二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.269 )
日時: 2015/10/31 17:37
名前: Orfevre ◆ONTLfA/kg2 (ID: 02GKgGp/)


 このパターンなら、間違いなく夜中に更新されると読んで待機してたのに力尽きたOrfevreです。

 まずは闇の罪龍に対する罰ですが、闇文明使いに倒されたことから「毒をもって毒を制する」といった感じですね。
 恋はすっかり馴染んで(?)ますね、元々敵だったのにこの和解の早さ、やはり若いことの証明なんですね、分かいました。
 そして、《エリクシール》は何だかんだでヤバイ(元が元だとはいえ)専用デッキでこそ光るスペックですね。そろそろアットスターも更新しないとです。

 P.S.未だに雑談版へ入れませんが、今夜は10時頃にはinできると思います。

Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.270 )
日時: 2015/10/31 20:53
名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: 7hpoDWCB)

どうも、タクです。コメント投下に参りました。今回は、できるだけ短く纏めたいというか、あまり長くするとそちらにも負担がかかるのでしょうしで、前回の半分くらいにはしたいところです。出来れば。
そんな訳で、今回は闇文明編ですね、久々の。というか、中間プロローグでいずれはこうなる感じなのかな、というのは分かりましたが。
とはいえ、やっぱりそういう反応はしますよね、一同。殺人鬼だとか、そういうのが彷徨っている場所に居たくはないはずですし。幾らクリーチャーがいるっていっても、自分だったら背後から襲われたらどうしよう、不意打ちされたらどうしよう、だとかそういうことは少なからず思うはずですし。相手が無差別に殺害を行っているわけではないにせよ、巻き込まれたらロクな結果が予想できませんね。
そんでもってテンプレートな異名と容姿の死神は、中間プロローグに出てきたプライドエリア、そして恐らくあっさり何もせずにやられたであろうコシガヘヴィの怠惰の城下町を北上したので、ルートどおりになら強欲街道にやってくるはずだ、と。
しっかしまあ、金銀財宝や宝石があちこちに。やっぱりこれ、拾って持って帰りたくなりますね。此処まで来ると安っぽくも見えますが。まさに強欲街道というわけだ。……やっぱり持って帰りたくなった自分は強欲なのだろうか。
そんな中、エリアの主であるアワリティアと、何者かが対峙しているところを見つける一同ですが、これが紛れも無い死神だったわけですね。

デュエルの感想としては、互いにファンキー・ナイトメアの種族デッキですが、超次元を使うか否かで毛色がだいぶ変わっていますね。アワリティアは、それにさらに大型のデモコマ龍を入れていますし。そして、大量展開を狙うアワリティアに、《ディアジゴク》などのパワーダウンでとにかく除去をしていく死神。結果、そのままアワリティアは逆転されてしまったと。

アワリティアを断罪した死神——ライですが、彼女の正体については大きく裏切られました。以前、一騎が《ガイハート》を実体化させて振るった描写があったので、死神も語り手を味方につけた人間なのではないか、と。鎌はドラグハートではないか、と。しかし、1人だけであったことから、確信がもてませんでしたが、彼女自体が語り手だったわけですか。
今回は、こちらに敵対することはなかったということですね。今回は、ですが。
しっかし、ライのデュエルに対する、デュエマ脳である暁の反応が気になったのは自分だけですかね……? いつも通り深読みかもしれませんが。
しかも、話によれば冥界神話は神話の中で最弱ってもう分かんねーな。一体、どのような存在なのか……。種族がゴーストで間違いないということは確かですが。故にライも封印を自力で解けたと。

そして、自身を撃つことを要求するライ。やはり、アルテミスの肩書きと思われる名前が2つ存在することと関係があるんですかね、これは。月光神話と月影神話。意味は同じですが。
まあとはいえ、やはりこれは彼女の自己満足のように見えるのは自分だけですかね。主の罪のために動くのは分からないでもないですが、責任感が一周回って、危ない方向に向かっていると思うのですよ。今までの断罪にせよ、要求にせよ。
ドライゼが困惑するのも無理はないですね。やはり、撃たせるならハーデスを撃たせろって話です。
ある作品で、七大罪に並ぶ罪がもう1つあるとすれば、それは”正義”だ、というのがあったのですが、形はユースティティアとは違えど、これもまた正義という名の罪ではないか、と。
そんでもって、如何にも強そうな立場の冥界神話が、何故弱かったのか、ですが、モノクロさんの冥王星の話ではっとなりました。いや、でもそれだけじゃないですよね、どう考えても。

さて今回。お詫びしたいことがあります。
その次の暴食横町編。自分が直前に投下した回の所為でおっそろしいことになっていやがる。
いや、グラトニーとのデュエルまでは良かったんです。いや、それでもかなーりやば気な描写でしたが。
自分、まず、その後の回を読み飛ばしていたんですよ。間違えて。だから、そのときはふーんで済ませていたのですが、問題はその後。読み返した時に、読み飛ばした問題の回に気づいたわけです。
あ、やっちまった。でも、俺のこんなに酷くなかったくね? と。
ええ……まあ、何だ。怖い。グロい。こんなんリアルで見たら。
何で沙弓も浬も立っていられるんですかねえ? 
ともかく、お詫びしておきます。やっぱり、起爆スイッチ押してすいませんでした、と。
てか、何でグロシーンに丸々1話使ってるんだよ、まさか後2エリア分こんなのが使うのかよ、と流石にこのときは読み続けるのを躊躇うレベルでした。どんだけ続くの虐殺ツアー、と。
しかも錯乱したタクは、張り合ったのか、例の自分の回のグロさを更にパワーアップ修正してしまいました、と。何やってんだ、俺も。
ライトとは一体。ポップとは一体。
あ、自分の小説は、最初っから「自分から」ライトもポップも謳っていませんからね? どっかの誰かが勝手にメソロギィよりもライトでポップと言っていただけで。だから問題ないですね(震え声)
つーわけで暴食の罪も断罪完了。よかったよかった、よくねーよ。このサイトの対象年齢的に大丈夫なのかコレ。いや、でもそういえば自分、見たいとかそんなこと言ったような気がする。だとすれば本格的に自分の所為だわ。
ともかく、すいませんでした、想像を遥かに超えていました。お詫びに、手札破壊と同時に脳を破壊するシーンは、自分のレン対アルゴリズム戦での最後の描写にも流用させていただきまし(殴

同時に、ライの心の闇の深さがビリビリ、と伝わってくる回でもありましたね。秘められたこの残虐性、いざ暁達に剥かれたとき、はたしてどうなることやら……。
しかも、暁と柚と恋も、惨事を直接見なかったとはいえ、何で着いていこうとするんですかね、その上で……。流石に危機意識とか恐怖の意識を疑うレベル……。何故誰も止めない。いや、最早このときには皆麻痺していたのかもしれませんが。

