き、その二枚のシールドからクリーチャーと呪文、《ヴァールハイト》と《ジャスティス・プラン》がそれぞれ飛び出し、ラヴァーのシールドと手札を潤す。
どんなに重いカードでも、今はシールドが割れるだけですぐさま発動してしまう。これ以上の攻撃は危険な行為だが、暁は止まらなかった。
「まだまだ! 《バトライオウ》でWブレイク!」
《バトライオウ》が両腕振るい、ラヴァーのシールドをさらに二枚、切り裂く。
一気にシールドを削られるラヴァーだが、割られた二枚のシールドは、光の束となって収束し、彼女の場へと向かうのだった。
「……S・トリガー……《ヘブンズ・ゲート》」
光の束はだんだんとその姿を明確にさせていく。
それは天国へと続く門扉。そこを通り、現世に舞い降りるのは、天命を授かった光の守護者たちだ。
「私の世界の英雄、龍の力をその身に宿し、聖歌の祈りで武装せよ——《護英雄 シール・ド・レイユ》」
そして、
「私の世界に奇跡を起こす——《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》」
ラヴァーの手札から二体の大型ブロッカー、《シール・ド・レイユ》と《ラ・ローゼ・ブルエ》が現れる。
まずは《シール・ド・レイユ》が力を発動した。その瞬間、ラヴァーのマナゾーンが白い光を発し、《シール・ド・レイユ》の身体を聖歌と盾が覆う。
「《シール・ド・レイユ》の能力で……《バトラッシュ・ナックル》と、《グレンモルト》を、シールドへ……」
次の瞬間には、《シール・ド・レイユ》から発せられる光線によって、暁のクリーチャーが二体、シールドへと封じ込まれてしまった。
これ以上の攻撃はできず、暁はターンを終える。そうして訪れた、ラヴァーのターン初め。
「ターン始めに、光のクリーチャーがニ体以上……《浮遊する賛美歌ゾディアック》、龍解……《賛美の精霊龍 ハレルヤ・ゾディア》」
《ゾディアック》が龍解を果たした。さらにラヴァーのクリーチャーは増え、その鉄壁は堅牢なものとなっていく。
彼女が遠のいてしまうかの如く、暁を拒絶するかの如く、彼女はあらゆる攻撃、破壊を遮断する。
「私の世界の英雄、龍の力をその身に宿し、支配の盾で武装せよ——《天英雄 ヴァルハラ・デューク》」
続けざまに現れたのは、《シール・ド・レイユ》に続く英雄、《ヴァルハラ・デューク》。
その力により、再びラヴァーのマナが光に包まれる。
「《ヴァルハラ・デューク》のマナ武装7、発動……」
マナゾーンの光がラヴァーのクリーチャーにも届き、彼らを守るかのように包み込む。
これでラヴァーのクリーチャーは、次のターンまで破壊されなくなった。
ただでさえ立ち並ぶクリーチャーに押されているというのに、除去を封じられるとなると、ますますもって対抗手段がなくなってしまう。
だがラヴァーはそんな暁の心を折りに来るかのように、彼女の反撃の芽を潰していく。
「《シール・ド・レイユ》《ラ・ローゼ・ブルエ》で……《バトライオウ》《GENJI》を、攻撃……」
「《バトライオウ》、《GENJI》……」
暁のクリーチャーが、切り札が、仲間が。立て続けに破壊されていく。
加えて《ラ・ローゼ・ブルエ》の能力で、ラヴァーはシールドを回復している。あらゆる面から、暁の攻め手は潰されているのだ。
それでも暁は、諦めず、デッキに手をかける。
次なるカードを引くために。
「私のターン……!」
手札のない暁は、このターンのドローに賭ける。どうにか、場を好転できるカードを引くことを祈る。
しかし、現実は非情だった。
「くっ、うぅ……呪文《天守閣 龍王武陣》……!」
捲られたのは《コッコ・ルピア》《ネクスト・チャージャー》《熱血龍 バクアドルガン》《怒英雄 ガイムソウ》《ボルシャック・NEX》の五枚。
暁は《ガイムソウ》を選択するも、《ヴァルハラ・デューク》のマナ武装によって、《龍王武陣》から放たれる砲撃は、すべて弾かれてしまう。
「……マナ武装5で、《ガイムソウ》を手札に……!」
