二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

デュエル・マスターズ A・M オリキャラ投稿者にnews ( No.159 )
日時: 2014/11/09 22:10
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

タクさん


 ですね、やはりCGだったあの頃が良かったと思いますよ……今も今で、嫌いなところばかりではありませんが。2Dグラフィックの《アリス》とかは好きです。というか、まさかドラゴン・サーガで《アリス》が出て来るとは思わなかったので、かなり驚きました。2Dプリンも悪くなかったですしね。ただ、勝太は……

 《鬼丸「覇」》は規制されて然るべきだと思いますが、《Gメビウス》は単純に強いカードですからね。たぶん、強さの方向性は《ボルメテウス・サファイア・ドラゴン》と同じだと思いますよ。スピードアタッカー、Tブレイカー、ATで火力、二回攻撃と、それぞれ単純な能力ながらも、各能力間のシナジーが凄いですからね。
 そういえばあった気がしますね、ほとんど忘れていますが。モノクロは《チェーン・デスマッチ》というカードが意外と好きなので、たまに使いたくなるんですが、汎用性はあまり高くないですから、使いにくいんですよね。
 順番とかは適当なので、どちらが先かは忘れましたが、たぶん浬の方が先に使用していますね。余談ですが、流には最初《Q.E.D.》を使わせる予定だったのですが、夕陽が《ガイグレン》を使っていたので、同じエキスパンションで合わせました。どちらかと言えば、流のデッキは《エビデゴラス》の方が相性いいですからね。さらにどうでもいいことですが、最近メソロギィを更新していると、流と浬をよく間違えます。
 ラヴァーの切り札代表は《ヴァルハラナイツ》《バラディオス》《エバーラスト》辺りで、その中でもドラグハートの《エバーラスト》は特別っぽいですからね。その能力が使われることは、意外と稀なんですが。
 暁vsラヴァーは、とりあえず烏ヶ森編が終わってからですね。実はデュエル内容の半分くらいは書き終っているのですが……
 モノクロは暁と打つ時は「あきら」で打って変換しているので、特にそうは思いませんかね……そもそも、ヒナタ、と打つことが少ないのですが。

 何気にモノクロも忍者というか、時代劇みたいなシチュエーションは好きですからね。時代劇そのものは好きじゃないですけど。
 アニメになぞったのは……特に思いつかなかったというのが一つ、氷麗をもう少し活用したいという思いが一つ、テインにも出番を与えたいというのが一つ、以上の三つの要素からこうなりました。
 まだ出ていないギミックと言うと、あれですか……まあ、闇文明はハンデスが得意ですし、活躍の機会はありそうですね。まだ空護とニンジャリバンの対戦内容は考えていないので、ニンジャリバンの切り札を出しつつ空護の切り札も活躍させるとなると、結構骨が折れそうです。
 八とコシガヘヴィの方は書き終っているのですが、個人的に《コシガヘヴィ》という名前は嫌いじゃないです。こいつのデザインも結構好きなんですけど、流石に弱すぎるんですよね……まだ《アバヨ・シャバヨ》の方がずっと有用です。

 まあ、参照を増やすためにオリキャラを募集するのもどうなのかな、と思わないでもないですけどね。コメントがなくとも、読んでいる人は読んでいるわけですし。参照も短期間で劇的に増えるということはないですし。
 そちらへのコメントは、そのうちするとします。まあ近いうちにでも。

 ここ最近、更新しているわりにコメントが少なく、作品の話題も上がらなかったもので少し気にしていたのですが、久々のコメントを頂けてい嬉しかったです。

烏ヶ森編 11話「怠惰の城下町」 ( No.160 )
日時: 2014/11/11 00:43
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 八とコシガヘヴィのデュエル。
 怠惰の名を冠し、だるいだるいと言うだけあってなのかなんなのか、コシガヘヴィは先攻にもかかわらず出遅れていた。場には《ダーク・ルピア》のみ、シールドは四枚。
「あー、だりぃ……《ウラギランド》を召喚……」
「自分のターンっす! 《俊足の政》召喚! 山札から《狩猟のガイア・エッグ》を手に入れて、《ヤッタレ・ピッピー》と《斬込の哲》でシールドブレイクっす!」
 あっという間にコシガヘヴィのシールドは残り二枚に。やはりスピードではステロイドカラーが軸となっている八の方が上だ。
 しかしコシガヘヴィも、いつまでも腰を下ろしてはいない。
「だりぃぜ……《怠惰の悪魔龍 コシガヘヴィ》を召喚……」


怠惰の悪魔龍 コシガヘヴィ 闇文明 (5)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 5000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、カードを1枚引く。
スレイヤー


「分身作って場に出すとか、マジで面倒くせぇ……こんなこというのもだりぃし、説明すんのかったるい……とりあえず俺を破壊しとくぜ」
 《コシガヘヴィ》の能力で破壊するのは、自分自身。それによりコシガヘヴィの手札が増え、
「っ!? なんすか!?」
 八のクリーチャーが一体、爆散した。散ったのは《ヤッタレ・ピッピー》だ。
「《ダーク・ルピア》の能力……説明だるいから、適当に見といてくれや……」