さて、次は憤怒紛争地帯。分かるだけでも、後2つ、虐殺ツアーが続くのか……と疲労しきっていましたが、今度の敵はレンも使っていたガナルドナルですか。
しかも、そのデッキは自らの能力を最大限に生かすために、光のタップ能力を持つクリーチャーを入れている、というものですが——《ヘルセカイ》の破壊能力のスケールの前では流石に無力でしたか。思うに、自分的には《ヘルセカイ》も普通に強いと思うのですよ。何で使われない。いや、大体分かりますが。

というわけで、ガナルドナル君は尊い犠牲だった。2秒くらいは覚えてあげよう。またギッチョンか、と思った矢先。そこにはドライゼのカード化の弾丸が撃ち込まれた、と。良かった、グロシーンは流石に無かったか。
何でそんな便利なものがあるんだよ、と自分は突っ込みつつ、ライの行為と罪の矛盾を指摘する沙弓。
それに気づいたことで、今回はぶつかり合うことは無かったわけですが、いや本当に危なっかしいですね。傍から見ている暁達の顔が眼に浮かぶ。
その中で、アルテミスと最もかかわりが深い邪淫の大地に、神核がある可能性がある、と。
まあ、そうなったら沙弓からしたら行くしかないですよね。明らかにやばい香りがしているのに。
ところで、何で嫉妬の悪魔龍を宝富は出さなかったんですかねぇ……。

というわけで、ラストダンジョンに突入と。何このやっつけ感満載のネーミング、と思いました。パッと見は。邪淫の地下牢で良かったんじゃないか、と。まあ、vaultで指摘されてようやく気づいたわけですが。ラスト(色欲)とラスト(最後)をかけている、と。多分。
そんでもって置かれている拷問器具の数々。アイアンメイデンとは、タイムリーなネタを引っ張ってくださり、ありがたいところです。自分の小説的に。
しかし、そこに立ちふさがるはその主の、アスモシス。流石、大罪龍では唯一のSRというだけあって、今までのそれとは比べ物になりそうにない雰囲気ですね。ついでに薄い本が分厚くなりそうな雰囲、いや何でもないです、続けます。
言ってることも、まあ、うん、司るのが邪淫だし、仕方ないね。
いや、しかし流石、アスモシス。ロリ巨乳の良さを分かっているとは、非常に(このコメントはライに断罪されました)

そしてデュエルですが、《ロックダウン》による《オルゼキア》の破壊に反応し、《ドライゼ》が踏み倒された、と。
そして、《フォーエバー・オカルト》のコストのために出オチした、と。

……え。

何やってるんだ、とさすがに思いましたね。触れてはいけない琴線に触れてしまったとはいえ、本当に部員を救う気があるのか、と。このときの彼女は、一時的な怒りで完全に意固地になってしまっていたのでしょうが。
とはいえ、これはもう、どちらが一概に間違っているとは言えないんですよね……。

そんでもって現れるは、恐らく大罪龍の中では一番強力であろう《アスモシス》。自分のクリーチャーを好きなだけ犯して壊し(ただし、♀に限る)、その数だけ敵の手札とクリーチャーを破壊する凶悪なクリーチャー……。やべえ、やべえよ。
しかも、vaultで散々言っていた陵辱シーン……。読んだ限りは……ぎりぎり良いんじゃないですかね? これ以上はvaultでもこのシーンについては沢山語っていますし、カット。
……まあ、これを機会に《ブラッディ・メアリー》調べて、不謹慎ながら、「あ、意外と可愛いや、こいつ」と思ってしまっことを添えておきますか。
しかし、女である沙弓の心にはかなりのダメージですね。いや、むしろ何で折れないのか、と。現実の心理を小説に持っていくのは無粋とはいえ。
そして、一斉攻撃により、鎖が彼女の身体に巻き付けられ、いよいよまずいことに。
後輩を助けなければならないという脅迫的な使命、プレッシャー、身体の痛み、圧倒的かつ絶望的な状況。それらが重なって、彼女に襲い掛かる——しかし。
それを断ち切ったのは、さっき彼女が切り捨てたはずのドライゼだった、と。
ドライゼ、自分の後輩である以上に仲間である部員達、そして闇文明の最大の強みである、”墓地を含めた”デッキのカード全てが仲間であったことに気づかされた、と。
いやはや、深い。ここまで闇文明であることに拘った描写は、自分はしていませんでしたからね。
再び死に、抗う意思を見せたとき——遂に、彼女が姿を現しましたか。

月影の神話、アルテミスが。

やはり、彼女の今の力は、ドライゼによって繋ぎ止められた力だったんですね。本来の力は、冥界神話が有している、と。
だからこそ、死と向き合い、超克した彼女とドライゼには、本来の力の”解放”という形での神話継承になったわけですか。
死を受け入れると同時に、立ち向かい、抗うこと。それこそが今回の神話継承のキーワードだったわけですね。
ところで、同時に七大罪の出で立ちについても明らかになったわけですが……アルテミスさん? 神話ともあろう方が、まさか夜な夜なお兄様を思って何ヤって……ああ、また薄い本が分厚くな(このコメントは射抜かれました)

というわけで遂に現れた継承神話・ドラグノフ。最初、能力からドライゼ+ロマノフ? と思ったのですが、どうやらそういう名前の狙撃銃が本当にあると知って、驚きました。そういえば、緋弾のアリアのレキの愛用火器でしたか。アリアも購読しているようですし、まあうってつけかつ最高のネーミングですね。
それはともかく、その能力は、墓地さえあれば非常に強靭な布陣を築けるということ。若干ピーキーですが、ハマれば強いのはvaultで既に知っています。こっちの作品を出すのは無粋ですが、アヴィオールが、味方の破壊の運命を相手へ下すのに対し、こちらは死んだ仲間の力を借り、もう誰も死なせないという彼の覚悟からか、抗う、ということを徹底的にイメージした能力だということが分かります。
加えて、ピーピングハンデスに、墓地肥やしからの、ロマノフを連想させる呪文詠唱。これは強い。
最後は、《ロマノフ・ホール》によって現れた《デビル・ディアボロスZZ》によって突破口をこじ開け、《ドラグノフ》によって邪淫の罪は断罪された、と。ただし、ライとは違って苦しめずに一瞬で命を断つところがまた、爽やかですね。

さて、そんなわけで一件落着、ですか。改めてこの2人も、主従という関係のあり方を見つめなおすことが出来たと思いますし。
何よりも、ドライゼと沙弓。それぞれの覚悟が固まったと思います。よかったよかった。
……ところで、嫉妬の大罪を探しに行ったライの行方は、また別の話、ですか。

そんなわけで続くは、何かどっかの天津風みたいなこと言っている中間プロローグで出てきた雀荘の少女のカザミと、それに着いている人物、アイナですか。
ここで現れたのは、《チュレンテンホウ》ですが、あ、やっぱりそういう見方をするのね。
そんでもって、好きな男子の好みについて語っていますが……やべえ、もうこの後の展開が読めた。だって、恐ろしくその特徴がはめ込まれているのが約一名……。
後、E風は勘弁頼む。あ、関係ない? そっちの風じゃない? どっちかというと緋弾のアリアのレキの言っている風? 
何であれ、作者の趣味を垣間見ることができたということですか。いや、自分もアリア読んでますよ。AAも見ていますよ。

