二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て26」 ( No.470 )
日時: 2016/09/06 18:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「《メガ・ブラスター》で勝負を決めるデッキだなんて……想定外」
「リビング・デッドなんてフィニッシャーのいないような種族でどう勝負をつけるのかと思ってたけど……展開してブレイク数を増やすのね」
 序盤はブロッカーで耐え、墓地回収でリビング・デッドを使い回しながら展開。数が並んだところに、《メガ・ブラスター》を撃ち込んでフィニッシュ、というのが暁のデッキだったようだ。
「でも、なんでリビング・デッドなんですか?」
「いや、そこは最初に言った通りだよ。枚数があるのが、この種族だけでさ……《スケルトン・シーフ》なんて三枚あったし」
「まあでも、貧弱なリビング・デッドの先入観がいい具合に働いて、放置されてたものね。相手の心理の穴を上手く突いていたとは思うわ」
「そうかなぁ、あはは」
「だが、黒赤で手札を消費する《メガ・ブラスター》は、どうにも効率が悪いように思えるが……」
 確かに相手の虚を突くことができる一撃だが、《メガ・ブラスター》は効果発動に手札を消費する。二体をWブレイカーにするだけでも二枚の手札が必要になるため、手札補充手段に乏しい黒赤では、使いづらいことだろう。
「だからこそ墓地回収なんでしょう。戻せばブロッカー、出せばアタッカー、ハンドキープで《メガ・ブラスター》のコストと、手札に持ってても場に出してもいいわけだし」
「《マグマ・ゲイザー》もbとする際には補助の役割があったんじゃないかな?」
「実は《スネークアタック》も入ってて、本当はそっちが本命だったんだよ。今回はたまたま、《メガ・ブラスター》が引けたけど」
 《スネーク・アタック》はシールドを消費することで自軍をWブレイカーにする呪文だ。《メガ・ブラスター》よりも重いが、こちらの方が手軽に場のクリーチャーをフィニッシャーにできる。メインに据えるなら、確かにこちらの方が使いやすいだろう。
 どちらにせよ、今回の対戦は暁の勝利で、恋からデュ円を得ることができた。
「よーし! この調子でデュエマに勝って、お金を稼いでいくよ!」
 まだまだ一位までは遠く、破産に近い場所にいる暁。
 それでも彼女は、頂点を目指して、また盤上の周回を始める——



 数十分後。

GAME OVER —空城 暁—

「負けたあぁぁっ!」
 暁は破産した。
「普通に土地から搾り取られて終わったな」
「最初にちゃんと土地や不動産を買収しないからこうなるのよ。デュエマだけで食っていける世の中じゃないのよ」
「現実を突きつけていくな……」
 恋との対戦後、暁は誰かと対戦することもなく、止まった土地の支払いで残り少ないデュ円を搾り取られ、数巡のうちに破産した。
「しかし、一人破産するのに随分と時間がかかったな」
「ミシェル、一人目は俺だよ……」
「朝からはじめて、もうお昼ですね」
「そういえば昼飯ってどうするんだ?」
「なにも考えてないわ」
「おい部長」
 今日も考えてないのか、という浬の非難を、どこ吹く風で聞き流す沙弓。昨夜の準備とはなんだったのか。
「まあでも、まったく考えてないわけじゃないのよ? 少しだけなら考えてるわ」
「少しだけって表現が気になるが、言ってみろ」
「とりあえず私は、このゲームを中断する気はないわね」
「ただの我儘じゃねえか!」
 考えと言うにもお粗末な思考だった。ゲームを中断せず、昼食を摂れと言うのか。
「それなら、ゲームしながらでも食べられるような簡単なものを作ろうか?」
「あぁ、それいいわね。ナイスよ一騎君。暁もちょうど破産したし、二人にお願いするわ。お金がないんだから、働かざる者食うべからずよ」
「俺たちはゲームしてるだけだがな」
 どちらかと言えば働いていないのは、自分たちではないだろうか。
 なんにせよ、このモノポリーも現状がかなり複雑怪奇になっているので、下手に中断したくないというのはある。
 一騎の申し出もあり、暁と二人で昼食は任せることにした。



「あーあ、ようやくデュエマでも調子出て来たのに、あそこで終わっちゃうなんて……」
「残念だったね、暁さん」
「まあでも、楽しかったですよ。いつもと違うカード使うのも、難しいけど、新しい発見とかあって、新鮮でした」
「そっか……俺もやりたかったな……」
「……なんか、ごめんなさい」
「いや、いいんだ。俺の運がなかっただけだから……それより、お昼のこと考えないとね。確か、ご飯はまだ結構残ってたよね」
「パン食の人が多かったですからね。ご飯だったのって、ゆずと一騎さんと、あと空護さんくらいだったと思いますけど」
「昼にも使う予定で炊いたけど、これならおにぎりでも握ろうか。あの人数分は大変だけど」
「あ、それなら、冷蔵庫に海苔とか梅干とかシャケフレークとか、いろいろありますよ」
「……本当、多種多様な食材が揃ってるよね。これを全部俺たちのためだけに用意してもらったと思うと、なんか申し訳ない……」
「食パンもたくさん残ってますねー。おにぎりだけだとアレですし、私はサンドイッチ作ろうかな」
「あ、いいね。缶詰もたくさんあるよ。スイートコーンにツナに、あとホイップにフルーツ系の缶詰とかもあったから、デザートにフルーツサンドも作れるね」
「……合宿の食材としてホイップがあるって、なんか変ですね?」
「うん……誰が選んだんだろうね、この冷蔵庫の中身……」