ダーク・ルピア 闇文明 (3)
クリーチャー:ファイアー・バード 1000
自分のドラゴンが破壊された時、相手のクリーチャーを1体破壊してもよい。


「あー、攻めるのかったりー……でもやんねぇとなぁ。《ウラギランド》で《斬込の哲》、攻撃な……」
 《ウラギランド》が牙を剥き、《斬込の哲》を食い千切る。
 しかしその代償として、《ウラギランド》は罰を受ける。味方を裏切らなくてはならないという罰を。もしも裏切れないのなら、罰を受けられないというのなら、己が死を迎えるだけだ。
「《ウラギランド》を破壊……《ダーク・ルピア》で、もう一体破壊だ……あー、言わせんなよ、かったりぃ……」
 バトルで《斬込の哲》が破壊され、続けて《俊足の政》も破壊される。
「ぜ、全滅っすか……」
 やる気のないことばかり言っているコシガヘヴィだが、気付けば1ターンにして、三体並んでいた八のクリーチャーは全滅してしまった。コシガヘヴィも二体のクリーチャーを失ってはいるが、闇文明なので自壊はさほど気になるデメリットではないだろう。
「いや、でもまだっすよ! 《ガイア・エッグ》と《流星のコブシ・エース》を召喚っす!」
「もう俺のターンかよ……ちっとはゆっくりさせろよな、かったりぃ……」
 自分のターンが来たというのにやる気のないコシガヘヴィ。
「あー……じゃ、《ボーンおどり・チャージャー》……んで、《ブラッドレイン》と《ブラッディ・メアリー》を召喚……はぁ、だるかったぜ。ターン終了……」
 しかしやることはきっちりとやってからターンを終える辺り、手を抜いているというわけではないようだ。
「自分のターンっす! まずは《ガイア・エッグ》の能力で山札を捲るっすよ!」
 それがハンターならそのまま場に出せるが、ここで八が捲ったのは、呪文の《ドンドン吸い込むナウ》。
「う、失敗っす……でも、これで終わりじゃないっすよ! 《若頭の忠剣ハチ公》を召喚! 能力で山札から二体目の《ハチ公》を手に入れてそのまま召喚っす!」
 さらにその能力で《ハチ公》を手に入れ、クリーチャーを展開していく八。
「これで場にハンターは三体っすけど、まだ《コブシ・エース》じゃ《ブラッディ・メアリー》は超えられないっす……ここはターン終了っすよ」
「一気に二体も増えやがった、面倒くせぇ……」
 酷く憂鬱そうにごちるコシガヘヴィだが、しかし彼にはその軍勢を破壊する手段があるのだ。言うほど面倒なことでもなく。
「《ディメンジョン・チョーカー》を召喚……墓地の《ウラギランド》と《コシガヘヴィ》二体を回収……よっこらせ、っと。はーぁ、墓地のクリーチャー戻すのも一苦労だぜ……んで、俺を召喚だ」
 《コシガヘヴィ》が召喚されるが、すぐさま破壊される。そして、
「一枚引いて……《コブシ・エース》を破壊だ……」
「うおっす!」
 またも八のクリーチャーが潰される。今度は一体だが、手札にはもう一体の《コシガヘヴィ》がいる。《ディメンジョン・チョーカー》の存在も考えれば、弾切れをおこすことはなさそうだ。
「でも、だったらそれ以上のスピードで展開するだけっすよ! 《ガイア・エッグ》の効果発動っす!」
 威勢よく山札を捲る八だが、しかしその威勢の良さとは反対に、運は悪かった。次に捲れたのも、ハンターではない《アクア・サーファー》だ。
「あー、またっすか……仕方ないっす。《ハチ公》を召喚して《ハチ公》を呼び、またまた《ハチ公》を召喚っす! 《ハチ公》でシールドブレイク!」
「だりぃけど、守るわ……《ブラッディ・メアリー》でブロック」
「もう一体の《ハチ公》で攻撃っす!」
 次々と《ハチ公》を展開し、攻めていく八。この調子なら物量で攻め切れるのでは、と思ったが、
「S・トリガー、発動するのも面倒くせぇ……《魔狼月下城の咆哮》だ。《ハチ公》のパワーを−3000……かったりぃが、マナ武装5も発動……もう一体の《ハチ公》も破壊だぜ……」
 運悪くS・トリガーを踏んでしまい、このターン展開した《ハチ公》がすべて破壊されてしまう。
「っ……!」
「《ウラギランド》《コシガヘヴィ》を召喚……俺を破壊だ、だりぃし……」
 さらに再び《コシガヘヴィ》を出されてしまう。それにより、
「《ダーク・ルピア》の効果……《ハチ公》を破壊だ……」
「くぅー……! どんどんこっちのクリーチャーが破壊されるっす! 本当に厄介っすよ、《コシガヘヴィ》——」
 思わずそう漏らしたところで八は、ふと気づく。
(あれ? でもよく考えたら、《コシガヘヴィ》って相手を破壊する能力ないっすよね? だったら、破壊してるのは——)
 と、コシガヘヴィの周りでバサバサと羽ばたいている、黒い鳥を見つめる。
「……そうだったっす。本当に厄介なのは《コシガヘヴィ》なんかじゃなかったっす」
「なぁ……早くターン進めてくんねーか? さっさとこの対戦終わらせてぇ……あーでも、俺のターンが早く来るのは嫌だな……マジかったりぃぜ……」
 そんな反応困るような、相反することを言うコシガヘヴィ。しかし八は対照的に、いつでも一直線だ。
「言われなくても、自分のターンっすよ! まずは《ガイア・エッグ》の能力発動っす!」
 二連続で能力が不発に終わっている《ガイア・エッグ》だが、三度目の正直か、このターンはきっちりクリーチャーを呼び出した。
「《アクア・ジェット》をバトルゾーンに! 効果で一枚ドローっすよ! そして呪文《ナチュラル・トラップ》っす!」
 速攻ほど速くないものの、ビートダウン性能の高い八のデッキで、除去呪文を手打ちすることは珍しい。それほどに除去したいクリーチャーが、今のコシガヘヴィの場にはいた。それは、
「——《ダーク・ルピア》をマナ送りっす!」
「あぁ……ばれたか、面倒くせぇことになった……」
 八が除去するのは、《ダーク・ルピア》。
 この《ダーク・ルピア》こそがコシガヘヴィのデッキの核だったのだ。
 《ダーク・ルピア》はドラゴンの破壊に反応して相手を破壊するクリーチャーであり、自壊するドラゴンと相性が良い。コシガヘヴィはモデルとなった《龍神ヘヴィ》と比べると、相手クリーチャーを破壊できない点で劣るが、それを《ダーク・ルピア》で補っていたに過ぎない。
 つまり、《ダーク・ルピア》が消えた時点で、《コシガヘヴィ》の除去能力は大きく衰退したのだ。
 まあ、八の注意力がもっとあれば、すぐに気付けたことだが。
「あー……どうっすか、考えんのもだりぃけど、とりあえず俺を召喚して、破壊……」
 だが、《ダーク・ルピア》はいないので一枚引くだけだ。
「とりあえず、《ブラッディ・メアリー》を三体召喚して、ターン終了……」
「自分のターンっす! そろそろ決めにかかるっすよ!」
 そんな勢いと共に、八は彼のデッキにおけるエース級のクリーチャーを呼び出す。
「《熱血ボス!バルス・カイザー》召喚っす! そんで《アクア・ジェット》で攻撃! 《バルス・カイザー》の能力発動っす!」
 山札を捲り、それが攻撃クリーチャーよりコストの低いハンターなら、そのまま場に出せるのだ。
 《ガイア・エッグ》で不運を見せつけた八だが、この時捲れたカードは、
「……《スーパー・ゴーオン・ピッピー》っす! これで《バルス・カイザー》はスピードアタッカーすよ! 攻撃っす!」
「《ブラッディ・メアリー》でブロック……」
 しかし山札が捲られ、それがハンターなら場に出て来る。捲られたのは、《ニドギリ・ドラゴン》。
「やったっす! 《ニドギリ・ドラゴン》も《スーパー・ゴーオン・ピッピー》の能力でスピードアタッカーっす! 攻撃っす!」
「もういっちょ、ブロック……」
 この攻撃で捲れたのは、コスト5の《俊足の政》なので踏み倒せなかったが、しかし、
「《ニドギリ・ドラゴン》は各ターン初めの攻撃時にアンタップして、もう一回殴れるっす! 攻撃っすよ!」
「ブロック……」
 これで、コシガヘヴィのブロッカーはいなくなった。
 そして、この攻撃で捲れたカードは、
「……《流星のエグゼドライブ》! スピードアタッカーっすよ!」
 コシガヘヴィにはシールドがなく、ブロッカーもいない。
 八の場には攻撃可能なクリーチャーが一体残っている。
 なので、