てなわけで、今回の一行は不沈没船ナグルファール。そういえばそんな名前の軍艦あったな。
相変わらずブレない一行に伝えられるのは、またまた新しい人間が存在するという事実。ラヴァー(恋)を思い出しますね、これは。
その恋は最早恒例の如くついてきている、と。完全にメインストーリーサイドのレギュラー入りしちゃったよ。また一騎の胃が痛くなるよ。
そして、暁を連れて2人で探索を開始する、と。また百合な雰囲気、そして柚は……うーん。どうなることやら……。これが修羅場か。

探索する中で、自身の付き合いの悪さを自覚する浬。まあ、確かにそんな感じはしますね。
しかし、問題はそこではなく、早速恒例のクリーチャー戦が。
現れたのは、正体不明かつ目的不明の未知のロボット。
まず、言いましょう。地の文の唐突なネタバレ。いや、もうこれ以上は何も言うまい。
しかも、使ってくるのは——うわ、ここで出てくるか《海帝ダイソン》、そして2体のクロスファイア。流石の浬も予想外だったでしょうね。奴らの強味は奇襲性にあるとはいえ。
しかし、それをひっくり返したのも《スパイラル・ハリケーン》ですか。流石水文明使い。こっちでもやってくれるぜ、逆転劇。
そして最後に龍解を決めて、止めを刺した、と。

にしても、奴の正体は不明とはいえ、大方掴めたとはいえ、一体何を目的にしているのか分かりませんね。
正に目的不明の作戦、と。
しかも、何故こんな船の中に——? そして、《海帝ダイソン》のフレーバーテキストから察せられるに……いや、ここまでにしておきますか。

そして。最後のシーンには、謎の少女の声が。いやもう分かってますが。
何であれ、ここからの展開が楽しみなところです。結局、6000字書いてしまいました。またコメントに参ります、それでは。

デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.271 )
日時: 2015/11/01 15:21
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

Orfevreさん


 コメントありがとうございます。
 毒を以て毒を制する……うーん、どうなんでしょうね、あまりそういう考えはしてませんでしたが。
 まあ、それになぞらえて言えば、薬も毒と同じわけですし、今回はたまたまライが薬となり、毒である相手を葬った、というところでしょうか。
 場合によっては、ライが他の誰かに対する毒となることもあるでしょうしね。それくらい、彼女は危険です。
 と言っても、これは正義と言い換えることもできるので、そうなると誰にも当てはまることですが。

 恋ですか……彼女らは若いというか、幼いに部類されるところな気もしますが、それはさておき。
 若い云々ではなく、それ以前に、本当に和解できているのか、という点ですね。本当に彼女は、遊戯部に馴染んでいると言えるのでしょうかね。
 ……というかこれ、あれですかね。「若い」と「和解」をかけた洒落ですかね。まさか、それを言いたいだけじゃないですよね?

 《エリクシール》は元ネタ同様にヤバい能力にしましたが、実際に使うとなると、扱いは難しそうですね。
 それでも、軽いカードを大型カードに変換させられるわけですから、ちゃんとデッキを組めば、かなり強くなりそうですが。
 あ、でも、モノクロは青単で使う気しかないです。まあ、オリカなのでね。



タクさん

 コメントありがとうございます。
 常に長文になっているモノクロですし、特に長文を読むことに句は感じていないので大丈夫ですよ。むしろ長文をなんとかするのは自分の方ですし……

 一同が危険も恐れず向かって行ったのは、第一にリュンが連れて来てから説明をしたということですね。説明してから連れて来るではなく、連れてきた後に今回連れてきたことについて言っているので、奴は遊戯部+αを軽く嵌めてます。もう逃げ道はない。
 加えて、言葉の上では分かっていても、一口に“死神”だの“殺人鬼”だの言われても、ピンとこないでしょう。それらと直接触れ合ったことのないものからすれば、実感と現実味に欠ける響きです。本当の恐ろしさを知らないことほど、怖いものはないですからね。中途半端に対抗できる力を持ってるとなればなおさら。こういう時って、自分ならできる、って思ってしまいがちなもんなんですよね。ちゃんと分かってないから、なんとかなると思ってしまう。要はそういうことです。このことは、後の“惨殺”というワードでも、似たようなことが起こっています。
 まあ、あとは、リュンが大丈夫というようなことを言ってるなら大丈夫だろう、という楽観した信頼もあるんじゃないですかね。奴をどこまで信用するかは、人それぞれですが。
 超獣世界における金が、地球における金と同質の者とは限らないので、本当に地球において価値があるかは結構怪しいですが、少なくとも超獣世界においては、アワルティアが強欲だという照明になる程度には貴重なものです。なお個人的に、物欲は誰しもあるものなので、それを思うことは特に強欲ではないと思います。重要なのは、それを実行するか否かと、物欲を満たすための手段、そして過剰な欲求でしょう。
 アワルティアは自身の能力を活用するために、大量の墓地肥やしを行うデッキですね。あとはフィニッシャーにデモコマ龍を何体か。
 ただし大量のサルベージも、憎き《タイガニトロ》に爆破されてしまいましたが。いやー、あいつはマジでウザい。自分も黒単ヘルボロフなどのコントロール系デッキを使う時は使ってますが、手札補充をしてくるか否かを抜きにしても、相手の手札を縛れるのは強いです。《ガンヴィート》と組めば最強。

 ライは語り手の中でも特別というか、特殊な存在ですからね……それはライ自身が語っているように、《冥界神話》の弱さに関わっていることなんですが。
 ちなみにライのモデルは、色々いますが、『しにがみのバラッド』のモモ、『これはゾンビですか?』のユークリウッド・ヘルサイズ、『Lord of Walkure』のメイベルあたりです。わかわやすーい死神像をモデルにしていますけど、ライ自体は別に死神ではないので、誤解なきよう。ちなみに死神でモノクロが特に好きなのは、黒城凶死郎です。
 ん、んー……ライのデュエルに対して、暁が変な反応とかしてましたっけ……あまり覚えはないので、ちょっと書き方が悪かったかもしれません。
 《冥界神話》については、AMでも語りますが、やはり実物は本家の方ですね……本家も更新しないとなぁ。でも、早く侵略者に追いつかないと、革命編が終わってしまう……

 自己満足……そうですね、そう解釈もできますよね。
 罪を償う、分かりやすく言い換えれば、自分や上司の失敗の責任を取って、自分で尻拭いをするってことですけど、その自責が強すぎて、非常に危険な不発弾みたいになっているのもまた確かです。
 ちなみに当初はもっとマゾっぽくする予定でした。根本は罪を償いたいという意識は変わりませんが、そのためにもっと傷や痛みを要求させるつもりだったんですが、色々あってやめました。いや、彼女にネタ成分を入れるのもどうかと思ったので。
 正義が罪ですか……なかなか興味深いですね。
 確かに正義は一歩間違えれば、もしくは違う正義と対立すれば、危険なものであるわけですし、善と違って、必ずしもそれが良いものとは限りません。だからこそ、それが悪であり、罪であるかもしれない、というのは分かります。それを押し出したのが、仰るようにユースティティアなわけですし。
 あ、冥王星のくだりは完全にネタです、本気にしないでくださいね。流石に準惑星だから最弱なんてないですよ、それ言ったらアテナとかケレスとかどうなるんだって話ですし。

