二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.32 )
- 日時: 2014/05/04 11:27
- 名前: タク ◆K8cyYJxmSM (ID: sEySjxoq)
どうも、ポケモンの方の参照がいつの間にか5000突破していたタクです。すみません、自慢するつもりじゃなかったのですが、レス数の割にこんなに早く5000行くのも初めてだったので報告しました。
しかし今回のオリカは星座を名前に使っているんですね。奇遇にも、自分も今度の作品のオリカを星座にするつもりだったので。今のところ、被りとかはないので安心してください。
コルル→コルヴィス
エリアス→アクエリアス
あれ? でもドライゼに当てはまる星座が見当たらないような……。調べたら、銃の名前だったので。
そして今度は、闇文明の世界ですか。そして、恐らくアルテミスのものと思われる洋館を探索することになりましたが……やはりアルテミスはブラコン気味のようですね。
そして、立ち塞がるは《ブラックルシファー》ですが、アニメの製作陣は何を思ってこれと同じ名前のキャラを作ったのかが疑問です。全く紛らわしい……。
何て話は置いておいて、沙弓の手に渡ったカードは《月影の語り手 ドライゼ》ですね。さっきも述べたように、ネーミングの法則が分かりません。個人的には、アルテミスの弓と同じ遠距離武器の銃(ドライゼ銃)から取ったものだとは思いますが。
さて、波乱が続いた洋館編も終わり、その次は火文明編……。やはりというべきか、展開が速いですね。
このハイテンポな展開もようやくなれた所です。続きを楽しみにしています。それでは、また。
- Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.33 )
- 日時: 2014/05/04 12:09
- 名前: Orfevre ◆ONTLfA/kg2 (ID: /IDVKD3r)
アットスターが歴代最速のペースで
参照数が増えており
かなりにんまりしているOrfevreです。
主人公の語り手がアポロンの部下(?)なのは
納得ですが、エリアスやドライゼなど
mythologyでは不遇な扱いを受けるカード達が
仲間なんですね、いや、アルテミスは自業自得か?
この流れだと、《慈愛の語り手○○○》とかが仲間のカードになりそうだと予想しておきます。
- デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.34 )
- 日時: 2014/05/04 19:40
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
タクさん
おぉ、そうですか。おめでとうございます。
比較的参照数の伸びやすい二次板でも、5000まで行くとやはり凄いですね。
すみません、なんだかエリアスの説明で少し誤解を招いてしまったようですが、別段、今回は命名法則を星座で統一しているわけではありません。コルルとエリアスはそれらを意識していますが、ドライゼは仰る通りドライゼ銃から取っており、主たるアルテミスが弓なので同じ遠くから相手を穿つ、という武器にしただけです。
今回のネーミングの法則はバラバラです。それぞれ主となる『神話カード』に関係するネーミング、とでも言うのでしょうか。もしくはエグザイルの命名法則にも似ているかもしれません。
コルルは……まあ、よく星座モチーフだと分かりましたね……こいつはかなり分かりにくかったと思ったのですが。
エリアスはもっと他に大きな意味があります。アクエリアスは本当に少し意識した程度で、エリアスの本質が現れているわけではなかったりします。
この洋館はアルテミスのものですね。なお、今作では『神話カード』や本編にも登場するキャラは、別の面を見せて行こうと思います。
まあ、確かに闇文明を彷彿とさせる名前を光文明使いにつけるという考えはいまいち理解できませんが……それよりもOPラストに消えたりやたらカラフルな怪物が出て来ている方が気になりますかね。モノクロとしては。
今回は一話を1〜3レス以内に収めているので、本編を見慣れていたら早く感じるかもしれませんね。その分、描写も削って削ってしているのですが、これでもモノクロ的には遅いんですよね……本当は1レスで一話完結にしたかったくらいです。
Orfevreさん
おめでとうございます。