「《エグゼドライブ》で、ダイレクトアタックっす!」

烏ヶ森編 11話「怠惰の城下町」 ( No.161 )
日時: 2014/11/12 00:48
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 空護とニンジャリバンのデュエル。
 まだお互いに大きな動きは見せていない。どちらも相手の出方を伺い、様子を探るように下準備を進めていた。
「拙者のターン。《ボンバク・ボッボーン》召喚! 続けて呪文《邪魂創生》! 《ボンバク・ボッボーン》を破壊し、三枚ドローなり!」
 ニンジャリバンの《ボンバク・ボッボーン》が破壊される。そしてその時、《ボンバク・ボッボーン》が弾け飛んだ。
「《ボンバク・ボッボーン》が破壊される時、相手クリーチャー一体のパワーを−2000! 《ユウナギ》を破壊!」
「手札補充と敵獣破壊を同時にこなしますかー……なら僕のターン。《クアトロ・ブレイン》で四枚ドロー、ターン終了ですよー」
「《ポーク・ビーフ》を召喚。そして再び呪文《邪魂創生》! 《ポーク・ビーフ》を破壊し、《ポーク・ビーフ》の効果と合わせて四枚ドロー!」
 まるで競い合うようにカードを引きまくる双方。とはいえ、デュエマにおいて手札は非常に重要なので、その量と質を良くするという意味では、あながち悪い手ではない。
「《土隠妖精ユウナギ》二体と、《アクア・スーパーエメラル》を召喚ですよー」
 空護は大量の手札から、クリーチャーを並べて来た。かといって積極的に攻めようというつもりではないが、隙あらば攻勢に出るつもりではある。
 だが、ニンジャリバンのターン。
「……来たぞ。召喚忍法、口寄せの術! 現れよ《隠密の悪魔龍 フドウガマオウ》!」


隠密の悪魔龍 フドウガマオウ 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン/シノビ 8000
相手のターンのはじめに、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのクリーチャーはそのターン、可能であれば攻撃する。
相手のクリーチャーが攻撃する時、それがそのターンはじめての攻撃であれば、コスト6以下の進化ではないファンキー・ナイトメアを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。そうした場合、そのターンの終わりにそのファンキー・ナイトメアを破壊する。
W・ブレイカー


