二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- 烏ヶ森編 10話「フォートレス ( No.144 )
- 日時: 2014/11/02 17:19
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: d2sOH2lv)
要塞の通路を走り抜け、テインが眠っていた小部屋へと辿り着く一騎たち。
そこには、一見するとなにもない。しかし壁面の一部が、赤く燃えていた。
「な、なにあれ……? どうなってるの?」
「誰かの封印が解けるみたいだ。僕の仲間の戦士が目覚めるようだけど、一体誰が……」
そして、壁面の炎が一層強く燃焼した。
「っ!」
その光で思わず目を閉じる。次に開いた時には、炎の燃えていた場所になにかが立っていた。人型で、剣を携えたクリーチャーのようだが、
「あれは……?」
「《フィディック》だ……」
「フィディック?」
「うん。一騎、君の持っている《グレンモルト》の師匠だよ。僕も少しだけ手ほどきを受けたことがあって、マルス隊長と対等に話せる一人だった記憶があるよ」
《グレンモルト》の師匠だとか、マルス隊長と対等に話せるだとか、それがどれほど凄いのかは一騎にはピンと来なかったが、しかし目の前で黙しているだけで気迫を放つその立ち姿は、只者ではないということを感じさせるには十分だ。
「……久しいな、テイン」
フィディックは、ゆっくりとこちらを見据え、落ち着いた声でテインに呼びかける。
「お前たちの熱に当てられ、私もいつまでも寝ていられなくなってしまったよ」
軽く笑いながらそう言うフィディック。このように出て来たクリーチャーだと、最初に襲い掛かって来た《オニナグリ》の印象が強いが、フィディックはかなり落ち着いていた。
「それはそれとして、だ。私が目覚めた理由は他にもある」
「目覚めた理由?」
「ああ。今のお前の姿を見れば、早くした方いいだろう……マルスの置き土産だ」
その言葉を聞き、明らかにテインが反応を示す。
「隊長の……っ!? 一体なんなんだい、それは?」
「……私としてはすぐに渡しても構わないが、しかしあのマルスが私に託し、お前に残したものだ。なにもせずに渡すわけにはいくまい」
と、その時。フィディックの纏う空気が変わった。
ピリピリと肌に突き刺さるようなこの感覚。一騎にも分かる、これは戦う者の気迫だ。
フィディックは今から、一騎やテインと戦う気なのだ。
「安心しろ、少年よ。目覚めたばかりではあるが、今のこの世界がどういう者か、多少は理解している。貴様の土俵で戦うとしよう」
しかし、とフィディックは逆接し、
「だからと言って、私を侮るなよ——」
刹那。
一騎とテイン、そしてフィディックを、神話空間が包みこんだ——
一騎とフィディックのデュエル、序盤。互いのシールドは五枚ずつ。
一騎の場には《一撃奪取 トップギア》、フィディックの場には《爆山伏 リンクウッド》。
「呪文《ネクスト・チャージャー》。手札をすべて入れ替え、チャージャーをマナへ。《リンクウッド》で攻撃。マナ武装3発動、山札の一番上を捲るぞ」
捲られたカードは《爆打者 猛トラック》。ヒューマノイドなので手札へ加わる。
「シールドをブレイクだ」
「S・トリガーは……ないよ」
先手を取られてしまったが、まだ序盤だ。いくらでも巻き返せる。
「俺のターン。《爆炎シューター マッカラン》を召喚! マナ武装3発動で《リンクウッド》とバトルして破壊! 《トップギア》でシールドをブレイク!」
厄介な手札補充役の《リンクウッド》を破壊しつつ、こちらもシールドを削る一騎。しかし、
「甘い。《爆山伏 リンクウッド》《爆炎シューター マッカラン》を召喚。《マッカラン》のマナ武装3発動、貴様の《マッカラン》とバトルだ」
一騎の《マッカラン》はフィディックの《マッカラン》とのバトルにより、相打ちとなった。
「これでまた振り出しか……呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札の下に!」
現状、一騎の手札は重い。少しでもそれを改善すべく、手札を入れ替える。
「……ターン終了」
「私のターン。《爆打者 猛トラック》を召喚。《リンクウッド》で攻撃、マナ武装3発動」
山札の上を捲り、捲られた《爆師匠 フィディック》を手札に加える。
「シールドをブレイクだ」
「くっ……でも、まだまだこれからだよ」
一騎のターン。先ほど《ネクスト・チャージャー》で引き入れたあのカードを、解放する。
「《龍覇 グレンモルト》を召喚!」
爆炎と共に姿を現したのは、火文明を代表するドラグナー《グレンモルト》。その力により、超次元の彼方から彼の武器が呼び寄せられる。
「超次元ゾーンから《銀河剣 プロトハート》を呼び出し、《グレンモルト》に装備!」
一騎の切り札を呼び出す準備は整った。あとは攻撃するだけだ。
「ふむ……《グレンモルト》か。そやつを使役するとはなかなかだが、剣はいまだ《プロトハート》のようだな」
「“いまだ”……?」
フィディックの言葉に少しばかり引っかかる一騎だが、それに気を取られてもいられない。フィディックは次なる一手を繰り出す。
「《龍覇 スコッチ・フィディック》を召喚!」
「来たよ一騎」
「うん……」
