二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.254 )
- 日時: 2015/10/04 20:57
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
Orfevreさん
まあ、メソロギィよりはライトなタッチで書いているつもりですけど、モノクロの作品ですし、シリアスとは言わないまでも、そんなに明るい要素はないですけどね。
それでも今回は、黒々とした要素をとにかくぶち込みましたが。
ライの名前は……まあ、色々ありますが、それは本質とは言い難いですかね。
基本的に語り手たちの名前に関しては、継承神話としての名前が、彼らの本質なので。まあ、ライについては、今後の展開をお楽しみに、ということで。
今回がどのように進んでいくかは……これも、今後をお楽しみに、としか言えません。ネタバレになりますからね。
それでも、どうなるかはすぐに分かりますけども。
ともあれコメントありがとうございます。
ではでは。
- 73話 「憤怒紛争地帯」 ( No.255 )
- 日時: 2015/10/04 23:17
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
憤怒紛争地帯。
その場所は、そう呼ばれていた。
怒りという衝動のみが支配する、激戦地。
あらゆる怒りを募らせた悪夢が、そこにはある。
怒りとは、あらゆる感情の中でも、最も過激で、他者との関係の下に成り立つ感情だ。
その感情は、どの時代、どの世界でも、必ず争いを引き起こした。怒りがあるがゆえに、数多のものが壊れ、幾多の命が消え、報復や復讐といった概念が喚起され、負の連鎖が起こる。
そのすべてを凝縮したかのような場所が、この憤怒紛争地帯だ。
罰を受け、死ぬことすらも楽しむファンキー・ナイトメアたちが、唯一争い合う場所でもある。
「……そんな話を聞いたから、もっと物騒なところだと思ってたけど……案外、静かね」
「彼らとて、四六時中争い合っているわけじゃないのさ。争う時はとことん争うけど、そうじゃない時は、こんなもんだ」
今、この場はしんと静まり返っている。とても争っている雰囲気ではない。
「……怒りとは、刹那のうちに湧き上がる感情。突発的な激情。起こった時には激しく、しかし時流に委ねればすぐさま鎮まる。その時は儚く尊く、そして短夜の如し。それはいついかなる時であろうとも起こり得るものであり、絶え間なく呼び起こされる衝動ではない……そういうことです」
「まったくが意味が分からないよ?」
「要するに、怒りという感情は短い間に湧き上がるものだから、この場所でも、常に怒りに任せて戦っているわけではない、ということね」
つまり今は、怒りの衝動が湧いていない時だ。
しかし、いつ連中が怒りに任せて暴れ出すかは分からない。その予測は立たない。
だからその前に、怒りの根源を鎮めるのだ。
「この地は、元々は静寂が支配する、静かな土地でした……憤怒の罪がこの地を支配するようになってからは、怒号と憤激が渦巻く戦場となってしまったのです」
かつての静けさは、もうここにはない。
それを取り戻すため、というだけなわけもないだろうが、ライはこの地に巣食う憤怒の源を裁く。
それが、彼女の贖いだから。
「……ここですね」
そう彼女が呟いた時だった。
ビルのような建造物が立ち並び、そこらじゅうに弾痕や切傷の見られる、この地区の中央部。
そこには、クレーターの如き大穴が空いていた。
隕石でも衝突したのではないかと言うほどに大きく、深い、半球状の大穴が。
その中心の、奥底に、なにかがいる。
「あれは《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》。この地区の統治者だね」
ここからそのクリーチャーまでは結構な距離があるが、それでも顔つきは大体わかる。
さらに言えば、その纏っている雰囲気から、概ね察することができた。
「なんかおっかない顔してるねぇ……」
「怒っている、のでしょうか……?」