「——対戦マス。後方の二番目に近い人と対戦」
「あたしか」
 浬が対戦マスに止まり、その相手として選ばれたのは、ミシェルだった。
 幾戦も経験し、他人の対戦の流れも見ているので、レギュレーションの選定も手慣れたものだ。ささっと今回の対戦のレギュレーションを決めてしまう。
 そうして決まった今回のレギュレーションは、『ジェドルール』だった。
「……なんだ? 『ジェドルール』って」
「おっと……カイ、そのレギュを引き当てるとは、なかなかやるわね」
 沙弓が楽しそうに笑っている。沙弓がこのような表情をしている時は、十中八九、ロクでもないことが起こる。
 今回のレギュレーションも、嫌な予感しかしない。
「『ジェドルール』……このレギュレーションは、二人で対戦するレギュとしては、一際特殊なのよね」
「二人で対戦するレギュレーションとしては? どういう意味だ?」
「ほら、二人で対戦する場合のレギュレーションって、構築に縛りを課すものが多くて、ルールそのものにはあんまり干渉しないでしょう?」
「言われてみればそうだな。ルールに干渉したのは、『全カードオープンデュエル』と『計略デュエル』の時くらいか?」
「一応、『ワンデッキデュエル』もルールに干渉してましたよ」
 デュエル・マスターズのカードを使う以上、デュエル・マスターズの基本ルールには沿わなければ、このカードを使う意義がなくなるので、ルールに大きく干渉するようなレギュレーションが難しいという理屈は理解できる。
 わざわざ沙弓が『ジェドルール』で、そんな話をしたということは、このレギュレーションは基本ルールに大きく干渉してくるということなのだろう。
「とりあえず、説明するわね。『ジェドルール』は超変則的なデュエマで、デッキ枚数は十五枚よ」
「じ……十五? 通常デッキの半分以下だぞ!」
「手札とシールドに五枚振り分けるだけで、もうデッキ枚数が五枚になる。すぐにLOを起こして、まともに対戦できるとは思えないな」
「まあまあ、カイ、シェリー、最後まで聞きなさいな。『ジェドルール』はデッキ枚数十五枚。で、対戦開始時に十五枚の山札を、手札、シールド、山札にそれぞれ好きな枚数を振り分けることができるの」
「振り分ける……?」
 つまり、初期手札とシールドの枚数は、必ずしも五枚でなくてもいいということ。
 極端な話、初期手札とシールドをゼロにすれば、山札が十五枚になる。シールド十五枚、手札十五枚ということも、理論上は可能だ。そうした瞬間に負けるので、意味はないが。
「最初に手札とシールドの枚数を調整できるわけか……手札を増やせば戦略の幅が広がる、シールドを増やせば防御力が高まる」
「ただし手札やシールドを増やすと、山札が少なくなってLOの危険性も高まる、と。最初の配分をどうするか、という段階から、勝負は始まってるんだな」
「流石二人は呑み込みが早いわね。だけど、それだけじゃないわ。今回の対戦では、このカードの中からデッキを作ってもらう」
 そう言って沙弓は、箱の中から適当にカードを引っ張り出して、枚数を数える。
 二十八、二十九、三十、と数え終えると、浬とミシェルの間に、ポンと置いた。
「……これは?」
「『ジェドルール』で使うためのデッキを作る用のカードの束」
「明らかに適当に引っ張り出したようにしか見えないんだが……この束の中からカードを選んで、デッキを作るのか?」
「そういうことよ。ここには三十枚のカードがあるから、二人で交互に一枚ずつ選択していって、最終的に十五枚のデッキにしてね」
「互いに選択、か……」
 三十枚の束から互いに一枚ずつ取っていくということは、逆に相手がどのカードを取ったのかもわかるということだ。
 相手が選択したカードから、相手がなにを狙っているのかも読むことができるだろう。相手の狙い通りにデッキを組ませないよう、先に相手が取りたがるカードを取るという戦略も取れる。
 お互いのデッキは筒抜けなので、シールドや手札の枚数に加えてデッキの中身も考慮して戦略を組み立てる必要がある。対戦ターンそのものは短そうだが、その短さに反して、考えるべきことは通常の対戦よりもずっと多そうだ。
 とにもかくにも、まずはデッキを作らなければいけない。
 普段のデッキよりも少ない三十枚の中から、たった十五枚のカードを、選択する。

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て27」 ( No.471 )
日時: 2016/09/06 22:55
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

『ジェドルール』ルール
・デッキ枚数は十五枚。
・ゲーム開始時、山札から置く手札、シールドの配分は自由。
・デッキ構築は、三十枚のカードの束から、交互にカードを選択して十五枚にする。
・カード選択の時間は一分。


 じゃんけんの結果、カードを取るのは浬が先となった。それと同時に、対戦の先攻はミシェルに決定する。
 選択時間は一分。一分以内にデッキに組み込むカードを選択肢、相手に束を渡さなければならない。
 浬は三十枚のカードの束にさっと目を通す。その中身はこうなっていた。



《聖鎧亜キング・アルカディアス》
《猛菌剣兵チックチック》
《霊王機エル・カイオウ》
《ワーニング・スパイク》
《たたりとホラーの贈り物》
《慈悲と自愛のアシスト》
《伝説の秘法 超動》
《雷撃と火炎の城塞》
《預言者リク》
《雷光の使徒ミール》
《機術士 ゾローメ》
《一角魚》
《アクア・ソルジャー》
《K・リミー》
《ゼピメテウス》
《ロスト・ウォーターゲイト》
《怒りの影ブラック・フェザー》
《剣舞の修羅ヴァシュナ》
《デーモン・ハンド》
《熱血龍 リトル・ガンフレア》
《染風の宮司カーズ》
《クック・ポロン》
《飢えと乾き ケローラ》
《職人ピコラ》
《火炎流星弾》
《躍喰の超人》
《覚醒するブレイブ・ホーン》
《フィーバー・ナッツ》
《フェアリー・ギフト》
《再誕の社》