 もくもくと煙を立てて現れたのは、一体の悪魔龍。しかしそれは、罪に罰を与える存在ではなく、戦いの中で生き残るため、勝ち抜くために生み出された、暗殺に特化した悪魔龍だ。
「ターン終了なり」
「ドラゴン・サーガのクリーチャーでありながらシノビ、ですかー……面白いですねー。僕のターン」
 と、空護がカードを引く直前、《フドウガマオウ》の目が赤く光った。そして、下半身の蝦蟇口が舌を出し、あからさまに挑発している。
「忍ッ! 貴様のターンの最初に《フドウガマオウ》の能力が発動する。貴様の《アクア・スーパーエメラル》は、このターン拙者を攻撃しなくてはならない。これぞ忍法、怒車の術!」
「強制攻撃ですかー、面倒ですねー……」
 まだ準備が完了していないので、下手にシールドを割りたくはない。それに次のターンには確実に殴り返されるので、リスクが大きい。
 しかしそれをごねたところで、どうにかなるものでもない。
「とりあえず《緑神龍バグナボーン》を召喚。《アクア・スーパーエメラル》で攻撃——」
「忍ッ! 再び《フドウガマオウ》の能力発動なり!」
 《フドウガマオウ》は、相手の初撃に反応し、手札からファンキー・ナイトメアを呼び出すことができる。この時《フドウガマオウ》の呼び声に応えたのは、
「出陣せよ、《龍覇 ドクロスカル》! そして超次元の彼方より、ここに呼べ! 《悪夢卍 ミガワリ》!」
 骸骨のような姿のぬいぐるみが現れると、今度は超次元ゾーンから卍型の手裏剣が飛来し、《ドクロスカル》に装着される。
「《悪夢卍 ミガワリ》を《ドクロスカル》に装備だ」
「でも、僕の攻撃は通りますよー。シールドをブレイク」
 そしてターン終了、する時に。
「《フドウガマオウ》の能力により呼び出された《ドクロスカル》は破壊される」
「破壊……?」
 せっかく出したのに、すぐに破壊されるのでは意味がない。
 ドラグハート・ウエポンも装備しておきながら、返しのターンに生き残れないのであれば無意味だ——それが、普通のドラグハートであるならば。
「しかし、《ドクロスカル》が破壊される代わりに、《ドクロスカル》に装備された《ミガワリ》を龍解させる! これぞ忍法、身代わりの術なり! 忍ッ!」
 卍型の手裏剣は《ドクロスカル》に突き刺さったが、まるで《ドクロスカル》の死を吸い取っているかの如く、その身を赤く発光させる。
 そして次の瞬間。ガタガタガタ! と凄まじい勢いで《ミガワリ》が変形していく。その果てには——
「《悪夢卍 ミガワリ》、2D龍解なり! ここに建て、我らが屋敷よ! 《忍者屋敷 カラクリガエシ》!」


悪夢卍(まんじ) ミガワリ 闇文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
龍解:これを装備したクリーチャーが破壊される時、墓地に置くかわりにこのドラグハートをフォートレス側に裏返す。


忍者屋敷 カラクリガエシ 闇文明 (4)
ドラグハート・フォートレス
自分のターンのはじめに、自分の山札の上から2枚を墓地に置いてもよい。
龍解:自分の闇のクリーチャーが破壊された時、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。


 瞬く間に組み上がったのは、正に忍者屋敷。卍型の赤い装飾が施された、和風の屋敷だ。
「破壊される代わりに龍解して、フォートレスになるんですかー……」
 空護も一騎がドラグハートをよく使うので、龍解のギミックは知っている。しかし、破壊を置換して龍解するドラグハート、しかもウエポンからフォートレスへ変形するドラグハートは初めて見た。
「では、拙者のターンなり。まずは《カラクリガエシ》の能力で、山札の上から二枚を墓地へ。続き、墓地の《シバカゲ斎》のマナ武装5、発動。山札の上から五枚を墓地へ送り、墓地の《シバカゲ斎》をバトルゾーンへ」


シバカゲ斎 闇文明 (5)
クリーチャー:ファンキー・ナイトメア 2000
ブロッカー
このクリーチャーは攻撃することができない。
マナ武装 5:自分のターンのはじめに、このクリーチャーが自分の墓地にあり、自分のマナゾーンに闇のカードが5枚以上あれば、自分の山札の上から5枚を墓地に置いてもよい。そうした場合、このクリーチャーをバトルゾーンに出す。


 墓地からクリーチャーが戻って来るのは面倒だが、《カラクリガエシ》《シバカゲ斎》と、凄い勢いで墓地が肥えていき、ニンジャリバンの山札は残り僅か。かなり危ない橋を渡っている状態だ。
 そんな中、ニンジャリバンはさらに動く。
「そして拙者《龍覇 ニンジャリバン》、ただいま推参!」
 遂に《ニンジャリバン》本体が、バトルゾーンへと参上した。
『拙者の能力により、超次元の彼方から出でよ! 月下に建つ獣の古城! 《魂喰いの魔狼月下城》!』


魂喰いの魔狼月下城 闇文明 (3)
ドラグハート・フォートレス
バトルゾーンにある自分の闇のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。
龍解:自分のターンのはじめに、バトルゾーンに自分の闇のクリーチャーが2体以上あれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。