「まあ確かに、憤怒というくらいだし、四六時中怒り狂ってるようなクリーチャー、なんじゃないかな?」
僕も詳しいことは知らないけど、とリュンはいい加減に言う。
「怒り……それは罪……罪には罰を、罪は裁かれるべきもの……」
「あ……ちょっと」
そんなことを言っている傍ら。もはや目の前の咎人しか見えていないかのように、ライは穴へ飛び降りた。
人間ではない、クリーチャーであるライなら、この程度の高さから飛び降りても問題はない。途中で足を付けることなく、一息で穴の底へと降り立った。
「私も行かないと……!」
穴の底に立つライ。
彼女は、ジッと目の前の悪魔龍を見据えていた。
「……あんだぁ、てめぇ……?」
その悪魔龍——ガナルドナルは、眉間に皺を寄せ、怒気を含む調子で、声を発する。
「私は、ライと申します。《冥界神話》を語る罪人……そして、罪を裁く断罪者。貴方の憤怒という大罪を、裁きに参りました」
「はぁ? なにをわけの分からんことを……」
「貴方の理解は、さして問題ではありません……ただ私は、罪を、裁くのみです」
「……俺とやるってのか? 見たとこてめぇ、よそ者みてぇだが、俺のことを知らねぇわけじゃねぇだろ」
「知っています。貴方は罪。憤怒の大罪を背負う、罪深き悪魔の龍。ゆえに、私は貴方を断罪します。私の使命を、全うするために」
「はっ、身の程知らずが。ならてめぇの身体にたっぷり叩き込んでやる。俺の怒りを、俺の内から沸々と湧き上がる、この罪の証をな!」
怒号のような雄叫びを上げ、二人を覆う空間が歪み始める。
再び、訪れるのだ。
《冥界神話》の語り手が、罪を贖う場所へと。
再び、開かれたのだ。
大罪を断罪するための、神話空間が——
- 73話 「憤怒紛争地帯」 ( No.256 )
- 日時: 2015/10/05 00:08
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
ライとガナルドナルのデュエル。
ライの場には既に《オタカラ・アッタカラ》が存在しており、対するガナルドナルの場にはなにもない。
「《リバース・チャージャー》発動だ。墓地の《コッコ・ドッコ》を手札に加えてターン終了」
「私のターン。《絶叫の影ガナル・スクリーム》を召喚」
互いに墓地回収を絡めて手を伸ばしていくが、墓地の多さではライが有利だ。
《ガナル・スクリーム》の絶叫でさらに墓地を肥やし、眠れる死者を叩き起こす。
「……《龍覇 ウルボロフ》を手札に加えます。ターン終了」
「《コッコ・ドッコ》、《時空の守護者ジル・ワーカ》を召喚だ」
ガナルドナルは前のターンに回収した《コッコ・ドッコ》に加え、光文明のカード《ジル・ワーカ》を見せる。
マナゾーンを見る限り、どうやら闇文明をメインとし、光文明をタッチで少量加えたデッキのようだ。
「…………」
ライはガナルドナルの動きにほんの少しだけ眉根を寄せたが、すぐに自分のターンに入る。
ここで召喚するなら、先ほど回収したばかりの《ウルボロフ》だ。
しかしライは、このターンに引いたカードを見て、考えを変えた。
「屍を葬りし英雄、龍の力をその身に宿し、死者の怨嗟で武装せよ——《葬英雄 ゲンセトライセ》」
闇文明の英雄の一角、《ゲンセトライセ》。
その力は、英雄の名が示すように、現世と来世を永遠に行き来し、生き続け、死に続け、生かし続け、死なせ続けるものだ。
《ウルボロフ》から呼び出すドラグハートの龍解ならば、まだ急ぐことはない。先に《ゲンセトライセ》を呼び出しておき、龍解のための生贄を並べておくのも一つの手だ。
だが、その1ターンの隙が、致命的だった。
「あんまり舐めた真似してんじゃねぇぞ、クソアマ……俺のターン」
ガナルドナルは、怒気を含ませた声を発する。
このターン、ライは《ウルボロフ》を召喚し、《ゴー・トゥ・ヘル》から生贄を蘇生させ、《デスシラズ》に龍解させることができた。
ガナルドナルはそれをしなかったことが、自分が甘く見られている、自分が低く評価されていると思い込み、怒っていた。
憤怒だ。
その憤怒が、彼に力を与える。