モノクロはあまり参照というものは気にしないのですが、読んでくれる人がいるということを思えば、確かに嬉しいことですね。
いやまあ、別に本編で不遇な奴らの部下を味方にしているわけではないんですけどね……とはいえ、《賢愚神話》の配下であるエリアスが仲間なのは違和感があるかもしれませんね。一応、いくつか理由はありますが、そのうちの一つとしては、ドラゴン・サーガに入ってリキッド・ピープルがフィーチャーされたので、同種族を持つこいつが採用された、というだけです。
勿論、《慈愛神話》の配下である《語り手》も登場します。仲間として出るかは、その時をお楽しみに。
- Another Mythology 10話「北部要塞」 ( No.35 )
- 日時: 2014/05/05 01:44
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
要塞の中を進んでいく五人。中は荒れているものの、崩れているところはあまりなく、特に不自由なく進むことができた。
「……あの、ご主人様」
「いい加減ご主人様はやめろ。なんだ」
「なにか、音がしませんか?」
「音?」
唐突にエリアスがそんなことを言うので耳を澄ますが、なにも聞こえてこない。
「なにも聞こえないが」
「そうですか……なら、私の気のせいかもしれません。気にしないでください」
「そう言われると気になるんだが……分かった」
「なにしてるの、カイ。もうすぐよ」
沙弓に言われ、正面を向く浬。そこには、明らかに今まで通って来た扉とは違う、重厚そうな鋼鉄の扉が鎮座していた。
「うーわ、なんかゴツい……」
「これ、わたしたちの力で開けられるのでしょうか……?」
試しに浬が押したり引っ張ったり、スライドさせたりしようとするが、扉はびくともしない。
「開かないな……人間の力じゃどうしようもない」
「ならどうしましょうか。リュン、開けられる?」
「たぶん無理。力には自信がないんだ」
即答だった。情けない、と苦言を呈そうとするが、その前にリュンは、
「というか、僕なんかに頼らなくても、君らにはクリーチャーがいるじゃないか」
「え?」
暁が素っ頓狂な声を上げる。暁だけでなく、他の三人も目をぱちくりさせていた。
「どういうこと?」
「もしかして気付いてなかったの? 君らのクリーチャーをここで実体化させれば、この扉くらい突破できるよね、って言ってるんだよ」
「俺たちのクリーチャーは、ここで実体化させられるのか?」
「そこから気付いてなかったんだ」
だが、言われてみれば当たり前かもしれない。ここはクリーチャー世界、カードの姿よりクリーチャーとしての実態を持つ方が自然なのは当然だ。
「そういうことなら……《爆竜 バトラッシュ・ナックル》召喚!」
クリーチャーが実体化できると知り、真っ先に暁がカードを取り出す。そのカードを掲げると、目の前に《バトラッシュ・ナックル》が現れた。
「おぉ! 本当に出た! よーし《バトラッシュ・ナックル》、あの扉をぶっ壊しちゃって!」
『グルアァァァ!』
雄叫びと共に《バトラッシュ・ナックル》の正拳突きが鋼鉄の扉に炸裂。扉は一瞬で吹き飛ばされた。
「凄いパワーね……」
「あきらちゃんらしいと言えば、らしいんですけど……」
「考えなしが……」
口々にそんなことを言う三人。当の暁にはまったく聞こえていない。
「よしっ、ありがとう《バトラッシュ・ナックル》。戻って……って、どう戻すんだろ。こうかな?」
再びカードを《バトラッシュ・ナックル》へと掲げると、《バトラッシュ・ナックル》は光に包まれ、カードに吸い込まれるように戻っていった。
「できたできた。よし、行こうか」
かなり乱暴な方法ではあったが、なにはともあれ扉という障害はなくなった。五人は再び歩を進める。
扉の奥は普通の通路で、途中、大きくへこんだ鉄板のようなものが落ちていたが、無視した。
さらに奥には、またも鉄の扉。だが今度は、普通に人の力でも開いた。
そして、その扉の先には、例の小部屋があった。
「お、あったよ。クリーチャーが封印されてるやつ」
部屋の中央の祭壇、その台座の上には、コルル、エリアス、ドライゼの三体が封印されていたようなものと、似た空気を醸し出す存在がある。
焼け焦げた岩塊に一本の剣と無数の槍が突き刺さり、岩塊から銃口があらゆる方向へと向いているという、凄まじい物体だった。
「なんだか、少し怖いです……」
「見た目が既におっかないな」