なので結局、暁にできることは、そのカードを手札に入れることだけ。
これ以上はなにもすることができず、ターンを終えるしかなかった。
「……《栄光の翼 バロンアルデ》を召喚、マナを追加……さらに」
ブロッカーとマナを増やしつつ、ラヴァーは、六枚のマナをタップする。
そうして現れるのは、正義執行の使者だった。
「《龍覇 エバーローズ》を召喚……来て……《不滅槍 パーフェクト》」
ドラグハート・ウェポンまで呼び出すラヴァー。彼女の場にはクリーチャーが五体以上存在しているので、龍解条件は満たしている。
つまり、
「世界の王よ、正義を掲げ天より降り立ち、不滅の生と命を授ける。龍解——」
《パーフェクト》が天空へと撃ち出され、一筋の光となりて、地上へと降り注ぐ。
刹那、不滅の槍に宿された龍の魂が、解放される——
「——《天命王 エバーラスト》」
- 51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.192 )
- 日時: 2015/06/28 23:47
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
「——《天命王 エバーラスト》」
龍解が成し遂げられた。
天命が執行される。
光の正義によって。
天使龍たちの、王によって。
「龍解……完了……」
「っ……!」
幾度と見た光景。数多の光クリーチャー。その中心に存在する、《天命王 エバーラスト》。
次のターン。暁は反撃の芽をすべて潰され、圧倒的な戦力差を武器に、光の軍勢に押し潰される。
そんなビジョンが、見えたような気がした。
(……ダメ! 弱気になっちゃダメだ、私! このデュエルは、今までとは違うんだ。一騎さんのためにも、一騎さんの分も、戦うんだ!)
しかし、この状況は絶望的だ。その事実は揺るがない。
手札の《ガイムソウ》だけではどうしたって突破は不可能。
逆転の目は、本当に存在しないのか。
それを否定する時、なにか、途轍もない力を感じた。
熱く、熱く、ただひたすらに熱く、力強い、なにかが。
(この力は……一騎さん……?)
無意識に手を置いていたデッキ。それに触れている手に、熱い力を感じる。
それが一体なんなのか、それは考えるまでもなく理解できた。
この熱さ、温かさ、優しさ——これは、彼の力だ。
(……お願い、一騎さん。もうちょっとだけ、私に力を貸して……!)
暁はその一心で、カードを引く。
「私のターン!」
迷いはなかった。
今、自分にできること、それは仲間を、彼を信じて、カードを操るだけだ。
暁はマナゾーンのカードを七枚、タップする。
「暁の先に並ぶ英雄、龍の力をその身に宿し、熱血の戦火で武装せよ! 《怒英雄 ガイムソウ》!」
爆炎が弾け飛び、噴火の如く、怒り狂う龍の如く、《ガイムソウ》がその姿を現した。
直後、爆発するかのように、暁のマナゾーンが炎に包まれる。
「《ガイムソウ》のマナ武装7発動! 手札から火のクリーチャーを一体、バトルゾーンへ!」
出せるクリーチャーなど決まりきっている。今、自分の手札にあるのはこのカードだけだ。
彼との約束の証。今の自分に応えてくれた、彼の意志。
それを、今ここに、呼び出す。
「行って! 《龍覇 グレンモルト「爆」》!」
龍覇 グレンモルト「爆」 火文明 (8)
クリーチャー:ヒューマノイド爆/ドラグナー 8000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、コスト5以下の火のドラグハートを1枚、自分の超次元ゾーンからバトルゾーンに出す。(それがウエポンであれば、このクリーチャーに装備して出す)
スピードアタッカー
W・ブレイカー
《ガイムソウ》の武装の力により現れたのは、《グレンモルト》。
しかし、いつもの姿とは違う。より熱く、より激しく、内に秘めた力を爆発させるべく刃を振るう《グレンモルト》——《龍覇 グレンモルト「爆」》だ。