 お詫び……いや、これは詫びさせてしまったこっちの責任でもありますね。
 とはいえ、モノクロもちょっとやってみたかったことではありますし、そちらに触発されたのは確かですが、モノクロが好きでやってることなので、気にすることはないですよ。
 ……と言っても、こんな長々とあんなグロシーン見せられたら、気にするなという方が無理ですよね、はい。すいません、やりすぎました……
 自分でも、まさか丸一話分を使うほど使うは思いませんでした。
 でも、この後は元々そのグロさを止めるように動く予定でしたし、ノープロブレム……って、はい、そういう問題じゃなかったですね。ごめんなさい。

 ま、まあ、とにかく、これでライの危険性が理解していただけたなら、幸いです。
 恋は元々変わった感性の持ち主なのでグロ耐性があったのもありますけど、暁と柚に関しては、やっぱり相手が“部長”だから、でしょうね。
 怖くても、恐ろしくても、その後を付いていく。それだけの安心感があり、そうさせるだけの人望が、沙弓にはあるんですよ。伊達に彼女も部長やってませんからね。それに、暁も柚も、保身ばっか考えて、怖いからと仲間を見捨てるほど薄情ではありません。
 感覚麻痺というのもなくはないかもしれませんが、ここはそんな陳腐な言葉では纏めたくないですね。

 《ガナルドナル》は発売当初は面白いと思ってましたが、いざ使うとなると微妙すぎてなんとも言えない……お陰で光文明をぶっこむ羽目になってしまった。
 《ヘルセカイ》は一度嵌ると、なかなか抜け出せない粘り強さがあるんですよねぇ……ウエポンからフォートレスにするためにはラグがあるので使いにくいですが、一度フォートレスになってしまえば、そこから龍解するのは凄い簡単なので、如何にして《ヘルフエズ》を《ヘルクライム》にするかが重要ですね。
 ただそのタイムラグの不安定さのせいで、黒単ヘルボロフには使われない、悲しい子ですが。

 ここはライの残虐性を理解した沙弓がライを止める、という流れを作る予定だったので、グロシーンはなしです。代わりに、ライの刃が向きかけますが。
 カード化の弾丸については、もっと詳細な説明をするべきだったんでしょうが、説明的になるのを嫌ってあえて外しました。言ってしまえばこれは、語り手特有の能力で、カード化の弾丸、という弾や技名ではございません。似たようなことは、コルルもエリアスもキュプリスも使えます。
 嫉妬の悪魔龍……たぶん奴は今頃、他の大罪龍がカード化されていることを嫉妬しているんでしょうね……

 ラストダンジョンは仰る通りですね。色欲のラストと、RPGなどでよく言われるラストダンジョンをかけたネーミングです。ほら、ドラゴン・サーガの闇文明って、駄洒落っぽいネーミングがいくつかありましたし。
 正直、拷問具は描写する必要性をあんまり感じなかったのですが、まあ、ちょうどそちらで出てたので、ちょっと出してみようかな、と。完全な思いつきです。
 《アスモシス》も使いづらさはありますが、まだ実戦に耐えうるレベルのカードパワーだとは思いますよ。まあ、そんなことは抜きにしても、一際強力な力を持つ悪魔龍ではあるんですけど。
 口調も邪淫をイメージして、下劣というか、あえて下品にしました。ついでに壊れた感じにも。
 加えてその手の、若干R18に触れそうなネタもちらほら……案外楽しかったです、アスモシスを書く時は。

 《フォーエバー・オカルト》のコストにするために破壊するということ自体は、悪くはないんですけどね。《ドライゼ》は《解体人形ジェニー》のように、出たらもう用済みなクリーチャーですし
 ただ、手の内に他の最善の手段があるにもかかわらず、《ドライゼ》を墓地に叩き落したことが、問題ですね。
 プレイングとしては明らかなプレミに見えますが、この辺が二人のすれ違う部分と、二人の弱さですね。間違っているとかいないとか、そういう問題では片付けられない。面倒な問題です。

 モノクロはグラトニーで反省しましたからね。頭を冷やし、なにが一番描きたいのかを考えた結果、それなりに落ち着いた描写になったと思ってます。
 まあ、ライの処刑シーンは、彼女の隠された暴虐性を見せつける意図があったので、あんなことしましたが、今回は別に、そこまでアスモシスのヤバさを伝えたいわけではないのでね。というか、言葉の端々からそれは悟って貰えそうですし、こいつの存在からして、わざわざ言うことでもないかな、と。
 やはりエピソード3から、デュエマにも徐々に可愛いカードが増えて来ていますよね……よきかなよきかな。どっかの骨付き肉に出番を奪われがちですが、やっぱりモノクロは《ブラッディ・メアリー》好きです。名前とかも、わりと捻ってますし。
 なんで折れないのか、ということを説明するのも無粋でしょうが、それでもあえて言うなら、種族の違い、と、自分にはまだ向いていない、の二点でしょうね。
 これは、沙弓に限った話ではなく、このAM、さらに言えばメソロギィの十二神話たちにも言えることなんですが。要はこの作品の大きなテーマの一つ、ですね。
 それは、仲間、なんですよね。
 と言いますのも、モノクロのオリカはほとんどが進化クリーチャーで、種族を重視したデザインになっています。なので、単体運用はほぼ無理なんですよね。まず、召喚するにしても、他のクリーチャーがいなければなりません。
 それゆえに、仲間は大事なんです。単体で強い力を発揮するではなく、仲間の存在があってこそ、その力を発揮できる。
 今回はそれを、闇文明らしく描いてみました。
 アルテミスについては、今回で結構描き切った感はありますね。いやはや、ここまで来るのも長かった……アルテミスの呪文詠唱能力は、本来は《ドラグノフ》の力というわけです。本家よりも強力になってますけど。
 闇文明だから死を恐れない、という考えに立ち向かった、アルテミスの思想が、今回の鍵ですね。
 命を大事にするのは自然文明的な考えですけど、死をよく知っているからこそ、その死を易々と受け入れるべきではない、と考えるのも、悪くはないと思うんですよね、個人的に。
 月光にしろ月影にしろ、夜はアルテミスのフィールドなので、まあ、はい。そういうことです。

