二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

43話「ラヴァー再戦」 ( No.164 )
日時: 2014/11/18 19:35
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 かくして始まった、暁とラヴァーのデュエル。
「《不屈の翼 サジトリオ》を、召喚……」
「呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札は入れ替えないでチャージャーをマナに!」
「……呪文《ジャスティス・プラン》……ジャスティス・ウイングと、エンジェル・コマンドを、手札に……」
「呪文《メテオ・チャージャー》! 《ムルムル》を破壊して、チャージャーをマナに!」
 序盤は堅実に動くラヴァーと、マナを増やして飛ばしていく暁。後のための準備という面では共通しているが、動き方はまるで違う。
「……《龍覇 レグルスピア》を、召喚……《浮遊する讃美歌 ゾディアック》を、バトルゾーンへ……」
 ラヴァーはドラグハート・フォートレスを呼び出す。除去の得意な火文明だが、フォートレスを場から退かすのは難しい。微量とはいえラヴァーのクリーチャーのパワーが上がれば、バトルに勝つことも難しくなってしまう。派手さはないものの、地味に厄介なカードだ。
「《偽りの名 バルキリー・ラゴン》を召喚! 山札から《怒英雄 ガイムソウ》を手札に!」
 暁のデッキの核となる切り札の一つ、《ガイムソウ》を手に入れる。あとは、もう一枚の切り札が来れば完璧だ。
「……私の、ターン。このターンの初めに、私の場に、光のクリーチャーが二体……よって、《ゾディアック》の龍解条件、成立……龍解」
 浮遊する教会は、その姿を変えていく。多くの聖歌と祈りを受け、秘めた力が解き放たれ、本来の姿を現す。
「——《賛美の精霊龍 ハレルヤ・ゾディア》」


賛美の聖霊龍 ハレルヤ・ゾディア 光文明 (6)
ドラグハート・クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 5000+
バトルゾーンにある自分のクリーチャーすべてのパワーは+1000される。
自分のターンの終わりに、バトルゾーンにある自分のクリーチャーをすべてアンタップする。


「……さらに、《高貴の精霊龍 ペトローズ》を、召喚……ターン、終了……」
「私のターン!」
 手札には既に《ガイムソウ》がいる。そしてここで、あのカードが引ければ——
「——来ったぁ! さあ一気に決めるよ!」
「…………」
 狙い通りのカードを引き当てた暁。
 そんな彼女を見て、ラヴァーはほんの少しだけ、表情を変える。
「暁の先に並ぶ英雄、龍の力をその身に宿し、熱血の戦火で武装せよ! 《怒英雄 ガイムソウ》を召喚!」
 七枚のマナをタップして現れるのは、真紅の鎧に身を包んだ英雄《ガイムソウ》だ。
「《ガイムソウ》のマナ武装7発動! 手札から火のクリーチャーを一体、タダで出せる!」
『早速お出ましかぁ……飛ばすぜぇ!』
 突如、暁のマナが怒り狂ったかのように燃え盛った。《ガイムソウ》のマナ武装により、その炎は《ガイムソウ》を取り囲み、そしてその中から一体の龍を呼び出す。
 巨大で、圧倒的で、勝利を呼び込む龍を。

「暁に先に、歴史を残せ——《勝利天帝 Gメビウス》!」

 《ガイムソウ》のマナ武装の力を得て呼び出されたのは、《Gメビウス》。
 先ほど、暁が手に入れたばかりのカードだ。
 場に出ると《Gメビウス》は、雄々しく吠える。その姿は、まるで勝利を呼んでいるかのようだった。
 そして暁は、《Gメビウス》たちと共に、すぐさま攻勢に転じる。
「《Gメビウス》で攻撃! その時、パワー6000以下の《サジトリオ》を破壊!」
「《サジトリオ》が破壊されたから、山札を捲って……《栄光の翼 バロンアルデ》。コスト3以下のブロッカーだから、出す……マナ、追加……ブロック……」
 しかし、一度のブロックでは意味がない。
「《Gメビウス》は、ターン中初めてタップしたらアンタップする! つまり二回攻撃ができるんだよ! 《Gメビウス》でもう一度攻撃! 今度は《ペトローズ》を破壊! そして、シールドをTブレイク!」
 ラヴァーのブロッカーが消え去り、《Gメビウス》の強烈な一撃が叩き込まれる。さらに、
「《バルキリー・ラゴン》でWブレイク!」
 続けて《バルキリー・ラゴン》の攻撃も決まり、ラヴァーのシールドは一瞬でゼロになってしまった。
 一気に優位に立つ暁。しかし、暁の割った最後のシールドが、光の束となって収束し——
「——S・トリガー……《ヘブンズ・ゲート》・手札から光のブロッカー……《栄光の翼 バロンアルデ》、そして」
 天国の門扉が開かれる時、正義を掲げた使者と、もう一体。正義を執行する龍が舞い降りる——

「私の世界に奇跡を起こす——《蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ》」


蒼華の精霊龍 ラ・ローゼ・ブルエ 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 7500
ブロッカー
自分のドラゴンが攻撃またはブロックした時、自分の山札の上から1枚目を裏向きのまま、新しいシールドとして自分のシールドゾーンに加えてもよい。
W・ブレイカー
光以外の呪文によって相手がバトルゾーンにあるクリーチャーを選ぶ時、このクリーチャーを選ぶことはできない。


 天門より降り立った光の龍は、青い薔薇の花びらを散らせる、高貴なる龍、《ラ・ローゼ・ブルエ》。
 自分のドラゴンの攻撃とブロック時にシールド追加、そして自身は光以外の呪文では選ばれないという、かなり強固な防御性能と除去耐性を持つクリーチャーである。
「っ……ターン終了。《ガイムソウ》の効果で出た《Gメビウス》は手札に戻すよ」
 序盤からチャージャーを連打し、高速で《Gメビウス》を繰り出して勝つつもりだったが、やはりそう上手くは行かず、攻め切れない。どころか反撃の準備を手助けしてしまったようにも思える。
(いやいや、あと2マナ溜めればもう一回《Gメビウス》出せるんだし、大丈夫)
 そう自分に言い聞かせ、ターンがラヴァーに移る。
「……《救護の翼 フィルミエ》《龍覇 アリエース》を、召喚……超次元ゾーンから、《革命槍 ジャンヌ・ミゼル》を、《アリエース》に装備……」