その能力は、超次元ゾーンからコスト5以下の火のドラグハートを呼び出すこと。
《グレンモルト》は4コスト以下までしか呼び出せなかったが、《グレンモルト「爆」》は呼び出せる範囲が広くなっているのだ。それは、つまり、
「《爆熱剣 バトライ刃》、2D龍解——そしてここに!」
《バトライ刃》を、《バトライ刃》ではない状態で、呼び出すことができるということだ。
超次元の空間で、《バトライ刃》はその姿を変える。
熱血の龍の魂が変質し、龍の刃は、天守閣のそびえ立つ、龍の城へと変形する。
そして、戦場へと現れた。
「《爆熱天守 バトライ閣》!」
爆熱天守 バトライ閣 ≡V≡ 火文明 (5)
ドラグハート・フォートレス
自分の火のドラゴンまたは火のヒューマノイドが攻撃する時、自分の山札の上から1枚目をすべてのプレイヤーに見せてもよい。それが進化ではないドラゴンまたは進化ではないヒューマノイドであれば、バトルゾーンに出す。それ以外なら、自分の山札の一番下に置く。
龍解:自分のターン中、ドラゴンをバトルゾーンに出した時、それがそのターンに出す最初のドラゴンでなければ、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。
《爆熱剣 バトライ刃》が《グレンモルト「爆」》の力を受け、超次元の彼方で2D龍解し、バトルゾーンへとそびえ立つ。
その姿は、巨大な龍の天守閣を持つ城。
それこそが、《爆熱天守 バトライ閣》だった。
「《グレンモルト「爆」》はスピードアタッカー! そのまま攻撃!」
《バトライ閣》を、《グレンモルト「爆」》の能力でウエポン状態を経由せず、直接場へと呼び出した暁。
彼女はそのまま攻撃する。相手の場に、数多のブロッカーが存在する中で。
しかしそれは考えなしに特攻したわけではない。《グレンモルト「爆」》が攻撃することで、《バトライ閣》の能力が発動する。
暁は山札の一番上のカードを捲る。それがドラゴンか進化でないヒューマノイドであれば、そのままバトルゾーンに出せる。
ここで望むのはドラゴンだ。
そして、暁が捲るのは——
「——《永遠のリュウセイ・カイザー》! ドラゴンだからバトルゾーンへ!」
そして。
暁は、二本の指を突き立てる。
「ターン中、私は二体目のドラゴンをバトルゾーンに出したよ! だから、《バトライ閣》の龍解条件成立!」
《バトライ閣》の龍解条件は、ターン中に二体ドラゴンを呼ぶこと。
暁はこのターン、《ガイムソウ》を召喚した。そして《グレンモルト「爆」》の攻撃によって発動した《バトライ閣》の能力で、《リュウセイ・カイザー》をバトルゾーンへと出している。
《ガイムソウ》と《リュウセイ・カイザー》。この二体から熱血の闘魂を受け、《バトライ閣》はさらにその姿を変形させる。
魂の在り方を、変質させる。
「《爆熱天守 バトライ閣》——」
さらなる熱き闘志を燃え上がらせる。
熱く、熱く、ひたすら熱く。
燃え上がる。
「暁に先に——」
勝利を、刻むべく。
「——3D龍解!」
そして、現れた。
爆ぜるような熱血の魂が、武神の如き龍の魂が。
その姿が、ここにある。
暁の先に、勝利を刻む——
「——《爆熱DX バトライ武神》!」
- 51話/烏ヶ森編 18話 「暁vsラヴァー」 ( No.193 )
- 日時: 2015/06/29 01:03
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)
爆熱DX バトライ武神 ≡V≡ 火文明 (8)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 12000
このクリーチャーが攻撃する時、自分の山札の上から3枚をすべてのプレイヤーに見せる。その中の進化ではないドラゴンと進化ではないヒューマノイドをすべてバトルゾーンに出す。こうして見せたカードが3枚ともドラゴンであれば、そのターン、バトルゾーンにある自分のクリーチャーはすべて「スピードアタッカー」を得る。その後、残りのカードを好きな順序で自分の山札の一番下に戻す。