 《ドラグノフ》のネーミングは、まあそんな感じです。ドライゼがドライゼ銃なので、それに合わせてこちらはドラグノフ狙撃銃ですね。《ロマノフ》ともちょっとかけてますけど。
 ちなみにドライゼは、最初はマカロフという名前にして、《ドラグノフ》共々ロシア繋がりにしようかと思ったのですが、ちょっと名前が格好良くなかったのでやめました。
 仰る通り、《ドラグノフ》は墓地が十分に肥えていれば、無敵とも言える布陣を築きます。単体では、フィニッシャーとしての打撃力は若干落ちますが、仲間と組み合わせることで真価を発揮します。この辺は、他の継承神話と同じですね。
 能力面も察していただけたようで、仲間を守ることを重視しました。死んだ仲間の無念も無駄にせず、今に生きる仲間も守る、という能力でデザインしました。
 なお、ピーピングハンデスはかなり後付けです。最初は、アルテミスと同じく、ターン最初の墓地肥やしだったんですが、そうすると《ドライゼ》のハンデス能力が欠片もなくなるので、急遽ピーピングハンデスを突っ込みました。代わりに墓地肥やしはATになり、呪文を唱えるトリガーにしました。
 余談ですが、《ドラグノフ》がアスモシスを撃ち抜くシーンは、『刀語』の人鳥君の最期をオマージュしてみました。銃口を口に突っ込まれて殺される最期は嫌いじゃないです。

 ライの行方は、嫉妬の悪魔龍がカード化されたら書きます。

 暁に恋、浬に沙弓と続き、次は柚だと思いましたかね?
 まあ彼女がどうなるかはさておき、今回の新キャラカザミです。まだちゃんとは登場してませんが。
 あんまり彼女について言うと、下手すりゃネタバレになりかねないので、あえて黙っときますか。
 ちなみにモノクロも緋弾のアリアは好きですが、最近は購読してませんね……AAは漫画を買い続けてますが。ちなみに本家よりもAAのが好み。あ、察し……ってなった奴は出て来い。そういう意味ではないので。
 まあともかく、彼女の言う“風”は、近々わかりますよ。一番近いのは、璃璃色金の声よりも、麻雀的な“風”ですけど。

 へぇ、そんな軍艦があるんですか……知りませんでした。
 ナグルファールは、北欧神話に登場する船、ナグルファルから取りました。でも、一応は軍勢を率いて乗せる船だし、軍艦……というか、軍船みたいなものではあるのかな……?
 恋はやっぱりついてきています。もうAM本編でもメインキャラ化してますよ。なんでAMの初期面子が四人で、光文明だけが抜けていたのか、その答えがこれです。
 一騎としては、恋が皆に馴染むのは喜ばしいことではありますがね……まあ、本当に馴染んでいるのなら、ですが。

 正体不明なロボットに正体不明といって、目的不明のロボットに目的不明といって、なにが悪いのでしょうか。モノクロはただ事実をそのまま述べているだけですよ?
 というかあのカードの名前がストレートすぎるんですよ……まあ、むしろそのストレートさを利用してやりましたがね。
 でまあ、モノクロがなんとかして使いたかった《海帝 ダイソン》をここで出したわけですが、奴の使い道はW《クロスファイア》しか思いつきませんでした。いやでも、カードを大量ドローして手札に引き入れつつ、手札から確実にクリーチャーを落としてG・ゼロを達成するので、相性は絶対にいいはずなんですけどね。重いのがネックですけど。
 《スパイラル・ハリケーン》は本当に便利です。場合によったら、《クロック》以上の防御力を発揮しますからね。ただ、その便利さにかまけないようにしないと……
 それに今回は、バウンスしてもまた出て来るSAの《クロスファイア》ですからね。そいつらの再登場を防いだ《パクリオ》と《クローチェ・フオーコ》にも注目してほしいところです。

 6000字とはまた、随分と書きましたね……いや、モノクロもそれくらいありますけど。やっぱり書いちゃいますよね、それくらい。言いたいことがあると。
 だからモノクロは、ちょっとずつ細切れに書くために、週一でコメントするようにしたんですが……読む方も返すのが大変でしょうけど、この文量は書く方もきついです。

 まあなにはともあれ、ありがとうございますよ。ちょっと元気出ました。モノクロはこれからもガンガン更新していく所存です。
 ではでは。

80話「押し引き」 ( No.272 )
日時: 2015/11/02 01:34
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

「それにしても、随分と押しの強い子ね、あの子」
「ひゅうがさん、ですか……?」
 船内を探索する、沙弓と柚。
 以前と同じように、炙れもののように組んだ二人だが、知らない顔でもないので、特に不満はない。
 いや、そんなことはない。不満がなければ、彼女はこんな顔はしていない。
 それを如実に感じてしまったからだろうか、口から自然と、言葉が出て来る。
「こう言うと悪いんだけど、もっと非社交的で、内気な子だと思ってたわ。けど……案外そうでもないみたいね。あぁ、でも」
 別に社交的ってわけではないかしら、と付け足すように言う。
「今はまだ、暁のことしか見えていないみたいだしね。柚ちゃんとしては、寂しいんでしょうけど」
「…………」
「大丈夫? 最近は、部室に来たらすぐリュンがこっちに連れて来て、あの子も着いて来て、暁にべったりだものね……剣埼さんから聞くところによると、休日も二人で出かけるようになったみたいだし、あんまり暁と遊べてないんじゃない?」
「……はい」
 近くにいるのに、遠くにいるような感覚。
 恐らく彼女は、そんな気持ちでいるのだろう。
 まともに二人が一緒にいる時と言えば、精々クラスの中、休み時間程度。それでもないよりはマシだが、幼少からの大親友にとっては、少なすぎる時間だ。
 中にはそれが自然な仲もある。だんだんと離れて行くのも、自然の摂理。世の理であり、一種の法則。それに抗うことは、存外、難しい。
 だが、今は違う。
 突発的に現れた外的要因によって、今は歪が生じているのだ。その歪によって、元々あった二つの縁が、離れかけている。
 片方がその要因に引き寄せられ、もう片方が置いてけぼりを喰らっている。今は、正にそんな状態だ。
 その中で、最も悲哀なのは誰なのだろうか。
 それを考えたら、沙弓の口からは、自然と言葉が出ていた。
「暁に甘えられない分くらいは、私に甘えてもいいのよ」
「ぶちょーさん……」
 もっとも、柚は別に、甘えているわけではないのだろうが。
 それでも、依存しがちなところは、なくはないだろう。彼女ほどではないだろうが。
 そんなことも考えてしまうが、そんなことは関係なく、抱え込む彼女には優しくしたかった。
 部長としての責務とか、そんな堅苦しいことは抜きにしても。今の彼女は、放っておけない。
 今は、ただ傍にいることしかできない。彼女を受け止めることしかできないが、それでも、彼女は受け入れられるべきだと、腕を広げる。
 彼女を、招くように。
 そして柚は、今にも崩れてしまいそうな、儚げで、脆弱で、そして溢れてしまいそうな表情を向ける。
「……ちょっとだけ、ちょっとだけなので……いいですか……?」
「勿論よ。可愛い後輩の頼みだもの、胸くらい貸すわ」
 穏やかに、優しく、抱き留める。
 濡れたところは温かい。彼女の温もりだ。
 少しだけ、彼女の寂寥が伝わってくる。悲哀が共感する。頭ではなく、感覚として分かる。
 それは、気がするだけかもしれないが、それでも良かった。こうすることで、少しでも彼女の慰めになるのならば。
(でも、どうしたものかしらね……このまま慰めてるだけじゃ、状況は一向に改善しない。暁もあの子のことは邪険にできないだろうし、かと言ってこのまま放っておけないし)
 柚を抱き寄せたまま、思案する。これも、部長としての責務か。
 いや、これも、そうでなくても解決しなければならない問題だ。
(この子のためにも、そして、あの子に気付かせてあげるためにも、早くなんとかしないとね……)