「次から次へとドラグハートが出ますねー……まったく、参りますよー」
『《ドクロスカル》で《アクア・スーパーエメラル》を攻撃!』
 そしてクリーチャーも殴り返される。じわりじわりと追い詰められてきた。
「僕のターン」
『《フドウガマオウ》の能力発動! 《バグナボーン》を指定するぞ』
 これで《バグナボーン》は攻撃を強制されてしまった。
 《ニンジャリバン》の場には《魂喰いの魔狼月下城》でスレイヤーと化した、ブロッカーの《シバカゲ斎》。さらに相手の攻撃時に手札からファンキー・ナイトメアを呼び出す《フドウガマオウ》が構えており、こちらから攻撃するデメリットが大きすぎる。
 だが、それでも攻撃しなくてはならない。
「……とりあえず、厄介なクリーチャーだけでも掃除しておきますかー。呪文《グローバル・ナビゲーション》で《フドウガマオウ》をマナゾーンへ。さらにマナからクリーチャーを回収し、《スペース・クロウラー》を召喚」
 恐らく、《ニンジャリバン》は手札にブロッカーを握っている。ならば《シバカゲ斎》を除去してこのターンの《バグナボーン》の攻撃を通すより、アタッカーにもなり得る《フドウガマオウ》を除去した方が良いという判断だ。どの道、残りデッキが少なすぎて《シバカゲ斎》はこれ以上復活できないのだから。
「《バグナボーン》で攻撃、その時マナゾーンから《土隠雲の超人》をバトルゾーンへ。山札から《斬隠蒼頭龍バイケン》《光牙忍ハヤブサマル》《土隠妖精ユウナギ》の三枚を選択し、このうち一枚を手札へ」
『《シバカゲ斎》でブロックなり! 《シバカゲ斎》はスレイヤー、《バグナボーン》も道連れだ!』
 《バグナボーン》と《シバカゲ斎》が共に墓地へと落ちていく。
 さらに、《カラクリガエシ》も鳴動し始めた。
「……?」
『遂にこの時が来たか……拙者のクリーチャーが破壊されたことで、《カラクリガエシ》の龍解条件が満たされた』
「なんだって……?」
 《カラクリガエシ》はガタガタと震え、やがてその振動が頂点に達した。
『参上せよ、変幻自在な忍の龍! ここにその姿を現せ! 《忍者屋敷 カラクリガエシ》——3D龍解!』
 その瞬間、中からなにかが飛び出るように。封印が解かれるかのように。《カラクリガエシ》の秘めたる龍の力が解放される——

『——《絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ》!』

烏ヶ森編 11話「怠惰の城下町」 ( No.162 )
日時: 2014/11/12 20:00
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 《忍者屋敷 カラクリガエシ》が龍解し、一体の悪魔龍となる。その姿は、凶暴な悪魔龍とは思えない愛嬌のある面持ちだが、各所にツギハギのある身体をしているところから、やはりどことなく不気味さを感じさせる。
「これが、3D龍解……」
『左様だ。だが、これで終わりではない。拙者のターン、拙者の場に闇のクリーチャーが二体以上いるため《魂喰いの魔狼月下城》の龍解条件も成立だ! 龍解!』
 相手のターンに、自分のターン初めにも龍解する《ニンジャリバン》。今度は《魂喰いの魔狼月下城》が吠える。獣の如き、雄叫びを上げる。
『出でよ! 《魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ》!』


魔狼の悪魔龍 ミナゴロッセオ 闇文明 (6)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 5000
バトルゾーンにある自分のクリーチャーはすべて「スレイヤー」を得る。
相手のターンのはじめに、相手はバトルゾーンにある自身の、攻撃できるクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーは可能であれば攻撃する。


『さらに《冥府の覇者ガジラビュート》を召喚! 貴様のシールドを一枚、墓地送りなり!』
「っ!」
 直接シールドを墓地に送り込まれてしまう空護。
『さらにさらに《学校男》を召喚! 能力で《ガジラビュート》と《ウツセミヘンゲ》を破壊! 貴様のクリーチャーも破壊せよ!』
「別にいいけど、わざわざ3D龍解させた《ウツセミヘンゲ》を破壊……?」
 比較的難度の低い条件だが、《ウツセミヘンゲ》まで龍解しておきながら、なぜここで破壊するのか。残りデッキが僅かな《ニンジャリバン》が、ここでアタッカーを自ら潰す理由はないように思える。
 ——それが、本当にアタッカーが潰れるのであれば、だが。
『その考え、浅はかなり! 《ウツセミヘンゲ》は破壊される代わりに、墓地のカード四枚を山札に戻すことで、破壊を免れるのだ』


絡繰の悪魔龍 ウツセミヘンゲ 闇文明 (7)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
W・ブレイカー
このクリーチャーが破壊される時、かわりにカードを4枚、自分の墓地から山札の一番下に好きな順序で置いてもよい。


 《ニンジャリバン》の墓地のカード四枚が山札に戻ると、《学校男》に飲まれかけていた《ウツセミヘンゲ》は、いつの間にかバトルゾーンにいて、平然としていた。
『これぞ忍法、空蝉の術! さらに呪文《デッドリー・ラブ》! 拙者の《ウツセミヘンゲ》と貴様の《スペース・クロウラー》を破壊なり!』
「ブロッカーが……!」
 空護のシールドは、《ガジラビュート》で一枚消されて四枚。そして《ニンジャリバン》の場には、自身を含む四体のクリーチャー。一体はWブレイカーで、合計五打点。
『これで終わりだ! 拙者でシールドをブレイク!』
 このターンで、勝負が決まってしまうかもしれなかった。
『《ミナゴロッセオ》でシールドをブレイク!』
 獣の遠吠えが響き渡り、刹那、空護のシールドが食い破られる。
「っぅ……!」
 これで残りシールドは二枚。《ウツセミヘンゲ》と《ドクロスカル》が、その残りのシールドを破壊せんと迫ってくる。
 しかし、
「S・トリガー発動! 《インフェルノ・サイン》!」
 《ミナゴロッセオ》に破られたシールドが、光の束となり収束する。現れたのは、《インフェルノ・サイン》。
 これなら、墓地のブロッカーを復活させて一時的に凌ぐことができるが、
「墓地から《魔龍バベルギヌス》をバトルゾーンへ」
 空護が復活させるのは、ブロッカーではなく《バベルギヌス》。しかし、かと言ってこのターンの攻撃を凌がないわけではなかった。
「《ドクロスカル》を破壊して、貴方の墓地から《爆弾魔 タイガマイト》をバトルゾーンへ」
『ふん、運よく1ターン生き長らえたようだが、無意味だ。《タイガマイト》のマナ武装3により、貴様の手札を捨ててもらうぞ』
「当然……ま、捨てたカードが墓地に行くとは限らないけどね」
『……? なにを言っている』
「百聞は一見にしかず……見れば分かるよ」
 そう言って空護は、手札を一枚墓地へ落とす——代わりに、場へと投げ込んだ。