革命槍 ジャンヌ・ミゼル 光文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。
龍解:自分のターンの終わりに、これを装備したクリーチャーがタップされていれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。


「《ジャンヌ・ミゼル》の能力で、《ガイムソウ》を、タップ……」
『ちぃ!』
 《アリエース》の持つ、鈍く光る槍の力でタップされてしまう《ガイムソウ》。無防備を晒すこと強要され、舌打ちする《ガイムソウ》。
「……《ラ・ローゼ・ブルエ》で、《ガイムソウ》を攻撃」
『くそが……っ!』
 そこに《ラ・ローゼ・ブルエ》の一撃が放たれ、《ガイムソウ》はあえなく破壊されてしまった。しかも、
「私のドラゴンが攻撃したから……《ラ・ローゼ・ブルエ》の、能力、発動……シールドを追加」
 なにもないシールドゾーンに蒼薔薇が咲き、なくなったラヴァーのシールドが一枚、増やされる。
「さらに、《ハレルヤ・ゾディア》で、《バルキリー・ラゴン》を、攻撃……」
 《ハレルヤ・ゾディア》自身のパンプアップ効果で、《ハレルヤ・ゾディア》のパワーは6000。《バルキリー・ラゴン》とは相打ちだが、《フィルミエ》がセイバー能力で身代わりとなる。
「この攻撃で、《ラ・ローゼ・ブルエ》の能力、発動……シールドを追加……」
「せっかく全部割ったのに、二枚も増やされるなんて……!」
 《Gメビウス》の連続攻撃から、即座に体勢を立て直すラヴァー。
 しかし、暁もまだまだ食いついていく。
「厄介なのは《ラ・ローゼ・ブルエ》……でも、光の呪文じゃないと選べない……」
 暁の手札には今、《天守閣 龍王武陣》があるが、これではなにを手に入れようとも破壊できないのだ。
「ターン終了……そして、《ハレルヤ・ゾディア》の能力で、私のクリーチャーはすべて、アンタップ……」
 攻撃後も隙を見せず、ラヴァーはさらに守りを盤石なものとする。これでは殴り返しも出来ない。
「でも、放っておいたらどんどんシールド増やされちゃうし、ここは……これだ! 《爆竜 GENJI・XX》召喚!」
 今しがた引いたばかりのカードを、投げつけるようにして場に出す暁。
 《ラ・ローゼ・ブルエ》は光以外の呪文では選べないが、クリーチャーの能力でなら選ぶことができる。つまり、クリーチャーでなら破壊できるのだ。
「《GENJI》で攻撃! その能力で《ラ・ローゼ・ブルエ》を破壊! 頼むよ、《GENJI》!」
『承知いたした! 斬!』
 空中を翔け、二刀流の十字の刀を振るう《GENJI》。気勢を発しながら、《ラ・ローゼ・ブルエ》を一刀両断にした。
「よしっ! さらにシールドもWブレイク!」
「《バロンアルデ》でブロック……」
 シールドこそ削れなかったが、ラヴァーの敷こうとしていた鉄壁布陣をいち早く崩すことができた。それだけでも大きな成果だ。
「…………」
 しかし、この程度で終わるラヴァーでもない。
 彼女はさらに、守備の砦を築いていく——今度は盾ではなく、支配によって。

「私が世界を支配する——《支配の精霊龍 ヴァルハラナイツ》」

43話「ラヴァー再戦」 ( No.165 )
日時: 2015/05/19 02:13
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「《ヴァルハラナイツ》の能力で、《GENJI》をフリーズ……」
「《GENJI》が動けなくなっちゃった……」
 ラヴァーのデッキは非常にブロッカーが多い。なので攻撃しながら無条件でブロッカーを破壊できる《GENJI》は大事にしたかったが、これでは返しのターンに殴り返されてしまう。
「さらに、《アリエース》で、シールドをブレイク……」
「シールドブレイク……?」
 少し首を傾げる暁。
 ラヴァーは今までの対戦で、最後に勝負を決める時以外はほとんどシールドには攻撃しなかった。今の状況を見ても、暁の残り手札が少ないことも考慮すれば、下手にシールドは割りたくないはず。
「……S・トリガーはないよ」
「なら、ターン終了……その時」
 《ハレルヤ・ゾディア》の能力でラヴァーのクリーチャーがアンタップする——前に、
「《ジャンヌ・ミゼル》を装備した、《アリエース》がタップ状態……《ジャンヌ・ミゼル》の、龍解条件、達成……」
「あ……」
 つまりはそういうことだった。
 単純な話だ。ラヴァーは《ジャンヌ・ミゼル》を龍解させるために攻撃しただけに過ぎない。
 ただその攻撃で暁に手札を与えるよりも、龍解によって現れるクリーチャーの方が重要であるという考えからの攻撃だろうが。
「《ジャンヌ・ミゼル》、龍解……《聖槍の精霊龍 ダルク・アン・シエル》……」


聖槍の精霊龍 ダルク・アン・シエル 光文明 (5)
ドラグハート・クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 5500
ブロッカー
このクリーチャーが攻撃またはブロックした時、またはバトルゾーンを離れた時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選び、タップしてもよい。