「というかあれって、中にクリーチャーがいるとしたら剣とか槍とかが刺さっててかなりスプラッタなことになってるんじゃないかしら」
「なんだっていいよ。それより早く封印を解いてあげなきゃ!」
抑えきれないというように、暁が駆けて台座の前に立つ。
「今度はどんなクリーチャーが出るんだろう……!」
興奮したように目を爛々と輝かせている暁は、その岩塊へと手を伸ばし——触れる。
そして、
「…………」
「…………」
「…………」
「…………」
「……あれ?」
なにも起きなかった。
「暁さんが復活させられるクリーチャーじゃなかったってことだね」
「えー……そんなぁ」
がっくりと項垂れる暁。
「ちぇ、じゃあゆず、やってみてよ」
「は、はひっ」
今度は柚が出て来て岩塊に触れるが、またしても反応なし。
「霞さんでもダメか……私はどうかしらね」
柚との入れ代わりで沙弓も出た。しかし、それでも岩塊はなにも起こらない。
「私でもない。カイ」
「分かってますよ」
最後に、沙弓と入れ替わりで浬が台座の前に立つ。そして、ゆっくりとその岩塊に手を置いた。
「…………」
「…………」
「……なにも起きないな」
「…………」
浬が岩塊から手を離す。再び沈黙の時間が流れ、やがて暁が口を開いた。
「……ってことは、全員はずれ!?」
「みたいですね……」
今までになかったパターンだ。どういうことだと暁たちが口々にいう中、リュンは一人思考していた。
(まあ、僕も《語り手》たちのことや、彼らに課せられた封印について詳しく知ってるわけじゃないし、暁さんたちをこの世界に連れてきたのも、たまたま僕が最初に接触した人間だからってだけで、特別なにかを感じ取ったわけじゃない。こういうこともあるだろうとは思っていたさ)
むしろ、今までが順調すぎたのだ。一回も外さずに三連続で《語り手》の封印を解くことができたという事態が奇跡に等しい。
(彼らは彼らで、なにかしらの力を秘めているようだけど、《焦土神話》が課した封印を解くことはできなかった。ただ、それだけだ)
悲観するほどのことではない。とリュンは自分に言い聞かせる。
「リュン、これってどういうことなの?」
「僕に言われてもねぇ……まあ、こういうこともあるさ。そのうちなんとかしよう」
「それって、私たちみたいに他の人間をこの世界に連れて来るってこと?」
「……そうなる、かもね……? 分かんないけど」
曖昧に濁すリュン。実際、彼にもどうすればいいか分からない。
この世界に連れて来るということが、人間にとってどれだけ重大なことかは、リュン自身も暁たちの反応で理解しているつもりだ。そう安々と連れてくるわけにはいかないが、しかしこの封印されたクリーチャーを放っておくわけにもいかない。
(と言っても、今すぐ答えを出せるものでもないしね……)
とりあえず今は保留だ。他にもやるべきことはある。その間に、もしかしたらなんとかする方法が見つかるかもしれない、と我ながら甘いことを考える。
「封印が解けないならそれはそれで仕方ないってことにして、とりあえずここを出ようか」
「うー……なんかつまんないよ」
「で、でも、封印が解けないなら、ここにいてもしょうがないですよぅ……」
「そーだけどさー、でもなんか物足りなって言うか——」
せっかくクリーチャー世界に来たのに、新しい《語り手》の封印を解く機会がやってきたのに、なにもせずに帰ることになってしまったため、暁が文句を垂れ始めた。
その時、要塞が揺れた。
「っ、な、なに……!?」
「じ、地震、ですか……っ?」
「なんかそんな感じね、凄い揺れてる」
しばらく揺れると、その振動は少しずつ小さくなっていき、やがて何も感じられなくなる。
「……収まった、か……?」
「なんだったんでしょう、今の……」
「普通に地震じゃないの?」
クリーチャー世界にも地震というものがあるのだろうか。そう思ってリュンに訊くと、
「あるにはあるけど、自然発生は稀かな。普通はなにかしらの原因がある」
「原因ねぇ……穏やかな感じがしないわ」
地震の発生に、不安を煽られる。
そんな折、エリアスが口を開いた。
「あの、ご主人様」
「どうした」
「この要塞の中に、感じるんです」
「なにをだ」
「大きな……龍素を」
「なんだと?」
怪訝そうに目を細める浬。
龍素と言うと、ドラゴン・サーガの世界で重要な物質だ。水のクリスタル・コマンド・ドラゴンを生み出すための鍵となる素材。
エリアスはそれを感じたという。それが真実なら、そこから導き出されることは二つある。
「この要塞のどこかに、クリーチャーがいるってことね」