現れたのは《フィディック》その人。それも、ドラグナーとしての《フィディック》だ。
「一体、どんなドラグハート・ウエポンを——」
『少年よ、ドラグハートがウエポンばかりだと思うな』
場に出た《フィディック》は、一騎の言葉に聡く反応し、指摘する。
「? どういうこと……?」
『ドラグハート・ウエポンは、ドラグハートの可能性の一つでしかない。姿形がなんであれ、龍の魂が込められているものであれば、それ即ちドラグハートとなる。私がこれから呼び出すものは、貴様が思うドラグハートとは違う姿をしているだろう。それをしかとその目に焼き付けよ』
そう言って《フィディック》は、目の前に炎を放つ。炎は導火線のように地面を走り、敷地を囲うように炎の範囲を規定する。
『出でよ、ドラグハートの次なる可能性——ドラグハート・フォートレス!』
「ドラグハート……フォートレス……?」
刹那、大地が鳴り動く。炎によって規定された場所から、火文明の城が現れる。
『ここに建て、我らが牙城! 《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》!』
- 烏ヶ森編 10話「フォートレス ( No.145 )
- 日時: 2014/11/02 21:01
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: d2sOH2lv)
天守閣 龍王武陣 —闘魂モード— 火文明 (3)
ドラグハート・フォートレス
自分の火のクリーチャーがバトルする時、そのターン、そのクリーチャーのパワーは+2000される。
龍解:自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の火のクリーチャーが2体以上あれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
立ち上るのは威風堂々とした、龍の天守閣を備えた城——いや、要塞だ。その堅牢さと迫力は、難攻不落の要塞そのものだ。
「ウエポンでもクリーチャーでもないドラグハート……!?」
『そうだ、少年よ。しかしただの要塞ではない、熱血の魂が込められた龍の要塞だ。ここに龍の魂が秘められていることを忘れるな』
そして《フィディック》は、ターンを終える。
「よく分からないけど、クリーチャーじゃないってことは攻撃もできないはず」
置いてあるだけで能力が発動するのは厄介だが、無視できる範囲だ。除去も出来ないので、とりあえずは放っておくしかない。
「呪文《勝負だ!チャージャー》を《グレンモルト》に使うよ。これで《グレンモルト》はアンタップクリーチャーを攻撃できる。さらに《爆打者 猛トラック》召喚! 《グレンモルト》で《リンクウッド》を攻撃!」
《プロトハート》を振りかぶり、《グレンモルト》は《リンクウッド》を一刀両断にする。
「そして《プロトハート》の能力で《グレンモルト》をアンタップ。次は《猛トラック》を攻撃だ!」
続けて《フィディック》の場にいる《猛トラック》を、横薙ぎの一太刀で一閃。こちらも破壊する。
「これで俺のターンは終わりだけど、このターン《プロトハート》を装備した《グレンモルト》が二回攻撃したので、龍解条件成立!」
《グレンモルト》は龍の鼓動を刻む《プロトハート》を、空高く、銀河の果てまで投げ飛ばす。燃える大宇宙の中、《プロトハート》の内に秘めた龍の魂は、その存在を剣の外へと解放せんと、自らを炎に包んだ。
「宇宙の星々、熱き血潮を漲らせ、銀河の鼓動を解放せよ。龍解——」
その炎が最大となった時、《プロトハート》は真の姿を顕現させる——
「——《星龍解 ガイギンガ・ソウル》!」
——そして龍は、銀河の果てより地上へと降り立った。
「龍解完了! さあ、これで勝負はまだ分からないよ」
『……龍解した程度で、あまりつけ上がらない方がいいぞ。私のターン』
一騎の切り札に怯むどころか、むしろ一騎を諌めるような言葉までかける《フィディック》は、。
『《爆師匠 フィディック》を召喚! 《スコッチ・フィディック》で《グレンモルト》を攻撃!』
「でも、《グレンモルト》はバトル中パワー+3000だから、フォートレスの効果があっても相打ちだよ」
『どうだろうな』
爆師匠 フィディック 火文明 (5)
クリーチャー:ヒューマノイド爆 5000
バトルゾーンにある自分のドラグナーとドラグハート・クリーチャーすべてのパワーは+3000される。
ウルトラ・セイバー:ドラグナー
《フィディック》のもう一つの姿は、ドラグナーとしての力を行使するのではなく、ドラグナーやドラグハートを援助するものであった。
『《爆師匠 フィディック》がいるため、フォートレスと合わせて《スコッチ・フィディック》のバトル時のパワーは10000、《グレンモルト》を破壊だ!』
「うっ……でも、《ガイギンガ・ソウル》はもう龍解してるし、大丈夫。俺のターン」
事実、《ガイギンガ・ソウル》が龍解していればそれだけで四打点あることになるため、《フィディック》にとどめを刺すには十分だ。
「まずは《ネクスト・チャージャー》で手札を入れ替えて……《ガイギンガ・ソウル》で攻撃! シールドをWブレイク!」
その時《ガイギンガ・ソウル》は自身の能力でアンタップ。二の太刀の構えを取りつつ、《フィディック》のシールドを二枚切り裂く。
しかし、