(なんとなく予想していたが、酷い中身だな……)
 比較的見覚えのあるカードが多めだが、それでも実用性に欠けるカードも少なくない。また、デッキ枚数が十五枚しかないにもかかわらず、かなり文明がばらけている。多色カードも少ない。
 たった三十枚しかないカードの中で、浬がまず最初に目についたのは、一枚だけ明らかに光り輝いているカードだ。
(《キング・アルカディアス》……当然のようにプレ殿が混じってるな。これを出せれば、ほぼ勝確になりそうだが……)
 浬は、そのカードを取るつもりはなかった。
 理由は二つある。
(見たところ、多色クリーチャーは《エル・カイオウ》と《チックチック》のみ。《エル・カイオウ》は軽くて使いやすいブロッカーだが、《チックチック》は色が合わない上にビート向けのスペック。それを考慮せずとも、進化元が少なすぎる)
 《キング・アルカディアス》は進化元がいなければ完全に腐るカードなので、進化元二体は流石に心もとない。デッキ枚数が少ないので、ある程度は狙ったカードが手に入りやすいだろうが、それでも躊躇われる。
 それに、浬が《キング・アルカディアス》を選ばない理由は他にもある。
(とにかく重い。普通に手札とシールドに五枚ずつ振り分けると、5ターン目にはLOだからな。使えるマナは加速しないで最大4マナ。《キング・アルカディアス》なんて出している暇はない)
 実際には手札の枚数をもっと減らすことになるだろうが、それでも山札切れ直前に《キング・アルカディアス》が出るようなものだ。そんな状態でロックしたところで、あまり意味はない。
 クリーチャーに単色が多いだけに、《キング・アルカディアス》は出せれば有効に機能するのだろうが、だからこそ出しにくく、出せたとしても無意味に終わりかねない。
 あくまでこのクリーチャーが強いのは、普通のレギュレーションにおいてだ。ここまで変則的なレギュレーションでは、その強さは十分には発揮できない。
 となると次に考えなくてはならないのは、勝ち筋だ。
 浬は後攻。つまり、カードを先に引く立場にある。カードを先に引くということは、山札の枚数を意図的に減らさなければ、先に山札を切らすということ。
 相手よりも山札切れに近いのであれば、コントロールのように長々と戦っている暇はない。自分にしかない優位性を生かしつつ、とっとと勝負をつけるべきだ。
 そう思って浬は一枚のカードを取った。
「……どうぞ」
「あぁ」
「58秒。結構考えてたわね」
「まあな」
 浬はちらりと選択したカードに目を落として、それを伏せた。
 最初に浬が選んだのは、《覚醒するブレイブ・ホーン》だ。
 コスト3、パワー1000のWブレイカーという、特異なスペックを持つ自然のクリーチャー。
 浬が考える勝ち筋とは、単純明快。ビートダウンだ。
 序盤から殴り切って倒す。そのために、《ブレイブ・ホーン》はかなり重要な一枚だった。
(3ターン目に出せるWブレイカーというだけで、かなり強いからな。それに四天寺さんは、“俺が《ブレイブ・ホーン》を持っていることを知らない”)
 そう、これが、浬にしかない優位性だった。
 先にカードを選択できるプレイヤーは、当然ながら先に三十枚の中身を把握できる。ここで重要なのが、三十枚把握できるのは、先にカードを選択するプレイヤーだけということ。
 後からカードを選択するプレイヤーは、既に一枚のカードが抜かれた状態で束を見て、カード内容を把握するため、相手がなんのカードを手に入れたのか。最初の一枚だけはわからないのだ。
 《ブレイブ・ホーン》はその軽さと打点の高さから、奇襲に最適だ。相手が知らないところに出してこそ、真価を発揮するだろう。
 浬はその優位性を利用する。
「……終わったぞ」
「はい」
 ミシェルの選択が終わり、浬の番が回ってくる。
 二十八枚になったカードの束を見て、ミシェルが選択したカードを見つける。先ほど見た中から、なくなっているカードは、
(……《躍喰の超人》、か)
 S・トリガー付のジャイアント。自身とコスト7以上のクリーチャーが出るたびにマナブーストするクリーチャーだ。
 ミシェルがどのような意図でこのカードをチョイスしたのかはわからない。S・トリガーのクリーチャーという点に価値を見出したのか、それともマナ加速することが重要だと考えたのか、はたまた自然のカードを持っておくべきだと思ったのか。
 恐らくは、先ほど挙げた理由が複合しているのだろうが、いまいちミシェルの考えが読めないのも確かだ。
 自然のマナを先に取って、浬の《ブレイブ・ホーン》出しにくくするという戦略もあるが、ミシェルは浬が《ブレイブ・ホーン》を選択したことを知らない。
 ということはつまり、彼女は自分の戦略のために、《躍喰の超人》を取ったのだろう。
(……なにが狙いか、まだわからないな。とりあえず俺は、自然を確保しよう)
 次に浬は、《フェアリー・ギフト》をチョイスした。
 使えるカード総数が少ないこのレギュレーションで、コスト軽減は重要だ。マナ加速は重いカードを使う手段となるが、同時に自分が使えるカードを減らしてしまう。山札から加速すれば山札切れに近づき、手札から加速すれば息切れする。
 ゆえに、このレギュレーションなら、マナ加速よりもコスト軽減の方が強いと浬は考える。特に《フェアリー・ギフト》は、1ターン中に実質2コストも下げる。いざとなれば《ブレイブ・ホーン》を出すための色にもなるので、取っておいて損はない。
「どうぞ」
 そうして、ミシェルに束を渡す
 ミシェルも浬と同じように考察しているのだろう。こちらが取ったカードと、自分の戦略を擦り合わせて、なにが最良の選択かを考えている。
 しばらくして、ミシェルが選択を終え、浬に束を渡す。また中身を見て、ミシェルの取ったカードを確認する。
(《再誕の社》……? 俺が緑のカードを取ったのを見て、緑色を減らしにきてるのか? しかし《再誕の社》とは……)
 墓地のカードを二枚までマナゾーンに置ける殿堂カード。確かに強いカードだ。この束には墓地回収もないので、破壊されたクリーチャーや唱えた呪文は、対戦中には使えない。それをマナに変換できるのは、無駄なくリソースを獲得できているので、合理的だ。
 しかしそれは、逆に言えば、カードを二枚墓地に置かなければマナが増やせないという意味でもあり、マナ加速にラグが生じる。通常の対戦よりもずっと短い時間になるので、対戦が終わるまでに墓地が二枚以上あるかと言われると、ない可能性も十分に考えられる。墓地を増やすというのは、案外簡単ではないのだ。それは、墓地ソースを始めとする墓地戦略をデッキに組み込んでいるミシェルなら、よくわかっているはず。
 ミシェルの考えがやはりわからず、とりあえず浬は最後の自然のカード、《フィーバー・ナッツ》を選択する。
 《フィーバー・ナッツ》はクリーチャーの召喚コストを1軽減するクリーチャー。その範囲は相手にも及んでしまうが、自然の色確保の意味も込めて浬はこのカードを選んだ。
 ミシェルから束が返ってくる。次にミシェルが選んだのは、
(えーっと、あの鳥っぽい奴……《染風の宮司カーズ》だったか? 確か、自分の黒と緑のクリーチャーをパンプアップするクリーチャーだったと思うが……)
 如何せんマイナーなカードなので、あまりよく能力を覚えていない。カード選択は一分という制限時間があるので、一枚一枚のカードをじっくり見ていられないのだ。
 低コストでアタッカーになれるので、浬も採用しようか考えていたのだが、先に取られてしまった。
(まあいい。ここは相手の赤色を減らしつつ、二体目のWブレイカーを取るか)
 浬が次に取ったのは、《熱血龍 リトル・ガンフレア》。
 コスト4、火文明のWブレイカードラゴンだ。
 このレギュレーションでコスト4は重いが、《フェアリー・ギフト》を唱えれば最速2ターン目に出て来る。《ブレイブ・ホーン》と並んで、フィニッシャーとして使えるだろう。
 またミシェルに束を渡し、返ってくる。次にミシェルが取ったのは、《雷撃と火炎の城塞》のようだ。
(赤のトリガーを取られたか……まあ、白は使う予定がないから、いいとしよう。次は……こいつか?)
 次に浬は、《猛菌剣兵チックチック》を取る。この束の中にある唯一のスピードアタッカーという点で貴重であり、また攻撃時に手札を増やせる。
 山札切れの可能性があるので無闇にドローはできない。ドローするかどうかは慎重になる必要があるが、場合に応じて息切れを解消できるのは強い。こちらも《フェアリー・ギフト》を用いれば早出しができるので、取っておいて損はない。
 ミシェルの考えていることが今でもよくわからないが、次に選択したカードで、浬の頭になにかが引っかかった。
(《デーモン・ハンド》……またトリガーか)
 しかも、コスト6と重い呪文だ。手打ちするには重すぎる。トリガー頼りの呪文だと言えるだろう。
 しかしここまで、ミシェルは選択してるカードの色がバラバラだ。最初は自然、次に火、そこから光と火の多色に、闇。既に四文明になっている。
 だがそのうちの二枚はS・トリガーだ。つまり、マナコストを支払う必要がない呪文である。
(……まさか)
 浬は自分の選んだカードを確認する。
 《ブレイブ・ホーン》はばれていないとして、《フェアリー・ギフト》に《フィーバー・ナッツ》《リトル・ガンフレア》《チックチック》。
 明らかに殴る気満々のビートダウン気質なチョイス。ミシェルは当然、それに対して対策を講じようとするはずだ。
 ビートダウン対策において、最も簡単な方法は二つ。
 一つはブロッカーを並べること。
 そしてもう一つは、S・トリガーを充実させることだ。
(トリガーは俺のビート対策……そして、トリガーで唱えた呪文を《再誕の社》でマナに変換する気か……)
 これなら、運が絡むものの、浬の攻撃を止めつつマナを伸ばし、反撃に出ることができる。合理的だ。
(さらにここまでの四天寺さんのチョイスから察するに、相手の狙いは俺のLO……後攻がLOに近いわけだから、普通にやっていれば俺が先に山札が尽きる。トリガーで粘り切って勝つつもりか?)
 しかしそれならば、浬にも考えがある。
(LOに関しては対戦中に気を配るとして、押し込むための策が必要だな。こちらもリソースを切らさないことを考えなくてはならない。とすると……)
 浬はカードを一枚選択する。
 選択したのは、《アクア・ソルジャー》だ。
 3マナ、パワー1000という貧弱なクリーチャーだが、このクリーチャーは破壊されても手札に戻る。非常にしぶとく戦線に復帰できるクリーチャーなのだ。
 墓地に落ちたクリーチャーはそれで終わりだが、《アクア・ソルジャー》は死んでも終わりではない。いくら死んでも、何度でもバトルゾーンに戻って、殴り続けることができる。短いターン数なので、使い回せる回数は限られるが、リソースを枯らさないという点では大きな役目を果たしてくれるだろう。
 ミシェルの選択が終わり、また浬の手元に束が戻ってくる。今回、ミシェルが選んだカードは、概ね浬の予想通りだった。
(《ワーニング・スパイク》……やはり、俺の攻撃を徹底的に止めるつもりだな)
 三連続でトリガー呪文をチョイスしたミシェル。浬の予想は、ほぼ確信に変わった。
(なら次は、赤色確保と殴り返し防止に、《クック・ポロン》だな)
 《クック・ポロン》は相手クリーチャーに攻撃されない。つまり殴り返されないクリーチャーだ。
 2コストと軽く、殴り返しも受けないため、生き残りやすい。破壊されにくさも、この対戦では重要になるだろう。
(四天寺さんが次に選んだのは……《エル・カイオウ》か)
 パワー4500の光と水のブロッカー。軽くてパワフルなので、浬の選んだアタッカーでは突破しづらい。単純ながらも、出されると厄介なことになるクリーチャーだが、
(なら、その一点狙いで《火炎流星弾》を持っておくか)
 ブロッカー除去の《火炎流星弾》を手に入れる。効く相手が限られるが、1コストで手打ちしやすく、面倒なブロッカーを除去できるのは大きい。持っていたほうがいい一枚だと判断する。
 その後も、概ね浬の予想通りに、ミシェルはカードを取っていき、浬も色を合わせつつビートダウンするためのカードを選択していく。