 天に打ち上げられた《ジャンヌ・ミゼル》に一筋の光が迸り、その中から鈍く輝く、銀色の龍が現れた。
 さらに《ハレルヤ・ゾディア》の効果でラヴァーのクリーチャーがすべてアンタップされ、本当にラヴァーのターンが終了する。
「《GENJI》は動けないけど……でも、これで10マナ溜まったよ……!」
 手札を一枚マナゾーンに落とし、足元を見遣る。
 そこには、火文明のカードが合計十枚。10マナが蓄えられている。
 つまり、
「もう一度行くよ! 暁の先に歴史を残せ——《勝利天帝 Gメビウス》召喚!」
 《ガイムソウ》の力を借りずとも、手札から普通に《Gメビウス》が出せるのだ。
「手札に取っておいた甲斐があったよ。《Gメビウス》で攻撃!」
 その時、相手のパワー6000以下のクリーチャーを一体、破壊することができる。できればブロッカーを破壊して、ガンガン攻めたいが、
「《ヴァルハラナイツ》は無理だし、《ダルク・アン・シエル》も《ハレルヤ・ゾディア》がいるからパワー6500……ギリギリ無理か」
 火力範囲がほんの少し足りず、《ダルク・アン・シエル》を焼くことはできない。ならば、そのパワーを支える権化を破壊するまでだ。
「《Gメビウス》の効果で《ハレルヤ・ゾディア》を破壊! Tブレイク!」
 火球を放ち《ハレルヤ・ゾディア》を燃やしながらアンタップ。追撃態勢を整えつつ《Gメビウス》はラヴァーのシールドへと特攻していく。
 だがその間に、割って入る影があった。
「……《ダルク・アン・シエル》で、ブロック……」
「でもまだ二撃目があるよ! もう一度Tブレイク——」
 《Gメビウス》の攻撃を、《ダルク・アン・シエル》が防ぐ。当然《ダルク・アン・シエル》は破壊され、《Gメビウス》は二度目の攻撃を繰り出そうとするが、
「無理……《ダルク・アン・シエル》がブロックした時、相手クリーチャーを一体、タップする……」
「え……っ?」
「……《Gメビウス》、タップ……」
 起き上がったが、すぐにまた寝かされる《Gメビウス》。
 《Gメビウス》の効果は、攻撃してすぐに行われる。攻撃した直後に火力を放ち、アンタップする。なのでブロックした時には既にアンタップ状態となっており、その時にブロックされたため《ダルク・アン・シエル》の効果でタップされてしまった。
「また、《Gメビウス》が止められた……!」
 しかも今度は一度も攻撃を通せないまま、実質《ダルク・アン・シエル》一体に止められてしまった。
 ラヴァー相手に攻撃が止められたら、その後、そのクリーチャーはもう攻撃できないくらいの覚悟でいた方がいい。
 特に、《ヴァルハラナイツ》がいる時は。
「私のターン……呪文《ジャスティス・プラン》」
 山札の上から三枚が捲られる。捲られたのは《聖龍の翼 コッコルア》《導きの精霊龍 サリヴァン》《聖歌の聖堂ゾディアック》。《ゾディアック》以外の二枚がラヴァーの手札に入る。
「……さらに、《サリヴァン》を召喚……互いに二枚引き、手札から《コッコルア》、《フィルミエ》を、バトルゾーンへ……そして《ヴァルハラナイツ》の能力、発動……《Gメビウス》と《GENJI》を、フリーズ……」
 《ヴァルハラナイツ》の力で、暁のクリーチャーの動きが次々と止められていく。《Gメビウス》も、次に動ける時がいつになるのか、分かったものではない。
「まだ……《ヴァルハラナイツ》で、《GENJI》に攻撃……相打ち、だけど《フィルミエ》のセイバー、発動……《ヴァルハラナイツ》の代わりに破壊……」
『一方的に討ち取られたか……無念……!』
 《GENJI》も破壊されてしまい、暁の場に残ったのはフリーズ状態の《Gメビウス》のみ。
「……いや、まだ。まだデュエルは終わってないよ! 《熱血龍 バクアドルガン》《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! 《バトラッシュ・ナックル》の能力で《コッコルア》とバトル!」
 鋭い鍵爪を振るい、《バトラッシュ・ナックル》が《コッコルア》を破壊した。
「そして私の火のクリーチャーの勝利によって、手札からこのクリーチャーをバトルゾーンに!」
 迸る熱血の力、戦闘の空気を感じ取り、仲間の勝利に反応して現れる、戦いの権化たる龍が推参する。

「暁の先に、勝利を刻め——《爆竜勝利 バトライオウ》!」

 両腕の刃を打ち鳴らし、雄叫びを上げバトルゾーンに降り立つ《バトライオウ》。その眼は、戦いの相手をまっすぐに見据えている。
「さらに《バクアドルガン》で《ヴァルハラナイツ》を攻撃!」
 《バクアドルガン》のパワーは4000、《ヴァルハラナイツ》のパワーは7000。普通なら《バクアドルガン》がバトルに負けて破壊されるが、
「さあ、頼んだよ! 《バトライオウ》!」
『おう! 俺に任せな!』
 《バクアドルガン》が走るよりも速く、《バトライオウ》が地を駆ける。そして《バクアドルガン》の代わりに、《ヴァルハラナイツ》とのバトルを始めた。
「《バトライオウ》は味方の火のクリーチャーバトルを、代わりに引き受けることができる! 《ヴァルハラナイツ》を破壊!」
『うおぉぉぉ! うらぁっ!』
 《ヴァルハラナイツ》が放つ円月輪状の武器を弾き飛ばし、《バトライオウ》は《ヴァルハラナイツ》へと一閃——その身を切り裂く。
 これで暁は、毎ターンクリーチャーの動きを止められるようなことはなくなった。次のターンには《Gメビウス》も動けるようになるかもしれない。
 そう思ったが、しかしラヴァーは甘くない。そんなことは最初から分かっていた。