「恋ってさー、好きな人とか、いる?」
「……?」
 船内を探索する、暁と恋。
 いきなり恋に引っ張り込まれた時は多少なりとも驚いたが、しかし彼女のことだったので、暁の性格もあり特に気にすることもなくなった。
 そして、その散策中、唐突に暁が問うと、恋はすぐに答えた。
「あきらが好き……でも、なんでそんなことを聞くの……?」
「いやー、今日さー、クラスでそんな話になってねー。なんとなくきいてみた」
 今時の女子中学生。思春期にもなれば、好きな男の一人や二人はいてもおかしくない。小学生だって付き合っていると言う男女すらいるのだ。
 なのでクラスの中で、そんな話題が出るのは必然であった。
 だが、暁の口からそういう話が出るのは、少々意外である。
「ふぅん……あきらが好き」
「あ、うん。さっきも聞いたよ、ありがとう」
 あまりにストレートに好きと言われるので、少しばかり戸惑う。嫌ではないのだが、やや直球すぎるのだ。自分が想像するものと、違う。
 だからこそ、暁は好意の受け取り方を理解しきれない。
「なんかさ、好きとかって、よく分かんないよね」
 だからそれをちょっと聞きたいな、って思ったんだけど。
 と、暁は言う。柄でもない話を切り出したのは、そういうことらしい。
 しかし暁にとっては不可解な好意でも、恋にとっては違うようだった。
「そうでもない……好きって思えば、好き」
「そ、そっか。でも、やっぱり私にはよく分かんないな……」
 なにが分からないのかも分からない。恋が寄せている好意は、その通り好意なのだろうが、それがどういった好意なのか、掴みかねている。
 もっと言えば、どういった好意、と言えるほどに枝分かれした好意を、暁は分類できていない。
 だからこそ、よく分からない。
「……あきらは、好きな人、いるの?」
「よく分かんない。男の子とは、クラスメイトなら小学校の頃から結構一緒に遊んでたけど、別にそこまで好きって思ったことはないなー。お兄ちゃんにも、『お前は男っぽいから男に馴染んでるんだ』なんて言われてさぁ。失礼しちゃうよね」
「……お兄ちゃん、いるんだ……あきらも妹属性。おそろい」
「私のは、ちゃんと血のつながったお兄ちゃんだからね? というか、そーゆーお兄ちゃんの方こそ、女っぽいっていうか、女の子とばっかり一緒にいるのに、人のこと言えなくない?」
「……ハーレム系主人公……?」
「あー、そういえばシオ先輩のお兄ちゃんは、私のお兄ちゃんにそんな感じのこと言ってたなぁ」
 あまり先輩の兄と会う機会がないので、若干うろ覚えだが、確か彼は自分の兄のことを「主人公」などと呼んでいた気がする。
 主人公。物語の主役。
 自分の兄は、そうなのだろうか。ならば自分は、どうなのだろうか。
 主人公ということは、その横にはヒロインがいる。彼にとってのヒロインとは、一体——
「あ、そう! そうだよ、好きな人っていうか、憧れの人だけど、私にもいるよ! そういえば」
 ——と、そこで、思い出すように言った。
 好きという感情はよく分からないが、恐らくそれに一番近い感情を抱いている相手。
 言い換えれば、現時点で自分が一番好きな相手だ。
「……誰?」
 恋の目つきが変わる。表情はいつもと変わらぬ無に近いそれだが、目だけは鋭くなったような気がした。
 だが、そんなことなどお構いなしに、というよりまったく気づいていないようで、暁は続ける。
「このみさんっていうね、近所で喫茶店やってるおねーさんだよ。お兄ちゃんの幼馴染で、同級生で、私も昔は一緒に遊んでたの。あ、私よりも三つ上で、今は高校一年生なんだけどね」
 春永このみ。
 自分の兄の、恐らく親友と言える存在。
 当の兄の方はそれを凄まじく否定し、腐れ縁、などと呼んで疎んでいるが、妹の目から見れば二人の関係は親友のそれだ。小学校から高校まで同じ学校で、同じクラスで、常日頃共に行動しているだなんて、そうとしか思えない。
「そのこのみさんが、すっごいきれいなんだよ。可愛くて、明るくて、誰にでも優しくしてくれるの。背はゆずよりも小さいけど、胸はすごく大きいし、私の理想の女の子なんだよ!」
「……へぇ……」
 気のない恋の返事が聞こえるが、暁の耳には届かない。
 続けざまに、また別の人物像が浮かび上がる。
「あと、シオ先輩っていう、私より二つ上の先輩もいるよ。家がカードショップで、よくカード買ってるんだけど、いつも落ち着いてて、デュエマもすごく強いの。この人も背は低いんだけど、でもお人形みたいに可愛いんだよ。あんまり笑ってくれないけど、そこがいいっていうか、ちょっとクール? な感じが魅力的なの」
「……ふぅん……」
 それを言えば恋もそうかもなぁ、などと思いつつも、そこでまた違う人物を思い出す。
「そういえば、バイトのおねーさんも結構、背低かったっけ……お兄ちゃん、なんで背の低い女の子ばっかりと仲良くなるのかな……? でも、あのおねーさんも可愛かったなぁ。私の見立てでは、あのおねーさんはもっと大きくなると思うけどね。そうなった時がちょっと楽しみ……胸に飛び込みたい……」
 想像が膨らむ。風船のように、大きく大きく膨らんでいく。
 しかし膨らんだ風船は脆弱で、ふわふわした、曖昧なものだ。
 たった一つ。鋭い一言によって、打ち消されてしまう。
「……あきら」
「あ、ごめん……なに、恋?」
 恋の一言で、暁は我に返る。つい興奮して、長く話しすぎてしまった。
 恋はどこかムスッとした表情——いつもそうだが、今は険しいように感じる——で、暁を見つめ、そして口を開く。
「……私を見て」
「へ?」
 唐突な要求と共に、恋は暁に近寄ってくる。グッと、小さな身体を押し付けるように、暁と密着するかのように、接近する。
 そして、続けざまに言葉を投げかける。
「私は、あきらが、好き」
「う、うん。あ、ありがとう……?」
「あきらは、私のこと、好き?」
「そりゃまあ、友達だし、当然……」
「友達だから、好き?」
「え、えーっと……」
「友達じゃなかったら、嫌い?」
 追い詰められるように問い詰められる。恋がなにが言いたいのか、分からない。だからこそ、なにを言えばいいのか、分からない。
 自分の言葉は虚偽なのか、真実なのか。それさえも疑ってしまいそうだ。
 じわりじわりと、彼女の言葉に絡め取られるようだ。口を開くだけで、窮地に立たされるかのような感覚が這い回る。
「そ、そんなことは……ないよ……? 友達じゃなくても、恋のことは嫌いになったりしないよ」
「だったら……証明、して」
「証明? な、なにを……?」
 なんとなく、嫌な予感がする。
 以前にも感じたことがある気がする、悪寒。
 恋は言葉を紡ぐ。小さな唇が開き、喉を、空気を、震わせる。
 そうして、暁の耳に、届いた。