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て28」 ( No.472 )
日時: 2016/09/06 23:54
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 浬が十三枚目のカードを取り、十四枚目のカードを取ろうとした時、ふとその手が止まった。
(ん……? これは……)
 さっき見た束と、今見ている束との違い。抜けているカード。つまり、ミシェルが取ったカードが、気にかかった。
 


《慈悲と自愛のアシスト》
《雷光の使徒ミール》
《怒りの影ブラック・フェザー》
《剣舞の修羅ヴァシュナ》



 これが、今のカードの束の中身。この中からなくなっていたもの、ミシェルが取ったカードは、
(《キング・アルカディアス》? 確かに《エル・カイオウ》はいるが、腐りやすいそのカードを取ったのか……)
 《エル・カイオウ》しか進化元がいないデッキに《キング・アルカディアス》。浬は取る気がまったくないので、最後にはミシェルに押し付ける予定だったが、自分から取ってくるとは思わなかった。
 ミシェルのデッキには光のカードもそれなりにあるので、色合わせだろうか。
(だがそれなら《慈悲と自愛のアシスト》でいいよな……《デーモン・ハンド》や《たたりとホラーの贈り物》を手打ちするため?)
 しかし《デーモン・ハンド》は手打ちするには明らかに重く、《たたりとホラーの贈り物》は積極的に手打ちしたいようなスペックではない。
 それとも、あわよくば《エル・カイオウ》からの進化を狙っているのだろうか。
(……まあこの枚数だし、あまり深く考えなくてもいいか? 俺ももう、欲しいカードなくなったしな……)
 浬のデッキは最終的に、青赤緑シータのビートダウンになった。今のところ他の色は一切混じっていない。
 なので、残ったカードはまるで使い道がないのだが、
(《ヴァシュナ》のWブレイカーは魅力だが、味方を殺す《ブラック・フェザー》も入れることが前提と考えると、選びにくいな。それにここで俺が《ヴァシュナ》を選んでも、四天寺さんがそれを見て《ブラック・フェザー》を選べば、腐るだけだ)
 ミシェルはすべての文明が混在したデッキなので、《ブラック・フェザー》単体でも、使えないことはない。実用性はないだろうが。
 ここで《ヴァシュナ》を選べば、ミシェルが《ブラック・フェザー》を取って腐る可能性がある。それならば、
(やはり腐ることになるが、相手のトリガー比率を下げること、ついでに俺のトリガー確保も考えて、《慈悲と自愛のアシスト》を選んでおくか。一応、緑のマナ基盤になるしな)
 そしてあわよくば、次に《ミール》を取れれば、両方のカードを使うチャンスができたが、そこまで上手くはいかない。
 次に束(二枚)が回って来た時には、黒いカードしかなかった。
(まあ、そうだよな。仕方ない。俺としてはどちらを選んでも同じだが……《ヴァシュナ》を相手に渡す方が危険か? 高パワーのWブレイカーだし、ここは味方破壊のデメリットを持つ《ブラック・フェザー》の方を押し付けるか)
 そう考えて、《ヴァシュナ》を取り、最後に残った《ブラック・フェザー》を渡す。味方を殺し、できなければ自壊する《ブラック・フェザー》。使いどころは難しいだろう。
 しかし《ブラック・フェザー》も軽さのわりにパワーが高めなので、早い段階から出て来る殴り返し要員と考えると、渡しにくいところはあった。
(……今気づいたが、《ブラック・フェザー》を自爆させれば、《再誕の社》でマナ加速しやすくなるな。やはり重い《ヴァシュナ》を押し付けるべきだったか?)
 とはいえもうカードは渡してしまったので、今更そんなことに気付いても後の祭りだが。
 なんにせよ、これでデッキは完成した。
 それぞれ、浬はシールド三枚、手札二枚。ミシェルはシールド五枚、手札二枚で対戦を始める。