「シノビ流狩猟忍法、毒ガマの影討ち! 現れよ、《ゲロ NICE・ハンゾウ!》」

 手札から捨てられるはずのクリーチャーは、《ゲロ NICE・ハンゾウ》。相手のカードの効果で捨てられるとき、代わりに場に出るマッドネスのクリーチャーだ。
「その登場時能力で、《ウツセミヘンゲ》のパワーを−6000」
『だからなんだというのだ。拙者の《ウツセミヘンゲ》のパワーは7000、それでは足りぬ。このターンにとどめは刺せぬが、貴様のシールドはすべて頂くぞ! 《ウツセミヘンゲ》でWブレイク——』
 と、《ウツセミヘンゲ》が飛び出した、刹那。

 《ウツセミヘンゲ》の首が吹き飛んだ。

『なんだ……!?』
「ニンジャ・ストライク——《威牙の幻ハンゾウ》を召喚」
 見れば、空護の場には二体の蝦蟇蛙がいた。一体は《ゲロ NICE・ハンゾウ》。そしてもう一体は、《威牙の幻ハンゾウ》。片やマッドネス、片やニンジャ・ストライクで、二体の《ハンゾウ》が場に出揃った。
「《ハンゾウ》の能力で《ウツセミヘンゲ》のパワーをさらに−6000。パワーがゼロ以下になったので破壊ですねー」
『……ふっ、笑わせてくれるな。だからどうしたというのだ。忘れたのか? 《ウツセミヘンゲ》は破壊されても、墓地のカードを山札に戻すことで、破壊を免れる!』
 墓地から山札にカードを戻し、《ウツセミヘンゲ》の空蝉の術を発動させる《ニンジャリバン》。
 しかし、
「そっちこそ忘れたんですかー? その《ウツセミヘンゲ》、まだパワーがゼロですよー?」
『なに……? ……!』
 そこで、《ニンジャリバン》は気付いた。
 確かに《ウツセミヘンゲ》は破壊を免れる効果によって、除去耐性が高い。しかしなにも、タダで破壊を免れているわけではなく、その能力を使うためには墓地のカードを山札に戻さなければならない。
 パワーがゼロになった《ウツセミヘンゲ》は、山札にカードを戻すことで生き長らえるが、それでもパワーはこのターン中ゼロのまま。《ニンジャリバン》の墓地のカードがすべて山札へと行ってなくなっても、《ウツセミヘンゲ》のパワー低下はそのままであり、最終的に破壊される。
 二体の《ハンゾウ》によって、空蝉の術は破られ、《ウツセミヘンゲ》はその姿を闇の中へと埋めることとなったのだ。
『ま、まさか、拙者の《ウツセミヘンゲ》が……!』
 消え去る《ウツセミヘンゲ》の姿を見て、驚愕の表情を見せる《ニンジャリバン》。
「僕のターン。《終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート》を召喚」
『くぅ、だが! 貴様のシールドは所詮残り二枚だ! 拙者の場にはまだ四体のクリーチャーが残っている! どの道、このターンで終わりだ!』
 切り札を破壊されて焦っているのか、声を荒げる《ニンジャリバン》。まだ彼の優位は消えていないはずだが、余裕は消失してしまっている。
『《深淵の悪魔龍 バセオアビス》を召喚! 自身を破壊し、貴様のクリーチャーのパワーはすべて−3000だ! そして《学校男》でWブレイク!』
「ニンジャ・ストライク。《光牙王機ゼロカゲ》を召喚してブロックですー」
 一撃目は軽くブロッカーで防がれてしまう。スレイヤーで相打ちだが、攻撃が通せなかったことに変わりはない。
『ぐぬぬ、ならば拙者でシールドブレイク! 《タイガマイト》でブレイクだ! これでシールドはなくなったな、《ミナゴロッセオ》でとどめ——』
「そう慌てないでくださいよー。S・トリガー発動ですからー」
 空護の最後のシールドが、光の束となり収束していく。そして現れたのは、
「《霊騎秘宝ヒャックメー》を召喚。能力で僕の手札をすべて墓地へ」
 手札にシノビはないが、それでも自分の手札をすべて捨てるというディスアドバンテージを負ってしまう空護。これでは最後のダイレクトアタックを防げない——かに見えたが、
「《斬隠蒼頭龍バイケン》をバトルゾーンへ。そして《ミナゴロッセオ》をバウンスですー」
『な……っ!』
 《ゲロ NICE・ハンゾウ》などの新型とは違う、旧型マッドネス。相手のカード効果ではなく、相手ターンに手札から墓地に行くことで、場に出て来るクリーチャーだ。
 《ミナゴロッセオ》を消され、いよいよ《ニンジャリバン》のとどめの一撃が届かなくなってしまった。
「じゃ、僕のターンですねー。《スペース・クロウラー》を召喚、呪文《スパイラル・ゲート》で《タイガマイト》をバウンス」
 とりあえず最低限の保険は賭け、今度はこちらが攻めに出る。
「《終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート》で攻撃、そして能力発動!」
 次の瞬間《ブラック・ガンヴィート》の放つ瘴気によって《ニンジャリバン》の手札が墓地へと落ちて行った。