「しかも龍素を扱ってるってことは、水文明だ。ここは火文明の領地だから、水文明がいるのはおかしい。なにか悪巧みをしてそうだ」
「さっきの地震とも関係しているかもしれないしな。どうする?」
浬が尋ねるが、答えはすぐに出た。そんな事態が起こって、不完全燃焼な彼女が反応しないはずがない。
「よし、行こう! なにやってるか知らないけど、そのクリーチャーを見つけ出すんだ!」
- Another Mythology 11話「バニラビート」 ( No.36 )
- 日時: 2014/05/05 06:16
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: hF19FRKd)
龍素を最も敏感に感じ取れるエリアスの案内で、この要塞に巣食っているらしきクリーチャーはすぐに見つかった。
要塞の一角、広い講堂のような場所で、明らかに火文明でないクリーチャーが蔓延っていた。
「あれは……リキッド・ピープルか?」
「みたいね……」
「なんか、実験してる?」
「ように見えますけど……」
荒れ果てた講堂の中には、ピコピコと光が点滅している機械が置かれていたり、カプセルのようなものが並んでいたり、試験管やビーカーらしきものが散乱していたりと、実験室か研究室の様相を呈している。
「もうすぐです! もうすぐこの龍程式が解けるのです! それまでに龍素を凝結し、安定化させ、反作用を起こさないように保存してください! 抽出した龍素と結合させます!」
その即席実験室の中をリキッド・ピープルと思しきクリーチャーたちがパタパタと駆けまわっており、一番奥でホワイトボードに数式のようなものを連ねているクリーチャーが指揮をしていた。
「あれは《アクア・ティーチャー》です、ご主人様。どうやら龍程式を解いて新たな龍素を抽出し、元々あった龍素と結合させて新たなクリスタル・コマンド・ドラゴンを生み出そうとしているようです」
「それはまずいことなのか?」
「どうでしょう……あのクリーチャーたちがどのような手順を踏んで龍程式を解いているのかが分からないのでなんとも言えませんが、最悪、この要塞が吹き飛びかねないです」
エリアスの一言で、全員が息を飲む。
「そ、それって、やばくない? 早く逃げた方がいいんじゃ……」
「も、もちろんそれは最悪のケースの一つですよ。でも、下手にクリスタル・コマンド・ドラゴンを生み出せば、クリーチャーの勢力バランスが崩れてしまいます」
「今のこの世界は不安定だし、そういう事態は好ましくないな……」
「それなら、私たちであのクリーチャーを止めましょうか。あのクリーチャーたちだけなら、それほど強そうじゃないし」
沙弓の提案に、異を唱える者はいなかった。
戦えない柚とリュンを残して、三人は行動の扉を蹴破り、突入する。
「お前たち、ここでなにをやっている!」
「!? 侵入者ですか……! 皆さん、侵入者です! ただちに排除にかかってください!」
アクア・ティーチャーの号令で、他のリキッド・ピープルたちが一斉に襲い掛かってくる。
「うわっ。いっぱい来た!」
「これをちまちま倒すのは骨が折れそうね……カイ、あなたはあそこの先生を先に倒してきて。ここは私たちが引き受けるわ」
「……分かりました」
恐らく、奥にいるアクア・ティーチャーがこのリキッド・ピープルたちのトップだ。なら、頭を先に潰してしまえば、統率力がなくなり、残るクリーチャーを蹴散らすのも容易になるだろう。
「エリアス、頼む」
「分かりました、ご主人様!」
暁と沙弓から離れ、アクア・ティーチャーへと駆ける浬。
そして、エリアスの展開した神話空間へと入るのだった。
「とんだ邪魔が入ってしまいました……あと少しで龍程式が解けるところだったというのに……」
「お前たちがなにをしでかそうとしているのかは知らないが、看過できることではなさそうだったからな。悪いが、止めさせてもらうぞ」
浬とアクア・ティーチャーのデュエル。現在、シールドは浬が五枚、アクア・ティーチャーが四枚。
浬の場には《アクア・ハルカス》《アクア・ジェスタールーペ》そして二体の《アクア・ガード》。
アクア・ティーチャーの場には、自身である《アクア・ティーチャー》と《アクア・ガード》《アクア・スーパーエメラル》《アクア・ビークル》が二体。
「水単のバニラビートか……?」