「あたしの先攻からだったな。《たたりとホラーの贈り物》をマナチャージして、ターン終了だ」
「俺のターン。まずはドロー……」
 デッキ枚数が極端に少ないだけに、ターン最初のドローでさえも重い。
 カードを引いて、浬はいつも半分しかない手札を眺める。
(手札は……《ケローラ》《ピコラ》《ゼピメテウス》か)
 見事にコスト1のクリーチャーが目白押しだ。
 しかし、序盤から殴るのであれば、この手札は悪くない。とりえず《ケローラ》で殴ることを考えて、《職人ピコラ》を抜き取る。
「《ピコラ》をチャージ。ターン終了」
「あたしのターン。《リク》をチャージ、ターン終了だ」
 ミシェルはマナに光、闇、火の三色を揃える。様々な色のカードが投入されているので、色基盤を先に作ってしまおうということだろうか。
「俺のターン。《ゼピメテウス》をチャージ。1マナで《飢えと乾き ケローラ》を召喚」



飢えと乾き(アップ・サイダー) ケローラ C 火文明 (1)
クリーチャー:アウトレイジ 2000
自分のマナゾーンに水のカードがなければ、このクリーチャーを破壊する。



「《ワーニング・スパイク》をチャージ。ターン終了」
 ミシェルはまだ動かない。これでマナに四文明が揃ったが、一枚もカードを使っていなかった。
 そして浬のターン。ここで、切り札を引いた。
「よし。《フェアリー・ギフト》をチャージ。3マナで《覚醒するブレイブ・ホーン》を召喚!」
「! 《ブレイブ・ホーン》……!」
 少なからず驚きを見せるミシェル。当然だ。彼女はこのカードを知らないのだから。
 恐らく、Wブレイカーは《リトル・ガンフレア》だけだと高をくくっていたのだろう。この早い段階でのWブレイカーは、強烈な圧力になる。
「《ケローラ》でシールドをブレイク!」
「っ、トリガーはない」
 まずは一枚、シールドを粉砕する。
「……マナチャージなし。《カーズ》を召喚して、ターン終了」
「俺のターン。マナチャージなしで《アクア・ソルジャー》を召喚! 《ブレイブ・ホーン》でシールドをW ブレイクだ!」
 ミシェルの場にはブロッカーがいない。殴り返してくるクリーチャーはいるが、これはチャンスだ。
 こちらにアタッカーは三体。一撃でもWブレイクを通せば、かなり勝利に近づく。なので、迷わず《ブレイブ・ホーン》でシールドを二枚、叩き割ったが、
「! S・トリガー! 《伝説の秘法 超動》! 《ケローラ》を破壊!」
「やはりトリガーは埋まっているか……ターン終了」
 アタッカーを削られ、次のターンには《ブレイブ・ホーン》も殴り返される。
 攻め手を止められると、浬としては厳しいのだが、
「《躍喰の超人》をチャージ。2マナで《霊王機エル・カイオウ》を召喚。《カーズ》で《ブレイブ・ホーン》を攻撃!」
「ぐっ、ブロッカーか……!」
 ここで《エル・カイオウ》が出て来てしまった。パワー4500のブロッカー。浬のデッキでは、どのクリーチャーでも突破できない壁だ。
「たったコスト2のクリーチャーに封殺されるとはな……《クック・ポロン》を召喚。ターン終了だ……」
「あたしのターン。《雷光の使徒ミール》を召喚。能力で《アクア・ソルジャー》をタップ。さらに《怒りの影ブラック・フェザー》を召喚。能力で《ミール》を破壊する」
 《アクア・ソルジャー》がタップされて無防備を晒す。さらに、おまけのように《ミール》を生贄に捧げ、《ブラック・フェザー》が現れる。
「《カーズ》で《アクア・ソルジャー》を攻撃!」
「っ、だが、《アクア・ソルジャー》は破壊されても手札へ戻る!」
 案の定、《アクア・ソルジャー》はタップキルで破壊される。しかしリソースの枯渇を危惧して入れたカードだ。墓地へは行かず、手札へと戻す。
 いつも以上にテンポが削がれるのは痛いが、裏を返せば、いつも以上にすぐ戦線復帰できるアタッカーというのは心強い。また出し直すだけで、すぐに殴り手になれる。
 とはいえ《エル・カイオウ》が邪魔なので、早急に処理しなければならないのだが、
「! 引いたぞ、1マナで《火炎流星弾》! 《エル・カイオウ》を破壊!」
「ちぃっ! やられたか」
「《クック・ポロン》でシールドをブレイク!」
 手札がなく、マナも足りないので《アクア・ソルジャー》と同時に出すことはできなかったが、厄介だったブロッカーを処理し、攻撃も通せた。
 《クック・ポロン》はパワーこそ貧弱だが、攻撃されない。殴り返しを受けないので、やはりしぶとく生き残るだろう。
 おまけにミシェルの多色クリーチャーはこれでゼロなので、《キング・アルカディアス》も出せない。最初からそれほど気にしてはいないが。
 さらに良いことは重なる。それは、ミシェルのデッキ枚数だ。
 見ればミシェルの残りデッキ枚数は二枚。次の1ターンさえ凌げば、なにもせずとも浬の勝利だ。
「……1マナで《ロスト・ウォータゲイト》を唱える」



ロスト・ウォーターゲイト C 水文明 (1)
呪文
S・トリガー
自分の山札を見る。その中から多色カードを1枚選び、相手に見せてもよい。その後、自分の山札をシャッフルし、そのカードを山札の一番上に置く。