終焉の凶兵ブラック・ガンヴィート 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド 7000+
B・ソウル
このクリーチャーが攻撃する時、各プレイヤーは自身の手札をすべて捨てる。
ノー・チョイス
NC—このクリーチャーのパワーは+5000される。
T・ブレイカー


 相手の手札をすべて墓地に叩き落とす能力は強いが、自分の手札も失う点は痛い。とはいえ空護の手札は、前のターンに《ヒャックメー》を召喚していたため既にゼロ。損失はない。
 むしろ、手札を自ら捨てることで《ブラック・ガンヴィート》はその力を解放するのだ。
「僕の手札はないので、《ブラック・ガンヴィート》はパワー12000のTブレイカーですよー。シールドをTブレイク!」
『なんだと……ぐぅ!』
 一瞬にして、《ニンジャリバン》のシールドが三枚、砕け散った。
『ぬぅ、S・トリガーだ! 《デーモン・ハンド》で《ヒャックメー》を破壊!』
「それなら《バイケン》でブレイク!」
 悪魔の手によって《ヒャックメー》が墓地に送り込まれるが、気にせず攻撃を続ける空護。《バイケン》が残りのシールドを薙ぎ払ったところで、《ニンジャリバン》は完全に打つ手なしだった。残るシールドには、S・トリガーはなし。
『ここまでか……殿、不甲斐ない拙者をどうか、お許しください——』
 とどめの一撃が放たれる直前、《ニンジャリバン》は希うように目を閉じ、そしてそっと口走る。 

 ——満月に散りゆく我の怠惰なり

 それが、彼の残した最後の言葉。彼の懺悔の一句だった。

「《ゲロ NICE・ハンゾウ》で、ダイレクトアタック——」

12話「太陽山脈」 ( No.163 )
日時: 2014/11/16 01:57
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: RHpGihsX)

 神話空間が閉じると同時に、月光の下に一枚のカードがはらりと舞い落ちる。
 それは、《龍覇 ニンジャリバン》のカード。
「忍、か……」
 なにを思ったのか。空護はふっと呟いて、そのカードを拾い上げた。
「……僕の知る忍とは、毛色が違うけども」
 そして、それをそっと仕舞い込む。
 それから少しの間、天守からの月を眺めていたが、すぐに月に叢雲がかかってしまった。
「さて……たぶん夢谷君の方も終わっただろうし、戻りますかねー」



「あー……ニンジャリバン、いなくなっちまったか……」
 質素な部屋の真ん中で、コシガヘヴィは首を垂れ、項垂れていた。
「面倒くせぇなぁ……また新しい家臣を雇わねぇと……それもだりぃ……あぁー、本当、あいつがいなくなると面倒だなぁ、かったりぃ……」
 やがて彼の体は、重力に負けたかのように倒れ込み、そのまま動かなくなる。
「徴税も統治もだるすぎる……この部屋から出るのもかったりぃ……つーか、もう俺一人じゃ生きられなくねぇ……? ニンジャリバンいねーし。あーあ、マジでだりぃぜ……」
 怠惰な城主には、勤勉な家臣がなくてはならなかった。しかしその家臣は、もういない。
 コシガヘヴィは、最後に一言。五散るように言葉を発す。
「本当、面倒くせぇなぁ……」
 それから彼は、口を開くこともなくなった——



 翌日。
 結局、怠惰の城下町ではなんの情報も得られないまま帰還した一騎たちは、また部室に集まっていたのだが、
「また、光文明の動きをキャッチしたよ」
 部室に入るなり、氷麗のそんな一言が放たれる。
「今、情報収集に出てるリュンさんから連絡があったんだけど、太陽山脈方面に、光文明が接近中だって」
「太陽山脈……? って、なにかな?」
 クリーチャー世界の地名なのだろうが、日本の地名すら半分だって言えない現代人に、見たことも聞いたこともない地のことなど分かるはずもない。
「太陽山脈は、火文明最大の領土で、その名の通り多くの火山が連なる山脈。今は休止中だけど」
「そこに光の連中が向かってるってことか」
「以前、プルガシオンの街で《エスポワール》が行おうとしたような、他文明への侵略かしら?」
 あれは最終的には未遂に終わったが、それを受けてなのかなんなのか、また他文明の領土を侵略するつもりらしい。
「リュンさんの情報によると、光文明は他文明への侵攻作戦を何度も繰り返している……その規模は大きくないし、まだ文明全体で纏まり切っていないから失敗も多いけど、既に侵略された土地がいくつかあるみたい」
「それで、今度は火文明を狙ってきた、ということですかー」
「火文明はまだバラバラだってテインが言ってたけど、それが理由なのかな?」
「恐らくは。そして、光文明ということは……」
 ——恋の手がかりがつかめるかもしれない。
 心中でそう呟いたのは一騎だけだが、全員がそれは分かっていることだ。
「……そういうわけだから、今回は太陽山脈に座標を設定するね」
「今日、行くことになってるのは、確か……」
「あたしだ」
「僕もですよー」
 名乗りを上げる、ミシェルと空護。今回はこの二人に、一騎と氷麗の四人でクリーチャー世界へと飛ぶ。
「……じゃあ、転送するよ」
「うん。お願い。氷麗さん」