「ざけんなよ、そんなぬるい手ぇ打って、俺を倒せるなんて思ってんじゃねぇ……! 呪文《邪魂転生》! 《ジル・ワーカ》を破壊!」
邪悪な魂から知識を抽出する魔術によって、《ジル・ワーカ》の魂を犠牲に、ガナルドナルは知識を得る。
さらに、破壊された《ジル・ワーカ》から、二つの閃光が迸った。
「《ジル・ワーカ》が破壊されたことで、お前の《ガナル・スクリーム》と《ゲンセトライセ》をタップだ! そして!」
今度は、《コッコ・ドッコ》が破壊される。
だがそれは、外的要因によるものではない。《コッコ・ドッコ》そのものが持つ、罪に呼応した罰だ。
巨大な悪魔龍の力を感知し、その命が尽きたのだ。それはつまり、彼が悪魔龍を呼び寄せたということ。
そして、大罪の力が、ここに顕現する。
「どいつもこいつも、全員ぶっ殺してやる——《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚ッ!」
憤怒の悪魔龍 ガナルドナル 闇文明 (8)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、タップされているクリーチャーをすべて破壊する。
W・ブレイカー
『俺の能力で、バトルゾーンのタップされているクリーチャーをすべて破壊だ! 死にやがれ、クソザコどもがあぁぁぁぁぁぁッ!』
憤激する《ガナルドナル》は、その怒りの衝動のままに怒鳴り散らす。
空気は震え上がり、神話空間ごと吹き飛ばす錯覚に陥りそうなほどしまいそうなほどに、その衝撃は凄まじい。
ライはそんな《ガナルドナル》を、なんとも思った様子もなく見つめていたが、彼女のクリーチャーは、そうはいかない。
《ガナルドナル》の怒りを肌で感じたクリーチャーたち——タップされている《ガナル・スクリーム》と《ゲンセトライセ》——は、その罪からなる罰によって、死滅した。
元より身が竦んでいたクリーチャーたちだ。彼の憤怒に、耐えきれるわけもなかった。
「……私のターン。《龍覇 ウルボロフ》を召喚」
場のクリーチャーがほとんど消し飛ばされたライだが、動じた素振りはまったく見せない。
あくまで淡々と、彼女は己の為すべきことを為す。
贖罪のための、罰を科すために。
「煉獄より、罪の凶器をここへ——《煉獄刃 ヘルフエズ》」
超次元の彼方から、地の底に封じられた凶気の刃の一つが、目覚める。
煉獄の力と龍の魂が秘められた、諸刃の大鎌、《ヘルフエズ》
《ウルボロフ》はその柄の真中を握り、狂気に満ちた眼差しを向け、構えた。
『俺のターン! 《ポーク・ビーフ》と《パックポック・ピッグ》を召喚! そして、俺でWブレイクだ!』
「……私のターン」
二枚のシールドを先んじて砕かれたライ。だが、彼女もこのターンから、動き始める。
「《爆弾団 ボンバク・タイガ》をニ体召喚。《ポーク・ビーフ》のパワーを合計6000マイナスし、破壊。そして、《ウルボロフ》で《ガナルドナル》に攻撃……する時、《ヘルフエズ》の能力発動」
刹那、《ヘルフエズ》が怪しく光る。
その光は、《ガナルドナル》へと照射されていた。
「《ガナルドナル》のパワーを−6000……」
『なっ、てめぇ……また舐めた真似を……!』
《ガナルドナル》のパワーは《ヘルフエズ》によって減衰され、パワー1000に。
そこまでパワーが落とされたクリーチャーを討ち取ることは非常に簡単だ。《ガナルドナル》はパワー4000の《ウルボロフ》に、あっけなく切り裂かれる。
「畜生が……!」
自分自身がやられたことで、ガナルドナルはさらに怒りを重ねる。
憤怒の眼で、射殺さんばかりの眼で、ライを睨みつける。
「これで、私はターン終了……そしてこの時」
「あぁ!? まだなんかあんのかよ!」
いちゃもんをつけるように怒鳴るガナルドナルをよそに、《ウルボロフ》は手中に収められた《ヘルフエズ》を、地面に突き刺す。
「まずは、このターンの終わりに、墓地の《ゲンセトライセ》のマナ武装5、発動……私の場の《オタカラ・アッタカラ》を破壊し、墓地の《ゲンセトライセ》をバトルゾーンに」
ライのマナが黒く光った。
そして、ライの場にいた《オタカラ・アッタカラ》の命と引き換えに、墓地より《ゲンセトライセ》が蘇る。