「山札を見て、《キング・アルカディアス》をトップに固定」
 残り二枚のデッキのトップを固定するミシェル。
 浬には、ここでそのカードを使う意義が、いまいちわからなかった。
(四天寺さんの見えていないカードは……《雷撃と火炎の城塞》《K・リミー》《デーモン・ハンド》《再誕の社》か? 《ロスト・ウォーターゲイト》の効果は強制じゃない。《雷撃と火炎の城塞》が盾落ちだとしても、トップに使えない《キング・アルカディアス》を置く必要があるか? マナも足りてないぞ)
 わざわざ次のターンに《キング・アルカディアス》を引く理由が、果たしてミシェルにあるのだろうか。
「さらに3マナで《再誕の社》を唱える。墓地の《ミール》と《ロスト・ウォーターゲイト》をマナへ」
(これでマナは溜まった……残り手札は一枚。盾一枚。山札は、ボトムが一枚。その中にそれぞれ《雷撃と火炎の城塞》《K・リミー》《デーモン・ハンド》が振り分けられている状況……)
 となると、シールドにトリガーが埋まっている確率は三分の二。割ったら踏んでもおかしくない。
(そもそも、こんなに考える必要あるか? 次のターンを耐えれば、俺の勝ち——)
 とそこで、浬はハッと気づく。
 自分が今まで攻めていたがゆえに、見落としていた。
(! しまった、まずいぞ……!)
 ミシェルの場には、《カーズ》と《ブラック・フェザー》の二体。
 浬のシールドは一枚もブレイクされていないが、初期段階で三枚だ。
 つまり、
(このターンで二枚ブレイクされたら、返しのターンで一体でも除去しなければ、次のターンに殴り切られる……! だが俺の場のクリーチャーは……)
 パワー1000の《クック・ポロン》が一体だ。《火炎流星弾》で《エル・カイオウ》を破壊して喜んでいる場合ではなかった。
 手札にあるのも《アクア・ソルジャー》一枚だけだ。
 殴り返しもできず、除去カードもない。かなり絶望的な盤面だ。

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て29」 ( No.473 )
日時: 2016/09/07 07:05
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

 速攻で決めると高をくくり、シールドを減らしたことが裏目に出た。2ターンかければ、ミシェルのアタッカーに殴り切られる。
(……いや、まだだ)
 だがそれでも、終わりではない。
(まだ見えていないカードの中に、《一角魚》と《チックチック》がある。《一角魚》を出せれば《ブラック・フェザー》をバウンスして、とどめまでのターンを稼げる。《チックチック》が引ければそのまま殴り切る。その場合はトリガーが不安材料だが……)
 浬にはまだ、この状況を逆転するチャンスがあった。数少ないクリーチャー除去に、唯一のスピードアタッカー。これらが引ければ、勝てるチャンスはある。
 さらに、可能性はもう一つある。
(加えて俺のシールドに《ゾローメ》が埋まっていれば、相手の攻撃を止めて耐えることができる)
 浬の勝ち筋は、それら三つ。
 一つ目に、《一角魚》を引いてアタッカーを減らす。
 二つ目に、《チックチック》を引いて殴り切る。この場合はトリガーがない前提になる。
 そして三つ目に、シールドに《ゾローメ》が埋まっていること。トリガーすれば相手のアタッカーを止められる。
 以上の三つのうちどれかが達成できれば、浬の勝ちだ。
(懸念があるとすれば、俺のカードはまだ見えていないものが多いから、確率が怪しいことだが……ここまで来たら、もう祈るしかないな)
 いくら考えてもトップデックは変わらないのだ。生存の可能性を見出したのであれば、あとは引けることを願うしかない。
「……まあこれ以上はいいだろ。さて、どっちで殴るか……こっちだな。《ブラック・フェザー》でシールドをブレイク」
「来たか、シールドは……?」
 シールドを確認する浬。捲れたのは、《熱血龍 リトル・ガンフレア》。この状況ではわりとどうでもいいクリーチャーだ。
 一枚目は失敗したが、まだシールドは二枚残っている。このうちどちらかに《ゾローメ》があれば……と浬が思っていると、
「ターン終了だ」
「え……終わりですか?」
「そう言ったはずだが? お前のターンだ」
 ミシェルはそれ以上攻撃せず、ターンを終える。
 ここで殴って次のターンに殴り切るという勝ち筋は、ミシェルもわかっているはずだ。だからこそ殴ったのだと思ったが、違うのか。
 浬は、彼女になにが見えているのか、わからない。
「えっと、じゃあ俺のターン。ドロー」
 ここで浬は最も成功確率の低そうな、《チックチック》を引いた。
 しかし、ここで殴る必要はあるのだろうか。
 浬のシールドは二枚。次のターン、ミシェルはとどめを刺せないはずだ。ならばここで浬が殴る理由は一切ない。
 むしろミシェルは、なぜ前のターンに《カーズ》で殴らなかったのだろうか。ミシェルの勝ち筋はそれしかなかったはず。スピードアタッカーもデッキにはいないし、それ以前に、トップは《キング・アルカディアス》に固定されているのだから。
(ん? 《キング・アルカディアス》……そういえば、さっき、《ロスト・ウォーターゲイト》を使っていたが、あれの意味は……)
 ミシェルがなにも考えずにカードを使うわけがない。《カーズ》で殴らなかったのも、そこになにか意味があるはず。
 このまま進めば、ミシェルはデッキ切れで負けだ。デッキを回復する手段は存在しない。となればミシェルが勝つには、殴り切るという方法しか取れない。しかし殴り切るにはアタッカーが足りていない。正確には、アタッカーが足りていたはずなのに、わざと攻撃しなかった。
 わからない。なにかが足りない。
 なに、必要な情報が足りていないような気がする。まだ自分が知らない情報。見えてないカードは自分のカードだけ。相手のシールドに埋まっているカードは、ある程度予想がつく。
 では、なにが足りないのか。盤面を見る。そして、
(……そういえば、《カーズ》の能力って……)
 ミシェルが最初の方に取ったカードだ。最初は色々と考えており、カード一枚一枚の能力をよく確認していなかった。なので浬は《カーズ》のことを、3マナ、パワー2000、味方をパンプアップする鳥人間くらいにしか思っていなかった。
 この対戦でも、序盤からずっと場に出ているが、このクリーチャーは一体なんなのか。眼鏡の位置を直し、テキストに目を向ける。
 そして、欠け落ちていた情報が今、揃った——



染風(せんぷう)の宮司(ぐうじ)カーズ R 火文明 (3)
クリーチャー:フェザーノイド 2000
バトルゾーンにある自分の闇のクリーチャーと自然のクリーチャーはすべて、火のクリーチャーでもある。
バトルゾーンにある自分の他の火のクリーチャーすべてのパワーは+1000される。