「……愛を」

「!?」
 しかし言葉よりも先に感じるのは、衝撃。急に前のめりになった彼女の重みを支えきれず、後ろに倒れてしまう。
 そして恋に押し倒される形となった暁。起き上がろうにも、彼女が馬乗りになっている。いくら小柄とはいえ、暁の体格では跳ね除けることもできない。
 さらに、彼女の手が、自分のきている服を掴んでいる。
「え? 恋? なに、どうしたの? いきなりなにをするのって言うかこんなこと前にもしたようなってちょっちょっとストップストップ! ダメだよ、こんなの、だって私たち女の——」

80話「押し引き」 ( No.273 )
日時: 2015/11/03 00:32
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)

「ここかー! ……って、あれ?」
「……!」
 飛び込むように、何者かが部屋に入ってきた。
「人間……」
 それは、確かに人間だった。小柄な少女。
 ライのように異常な空気を発しているわけではない。場所さえ違えば、クラスメイトとばったり会った時に感じるものと、と同じような感覚だ。ともすれば本当にそう錯覚してしまいそうなほどに、その少女は普遍的で、普通の人間だった。
 同族だからこそ感じられる、仲間のにおい。そして、異種族と関わってきたからこそ判別できる、異種と同種の差異。
 非常に感覚的見解であることは理解している。だがその理解の上で判断するならば、やはりこの少女は、人間だった。
「わ、わわ、うわー……」
 少女は、驚いているようだった。無理もない。こんなところで、同じ人間と出会うとは思っていなかったのだろう。自分だってそうだ。
 だからできるだけ優しく、刺激しないように、恐怖を与えないように、浬は努めて穏やかに、彼女へと声をかける。
「なぁ。ちょっと、いいか。少しだけ話を——」