「私の世界の英雄、龍の力をその身に纏い、聖歌の祈りで武装せよ——《護英雄 シール・ド・レイユ》」

 美しい讃美歌が鳴り響き、その歌と祈りの力で武装した白龍が姿を現す。
「《シール・ド・レイユ》の能力で……《Gメビウス》と、《バトライオウ》を、シールドへ……」
「な……!」
 やっとフリーズから解放されたと思ったら、今度は直接除去された。
「さらに、《サリヴァン》で《バクアドルガン》を、攻撃……」
 《バクアドルガン》も殴り返されてしまう。《バトライオウ》がいないので、バトルを引き受けてもらうこともできない。
 瞬く間に暁のクリーチャーが除去されていき、残ったのは《バトラッシュ・ナックル》のみ。
 しかし、ラヴァーが危機的なタイミングで《シール・ド・レイユ》を引いたように、暁もここで、この状況を打開するカードを引き当てるのだ。
「……やっぱり、こういう時に来てくれるんだね」
 このターンに引いた一枚、たった一枚の手札。暁はその中に秘められた龍の世界を——解放する。

「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」

43話「ラヴァー再戦」 ( No.166 )
日時: 2015/05/19 02:13
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

「《ドラゴ大王》の能力で、《ドラゴ大王》と《シール・ド・レイユ》をバトル!」
『我が王権の前にひれ伏すがいい! 惰弱なる光の龍よ!』
 《シール・ド・レイユ》は《ドラゴ大王》の巨大な爪に引き裂かれ、破壊される。
「やっぱり頼りになるね、流石《ドラゴ大王》」
『当然だ、我を誰だと思っている……それよりも小娘。貴様この頃、少し馴れ馴れしいぞ。大王たる我の前であまりにも頭が高い——』
「そーゆーのいいから! 《バトラッシュ・ナックル》でWブレイク!」
「……S・トリガー《DNA・スパーク》……《ドラゴ大王》をタップ、シールドを追加……」
 またシールドを増やされたが、しかしさしたる問題ではない。
 《ドラゴ大王》が出れば、もうラヴァーは小型のジャスティス・ウイングを並べて守ることはできない。大型のドラゴンは出てしまうが、そう連打できるものではないので、《ドラゴ大王》のパワーがあれば圧倒できるはずだ。
「……《光線の精霊龍 カチャルディ》召喚。さらに呪文、《ドラゴンズ・サイン》……手札から出すのは、これ……」
 光の龍門が開かれ、その中から一体の龍が降り立つ。それは、英雄の名を冠する、正義の龍であった。

「私の世界の英雄、龍の力をその身に纏い、支配の盾で武装せよ——《天英雄 ヴァルハラ・デューク》」


天英雄 ヴァルハラ・デューク 光文明 (7)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 7000
マナ武装7:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに光のカードが7枚以上あれば、次の自分のターンのはじめまで自分のクリーチャーは破壊されない。
W・ブレイカー


 現れたのは、《ヴァルハラナイツ》によく似たクリーチャー。しかし《ヴァルハラナイツ》と比べて、その兵装はより防御的なものとなっていた。
「天……英雄? え、英雄のクリーチャーなの? まだ他にもいたんだ……」
 てっきり光文明の英雄は《シール・ド・レイユ》だけだと思っていたが、どうやらまだ他にもいたようだ。しかも、その姿を見るに《ヴァルハラナイツ》が変化したクリーチャーのようである。
「《ヴァルハラ・デューク》のマナ武装7、発動……」
「っ、なに……?」
 ラヴァーのマナが光り輝く。
「……? あれ?」
 しかし、それ以降はなにも起こらない。《ヴァルハラナイツ》のようにクリーチャーをフリーズするのかと思ったが、そうではないらしい。
「よく分からないけど……まあいいや。なにもしてこないなら私のターンだよ! 《熱血龍 バトクロス・バトル》召喚! 《カチャルディ》とバトル!」
 ここでブロッカーを破壊できれば、二体のアタッカーでシールドを突き破り、とどめまで行くことができる。
 だが、しかし。
 《バトクロス・バトル》に殴り掛かられる《カチャルディ》は、マナゾーンから放たれる光の盾によってその拳を受け止めた。
「え!? なに!?」
 バトルは発生したようだが、しかし《カチャルディ》は破壊されていない。どういうことかと、暁が驚愕していると、
「《ヴァルハラ・デューク》の能力で、私のクリーチャーは破壊されない……」
「えぇ!? 嘘!」
 これでは、このターンにとどめを刺すことができない。どころかブロッカーが除去できないとなれば、次のターンにまた展開を許してしまう。
「いや……それでもこっちが優勢だし、ここは攻める! 行って《ドラゴ大王》!」
『貴様に指図されるまでもない! 喰らうがいい!』
「《カチャルディ》でブロック……」
 《ドラゴ大王》が飛翔し、シールドへと突っ込むが、《カチャルディ》がそれを阻む。そして、やはりその攻撃は光の盾によって弾かれ、《カチャルディ》は守られた。
『ちぃ、小癪な……!』
「でも、これでシールドは貰った! 《バトラッシュ・ナックル》で最後のシールドをブレイク!」
 《バトラッシュ・ナックル》の爪が、ラヴァーの最後のシールドを引き裂く。
「…………」
 シールドの破片が飛び、ブレイクの衝撃でラヴァーの髪がなびく。
 スッと、ラヴァーは閉じていた目を開き、砕かれたシールドを手にして、山札からカードを引く。
「それで、終わり……なら、私の、ターン」
「っ!」
 思わず目を瞑る暁。ラヴァーの背後で眩い光が発せられている。非常に眩しい、世界を照らすかのような閃光だ——