(っ! こいつ、場のクリーチャーを染色するのか……!)
 味方の友好色をパンプアップするという能力だと浬は記憶していたが、それは結果としては正しい。
 しかしこの状況では、結果のための過程を無視してはいけなかったのだ。。
 《カーズ》がパンプアップする対象は、あくまでも火文明のクリーチャーのみ。ただし、闇と自然のクリーチャーに火文明を追加するため、結果として友好色を強化しているというだけだ。
 この場合重要なのは、場のクリーチャーに火文明を追加するという点。具体的には、ミシェルの場にいる《ブラック・フェザー》だ。
 今の《ブラック・フェザー》はパワーが4000。なぜそうなっているのかと言えば、《カーズ》によって強化されているから。なぜ強化されているかと言えば、今の《ブラック・フェザー》は闇と火文明だから。
 そう、《ブラック・フェザー》は今、闇と火の、“多色クリーチャー”と化しているのだ。
(だから《キング・アルカディアス》をトップに固定したのか……! となると、手札には《K・リミー》か《デーモン・ハンド》か、どちらかの多色カードを握っている。次のターンに7マナ溜められ、進化される……!)
 そうなれば、《キング・アルカディアス》と《カーズ》で三打点。残り二枚の浬のシールドを突き破って、とどめを刺せる。
 前のターンに《カーズ》で殴らなかったのは、次のターンに打点が揃うため。そして、浬に手札を与えて、場のクリーチャーが除去されたり、行動不能にされることを防ぐためだろう。
 相手のデッキ内容を知っているのは、なにも浬だけではない。ミシェルだって、浬が《一角魚》や《ゾローメ》を取ったことは知っている。それらを警戒するのは当然だろう。
 浬は次のターンの《キング・アルカディアス》を止められない。ターンを返せば、確実にあのプレミアム殿堂クリーチャーが降臨する。
 ならばターンを返さなければいい。このターンに殴り切る希望を持って《クック・ポロン》と《チックチック》で特攻するか。
(いや……トリガー確率は三分の二だぞ? 約66%……流石に躊躇うだろ……!)
 さらに記憶を引き出す。《再誕の社》でマナを増やした後、ミシェルは少し考えてから、《ブラック・フェザー》で殴った。
 あの場面で考えるということは、恐らく手札に握っているのは《K・リミー》。だとすれば、シールドには必ず《雷撃と火炎の城塞》か《デーモン・ハンド》が埋まっていることになる。そうなれば、全力で殴っても届かない。
 浬の勝ち筋は完全に潰えたのか。
(……待てよ。まだ、生き残れるかもしれない……!)
 浬はこのデッキにほとんどトリガーを積んでいないが、それでも、《ゾローメ》以外にも相手の攻撃を止めるカードが入っている。
 そのカードは——
「《慈悲と自愛のアシスト》」
「!」
 浬がシールドに目を向けた瞬間、ミシェルの口から発せられた。
 ここから浬が勝つために必要な、唯一のカード。
「あたしもお前がなにを取ったのかくらい記憶してる。タイミングが限定されてるから後回しにしてたら、先に取られたと思ったよ。色基盤と防御用トリガーとして、投入する候補だったんだがな」



慈悲と自愛のアシスト C 光/自然文明 (3)
呪文
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
S・トリガー
次の自分のターンのはじめまで、バトルゾーンにある自分のクリーチャー1体のパワーは+3000され、「ブロッカー」を得る。



 《慈悲と自愛のアシスト》。アシストの名を持つ呪文の中で唯一のトリガー呪文だが、場にクリーチャーがいなければ使えず、能動的にアドバンテージを取れる効果でもないため、アシスト呪文の中でも使い難さのあるカードだ。
 しかしそれでも、この状況では、浬が熱望するカードである。
「残り二枚のシールドからそいつを引けば、ブロッカーができる。そうなればあたしは殴り切れず、お前の勝ちだ」
「…………」
「それとも、あたしの最後のシールドが《K・リミー》であることを願って殴るか? そこまで悩んでるってことは、《チックチック》を引いたんだろ?」
 浬はここまで一人で思考を進めていたが、多くの情報はミシェルと共有しているようなものだ。
 ミシェルからしても、すべてお見通しのようだった。
 ここで取れる選択肢は二つ。
 《チックチック》を出して殴るか、《慈悲と自愛のアシスト》が捲れることを信じてターンを終えるか。
 このタイミングでミシェルが呼びかけてきたことも、少々気になる。もしかしたら、悩んでいたのはただのポーズで、手札に《デーモン・ハンド》を持っていて、シールドに埋まっているのは《K・リミー》なのかもしれない。
 しかしその読みを外せば、《雷撃と火炎の城塞》にしろ《デーモン・ハンド》にしろ、トリガーを踏んだら浬のクリーチャーはすべてタップしたままとなり、《慈悲と自愛のアシスト》がトリガーしても、ブロックするクリーチャーがいなくなってしまう。
 つまり、殴るか、殴らないか。ただそれだけの二者択一だ。
 永遠に悩んでいたい○×問題だが、いつかは結論を出さなくてはならない。
 やがて、浬は選択する。
 自分の回答を。
「……《アクア・ソルジャー》を召喚。ターン終了」
「トリガーに賭けたか……とりあえず、その判断は正解だと言っておく。あたしのターン、ドロー」
 これがラストターンだ。
 ミシェルはトップの《キング・アルカディアス》を引き、手札を一枚マナに落とす。
「《K・リミー》をチャージ」
 ミシェルが握っていたのは《K・リミー》。やはりシールドには、トリガーが埋まっていたようだ。
 ひとまず殴らないという選択肢は良い方向に進んだが、問題はこの次だ。
 シールドに、《慈悲と自愛のアシスト》が埋まっているかどうか。
(俺のシールドは二枚。山札は三枚。絶望的というほどの確率ではないが……)
 どんなに低確率でも、可能性がゼロでなければ起こり得るように。
 どんなに高確率でも、可能性が100でなければ起こらないことがある。
 それが、デュエル・マスターズだ。
「さて、この詰将棋みたいなデュエマも終わりだな。《ブラック・フェザー》を進化——」
 ミシェルは予定調和のようにマナを払い、唯一の手札を場のクリーチャーに重ねた。
 赤く染まった怒りの黒影が、聖なる鎧を纏う精霊の王となる——

「——《聖鎧亜キング・アルカディアス》!」



聖鎧亜キング・アルカディアス SR 光/闇文明 (7)
進化クリーチャー:エンジェル・コマンド/ロスト・クルセイダー 9000
マナゾーンに置く時、このカードはタップして置く。
進化—自分の多色クリーチャー1体の上に置く。
W・ブレイカー
相手は、多色以外のクリーチャーをバトルゾーンに出す時、バトルゾーンに出すかわりに墓地に置く。
※プレミアム殿堂