『S・トリガー発動! 《爆流剣術 紅蓮の太刀》! 《天守閣 龍王武陣》!』
切り裂かれた二枚のシールドは、光の束となって収束した。
『《紅蓮の太刀》により《トップギア》を破壊! マナ武装5を発動し《猛トラック》も破壊だ!』
《フィディック》が燃える刀を携え、一太刀目で《トップギア》を、二の太刀で《猛トラック》を切り捨てる。そして、
『さらに《龍王武陣》により山札から《熱血龍 タイラント・ダイラント》を選択! パワー8000以下の《ガイギンガ・ソウル》を破壊!』
闘魂モードを一時的に解除した《龍王武陣》が、砲塔から《タイラント・ダイラント》を射出し、《ガイギンガ・ソウル》の身体を貫く。
ドラグハートと言えど、クリーチャーの姿である限り、そのクリーチャーに耐えられない負荷をかけられれば身体が持たなくなり、破壊される。
《ガイギンガ・ソウル》は、その負荷に耐え切れず破壊され、超次元ゾーンへと戻された。
「……! そんな、《ガイギンガ・ソウル》が……!」
切り札の喪失に、目を見開く一騎だが、《ガイギンガ・ソウル》だけではない。一騎のクリーチャーが根こそぎ破壊され、場にはなにもなくなってしまった。
『私のターン。この時、私の場には火のクリーチャーが二体存在するため、《天守閣 龍王武陣 —闘魂モード—》の龍解条件が成立した』
「龍解……!? フォートレスも龍解するのか……!」
バトルゾーンにそびえ立つ戦闘龍の城が、そこに眠る魂が目覚める。城のすべてが躍動し、龍の姿をここに現す。
『目覚めよ、牙城に眠りし龍の魂! 秘めたる熱血の力を、この戦場にに解放せよ——』
闘魂モードとなった《天守閣 龍王武陣》が、真の姿へとその身を変えてゆく——
『——《熱血龍 ガイシュカク》!』
現れたのは、天守閣を背負った戦闘龍。火文明の居城、《天守閣 龍王武陣》と一体化したドラゴンだ。
「っ……!」
『行くぞ少年! 呪文《ネクスト・チャージャー》! そして《熱血龍 マーダル・ビッシュ》を召喚! さらに《ガイシュカク》で攻撃! Wブレイクだ!』
《ガイシュカク》が吠え、一騎のシールドへと一直線に突っ込んで来る。
「に……ニンジャ・ストライク! 《ハヤブサマル》を召喚してブロック!」
先ほど使わなかった手札から飛び出すのは《ハヤブサマル》。火単と思われた一騎のデッキだったが、防御用のシノビを数枚差していたようだ。
だが、それだけでは無意味だ。
『無駄だな。《ガイシュカク》は自分のクリーチャーがそのターン初めてブロックされた時、アンタップする!』
熱血龍 ガイシュカク 火文明 (6)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 7000+
自分のクリーチャーがバトルする時、そのターン、そのクリーチャーのパワーは+2000される。
自分のクリーチャーがそのターンはじめてブロックされた時、そのクリーチャーをアンタップする。
W・ブレイカー
一度は防がれたものの、再び攻撃体勢を取る《ガイシュカク》。二度目の突撃を開始する。
「ぐぅ……《ゼロカゲ》を召喚! ブロック!」
本来なら《フィディック》を持って行く予定だったが、Wブレイクは受けられない。一騎はもう一体のシノビ《ゼロカゲ》を盾になんとか乗り切る。
『《フィディック》と《スコッチ・フィディック》でシールドをブレイク!』
二体の《フィディック》がそれぞれ一騎のシールドを両断する。これで残るシールドはあと一枚になってしまった。
「S・トリガーもない……一体、どうすれば……」。
切り札は通じず、逆に相手の切り札を落とすこともできない。完全に打つ手なしだ——現状では。
「一騎、落ち着いて。大丈夫、まだ可能性はあるよ」
「で、でも残りシールドは一枚……S・トリガーにかけても、後がない——」
「違うよ。可能性っていうのはそういうことじゃない」
「……?」
ならばどういうことか、と一騎はテインに問う。
「簡単な話だよ。今の武器で目の前の敵が倒せないなら、新しい武器を使えばいい。戦争においては、時間の経過と共にどんどん新しい武装が取り入れられる……それと同じ。それに、武器にも相性があるんだ。《プロトハート》と相手の相性はあまりよくないみたいだし、ここは別の剣を使うのが得策なんだよ」
「そんなこと簡単に言われても……新しい剣なんて、どこにもない——」
と思ったが、ふと超次元ゾーンを見てみると、一騎が持つ唯一の武器、《プロトハート》が燃えていた。めらめらと燃え、その炎で煌々と輝いている。
「これは……!」
「マルス隊長が残した剣の一つ、その力が解き放たれたんだ……君に呼応してね」
「俺に、呼応して……?」
一騎はその剣をジッと見つめる。
そして、
「行くよ……《龍覇 グレンモルト》を召喚!」
その能力で、超次元ゾーンからコスト4以下の火のドラグハートを呼び出す。
だが、ここで呼び出すのは《プロトハート》ではない。今この状況で《プロトハート》を呼ぶ余裕はない。
ゆえに呼び出すのは、もう一つのドラグハート・ウエポン。勝利を意味する猛将の刀剣。
一騎の、新たな力だ。
「来てくれ……《将龍剣 ガイアール》!」
- 烏ヶ森編 10話「フォートレス 」 ( No.146 )
- 日時: 2014/11/02 23:43
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: d2sOH2lv)