「カッコイイっ!」

「——あ?」
 思わず、そんな言葉が漏れてしまった。威圧感がある——というより、不可解さをこれでもかというほど露骨に、そして不可解であるがゆえの不快さや不満もオブラートに包むことなくそのままに乗せた声だった。
 しまった、警戒させてしまったか……? などと自分の失態に焦りが募りそうになるが、その心配はなかった。
「ほら見てよアイナっ! いたじゃん、いたよ! あたし好みのインテリ系イケメンが! 背ぇ高いし、絶対あたしより年上!」
「いや……ちょっと待ちなさい、カザミ。ここで気にするべきは、絶対にそこじゃないわよね……?」
「……!?」
 どこからか声が聞こえてくる。
 少し、状況を整理する時間が欲しかった。いくら頭の回転が速く、機知に富んで、聡明な浬であっても、脳みそがスーパーコンピューターでできているわけではないのだ。演算能力に限界はあるし、今の状況をすぐさま分析できるほど冷静でもない。先ほどから、立て続けに事態が進んでいるのだ、少しくらい落ち着かせてほしい。
 そんなことを願うも、しかしそうはさせてくれなかった。
「……アイナ?」
 ふと横で、エリアスの声がする。
 だがいつもの彼女とは、少し違う。なにかに期待して、思い返すような、どこか儚げな声。
「ん……? この声と、この感じ……エリアス?」
 スッと。
 少女の頭上に、なにかが現れた。いや、なにかなどという形容も不要だろう。それはクリーチャーだ。
 一言でその姿を現すなら、人魚。
 上半身はほぼ半裸の女体。頭部など、ところどころに装飾こそしているものの、流線型の肉体を惜しげもなく晒している。
 だが下半身は人間のような二脚ではなく、それを飲み込むかのような。鱗に覆われた魚の尾びれ。
 そして彼女は、大事そうに三叉の槍を抱いていた。
「語り手……?」
「やっぱり! アイナ、アイナじゃないですか!」
「エリアス……久しぶりね。まさか、こんなところで会えるなんて……」
「……知り合いか?」
「はい! 私の友達です」
 にこやかにエリアスは応えた。こんなに晴れ晴れしい顔の彼女は見たことがない。
「ヘルメス様に虐められていた私を、いつも慰めてくれた親友です」
「アタシもうちの王様から、ヘルメスのことは聞いてたからね。ま、放っておけなかったのよ」
「……そうか」
 非常にコメントしづらかった。
 彼女が元の主から受けてきた傷痕は、多少なりとも浬も知っているのだが、こんないじめられっ子の昔話みたいに言われると、反応に困る。しかもそれに答える側の台詞も台詞なので、ベタすぎて困惑する。
 そして、困惑すると言えば。
「ねーねー、おにいさんっ!」
「うぉ……!」
 グイッ、という擬音でも聞こえてきそうなほどの勢いで、少女が肉薄してきた。
 いや、そんな剣呑な接近の仕方ではなく、どちらかと言えば、迫るように近寄ってきたという表現の方が正しいだろう。なんにせよそのアクティブな行動に虚を突かれてしまい、多少なりとも驚きを見せる浬。
 だがしかし、驚くのはこれだけではない。
 もしくは、ここからだ、と言うべきか。
「おにいさん、名前はっ?」
「は……?」
「名前だよ、なーまーえっ! おにいさんの名前、なんていうのっ?」
「か、浬……霧島浬だ……」
 勢いに負けて、思わず名乗ってしまった。
「そっかー、浬くんか。ちょっと変わった名前……あ、あたしはカザミねっ。風に水って書いて、カザミっていうの。よく間違われるんだけど、“ふうすい”じゃないよ! 気を付けてねっ!」
「あ、あぁ……分かった、気を付ける」
 なにをだ。
 と、自分で自分に突っ込んでしまう。いや、なにをと言えば、彼女の——風水の名前についてなのだろうが、問題はそこではなく。
 ペースを乱される。テンポが合わない。混乱して、上手く言葉が繋げられない。
 アクティブなのは動きだけではなく彼女の話もだ。まだ名前を聞かれただけだが、積極的でとにかく前進するようなその喋りに、気後れしてしまう。
「ねぇ、浬くん。あたしとつき合わない?」
「は……はぁ!?」
 困惑はさらに加速する。こいつはなにを言っているんだ、と頭の中で反芻するが、意味を理解するための処理速度が鈍っている。オーバーヒートしてフリーズしてしまっている、
「ちょ、ちょ、ちょっとどういうことですか!?」
「またカザミの悪い癖が出たかしらね……めんどくさい」
 脇で語り手たちがなにかを言っている。しかし声が聞こえるだけで、その意味を認識するには至らなかった。
「カザミ。アンタ、ちょっとは考えてものを言いなさいよね」
「だって、こーんなにあたし好みの男の子がいるんだよ、これって絶対運命だよ! やっぱり今日はいい風吹いてるっ! 四暗刻単騎をツモった感じ?」
「知らないわよ……ほら、相手も困ってるわよ」
 アイナが槍で
「ご主人様? ご主人様、しっかりしてください!」
「…………」
 混乱しすぎて心が無になる。脳の処理容量が限界に達したため、一度外部の情報をすべてシャットアウトする。
 勿論、人間にそんなことができるわけはないのだが、そんな気持ちになった。
「……よし」
「あ、ご主人様。大丈夫ですか……?」
「おい、お前。聞きたいことがある。少し、話をさせろ」
 エリアスも、そして今までの話も全て無視して、浬は自分の要求を突き付けることにした。もはや相手のことに気を遣う道理もない。というより、気を遣わなければいけないような相手でもない。
 それに、相手もこちらの切り出しを無視してきたのだ、お互い様だ。
「話? なになに? いきなりデートのお誘いかなっ? やだなー、いきなりすぎて、あたしでもちょっと困っちゃうよー」
「絶対違うだろうから、くねくねするの止めなさい、気持ち悪い」
 わざとなのか素なのかは分からないが、明らかに勘違いな台詞を吐く風水に、アイナがぴしゃりと言い止め、浬が言葉を投げ飛ばす。
「お前は何者だ? 人間なんだろうが、どこから、どうやって来た? そいつはお前の語り手なのか?」
「ん? うーん、えっとー……」
 捲し立てられるような質問攻めを受け、少し考え込むような素振りを見せる風水。答えられなくて困ったというより、一度に何度も質問されて、答えあぐねているのだろう。
 そのせいか、最後の質問にだけ、答えられる。
「アイナはあたしの友達っていうか……語り手? なのかなー?」
「アンタは友達の肩書も忘れるの? 最初に名乗ったじゃない。アタシは《海洋の語り手 アイナ》だ、って」
「あー、そういえばそうだったね。忘れてたよ」
 だがその答えも、甚だ適当なものだった。
 どうにも、自分たちとは考えがまるで違うようだ。語り手の重要性だとか、この世界の安定だとか、そんなことは露ほども知らないように見える。
「……で、お前は何者だ?」
「何者って、さっき言ったじゃん。カザミだよ」
「名前じゃない。お前の出自、肩書き、そもそも人間なのかどうか、どのくらいここにいるのか……洗いざらい、全部話してもらうぞ」
 言い方がまるで悪役のようだが、構いやしない。相手もそんなことを気にする性格ではないように思える。
 とにかく、この風水という少女について、情報が必要だ。敵か味方か、その判断もしなくてはならない。
 だからこの少女が何者なのか。それを聞きだし、見極めなければならないのだが、
「えー? どうしよっかなー?」
「…………」
 妙にイラッとする声で、風水は浬を見つめている。身体の後ろで手を組み、何歩か下がって、チラチラと浬の顔色を窺っている。
 これは、露骨に隠している。わざと言わないでいるようにしか見えない。
「そんなに知りたい?」
「……あぁ」
 明らかにこちらを誘導するような口ぶりだが、浬は渋々首肯する。
 そしてさらに、風水はわざとらしく手を打った。
「じゃあさ、こうしようよ! おにいさんもデュエマするんでしょ?」
「まあな」
 デッキケースを吊っていれば、流石に分かる。遊戯部に入部する前の暁と出会った時もそうだった。
 そうでなくてもこの世界にいるのだ、デュエル・マスターズとは切っても切れない関係にあることは、どうやら彼女も理解しているようだ。
「だったら、あたしとデュエマして、勝ったら教えたげる。でーもー……」
 またもったいぶるようにして、わざとらしく言葉を溜める風水。その一挙一動に苛立ちが募る。
 しかしそんな苛々も、彼女の次の一言で、吹き飛んだ。
「あたしが勝ったら、あたしとつきあってよ!」
「はぁ!?」
 また一瞬、なにを言われたのか分からなくなったが、しかし今度はすぐに理解が追いついた。
 というより、さっきもそんなことを言われた気がするが、問題はそこではなく。
「なにを言い出すかと思えば——」
「なんなんですかあなたは!」
 やや呆れ気味に言葉を返そうとする浬だったが、それよりも早く、そして慌てふためいたように、エリアスが前に出る。
「ご主人様はロリコンじゃありませんよ!」
「……なにを心配しているんだ、お前は」
 そもそも自分だって中一、相手も歳はそう変わらなさそうだ。別にロリコン云々の話でもないだろう。
「ご主人様、こんな勝負に乗ることはありませんよ! なんなら、私が自白剤を調合して飲ませます! そうすれば万事解決じゃないですか!」
「なにを馬鹿なことを……お前、俺よりも混乱してないか?」
「ご主人様の貞操も守られますよ!」
「そんな話はしていない。いいから落ちつけ」
 と、エリアスの頭を鷲掴みにして、指に力を込める。
「痛い痛い痛い、痛いですご主人様あぁぁぁ……っ!」
「落ち着いたか?」
「あ、はい。ちょっとすっきりしました」
 どうやら混乱からは立ち直ったようだ。少しばかり手順がおかしい気がしないでもないが、結果を見て良しとする。
 だがそれを見て、風水はやや不機嫌そうに頬を膨らませていた。
「むー……楽しそうだなぁ、あの子。浬くんと仲よさそうで」
「そりゃまあ、アタシとアンタの関係と似たようなものだし。それにエリアスの場合は、昔の主人が“アレ”だしねぇ……」
「あたしも負けたくないっ。浬くんっ!」
 バッと、風水は再び浬に迫り寄る。
 そして、デッキケースを手に、それを付き出した。
「勝負っ! あたしが勝ったらつきあってね!」
「…………」
 もう既に、彼女の中では勝負が成立してしまっているようだ。まだこちらはなにも言っていないというのに。
 この少女の思い通りに動くのは癪だ。負けたパターンも想定すれば、酷いデメリットとも言える。ここで彼女の要求を、突っ撥ねようと思えば突っ撥ねることもできる。
 だが、
「……俺が勝ったら、話を聞かせてもらうぞ」
「ご主人様……!? いいんですか?」
「あぁ、負けるつもりはない」
 浬は、勝負を受ける。
 要は負けなければいいのだ。負けた時のことを考えるのは、臆病者の思考。最悪は想定しても、その最悪を回避すればいい。
 そのようにして立ち回るのが、本当の賢人というものだ。
 愚か者ではない賢者たれ、《賢愚の語り手》の主として。
 そう自分に言い聞かせて、浬はデッキを取る。
「よーし、けってーい! 負けないよー!」
 意気揚々と、勝気な眼差しでこちらを見据える風水。
 だが浬も、負けるつもりは毛頭ない。なにも分かっていないような少女相手に、後れを取る気は微塵もなかった。
 そんな互いの意地を押し出し、そして。

 不沈没船内に、神話空間が開かれた。


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