バニラビートとは、通称バニラクリーチャーと呼ばれる能力なしのクリーチャーを次々と展開し、物量作戦で押し切ってしまうビートダウンデッキのことだ。一般的には弱いとされるバニラクリーチャーだが、専用サポートカードの力を借りることで、今までにない戦略を手に入れることができた。
「ブロッカーが邪魔でいまいち攻め難いが……それは向こうも同じ。だったらこちらから攻めるか。《アクア・ソニックウェーブ》を召喚! その能力で、パワー4000以下の《アクア・スーパーエメラル》をバウンス! 続けて《アクア・ガード》を召喚! このターン、二度クリーチャーを出したので、《アクア・ジェスタールーペ》の能力で一枚ドロー。《アクア・ハルカス》でシールドをブレイク!」
『その攻撃は《アクア・ガード》でブロックですよ』
「相打ちか……ターン終了だ」
『では私のターン。《アクア戦闘員 ゾロル》を召喚。能力のないクリーチャーなので、私の能力で一枚ドロー』
アクア・ティーチャー 水文明 (1)
クリーチャー:リキッド・ピープル/ハンター 1000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
カードに能力が書かれていないクリーチャーを召喚した時、カードを1枚引いてもよい。
バニラビートの核となる《アクア・ティーチャー》の能力は、バニラを出すたびにカードを引けるというもの。この能力により、息切れを起こすことなく、次々とクリーチャーを展開していける。
「だが、俺の場には《アクア・ガード》が三体いる。一体や二体クリーチャーが増えた程度じゃあ突破できないぞ」
『それはどうでしょう。力なきものたちに知恵を授けるのが私の役目。それが彼らにとっての最善の戦い方です』
しかし、と《アクア・ティーチャー》は続けた。
『弱いからと言って、いつまでも弱いままいるのが彼らではありません。三人寄れば文殊の知恵、という諺がありますが、私たちも同じです』
「なんでクリーチャーがそんな諺を知ってるんだ……」
思わず突っ込んでしまった。だが、
「ご主人様!」
「どうした、エリアス」
「あのクリーチャーから、凄く強い龍素を感じます! 危険です!」
エリアスから警笛を鳴らされる。どうやら、切り札級のカードが出て来るようだ。
『力なきものでも、三人寄れば龍となる! G・ゼロ! 《アクア・ビークル》二体と《アクア戦闘員 ゾロル》を進化GV! 《零次龍程式 トライグラマ》!』
零次龍程式(ゼロじりゅうていしき) トライグラマ 水文明 (5)
進化クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 12000
G・ゼロ—バトルゾーンに自分の、カードに能力が書かれていないクリーチャーが3体以上あれば、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
進化GV—自分のリキッド・ピープル3体を重ねた上に置く。
T・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりに自分の手札に戻す。
「進化クリスタル・コマンド・ドラゴン……!」
バニラクリーチャー三体に反応し、G・ゼロによってコストなしで召喚される大型クリーチャーだ。
『どうでしょう? これが力なき彼らの力です。弱者だと思って侮ってはいけませんよ』
「侮っているつもりはないが……どちらにせよ、俺の場には三体の《アクア・ガード》がいるんだ。いくらTブレイカーを持っていようと、お前の攻撃は通らない」
『はて、なにを仰っているのか分かりませんねぇ。私は《トライグラマ》で攻撃するなんて言ってませんよ?』
「……なに?」
次の瞬間、《アクア・ティーチャー》は思いもよらない一手を繰り出した。
『呪文《ヒラメキ・プログラム》! 《トライグラマ》を破壊!』
「! なんだと……!」
せっかく呼び出した《トライグラマ》を破壊して、《アクア・ティーチャー》は新たなクリーチャーを呼び出す。
『《トライグラマ》のコストは5。よって山札から、コスト6のクリーチャーをバトルゾーンへ呼び出します。さあさ、お出でなさい、一騎当千なる結晶の戦士よ!』
《アクア・ティーチャー》の山札が捲られる。そしてその中から、狙い通りのクリーチャーが現れた。
『私を進化!』
弱者に知識を与える教師は、新たな力を閃くことで、水晶の戦士となる——
『——《クリスタル・ランサー》!』
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