将龍剣 ガイアール ≡V≡ 火文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
このドラグハートをバトルゾーンに出した時、バトルゾーンにある相手クリーチャーを1体、選んでもよい。そのクリーチャーとこのドラグハートを装備したクリーチャーをバトルさせる。
龍解:自分のガイアール・コマンド・ドラゴンまたは名前にガイアールを持つクリーチャーが攻撃する時、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。
超次元の彼方より飛来するのは、金色に輝き燃え盛る刀。《グレンモルト》は地面へと深く突き刺さったそれを抜き、構えた。
『《ガイアール》……新しい剣を手に入れたか、グレン』
ふっと呟く《フィディック》。だがその呟きは、《ガイアール》の轟々と燃える炎に掻き消される。
「《将龍剣 ガイアール》を《グレンモルト》に装備! そして《ガイアール》が場に出た時の能力で、《グレンモルト》と《マーダル・ビッシュ》をバトル!」
《グレンモルト》はバトル時パワー7000、《マーダル・ビッシュ》は《ガイシュカク》の力を得てもそのままではパワー6000。《グレンモルト》の方が高い。なので、そのまま《グレンモルト》と《ガイアール》により斬り捨てられた。
「さらに《爆轟 マッカラン・ファイン》召喚! 続けてG・ゼロで呪文《暴龍警報》を発動!」
暴龍警報 火文明 (2)
呪文
G・ゼロ—バトルゾーンに自分の火のドラグナーがあれば、この呪文をコストを支払わずにすぐ唱えてもよい。
バトルゾーンにあるクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーは「スピードアタッカー」を得、種族にガイアール・コマンド・ドラゴンを追加する。
「その能力で《マッカラン・ファイン》の種族にガイアール・コマンド・ドラゴンを追加! スピードアタッカーの《マッカラン・ファイン》で攻撃、シールドをブレイク!」
今更一枚のブレイク程度では勝ちに直結するとは言い難いこの状況。しかし一騎にとって重要なのは、“ガイアール・コマンド・ドラゴンとなった《マッカラン・ファイン》が攻撃すること”だ。
それにより、《将龍剣 ガイアール》の力が解放される。
「《将龍剣 ガイアール》の龍解条件は、ガイアールが攻撃すること。今の《マッカラン・ファイン》は《暴龍警報》でガイアール・コマンド・ドラゴンだから、龍解条件成立!」
『ほぅ……』
勝利を呼ぶ龍となった《マッカラン・ファイン》の攻撃に応じ、《ガイアール》がカタカタと揺れ動いた。
「戦場の爆炎、熱き闘志を燃え上がらせ、勝利の鼓動を解放せよ。龍解——」
《グレンモルト》は鼓動する剣を天高く投げ飛ばす。宙を舞った剣は戦火の如く燃え盛る炎に包み込まれ、そのうちに秘めたる龍の魂を解放させる。
「——《猛烈将龍 ガイバーン》!」
猛烈将龍 ガイバーン ≡V≡ 火文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 8000
このクリーチャーが攻撃する時、このクリーチャーよりパワーが小さい相手のクリーチャーを1体破壊する。
W・ブレイカー
深紅の鎧を身に纏い、輝く金色の刃と真っ赤に燃える刀身の剣を構え、一体の戦闘龍が目覚めた。
勝利を意味する龍に付けられる、ガイアールの名。それらを統べる将軍たる龍が、今ここに推参する。
「龍解完了! 頼んだよ、《ガイバーン》!」
一騎の言葉に、《ガイバーン》は猛々しく吠えて返答した。
「本来なら場に出たターンに龍解したドラグハート・クリーチャーは攻撃できないけど、《マッカラン・ファイン》のマナ武装5で俺のクリーチャーはすべてスピードアタッカーだ! 《ガイバーン》で《爆師匠 フィディック》を攻撃!」
《マッカラン・ファイン》の力を借り、《ガイアール》が戦場を疾駆する。猛る闘志を剥き出しにして、轟々と燃え盛る刀を振りかざした。
「そしてこの時、《ガイバーン》の能力発動! 《ガイバーン》よりパワーの低い相手クリーチャーを一体破壊する!」
《ガイバーン》のパワーは8000、なので破壊できるのは、基本的にパワー7500以下のクリーチャーとなる。《ガイバーン》は標的に据えたクリーチャーへと、鋭い眼光を向けた。
「パワー7000の《ガイシュカク》を破壊!」
猛々しく《ガイバーン》が吠えると、振りかざした刀を一息で振り下ろす。刹那、爆炎が大地を割るかのごとく暴発し、《ガイシュカク》へと襲い掛かった。
『っ、《ガイシュカク》……!』
最後に飛び上がって、上空より天守閣を一刀両断に断ち割る。
それにより、難攻不落の熱血の要塞が変質した龍は、落城するのであった。
「さあ、これで厄介なドラグハートはいなくなったよ。《ガイバーン》の攻撃で《爆師匠 フィディック》を破壊! 続けて《グレンモルト》で《スコッチ・フィディック》も破壊!」
《ガイバーン》と《グレンモルト》、刀に封じられた龍と、その刀の持ち主がそれぞれ、師である《フィディック》を破壊する。
「ぐぅ……! 私のターン! 《開眼爆剣 アイラ》《龍覇 ストラス・アイラ》を召喚! 超次元ゾーンより《熱血剣 グリージーホーン》を呼び出し、《ストラス・アイラ》に装備! ……だが、ここまでか」