「私の世界を照らし出す——《聖霊龍王 バラディオス》」

 《サリヴァン》の上に、新たなクリーチャーが重ねられる。
 それは、絶望とも言えるタイミングで現れた光の龍、《バラディオス》。
「やば……!」
「《バラディオス》の能力で、相手クリーチャーはすべて、フリーズ……」
 《バラディオス》の放つ閃光が暁のクリーチャーに襲い掛かる。その光を浴びたクリーチャーの動きは、停止してしまうのだ。
『ぬぅ、またも小癪な……!』
「でも、《ドラゴ大王》のパワーは13000、《バラディオス》じゃ倒せないし、《ムルムル》とか、《エバーローズ》から《エバーラスト》が出ることもないよ」
 とはいえ、安心はできない。それに《ドラゴ大王》が無事であっても、他のクリーチャーはそうではないのだ。
「なんでもいい……《ヴァルハラ・デューク》で、《バトラッシュ・ナックル》を、《バラディオス》で、《バトクロス・バトル》を、破壊……」
「っ、くぅ……!」
 暁の場から、《ドラゴ大王》以外のクリーチャーが消え去った。これで場数でもさらに差がついてしまう。《ドラゴ大王》がいるとはいえ、どんどん暁が不利になっていく。
「大丈夫、私にはまだ《ドラゴ大王》がいてくれるんだから! 呪文《天守閣 龍王武陣》! 山札から《バトルネード》を選んで、今度こそ《カチャルディ》を破壊!」
 しかしそれでも、暁は《ドラゴ大王》に縋る。呪文で前のターンに破壊できなかった《カチャルディ》を破壊し、
「マナ武装5で、《天守閣 龍王武陣》で見せた《バトルネード》を手札に! そして《熱血龍 バトルネード》召喚!」
 次のターン。次のターンさえ凌げれば、《バトルネード》の能力で《ドラゴ大王》と《バラディオス》をバトルさせ、一方的に討ち取ることができる。
 凌げれば、だが。そのような隙のある策を、ラヴァーが見逃すはずもない。
「《光神龍セブンス》……《高貴の精霊龍 ペトローズ》、召喚……」


高貴の精霊龍 ペトローズ 光文明 (5)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 4500
バトルゾーンにある自分の他のドラゴンすべてのパワーは+4000される。


「ドラゴンを強化するドラゴン……まずい……」
 これで《バラディオス》のパワーは16000——《ドラゴ大王》を、上回った。
「《バラディオス》で、《ドラゴ大王》を、攻撃……」
 刹那。
 輝く光輪が、《ドラゴ大王》の翼を切り落としていた。
「っ……《ドラゴ大王》……!」
『ぐ、ぬぅ……!』
 そして次の刹那。
 《ドラゴ大王》の身が、切り裂かれた。
『ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
「《ドラゴ大王》!」
 なす術もなく、《ドラゴ大王》は墓地へと落ちて行った。
「そ、そんな、《ドラゴ大王》が……」
 一気に苦しくなってしまう暁。これでジャスティス・ウイングの展開を許してしまう上に、高パワー、高打点のアタッカーを失ってしまった。
 一方、ラヴァーの場には大型の《バラディオス》を筆頭に、五体のクリーチャーが並んでいる。
「うぅ……《セルリアン・ダガー・ドラゴン》召喚。カードをドロー。《霊峰竜騎フジサンダー》召喚……!」
 しかし暁は諦めなかった。必死にクリーチャーを展開し、反撃の芽をなんとか作ろうとする。
 だが、それももはや無意味だ。
「《天運の精霊龍 ヴァールハイト》……《聖歌の翼 アンドロム》、召喚……《バトルネード》を、フリーズ……」
 シールドが増え、《バラディオス》の防衛線が復活。ブロッカーが出され、《バトルネード》の動きも止められる。
 今まで何度も経験した。敗北の未来へ向かう、一方通行の道を歩かされるこの感覚。非常に不快で——悔しい。
「《セルリアン・ダガー・ドラゴン》進化! 《超竜サンバースト・NEX》!」
 それに抗おうとするも、その抵抗は虚しく、そして儚く散る。
「《サンバースト・NEX》で最後のシールドをブレイク!」
「私の最後のシールドが割られたから、《バラディオス》の、能力発動……相手クリーチャーをすべて、フリーズ……」
 何度目になるのか、光が暁のクリーチャーを縛り付ける。
 これでは、抵抗も出来ない。
 ただただ、弾圧されるのみ。
「……やっと、終わり……《レグルスピア》で、シールドブレイク……」
 一枚、シールドが割れる。
「……次……《ヴァールハイト》で、Wブレイク……」
 二枚、シールドが割れる。
「……最後……《バラディオス》で、Tブレイク……」
 三枚、シールドが割れる。
「あ……う、く……」
 もう、暁にシールドは残されていなかった。
 盾のなき暁に、英雄の一閃が迸る。

「《天英雄 ヴァルハラ・デューク》で……ダイレクトアタック——」

烏ヶ森編 12話「太陽山脈」 ( No.167 )
日時: 2015/06/28 19:54
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: 0qnzCmXU)