 《カーズ》の能力で赤く染色された《ブラック・フェザー》が、《キング・アルカディアス》へと進化する。
 凶悪なロック能力を持つプレミアム殿堂のクリーチャーだ。
「ほとんどただの打点だが、まあいいか。とにかく決めるぞ! 《キング・アルカディアス》でWブレイク!」
「一枚目……! くっ!」
 最初にブレイクされたのは、《機術士 ゾローメ》。前のターンのブレイクで来ていれば、片方のクリーチャーを拘束して、ダイレクトアタックを防げた。
 《ゾローメ》は水文明単色のクリーチャー。《キング・アルカディアス》の管理下では、バトルゾーンに出せない。
 残るシールドは一枚。この一枚で、すべてが決まる。
 最後のシールドが、ブレイクされた。
「…………」
 シールドを捲る。
 ——《剣舞の修羅ヴァシュナ》。
 果てしない思考の末、短いこの対戦が、終わった。

「《染風の宮司カーズ》で、ダイレクトアタック——!」

番外編 合同合宿2日目 「慈悲なき遊戯は豊潤が全て30」 ( No.474 )
日時: 2016/09/07 18:20
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: ugLLkdYi)

「……疲れた」
「あたしもだ……」
 対戦が終わるや否や、二人はぐったりとしていた。
「二人とも情けないわねぇ」
「てめえは実際にやってないからわからないだろうが、これ、めちゃくちゃ頭使うぞ。カード数が少ないから1ターン一手のミスも許されない。カード数とは対照的に相手のカード情報は無駄なく多いから、考えることもそれに比例してとにかく多い」
「人間という脳の処理速度に限界があり、コンディションという不安定で不確実な要因が介入する生物だからこそ、この情報量の多さはきついものがあるな。考えすぎてプレミしかねん。公開情報の多さがここまでプレイヤーに負担をかけるとは思わなかったぞ」
 相手のデッキタイプに応じて、相手がなにをするか、ということを予想することはある。相手がサーチしたカード、そのデッキに投入されているだろうカードを考えて、それらの情報を駆使して戦略を練るというのも、対戦においては基本的なテクニックだ。
 だがこの対戦はお互いにすべてが筒抜け。しかも戦えるターン数が極端に短いというサドンデスのような状態。そしてとどめとして、文明、種族、方向性がバラバラで見たこともないようなカードプール。瞬間的な思考が凄まじい負担となっていた。
「もう二度とこんな対戦はしないからな……!」
「それは今後のあなたの引き次第ね」



「さぁみんな! ランチの時間だよっ!」
 スパーンッ! と勢いよく襖を開け放ち、台所から暁と一騎が戻ってきた。
「暁さん、襖が傷んじゃうから、もっと優しく……」
「お、来たわね。待ってました! 私もうお腹減っちゃって」
「だったら飯をどうするかちゃんと考えとけ」
「お昼は、ゲームしながらでも食べられるように、おにぎりを握ったよ」
「私からはサンドイッチだよ! あ、フルーツサンドもあるから、後で持ってくるね」
「サンドイッチ伯爵の考え方ね。悪くないわ」
「トランプしながらでも食事ができる料理というが、発明というにはえらく単純だよな……」
「一応ラップで包んではいるけど、お手拭きも持ってきたから、気になる人は使ってね」
 単純であっても、単純だからこそゲームを邪魔しない食事になるのだろう。
 なんにせよ、この昼食はありがたい。モノポリーは続行したまま、各人、同時進行で食事も済ませていく。



「『バニラ・準バニラ限定戦』?」
 暁たちが昼食を持ってきた直後、沙弓と空護が同じマスに止まり、対戦が発生した。
 レギュレーションを決めるために紙を引き、空護が引いたのは上の通りだ。
「まあまあね。見ての通りこのレギュは、バニラと準バニラのクリーチャーしかデッキに入れられないわ」
「バニラはわかるが、準バニラの定義はどうなってるんだ?」
「S・トリガー、ブロッカー(とそれに付随する攻撃不可能力)、アンブロッカブル、スレイヤー、スピードアタッカー、パワーアタッカー、ガードマン、多色カードのマナタップイン、各種ブレイカー、あとついでに覚醒リンクよ。これらの能力のみを含むクリーチャーは、すべて準バニラとみなされるわ」
「覚醒リンクにリンク解除……ということは、《ドン・マシュマロ》は使えるんですねー」
「まあね。裏面は解除持ちだけど、超次元ゾーンにあるうちはセル扱いだから。あぁでも、裏面が能力持ちの《ストーム・カイザーXX》は使えないわ。両面があるなら、覚醒面も準バニラでないといけないってルールよ」
「そもそも、《ストーム・カイザーXX》は覚醒能力があるがな」
 なんにせよ、今回は思った以上に単純なルールだった。
 そして、バニラも使えるのであれば、バニラビートを有する空護は、初期デッキから使えるカードが多い。
「でも、バニラと準バニラしか入ってないんじゃ、ただの殴り合いになるんじゃない?」
 ブロッカーなども使えるのだろうが、複雑な動きのできないバニラと準バニラだけでデッキを組むとなると、動きも単純になる。ゆえに、単なる殴り合いになると一騎は考えるが、
「……そうはならないですよ、たぶん」
「あぁ。だな」
「え? どうしてですか?」
 浬やミシェルは、そうは考えなかった。
「このルールで取れる戦術は、恐らく、大きく分けて二つ」
「一つは、数にものを言わせてぶん殴る方法。殴り合いの典型だな」
「殴り合いじゃん」
 そう。一騎の言う通り、勿論単純な殴り合いも発生するだろう。
 しかし、このレギュレーションには、穴がある。少し考えればすぐわかる隙だ。
 それにこのレギュレーションで対戦するのは、空護だけではく、沙弓もいるのだ。彼女の性質から、ある程度は推察できる。
「もう一つは——」
 あの遊戯部部長が、ただの殴り合いで対戦を進めるとは、到底思えなかった。
「さて、どうデッキを組んだものか……」
 一方、空護は悩んでいた。
 ここまでのゲームを見て、対戦相手の性質は、彼も理解するところ。
 そしてこのルールの隙間の影響を強く受けている空護は、またしても構築に悩まされることになる。ある意味、ハイランダー戦の時以上にやりにくいかもしれない。
 やがて順番が一巡する。デッキを確定させ、対戦に臨まなければならない。
 顔を上げると、不敵な笑みで沙弓が待っていた。 
「それじゃあ、始めましょうか」
 空護と沙弓の『バニラ・準バニラ限定戦』。
 対戦開始だ。


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