最後の最後まで無駄にターンを終わらせないフィディックではあるが、もはや勝敗は決している。
「俺のターン! 呪文《必殺!バトライ・フィンガー》で《ガイバーン》と《ストラス・アイラ》をバトル! そしてそのバトルで、俺の火のクリーチャーが勝利! 手札から《焦土の語り手 テイン》をバトルゾーンに!」
焦土の語り手 テイン 火文明 (5)
クリーチャー:ヒューマノイド/ボルケーノ・ドラゴン 4000
自分のコスト3以上の火のクリーチャーがバトルに勝った時、このクリーチャーを手札からバトルゾーンに出してもよい。
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、相手のパワー4000以下のクリーチャーを一体選び破壊する。
「遂に僕の出番だね。僕の登場時能力で、パワー4000以下の《アイラ》を破壊するよ!」
鞘から軍刀を抜き、《テイン》は炎の衝撃波と共に《アイラ》を切り裂く。
「《テイン》で最後のシールドをブレイクだ!」
「……S・トリガー発動《ドリル・トラップ》。《マッカラン・ファイン》を破壊」
さらに返す刀で残った一枚のシールドも叩き割る。その最後のシールドから出たS・トリガーも、もはや無意味だ。
そして、牙城は崩され、防壁は失われ、逃げることもできない敵将に、燃え盛る勝利の一閃が放たれる——
「——《猛烈将龍 ガイバーン》で、ダイレクトアタック!」
神話空間が閉じると、そこにフィディックの姿はなかった。
しかし足元を見てみると、何枚かのカードが落ちていた。
「《フィディック》と、ドラグハート・フォートレス……」
『受け取れ、少年。私を倒した戦利品だ』
拾い上げた《フィディック》は淡々と言う。
「いいの?」
『当然だ。戦いとは、勝者がすべてを手に入れ、敗者にはなにも残らない、そういうものだ。それに、あのテインと共にある貴様にも少し興味が湧いた。もう少し、お前たちを見ていたい』
「《フィディック》……ありがとう」
『こちらこそよろしく頼む……それと、テイン』
忘れないうちに、と《フィディック》はテインを指名する。
「どうしたんだい?」
『マルスの残したものがある。右4、下6だ』
「……隊長が残したもの、か」
《フィディック》に促されるまま、テインは壁面へと移動し、少しずつ手を動かしていく。そして、しばらくしてその手を止めた。
「ここかな……一体なんだろう、隊長が《フィディック》に託して、僕に残したものって……」
テインが手をかざすと、壁面の一部が燃えるような光を放ち始める。光は次第に強くなっていき、その強さが最大に達した時、弾けるようにフラッシュした。
「っ……なに? なにが起こったの? テイン?」
「一騎さん、手!」
「……?」
氷麗に言われて、自分の手に視線を落とす一騎。そこには、見覚えのないものがあった。
「え、なに、これ……」
気付けばなにか持っている。どこか見覚えのある物体。そう、たしかこれは、いつしかテインと出会った時、彼が眠っていた岩塊とよく似ている。似ているが、まったくの別物。
研磨されたかのような岩塊に、一本の刀剣が深く、深く突き刺さっていた——
- 41話「勝利天帝」 ( No.147 )
- 日時: 2014/11/03 05:55
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
「——よし来た! 《怒英雄 ガイムソウ》召喚! マナ武装7発動で、手札から《爆竜勝利 バトライオウ》をバトルゾーンに! スピードアタッカーになった《バトライオウ》でWブレイク!」
「おっと、これはなかなか手痛いわね」
「部長の場には《ツミトバツ》だけ。このまま一気に押し切るよ!」
「そう? じゃあ私のターン。《呪英雄 ウラミハデス》を召喚。マナ武装7発動、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》を墓地からバトルゾーンへ」
「え?」
「《ツミトバツ》でWブレイク」
「ちょ……やば……! 《バトライオウ》を召喚!」
「《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の効果でタップ」
「そうだった……な、なら、《ガイムソウ》で《ツミトバツ》と相打ちに! ターン終了!」
「私のターン。《絶望の悪魔龍 フューチャレス》を召喚、手札をすべて捨てるわ」
「私の手札もなくなったよ!?」
「そして《ウラミハデス》《バトライオウ》を攻撃、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》の効果で私の闇クリーチャーはスレイヤーだから相打ちね」
「まずいまずい……《撃英雄 ガイゲンスイ》召喚!」
「闇のクリーチャー以外はタップして出るわよ」
「あぅ……」
「それじゃあそろそろ終わりかしらね。《黒神龍アバヨ・シャバヨ》召喚、自身を破壊するから、暁の《ガイゲンスイ》も破壊ね。そして《フューチャレス》で攻撃、私には手札がないからTブレイクよ」
「S・トリガー……ない!」
「はい、《リュウセイ・イン・ザ・ダーク》でとどめ」
「負けたぁー!」
ダイレクトアタックを受け、盛大に後ろに倒れ込む暁。