 前方に見えるのは、光文明と思しきクリーチャーの大群。足のあるものは地を歩き、翼を持つものは空を飛び、隊列を作って岩山を登っていた。
 だがさらにその先、ちょうど中腹の辺り。広場のように開けた場所に、大量の光クリーチャーが整列している。
 一騎たちは岩陰に隠れ、身を潜めつつクリーチャーたちの様子を窺う。
「偵察に出たヴァニエ、ラーブラショク、アキューラたちからの報告は?」
「それがまだ……主が先ほど、痺れを切らしたのか、様子を見に行ってしまわれましたが……」
「成程。ではもう少し様子を見て、なんの連絡もなければ、我々も動くよう進言してみよう」
 広場から聞こえてくるのは、そんなやり取りだった。
「これは……ビンゴか?」
「やはり光文明は、火文明に攻撃を仕掛けようとしているようですね」
 この太陽山脈は火文明にとっては重要な経路となりうる場所だ。そこを抑えてしまえば、ただでさえ統制が取れていない今の火文明を攻め落とすことはさらに容易になることだろう。
「それも大事だけどさ。あのクリーチャーたちの言ってる、主って誰の事かな?」
「そりゃこのクリーチャーたちを仕切ってる親玉だろ」
「僕たちの最大のターゲットですねー。その大将首を取ることが最優先事項になりえるでしょう」
「そんなことは当然だ。どうした? そのくらい、お前なら聞くまでもなく分かるだろ」
「う、うん、そうだね……」
 一騎が本当に聞きたかったことはそんなことではなかったのだが、しかしそれ以上はなにも言わなかった。
「さて、ではとりあえずの僕たちのすべきことは、この軍団の無力化ですが……問題は敵の戦力ですねー」
「流石にこの数全部を相手することはできないからな」
 ざっと見ても百体はいるだろうクリーチャーの数。それらすべてを相手することは、ここにいる四人だけでは荷が重い。流石に多勢に無勢だ。
「となると……大将を格下げして首を狙う必要がありますかねー」
「と、いうと?」
「統制の取れた部隊というのは、基本的に位の違うリーダーが複数人存在するんですよ。軍団全体としてのリーダーがいて、その下に各部隊をまとめる幹部がいるといったところですかねー」
「成程な。奴らの会話からするに、軍団全体のリーダーはいないようだから、今回はこの部隊を仕切っているだろう幹部を狙い撃つと」
「そういうことですー」
 指導者を失った群れはただの烏合の衆になり下がる。多勢に無勢なら指揮をとるものを落としてしまうのが、戦の定石だ。
 本当なら全体の指導者を倒したいところだが今は生憎いないようなので、位を繰り下げて幹部クラスの相手を落とすことにする。結局、本来しようとしていたこととあまり変わりはなかった。
「となると、とりあえずはどいつがターゲットかを見極める必要があるが……」
「……たぶん、あのクリーチャーだと思う」
 氷麗が指差す。その先には、明らかに他のクリーチャーとは異なる、威圧的なオーラを発している龍が仁王立ちしていた。
「……《聖霊龍王 ジーク・キャバリエ》か。また凄いのが出て来たな」
「ざっと見た感じでは唯一の進化クリーチャーですし、十中八九あのクリーチャーでしょうね」
「よし、じゃあ早速——」
「ちょっと待て」
 一騎が身を乗り出して岩陰から飛び出そうとするのを、ミシェルが制した。
「お前は妹が絡むとすぐに熱くなるきらいがあるからな。ここで待ってろ」
「え……でも……」
「まー敵の群れに飛び込むわけですし、デュエルを開始して速やかに無力化する必要がある以上、デッキタイプ的には四天寺先輩の方が適任ではありますかねー。部長と氷麗さんは退路の確保をお願いしますよー」
「焔君も……」
「そういうことだ。お前は少し頭を冷やせ。んじゃ、行くか」
「露払いとして僕も出ますねー……このデッキも試したいですし」
「あ、ちょっと……」
 一騎がそれ以上なにかを言う前に、二人は飛び出して行ってしまった。
「……大丈夫かなぁ」



 ミシェルと空護が飛び出すと、光のクリーチャーたちは一斉にそちらに振り向いた。
「誰だ、何者——ぐはっ!」
「弱い! 邪魔だ!」
 ミシェルは最も手近にいたクリーチャーを殴りつけると、そのままのしてしまう。
「……バイオレンスですね」
「速やかに無力化したんだ」
「そういう意味で言ったつもりではないんですがねー……」
 だがしかし、素手で処理できるのであれば、それはそれで構わない。わざわざ神話空間に引きずり込むのも手間だ。
 さて次はどいつが襲い掛かってくるのか、抜け道はどこかと二人が構えながら探っていると、
「如何な騒ぎか」
 ズンッ、と重苦しくなるような、低い声が響いた。
 その声を聴くや否や、低級のクリーチャーたちは恐れるように、その場から散開する。
 そうして姿を見せたのは、重厚そうな鎧を纏った、巨大な龍——先ほど、この集団のリーダー格だと当たりをつけていた、ジーク・キャヴァリエだ。
 ジーク・キャバリエはミシェルと空護、二人の姿を見下ろし、そして悟ったように続けた。
「成程……如何な文明の手先かは知らぬが、我々を邪魔だてする輩が現れたか。あの方の仰るとおりだったな」
「あの方ってのが誰だかは知らないが、ま、そんなところだ。お前らちょっと通行の邪魔なんだよ。道開けろや」
「それは敵わぬ。待機命令が出ているか否かに関わらずとも、敵対文明の要求などを聴きうけるつもりはない」
「だったら、力ずくでも退かしてやろうか?」
「よかろう。それができるのならば」
 と、意外なほどとんとん拍子に話が進んでしまった。しかも、ジーク・キャヴァリエ自身、かなりやる気満々である。
 相手としても、無駄な犠牲は出したくないということだろう。下級のジャスティス・ウイングをけしかけるより、自分自身が直接手を下した方が合理的と判断したのか。
「そちらは二名……ならばこちらも、両翼となりて相手を致そう、それが我が正義だ。ゴシック・ヘレン、参れ」
「御意に」
 ジーク・キャヴァリエがその名を呼ぶと、一瞬でもう一体の天使龍が現れる。やや派手な装飾を施した、巨大な龍だ。
「《救済の精霊龍 ゴシック・ヘレン》……」
「頭数を揃えるくらいは構わないさ、雑兵どもを掃除するより手っ取り早い。焔、あっちは任せた」
「四天寺先輩は、そっちのゴツイのを相手するんですか。大丈夫ですか?」
「問題ないな。あんまこいつらばっかに手間取ってもらんねーし、サクッと終わらせるぞ」
「了解ですよー」
 そんな風に話は纏まり、それに伴って構えていた周囲のクリーチャーたちが、少し掃ける。
 そうなると自然に、ミシェル、ジーク・キャヴァリエ。空護、ゴシック・ヘレンが向かい合うような形となった。
 そして目の前の敵と戦う覚悟ができた刹那、四名とも、神話空間の中へと溶け込まれる——