T・ブレイカー
龍回避—このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンを離れるかわりに、フォートレス側に裏返す。
《バトライ刃》が天守閣の城となり、《バトライ閣》へ。
《バトライ閣》が鎧武者の龍となり、《バトライ武神》へ。
勝利を刻む戦闘龍は、武器と要塞の姿となり、その内で燃やした闘士を、龍の魂を、すべて解き放つ。
そして現れた。爆熱の鎧龍が、戦闘と勝利を望み、武神の龍となり、昇華した姿。
それが——《爆熱DX バトライ武神》。
「《リュウセイ・カイザー》の能力で、私のクリーチャーはすべてスピードアタッカーになる! 《グレンモルト「爆」》で攻撃!」
「《エバーラスト》でブロック……!」
「続けて《爆熱DX バトライ武神》で攻撃! そして、能力発動!」
大地を揺るがし、天空を震わせる咆哮が響き渡る。直後、《バトライ武神》は刀を振るった。そうして発生した陣風が、暁のデッキから三枚、カードを飛ばす。
飛ばされたカードは宙を舞い、やがて熱き闘志の火を点けられる。
「《バトライ武神》が攻撃する時、山札の上から三枚を捲って、その中の進化でないドラゴンとヒューマノイドをすべてバトルゾーンに!」
飛ばされた三枚のカードがすべて、暁の前へと舞い落ちる。
そして、点火された闘魂が——轟!
——と、燃え上がる。
刹那、爆炎の中から、三体の龍が飛び出した。
「行っけえぇぇぇぇぇぇぇ! 《ジャックポット・バトライザー》! 《撃英雄 ガイゲンスイ》! 《勝利天帝 Gメビウス》!」
《バトライ武神》の力に呼応し、暁の仲間たる龍が現れる。
さらなる龍を呼び込む《ジャックポット》。
仲間へ熱血の力を託す英雄《ガイゲンスイ》。
そして呼ぶものに勝利をもたらす《Gメビウス》。
「《ガイゲンスイ》のマナ武装7発動! 私のクリーチャーのパワーはすべて+7000! さらにシールドを一枚追加ブレイクするよ! 《バトライ武神》!」
暁の声に呼応するかのように《バトライ武神》は刀を振るい、ラヴァーへとその刃を向ける。
熱血の魂が注ぎ込まれた、熱き炎の刃を。
「っ……《エバーローズ》でブロック……!」
《バトライ武神》のパワーは《ガイゲンスイ》の能力で+7000されており、パワー19000。《エバーラスト》でも倒せない強さだ。
「《Gメビウス》で攻撃! その時、《Gメビウス》の能力でアンタップして、《バロンアルデ》も破壊!」
「《シール・ド・レイユ》でブロック……!」
「もう一度《Gメビウス》で攻撃! 《ソウルガルド》を破壊!」
暁の猛攻が始まった。
《バトライ武神》が呼び集めた龍たちの力を結集させ、ラヴァーの強固な鉄壁を突き崩す。
彼女のブロッカーは次々と倒れていき、シールドも次々と砕け散る。
そして、炎が揺らめく。
「……!」
許しがたい、炎が舞う。
「っ……!」
仲間を奪った、同胞を消した、友を焼いた、炎が。
憎々しく、忌み嫌う炎が、今、自分の目の前にある。
——彼女の中で、なにかが弾けた。
「……S・トリガー……!」
そして、彼女の世界を——終わらせる。
「——《アポカリプス・デイ》!」
アポカリプス・デイ 光文明 (6)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにクリーチャーが6体以上あれば、それをすべて破壊する。
昏い光が戦場を包む。
刹那、その光はすべての命を無にする。
黙示録に描かれた1ページが再現される。神話のような凄惨な一場面。絶望的な終末が訪れ、あらゆる生命は消し飛ばされた。
——彼女の手によって。
「っ、そんな……」
状況はこちらが優勢だったはず。《バトライ武神》が数多の龍を呼び、《ガイゲンスイ》が火力を上げ、《リュウセイ・カイザー》が推進力となり、一気に決めるつもりだった。