場所はいつものピースタウンの工房。今日も今日とて荒くれクリーチャーを抑えに行く前に、暁と沙弓は肩慣らしと称して、互いに改造したデッキのテストプレイをしていた。
ちなみに、今日はリュンはいない。
「やっぱ部長は強いなぁ、全然敵わないよ」
『違ぇよ! てめぇが腑抜けてっからだろうが!』
体を起こしながら呟くと、散らばった暁のカードの一枚が、そう暁に怒鳴り込む。
「《ガイムソウ》……どゆこと?」
『どうもこうもあるか! てめぇ俺の扱いが雑なんだよ! なんで俺がわざわざマナ武装までして出すのが《バトライオウ》なんだ!』
『なんだ? 俺だと不満なのか?』
『ったりめーだ! てめぇなんざ俺がわざわざ呼び出すような奴じゃねぇんだよ!』
『言うじゃねえか……!』
「はいはいストップ、喧嘩はやめやめ。負けちゃったけど、ガイムソウもバトライオウも頑張ってくれたよ」
今にも殴り合いを始めそうなガイムソウとバトライオウの間に、暁が割って入る。しかしそうすると、今度はガイムソウの矛先が暁に舞い戻って来る。
『なにが頑張っただ! 勝たなきゃ意味ねぇんだよ! そもそもだ! バトライオウは火のドラゴンが勝てば手札からタダで出せんだろうが! わざわざ俺で出す必要はねぇんだよ!』
「それは……確かに」
「一理あるわね」
元々踏み倒し能力のある《バトライオウ》を、他の踏み倒し手段で出す必要が薄いというのはもっともだ。感情に任せて怒鳴っているようで、ちゃんとガイムソウにも考えはあるようだ。
「じゃあ、どんなクリーチャーがいいの?」
『それを考えるのがてめぇの役目だろうが……まあいい。ざっくり言うとだ、コストの高ぇ奴だな』
「うわ本当にざっくり。コストが高いっていうと、《ドラゴ大王》とか?」
《ドラゴ大王》のコストは10、しかもTブレイカーで場に出ると相手一体とバトルすることで除去を放てる。7マナでそれが出るとなれば強いだろうが、
『なにを言うか小娘、我はこのような奴に呼ばれるほど安くはない』
しかし、当人は不満のようだ。
『それに、ターンの終わりに手札に戻るのでは、我が能力が生かし切れていない。我は場に君臨し続けることで龍以外の存在を封じる、それが本懐。そのことを失念するとは何事か』
『どうせドラゴン以外にも、呪文とかでやられてるじゃねぇかてめぇ。しかも封じられないドラゴンにも普通に負けるしよ」
『我に随分と不遜な口を聞けるようになったな、ガイムソウ。我が王権で叩き潰してくれようか』
『やってみやがれ。てめぇの古臭いカビの生えた王権なんざにやられる俺じゃねぇ』
「あーもう、だから喧嘩はやめなって!」
「なんと言いますか、あきらちゃんのクリーチャーって、いつもこうですね……」
「本当大変だよ、もう……」
火文明、それも戦闘龍と呼ばれるドラゴンたちゆえに、どれもこれも血気盛んで喧嘩っ早い。こんなことはしょっちゅうだ。
「だが、確かに《ドラゴ大王》の強さはそのロック能力にある。場に維持し続けられないのであれば、その力をすべて引き出しているとは言い難い。選択肢の一つにはなるだろうが」
「浬……うーん、でもあんまりコストの高いドラゴンを入れると、デッキが回らなくなっちゃうんだよね。それに《ガイムソウ》で踏み倒したいドラゴンっていうのも思いつかないし」
暁がそう呟くと、ガイムソウは、
『……心当たりなら、なくはない。俺のマナ武装でよく呼び出していた奴がいる』
「え? そんなクリーチャーいるの?」
『あぁ。ただし、今のてめぇの下にはいねぇようだがな。あいつの力は俺も認めるほどだ。手元に置いておかねぇ手はねぇ』
思い立った日が吉日、そして善は急げだ。
早速、そのクリーチャーを仲間とするために、暁たちは工房から発ったのであった。
暁たちがやって来たのは、やはりというかなんというか、火文明の領地の一つ、太陽山脈サンライト・マウンテン。その一角にある洞窟だった。コルルの眠っていた、あの部屋のある洞窟だ。
「やっぱりここなんだね」
「まだまだアポロンさんと共に戦った仲間たちは、数多く眠っているからな」
そう言いながら暁とコルルは洞窟に入っていく。その後に、柚や浬も続くが、
「……部長? どうした?」
「いや……暁」
「なに?」
「悪いんだけど、この先には一人で行って来てくれるかしら?」
「え? なんで?」
「まあ、ちょっとね。ほらほら、早く行きなさいな」
沙弓は疑問符を浮かべている暁の背を、ぐいぐいと洞窟の奥へ早く行けと急かすように押す。
「わわっ、押さないでくださいよ」
「一人でも行けるでしょ。行ってらっしゃい」
「別に一人でもいいけど……まあいっか。とりあえず行ってきます」
「はい、行ってらっしゃい」
暁を見送るように手を振る沙弓。やがて、暁の姿は洞窟の闇へと消えて行った。
「……あ、あの、ぶちょーさん」
「なにかしら?」
「なんで、あきらちゃんを一人にしたんですか……? わたしたちは、行っちゃダメだったんでしょうか……」
「ダメということはないが、行かない方が都合は良かっただろうな」
沙弓が答える代わりに、柚の疑問には浬が答えた。
「あら浬、気付いてたの」
「まあ、途中からですけど」
「? なんのことですか?」
いまだ状況が分かっていない柚。しかし、この二人の言うことは、すぐに理解できた。
ふっ、と。三人に影が差す。
「っ! え……?」
「やっぱりか」
見上げると、そこにいたのは三体のクリーチャー。しかも、本来はここにいるはずもないクリーチャーたちだ。