 太陽山脈というだけあってか、そこは確かに高い山々が連なっていた。そのすべては岩山だが、一つの山だけでも相当高く大きく、それがどこまでも続いている。
「うわぁ、こんな大きな山、日本にはないよ……」
「そりゃないだろうな。だが、世界的に見てもこれは相当でかいんじゃないか……?」
「全長はどのくらいなんですかー?」
「さあ……私も測ったことないし……」
 ともかく、立ち向かうと圧倒されるほどに巨大な山脈である、ということがひしひしと伝わってくるのだ。
「……とりあえず、登りますかー?」
「正直なところ、それが一番しんどいよな……」
 険しい山、というほどでもないが、山登りというのは普通にマラソンするよりも体力を使うものだ。幸い、道らしきものが見えているので多少は楽そうだが、それでも大変であることには変わらないだろう。
「でも、ここまで来て進まないわけにはいかないよ。行こう」
「ま、そうだよな」
「ここで引き返したら、なにしに来たって話ですからねー」
 この山脈に用があってわざわざクリーチャー世界まで飛んできているのだ。この山を登ることは必須事項と言って差し支えないほどである。
 なので、一行は嫌であろうとなんであろうと、この山を登る。
 しばらくは四人とも黙々と歩を進めていたが、やがてミシェルが、
「……なぁ、一騎」
「なに?」
「お前、妹分がこっちの世界にいるって妄信的に信じてるけど、実際に元の世界で話とかしてるのか?」
 これは、前々から気になっていたことだ。
 元はと言えば、一騎が日向恋という少女を探している時にリュンと出会い、彼女の写真をリュンに見せ、リュンがその少女なら見たことがある、という経緯で一騎たちは今この世界に来ているわけだが、この場合リュンをどこまで信用していいのか。
 リュンに不信感があるわけではない。しかし、写真というものは実際に面と向かって、肉眼で人物を見るのとは違うように見えるものだ。そうでなくともリュンはクリーチャー、人間というものがどう映っているかも分からない。もしかしたらリュンが誤認識しているだけで、彼が見たことがあるという少女は恋ではないかもしれない。
 お人好しで、すぐに人の言うことを信じてしまう一騎だけに、ミシェルはずっとそのことが気がかりであった。勿論、恋が仮にこちらの世界に来ているのなら、簡単に口を割るとも思えないが、実際に話をして、それらしい態度なり、様子なりは見せているかもしれない。
 そう思って、聞いてみたが、
「……最近は、恋とは全然会ってないよ。家に行っても、いつもいないんだ」
「いないっていうのは?」
「家に行っても、誰も出なくて……」
「居留守を決め込まれてるだけじゃないのか、それは……?」
 とはいえ、こちらの世界に来ているから、そういうことになっているとも言える。お節介な一騎が嫌いで本当に居留守を決め込んでいる可能性も捨てきれないが。
「ただ一番最後に会った時は、クリーチャー世界なんて知らないって言ってた」
「…………」
 口で言うだけなら、誰だって否定するだろう。なのでミシェルは少し間を置き、その間に一騎は続ける。
「でも、恋はきっとこの世界にいる。“あの”恋なら、この世界にいてもおかしくはない」
 やけに断定的に言う一騎。やはり、その最後に会った時に、なにか様子がおかしかったのか。なにか挙動に変化があったのか。と、ミシェルは思ったが、
「確証はないけど、そんな気がするんだ」
「確証ないのかよ!」
 結局は一騎の勘だった。真面目に聞いて損した気分だ。
 そんなあからさまにガックリしたミシェルを見てか、一騎は慌てたように弁明する。
「で、でも、きっとそうだよ! そう思うんだよ!」
「根拠もないのによく言う……お前のその第六感だけの口はどうにかならないのか」
「根拠はあるよ! だって……」
 必死で弁明していた一騎のトーンが、そこで一気にダウンする。思い出したくないことを思い出したような、苦い思い出に浸るような、そんな面持ちで、彼は続ける。
「……恋は、クリーチャーの声が聞こえるって、言ってたから」
「クリーチャーの声が、聞こえる……?」
 思わず反芻するミシェル。
 彼女もこの世界に来て、クリーチャーが実際にものを言うところを見ている。そもそもリュンや氷麗だってクリーチャーだ。
 ミシェルのカードは一騎のように、かつて十二神話と共に戦った仲間たちではないためか、カードそのものからの声というものは聞こえてこない。しかしそれでも、この世界に頻繁に出入りするようになってからは、クリーチャーの意思のようなものを感じる時は、たびたびあった。
 一騎から話を聞いても、実際にクリーチャーの声というものがカードからはっきりと聞こえてくることはそう多くないようだが、それでも聞こえる時は聞こえるらしい。なので、そういうこともあるだろうとは思う。
「……それは、最後に会った時に聞いたのか?」
「いや……昔の話だよ。烏ヶ森に来るよりも、ずっと前……」
 つまり、恋はその時からこの世界に来ていた可能性がある。
 もしくは、彼女が特別ななにかなのか。
 考えても答えが出るものではないが、自分たちがこの世界に来る目的が日向恋という少女である以上、ミシェルは考えることをやめなかった。一騎は恋のことになると周りが見えず危ういので、手遅れになる前に自分がなんとかしなければ、という意識は最初からあった。
 そのためにも、今のうちから色々と考えておく必要がある。なので答えが出なくても思考を続けるミシェルであったが、その思考は後輩の声によって中断された。
「先輩方ー……お話の途中申し訳ありませんが、前を見てくださいー」
 間延びした空護の声が聞こえる。その語尾はなんとかならないのかと言いたいが、それを口にする前に顔を上げ、前方を見遣る。そして、息を飲んだ。
 そこに、四人の視界の先にいたのは、

「光の、軍隊……?」


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