烏ヶ森編 12話「太陽山脈」 ( No.168 )
日時: 2015/05/19 20:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 空護とゴシック・ヘレンのデュエル。
 空護の場には《白骨の守護者ホネンビー》。一方ゴシック・ヘレンの場には《不屈の翼 サジトリオ》。
 互いにまだシールドは五枚。ほとんど動きのないまま、ゴシック・ヘレンのターン。
「呪文《トロワ・チャージャー》を発動します。手札からコスト3以下の光クリーチャー、《栄光の翼 バロンアルデ》をバトルゾーンへ。私のマナが貴方よりも少ないため、マナを1枚追加します。さらに使用した《トロワ・チャージャー》も、発動後、チャージャーでマナへ行きます。さらにこの増えたマナで、《聖鐘の翼 ティグヌス》を召喚です」
 ゴシック・ヘレンは、《バロンアルデ》と《トロワ・チャージャー》の併用で、自然のマナ加速を絡める空護のマナ数を追い抜く。チャージャーが発動後にマナへ行くことを利用した、《バロンアルデ》と組み合わせるマナ加速戦術だ。
「まあ、しかしそんな手間のかかること、そう何度もできるわけでもないですし、別に痛くはないですかねー。んじゃ、僕のターン」
 空護はそんなゴシック・ヘレンのことなど意にも介さず、マイペースで自分のターンを開始する。
「《霞み妖精ジャスミン》を召喚、即破壊してマナを追加。続けて、二体目の《ホネンビー》を召喚。山札の上三枚を墓地へ送り、墓地から《隠密の悪魔龍 フドウガマオウ》を回収して、ターン終了です」
「私のターン……さて、遂にこの時が来ました。遂に時が満ちました。この瞬間、この時を、私は心待ちにしていたのです」
「? なんですかー、もったいぶって」
「なに、そう難しいことではありません、簡単なことです。今に分かります」
 と言って、ゴシック・ヘレンはすべてのマナを使い切り、残る手札を、場へと送り出す。

「この私、《救済の精霊龍 ゴシック・ヘレン》を召喚!」

 現れたのは、数々の装飾を施した天使龍、《ゴシック・ヘレン》。
 正義を掲げ、正義の名のもとに行動するエンジェル・コマンド・ドラゴン。それぞれが秘める正義の形は異なり、そんな彼の正義は、自身の僕への救済。
 惰弱で矮小だが、大きな正義を執行するためには欠かすことのできない、正義の翼を持つものたち。ともすれば容易く息絶えてしまう彼らを救済し、新たな命を紡ぐのが、彼の正義なのだ。
「……ま、だからなんだって感じですけどねー。それなら僕も動きますよ。呪文《超次元ライデン・ホール》! 超次元ゾーンから《サンダー・ティーガー》をバトルゾーンに。さらに《ホネンビー》を破壊して、《ヴォルグ・サンダー》もバトルゾーンに!」
 激しい稲光と電撃が迸り、超次元の門が開かれる。
 そこから現れるのは、獣の悪魔。命を一つ、彼らの供物として捧げることで、その命を糧に、二体の悪魔が超次元の彼方より姿を現す。
「《サンダー・ティーガー》の能力で、《バロンアルデ》のパワーを2000下げて破壊。さらに《ヴォルグ・サンダー》の能力で、僕の山札を削りますねー」


サンダー・ティーガー 闇文明 (5)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド/ハンター 3000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは−2000される。
覚醒リンク—自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の《ヴォルグ・サンダー》があれば、そのクリーチャーとこのクリーチャーを裏返しリンクさせる。


ヴォルグ・サンダー ≡V≡ 闇文明 (6)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド/ハンター 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、プレイヤーを一人選ぶ。そのプレイヤーは、自身の山札の上から、クリーチャーが2体出るまでカードを墓地に置く。
W・ブレイカー


 《サンダー・ティーガー》の雷撃で《バロンアルデ》が破壊され、《ヴォルグ・サンダー》の能力で空護の山札からクリーチャーが二体、墓地へと落とされる。
 クリーチャーを破壊され、墓地も肥やされたが、だがこの時、《ゴシック・ヘレン》は小さく微笑んだ。
『《バロンアルデ》が破壊されたことで、私の能力が発動します』


救済の精霊龍 ゴシック・ヘレン 光文明 (6)
クリーチャー:エンジェル・コマンド・ドラゴン 6000
W・ブレイカー
このクリーチャーまたは自分の他のクリーチャーが破壊された時、自分の山札の上から2枚を見る。その中から、コスト3以下の進化ではないクリーチャーを1体、バトルゾーンに出してもよい。残りのカードを好きな順序で自分の山札の一番下に置く。


 ここで、《ゴシック・ヘレン》の救済が行われる。
 《バロンアルデ》は《サンダー・ティーガー》の雷に打たれ、死滅した。しかしその魂は救済され、新たな器を得て現れるのだ。
『山札の上から二枚を見て、その中から《救護の翼 フィルミエ》をバトルゾーンへ』
 破壊された《バロンアルデ》に代わり、《フィルミエ》をバトルゾーンへと現れる。
 確実ではないとはいえ、クリーチャーを破壊しても、また新しいクリーチャーを出せる《ゴシック・ヘレン》。なかなか厄介な能力だった。
『そして私のターン。《ジャスティス・プラン》を唱え、《聖龍の翼 コッコルア》と《堅牢の翼 アリシオン》を手札に。そして、私でシールドをWブレイク!』
「っ……!」
 並んだブロッカーと、自身の能力による疑似的な除去耐性を盾に、《ゴシック・ヘレン》は空護を攻める。
 大きな一撃ではないにしろ、そう何度も喰らえる攻撃でもない。早めに処理しなければ。
「とりあえず……僕のターンの初め、《サンダー・ティーガー》と《ヴォルグ・サンダー》を覚醒リンク! 《雷獣ヴォルグ・ティーガー》!」


雷獣ヴォルグ・ティーガー ≡V≡ 闇文明 (12)
サイキック・スーパー・クリーチャー:デーモン・コマンド/ハンター 11000
このクリーチャーが攻撃する時、相手の手札を見ないで1枚選び、捨てさせる。その後、その捨てたカードよりコストが小さいクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー
リンク解除