「《衛兵の翼 ヴァニエ》《静謐の翼 ラーブラショク》《交錯の翼 アキューラ》……光のジャスティス・ウイングたちね」
沙弓が暁を一人で行かせたのは、この三体のクリーチャーの存在に気付いていたから。なんの害もないクリーチャーならいいが、明らかにこの三体は殺気を放っている。
「確かリュンは、光のクリーチャーは他文明の領地を奪うために行動を起こすことも多いと言っていたな……こいつらはそういうことなのか?」
「さあ? ただ、なんにせよやる気はあるようだし、それなりに相手はしましょうか。柚ちゃん、行ける?」
「は、はひっ。大丈夫です!」
新たな火文明の龍と出会うために洞窟を駆ける暁、突然の光文明の強襲を食い止める浬、沙弓、柚。
そんな彼らの下へ、さらなる勢力が向かっていることは、まだ誰も知らないのであった——
- 41話「勝利天帝」 ( No.148 )
- 日時: 2014/11/03 09:59
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)
例の小部屋までたどり着いた暁。この場所へ足を運ぶのは、これで何度目となるだろうか。
「……で、そのドラゴンっていうのは?」
「オレもどこにいるのか分からねーぞ?」
『ちっ、てめぇら揃いも揃って……右5、上5だ! さっさとしろ』
ガイムソウに急かされ、コルルは壁面へと飛んで行く。そしてガイムソウが指示した場所まで来ると、
「こいつか。大丈夫なのか? こいつを目覚めさせて」
『それはこの女次第だな。奴に認められる力を見せられるかどうかだ』
「そうだなぁ……暁なら大丈夫だろ。なんたって、既にオレたちが認めてるんだからな」
『俺は認めた覚えはねぇぞ』
そんなやり取りをしながら、コルルは壁面の一部に手をかざす。すると、その箇所が淡く発光し、赤い炎を噴きだした。
「うわ……っ!」
炎はどんどん膨張していき、やがて一つの姿を作り出す。
炎を取り払い、そこに立つのは一体の龍。見上げるほどに巨大で、背には金色の輪、二対の腕を持ち、身体の各所を鎧のような武具で覆っている。
「……な、なに?」
「《Gメビウス》だ」
「ガイアール……?」
聞き覚えのあるような、ないような名前だった。さらに言うと、目の前の龍の姿も、どことなく覚えのある雰囲気がある。
『《勝利天帝 Gメビウス》……アポロンさん率いる火文明の中で、最強のドラゴンの一体とされるクリーチャーだ』
「さ、最強って、なんか凄そう……」
『凄そうじゃなくて凄いんだよ!』
ガイムソウが怒鳴る。
なにはともあれ、このGメビウスがガイムソウの言う、彼と相性の良いクリーチャーのようだ。それならば、仲間にしない手はない。
『だが、勿論Gメビウスもただでお前に従ったりはしないだろうがな』
「じゃあ、どうするの?」
『決まってんだろ。俺たちは戦闘龍、ガイアール・コマンド・ドラゴンだ。強い奴に従うのが世の定め、ならば』
「戦ってどっちが強いかを決めるんだ」
『俺の台詞を取るんじゃねぇ!』
ともかく。
このGメビウスと戦い、勝つ。
自分がすべきことはそれだけだと、暁はデッキを手に取る。
「コルル! お願い!」
「おうよ、任せとけ!」
そしてコルルが展開する神話空間へと、突入する——
「呪文《勝負だ!チャージャー》! 対象なしで撃ってマナを追加!」
「呪文《メテオ・チャージャー》だ。対象なしで撃ち、マナを増やす」
暁とGメビウスのデュエルが始まった。
まだ序盤。互いにシールドは五枚あり、クリーチャー数ゼロ、マナ数とも同じ。どちらも動きのない状態だ。
「《熱血龍 バクアドルガン》召喚! スピードアタッカーの《バクアドルガン》で攻撃! その時、山札を捲ってドラゴンなら手札にできるよ!」
捲られたのは《竜星バルガライザー》。ドラゴンなので手札へ。
「よしっ、そのままシールドブレイク!」
とりあえず、暁が先手を取ってシールドを割ることができた。
一方、Gメビウスも動きを見せ始める。
「《爆竜兵ドラグストライク》を召喚」
爆竜兵ドラグストライク 火文明 (5)
クリーチャー:ドラゴノイド 1000
このクリーチャーが破壊された時、ドラゴンを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。
「ターンエンド」
「破壊されるとドラゴンをタダで出せるんだ……」
とんだ不発弾が投下されたものである。
「でもまあ、そんな都合よく高いコストのドラゴンもいないでしょ。7マナくらいだったらなんとかなりそうだし、とりあえずは放っておこう。私のターン!」
その考えは浅はかとしか言いようがないのだが、気にせず暁は自分のターンを進める。
しかし、現在暁の手札はあまりよくない。今のマナで召喚できるクリーチャーがいないのだ。
「なら、呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札に戻して、戻した数だけドロー!」
暁は手札二枚を山札の下に置き、今度は上から二枚を引く。
「よし来た! 《コッコ・ルピア》を召喚! さらに《バクアドルガン》で攻撃! 山札を捲って……ドラゴンの《フルボコ・ドナックル》だから手札に加えるよ! そしてそのままシールドブレイク!」