天国の門が開こうとも、龍の印が現れようとも、すべてを焼き払うつもりでいた。それだけの力が、暁の戦闘龍にはあったはずだ。
だが、まさか、彼女が破壊を為してくるとは思いもしなかった。
すべてを焼き払われたのは、むしろこちら側——すべてが虚無の世界となってしまった。
「で、でも! 《バトライ武神》は龍回避で、《バトライ閣》に——」
「……させるか……! 《ソウルガルド》を召喚……《バトライ閣》を、超次元ゾーンへ!」
「な……っ!」
声を荒げ、ラヴァーは記憶を封じ込める天使龍を呼び出す。
場は一掃され、唯一残された《バトライ閣》も超次元ゾーンへと戻されてしまう。
再び《バトライ武神》へと3D龍解する希望も、断たれてしまった。
「さらに、《コッコルア》を召喚!」
「わ、私のターン……《セルリアン・ダガー・ドラゴン》を召喚! 一枚ドロー!」
「《音感の精霊龍 エメラルーダ》を召喚……さらに、《ソウルガルド》を進化!」
眩い閃光が、《ソウルガルド》を包み込む。
「私の世界を照らしだす——《聖霊龍王 バラディオス》!」
そして進化した姿は、封印の光を放つ天使龍《バラディオス》。
その光を浴びたものはすべて、動きを封じられ、なすすべもなく、圧倒的な力にひれ伏してしまう。
「相手クリーチャーをすべてフリーズ! そのまま攻撃!」
「う……《熱血龍 メッタギルス》召喚! 《コッコルア》を破壊!」
《セルリアン・ダガー・ドラゴン》がやられ、暁は即座に《メッタギルス》を呼び出す。
それにより《コッコルア》を破壊するが、
「呪文《ヘブンズ・ゲート》……《提督の精霊龍 ボンソーワル》、そして」
最悪のタイミングで、天国の門扉が開かれる。
ラヴァーは割られたシールドから手札を得ており、暁は手札もクリーチャーもほとんどいない。反撃の手は枯渇してしまっている状態だ。
そんな状況で、二体の天使龍が、舞い降りる。
「私が世界を支配する——《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》!」
《ヴァルハラナイツ》が、正義を執行すべく舞い降りた。
その力により、今度は《メッタギルス》の動きが封じ込まれる。
「《バラディオス》で、《メッタギルス》を攻撃!」
光輪が《メッタギルス》を両断する。暁は場にクリーチャーを残せず、ひたすら殲滅されてしまう。
いつになったら、彼女の裁きは、下るのか。
刻一刻と迫るそれを、無限の時を過ごすかのように、待たされる。
「……《コッコ・ルピア》を召喚して、ターン、終了……」
暁はカードを引き、クリーチャーを召喚する。
今の自分にできることは、こんなにもちっぽけだ。次のターンにすぐさま破壊されるかもしれないクリーチャーを呼び出すことしかできない。
意味もなく、すぐに死にゆくクリーチャーを呼ぶことがどれほど残酷か。分かっているはずなのに、なにもせずにターンを終えることはできなかった。
「《龍覇 エバーローズ》を召喚……!」
ラヴァーは淡々と、爆発寸前の激情を必死で抑えるように、しかし少しずつ漏れ出ている感情のままに、次なるクリーチャーを呼び出す。
龍と心を通わせるドラグナー。《アリエース》《レグルスピア》と見て来た、三体目のドラグナーと、ドラグハート。
再び舞い戻ってきた、光の使者たち。
彼女の切り札が封じられた槍が、現れるのだった。
「来て……《不滅槍 パーフェクト》!」
不滅の槍が、《エバーローズ》の手に渡る。
「《パーフェクト》を《エバーローズ》に装備……さらに、《協奏の翼 メダロ・アンドロム》を召喚!」
これで、彼女のクリーチャーは全部で五体。
それが、暁に彼女の正義という裁きを下す合図だった。
ターン終了、と彼女は告げる。
そして、昏い光が世界を覆う。
「世界の王よ、正義を掲げ天より降り立ち、不滅の生と命を授ける。龍解——」
正義執行の天命王が、再び舞い降りる——
「——《天命王 エバーラスト》!」
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