さらに、
「相手クリーチャーがターン中に破壊されているので、《ヘルフエズ》の龍解条件成立」
そして《ヘルフエズ》は、死した者の魂を吸い取り、新たな姿へと移り変わる。
「《煉獄刃 ヘルフエズ》……2D龍解」
《ヘルフエズ》は鳴動し、そのうちに秘められた姿を現す。
そして禍々しき宮殿が、そびえ立った。
「罪の魔宮をここに——《煉獄宮殿 ヘルクライム》」
- 73話 「憤怒紛争地帯」 ( No.257 )
- 日時: 2015/10/05 00:15
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
葬英雄 ゲンセトライセ 闇文明 (6)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
マナ武装 5:自分のターンの終わりに、このクリーチャーが自分の墓地にあり、自分のマナゾーンに闇のカードが5枚以上あれば、自分のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、このクリーチャーをバトルゾーンに出す。
マナ武装 7:このクリーチャーが攻撃する時、自分のマナゾーンに闇のカードが7枚以上あれば、自分の墓地から好きな枚数のファンキー・ナイトメアをコストの合計が5以下になるように選び、バトルゾーンに出す。
W・ブレイカー
煉獄刃 ヘルフエズ 闇文明 (4)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーが攻撃する時、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは−6000される。
龍解:自分のターンの終わりに、そのターン、相手のクリーチャーが破壊されていれば、このドラグハートをフォートレス側に裏返してもよい。
煉獄宮殿 ヘルクライム 闇文明 (7)
ドラグハート・フォートレス
自分の闇のクリーチャーが攻撃する時、自分の他のクリーチャーを1体破壊してもよい。そうした場合、バトルゾーンにある相手のクリーチャーを1体選ぶ。そのターン、そのクリーチャーのパワーは−6000される。
龍解:相手のクリーチャーが破壊された時、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップしてもよい。
破壊した《ゲンセトライセ》は蘇り、ドラグハート・ウエポンは龍解し、フォートレスへと変わってしまった。
ペースをライに引き寄せられつつあるガナルドナル。この自分に悪い流れは、彼の苛立ちを加速させ、さらなる怒りを積み重ねる。
「《オタカラ・アッタカラ》召喚! 山札からカードを二枚墓地へ送り、呪文《復活のトリプル・リバイブ》! 墓地から《ジル・ワーカ》《ポーク・ビーフ》《ボンバク・タイガ》をバトルゾーンに蘇らせる! さらに手札から《ボンバク・タイガ》を召喚!」
ガナルドナルは、墓地から一気にクリーチャーを蘇らせる。
「《ボンバク・タイガ》の能力で、お前の《ボンバク・タイガ》のパワーを3000下げて破壊だ! さらに、《パックポック・ピッグ》は墓地のファンキー・ナイトメアの数だけパワーが1000加算される! 今、俺の墓地にファンキー・ナイトメアは九体! パワー10000となり、Wブレイカーだ! シールドをWブレイク!」
「……《ボンバク・タイガ》を召喚。《パックポッグ・ピッグ》のパワーを−3000」
「っ、また小賢しいことを……! だが、その程度では《パックポック・ピッグ》は破壊できんぞ!」
「《ゲンセトライセ》で《パックポッグ・ピッグ》を攻撃……能力発動」
攻撃と同時に《ゲンセトライセ》は、英雄としての力を発動させる。
ライのマナが黒く光を放ち、《ゲンセトライセ》は墓地へと手をかざした。そして、墓地が蠢く。
「マナ武装7……私の墓地から、コスト合計が5以下になるように、ファンキー・ナイトメアをバトルゾーンに。墓地から《オタカラ・アッタカラ》《爆弾団 ボンバク・タイガ》をバトルゾーンに。さらに、《ヘルクライム》の能力も発動。《ボンバク・タイガ》を破壊し、《パックポッグ・ピッグ》のパワーをさらに−6000」