 二体の獣の悪魔は覚醒し、リンクし、一体となり——雷電の獣となる。
「さらに《隠密の悪魔龍 フドウガマオウ》を召喚! 《ヴォルグ・ティーガー》で《ゴシック・ヘレン》を攻撃! そして、能力発動!」
 《ヴォルグ・サンダー》の咆哮と共に、激しい稲妻が迸る。
 その雷撃は、《ゴシック・ヘレン》の手札を一枚、貫いた。貫かれたのは、《アリシオン》だ。
「攻撃時、《ヴォルグ・ティーガー》は相手の手札を破壊します。そして、その捨てられたカード未満のコストのクリーチャーを、墓地から呼び戻しますよ。《アリシオン》のコストは3、なので僕は、墓地から《ジャスミン》を復活させます」
 だがすぐに破壊してしまい、マナを増やす。
 そして雷獣が再び咆哮し、今度は《ゴシック・ヘレン》へとその牙を剥くが、
『守りなさい、《サジトリオ》。ブロックです』
 その途中、《ヴォルグ・ティーガー》の進行を《サジトリオ》が妨げる。
 とはいえ《サジトリオ》は決して強力なクリーチャーではない。《ヴォルグ・サンダー》の牙によって、粉々に粉砕されるが、
『《サジトリオ》の能力発動! 破壊されることで、山札の上三枚から、コスト3以下のブロッカーをバトルゾーンへ。出てきなさい、《栄光の翼 バロンアルデ》。能力でマナを追加します』
 《サジトリオ》は、破壊されても能力で場数が減らない。守りを構築する上では、非常に粘り強いブロッカーだ。
 だがしかし、場数が減らないだけなら、まだマシだ。
『さらに、私の能力も発動です。山札の上から二枚を見て、《制御の翼 オリオティス》をバトルゾーンへ』
 《ゴシック・ヘレン》の能力によって、新しいクリーチャーが現れる。《サジトリオ》と《ゴシック・ヘレン》の効果が重なることで、場数が減らないどころか、クリーチャー数が増えてしまった。
『では、私のターン——』
「ちょっと待ってくださいよ」
 空護の攻撃も空しく防がれ、《ゴシック・ヘレン》のターンがやってくるが、その時、空護は彼にストップをかける。
「ターンを始めるなら、《フドウガマオウ》の能力発動ですよー。《フィルミエ》を指定しますー」
 《フドウガマオウ》は、相手ターンの初めに、相手クリーチャーに攻撃を強要する能力を持つ。
 基本的にブロッカーは相手プレイヤーを攻撃できないが、ここで《フィルミエ》を指定することで、前のターンに攻撃した《ヴォルグ・ティーガー》へと自爆特攻しなければいけなくなる。
『……まあ、いいでしょう。その程度は些細なことです。私のターン、《コッコルア》を召喚。そして、まずは《フィルミエ》で《ヴォルグ・ティーガーを攻撃——』
「おっと、その時に《フドウガマオウ》の、もう一つの能力を発動させますよー。手札からコスト6以下のファンキー・ナイトメア、《龍覇 ドクロスカル》をバトルゾーンへ」
 《フドウガマオウ》の術法により、空護の手札から《ドクロスカル》が飛び出る。
 だからといって、攻撃が防がれるわけでもないが、
「《ドクロスカル》がバトルゾーンに出た時、コスト2以下のドラグハートを呼び出しますよー……では、ここからが悪夢の始まりです。《悪夢卍 ミガワリ》を、《ドクロスカル》に装備」
 超次元のどこかから、卍型の禍々しい手裏剣が飛来し、《ドクロスカル》へと装備される。
 そしてその後、《フィルミエ》の自爆特攻が解決され、《ヴォルグ・ティーガー》に返り討ちにされるが、
『私の能力で、《フィルミエ》を新たな《フィルミエ》としてバトルゾーンへ。そして今度は、私で攻撃! Wブレイク!』
「く……っ!」
 再び、《ゴシック・ヘレン》の攻撃が叩き込まれるが、まだシールドは一枚残っている。
 そしてなにより、本番はここからだ。
「ターン終了時、《フドウガマオウ》の能力でバトルゾーンに出た《ドクロスカル》を破壊——する代わりに、《ミガワリ》を龍解!」
 《ドクロスカル》の破壊によって生じた気を吸収し、《ミガワリ》は《ドクロスカル》身代わりとなって、龍解する。
「《忍者屋敷 カラクリガエシ》! 2D龍解完了、そして僕のターン」
 颯爽と龍解を成し遂げ、空護はターンを進めていく。
「《カラクリガエシ》の能力で、山札の上から二枚を墓地へ。さらにマナ武装5、発動! 山札の上から五枚を墓地に置いて、《シバカゲ斎》を墓地からバトルゾーンへ!」
 高速で山札を削りながら、空護はさらにクリーチャーを展開していく。その二つは、この後の展開への布石。
 その準備を進め、それもそろそろ、終わりの段階へと入る。
「《龍覇 ニンジャリバン》を召喚! その能力で、超次元ゾーンから《魂食いの魔狼月下城》をバトルゾーンへ! さらに《学校男》を召喚! 《シバカゲ斎》と《ドクロスカル》を破壊! そちらも一体、破壊してください」
『《バロンアルデ》を破壊します。しかし私の能力で、山札から《ティグヌス》をバトルゾーンへ』
 いくら破壊しても、《ゴシック・ヘレン》の救済により、クリーチャーが減らない。どころか、ターンが進むにつれて、数は増える一方だ。
 しかしこの時の空護は、破壊が目的ではなかった。いや、目的は破壊だ。しかし、その矛先は、自分にあった。
「僕の闇のクリーチャーが破壊されたことで……《忍者屋敷 カラクリガエシ》の龍解条件成立」
 空護の狙いは、破壊は破壊でも、“自分のクリーチャー”の破壊だ。
 それによって、《カラクリガエシ》が、最後の姿を現す準備が整った。
 《カラクリガエシ》がガタガタと鳴動し、そのうちに秘めた、変幻自在な悪夢の絡繰りを顕現させる。

「悪夢忍法、絡繰返しの術! 虚空に現れし変幻自在の忍、此処に降臨せん——《絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ》!」


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