手札を補充しつつ、二枚目のシールドも叩き割る暁。Gメビウスのシールドは残り二枚。火単のGメビウスなら防御は薄いはずなので、シールドの差二枚は大きなアドバンテージだ。
代わりに、Gメビウスに大きなチャンスを与えてしまったが。
「《ガイアール・アクセル》を召喚。さらに《ドラグストライク》で《バクアドルガン》を攻撃」
「え? 《バクアドルガン》のパワーは4000だよ? パワー1000の《ドラグストライク》じゃバトルに負けて、破壊されるだけ——」
そこで、ハッと暁は気付いた。
「やっちゃった……!」
気付いた時には、時すでに遅し。
《バクアドルガン》が《ドラグストライク》を返り討ちにし、破壊する。そう、《ドラグストライク》が破壊されたのだ。
「《ドラグストライク》の能力発動。手札より《熱血龍 グランドスラム》をバトルゾーンへ」
《ドラグストライク》をわざと自爆特攻させることで、手札からさらにドラゴンを呼び出すGメビウス。もしも暁が不用意に攻撃しなければ、こんなことにはならなかった。
「《ガイアール・アクセル》の能力で、味方ドラゴンはすべてスピードアタッカー。《グランドスラム》で《バクアドルガン》を攻撃」
「っ、《バクアドルガン》!」
《グランドスラム》の打つ闘魂の火球が《バクアドルガン》を砕く。しかも《グランドスラム》がバトルに勝ったことで、Gメビウスは手札をすべて捨てる代わりに、新たに四枚のカードを引いた。
「やばいよ……」
しかし、今の手札ではどうしようもない。このままでは、ドラゴンを次々と出されて押し切られる。
「こうなったらもう一度……呪文《ネクスト・チャージャー》! 手札をすべて山札に戻すよ!」
今度はなけなしの一枚を山札に戻す。そして引いたカードは、
「んぅ、うー……まあいいか。《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚! 効果で《ガイアール・アクセル》とバトル!」
《バトラッシュ・ナックル》《ガイアール・アクセル》、どちらもパワーは6000。なので相打ちとなり、共に破壊される。
「これでとりあえず、ドラゴンがスピードアタッカーになることはなくなったね。ターン終了」
ひとまずドラゴンで怒涛の如く攻められるということはなくなりそうだが、まだ安心はできない。今の暁に手札はなく、場にいるのも《コッコ・ルピア》だけなのだから。
「呪文《ネクスト・チャージャー》で手札を入れ替える。そして《爆竜兵ドラグストライク》を召喚し、ターンエンド」
「攻撃しないのか……」
どうやら暁に手札を与えるつもりはないらしい。手札切れで暁の動きが鈍いうちに準備を整えるつもりなのか。それとも、暁のシールドを一気に吹き飛ばす手段があるのか。
どちらにせよ、暁の苦しい状況は続く。
「なんとかしないと……私のターン!」
この辛い状況を吹き飛ばすかのように、勢いよくカードを引く暁。
その意気込みにデッキが応えたのか、ここで暁は最高のカードを引き当てる。
「……やった! これなら行ける! 《コッコ・ルピア》でコストを2減らして」
8マナをタップする。そして現れるのは、
「暁の先に、龍の世界を——《龍世界 ドラゴ大王》!」
現在、暁のデッキで最重量のドラゴン。《ドラゴ大王》だった。
「君がいれば安心だね。頼んだよ、《ドラゴ大王》!」
『貴様に指図されるまでもない。我が能力発動! 我と《グランドスラム》をバトルさせる!』
その結果、当然《グランドスラム》が一方的に破壊される。
手札がないという状態は変わりないが、これだけ大きな切り札を出したことは大きい。このまま《ドラゴ大王》のパワーで少しずつ制圧していけば——暁はそう考えていた。
しかし、ここでGメビウスの戦術も、最終段階に入る。
「……呪文《チェーン・デスマッチ》を発動」
「《チェーン・デスマッチ》?」
チェーン・デスマッチ 火文明 (4)
呪文
S・トリガー
バトルゾーンにある一番パワーの大きいクリーチャーを1体選ぶ。その後、バトルゾーンに残っているクリーチャーの中から一番パワーの大きいクリーチャーを1体選ぶ。同じパワーのクリーチャーが2体以上ある場合、そのうちのどちらかを選ぶ。そのクリーチャー同士をバトルさせる。
あまり聞きなれない呪文に首を傾げる暁。
テキストは複雑だが、要するにバトルゾーンにある、パワーの高さが一位と二位のクリーチャーをバトル刺せるというものだ。普通は自分のパワーの高いクリーチャーで、パワーの低い相手クリーチャーを除去するために使われるが、
「《ドラゴ大王》と《ドラグストライク》をバトル」
「っ、まさか……!」
今の場でパワーが一番高いのは《ドラゴ大王》。次点が暁の《コッコ・ルピア》かGメビウスの《ドラグストライク》で、普通は暁のクリーチャー同士をバトルさせ、《コッコ・ルピア》の除去を狙う場面。
しかしここでGメビウスは、《ドラグストライク》を《ドラゴ大王》とバトルさせた。なぜなら、
「バトルに敗北した《ドラグストライク》は破壊され、能力発動。手札からドラゴンをバトルゾーンへ」
「そ、そんな方法で《ドラグストライク》を破壊するなんて……!」
完全に盲点だった。
さらにここで、遂に彼が戦場へと現れる。爆炎を放ち、その姿を顕現させる。
「我が身よ出でよ——《勝利天帝 Gメビウス》!」
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