「なっ、ぐ、このアマ……!」
二体の《ボンバク・タイガ》に《ヘルクライム》のパワー低下が累積し、《パックポッグ・ピッグ》のパワーは合計で12000マイナスされる。《バックポッグ・ピッグ》は遂に負荷に耐え切れなくなり、その身体は消滅した。
だが、破壊の連鎖は、罪の怨嗟は終わらない。
この時の死が、憤怒の罪にさらなる罰を与える。
「……貴方のクリーチャーが破壊された時」
「あ?」
「《ヘルクライム》が……龍解します」
刹那。
煉獄の魔宮が、蠢く。
ゴゴゴゴゴ、と地鳴りを起こすかのように、震える。
それは、内に秘めた龍の力が高まる証左だった。
「貴方の罪を、数えましょう」
彼女は歌うように、彼の断罪を告げる。
「私の罪と、比べましょう」
そして——
「——二人一緒に、罰しましょう」
時が来た。
断罪の時が。
「憤怒の罪に、殺界の罰を——龍解」
《ヘルクライム》に秘められた、龍の魂が、解放される——
「——《大殺壊 ヘルセカイ》」
大殺壊 ヘルセカイ 闇文明 (10)
ドラグハート・クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 12000
このクリーチャーが攻撃する時、自分のクリーチャーを好きな数、破壊してもよい。こうして破壊したクリーチャー1体につき、相手のクリーチャーを1体破壊する。
T・ブレイカー
龍回避—このクリーチャーがバトルゾーンを離れる時、バトルゾーンに自分の他のクリーチャーが1体もいなければ、かわりにこのドラグハートをフォートレス側に裏返す。
《ヘルクライム》がその姿を変形させ、龍へと成り変わる。
それは、正に世界。半身に悍ましき悪魔龍の頭を擁し、血のような深紅に染まった双刃を携えた、魔神の龍。
すべての運命を闇で塗り潰す、大殺界の支配者。
この存在が顕現した瞬間、すべては煉獄に飲み込まれる定めとなる。
「《ヘルセカイ》で攻撃……する時」
刹那、《ヘルセカイ》が大鎌を振るう。
まずは、味方へと。
「私のクリーチャー……《ウルボロフ》《ゲンセトライセ》《オタカラ・アッタカラ》《ボンバク・タイガ》を破壊。そして、その数だけ、貴方のクリーチャーにも罰を与えます」
殺害という、死の罰を。
《ヘルセカイ》は大鎌を振るう。
次は、ガナルドナルのクリーチャーへと。
「んな……ッ!?」
一瞬にして、ガナルドナルのクリーチャーは、全滅した。
続けて、三枚のシールドが、一斉に砕かれる。
「クソが……ッ! S・トリガー《凶殺皇 デス・ハンズ》を召喚! 《ヘルセカイ》を破壊だ!」
「…………」
砕かれたシールドから、《デス・ハンズ》が現れる。
かの者も黒き鎌を振るい、煉獄の世界を悪魔の手で葬る。
「ハァ、ハァ……ハッ、ざまぁ、ねぇな。結局はただのクリーチャー、破壊すれば、簡単に死ぬ……!」
数多の魔手に抱かれた《ヘルセカイ》は、その身を崩していく。ボロボロと、ガラガラと、身体が壊れる。
双刃の大鎌は地に落ち、宮殿の如き意匠の身体は、縮こまるように収縮していき——
「……龍回避、発動……」
——大殺界の支配者は、再び煉獄の宮殿の姿へと戻る。
「あぁ!?」
「私のバトルゾーンに、他のクリーチャーが存在しない時、《ヘルセカイ》の龍回避が発動します……フォートレスの姿、《ヘルクライム》へ」
「んだと……!? クソがッ!」
悪態をつくように拳を握りしめるガナルドナル。ライの切り札を、《ヘルセカイ》を無力化したかと思ったが、そう簡単に《ヘルセカイ》が終わらない。
破壊されようとも、塗り潰された運命は変えられないのだ。もはや、この世界は闇に飲まれつつある。
「《束縛の守護者ユッパール》! 《ポーク・ビーフ》を召喚! 《デス・ハンズ》で最後のシールドをブレイクだ!」
《デス・ハンズ》の鎌がライの最後のシールドを切り裂く。
これで彼女を守る盾はなくなった。だがしかし、それでも構わない。
彼女は今、ひたすら破壊を為すだけだ。
「《白骨の守護者ホネンビー》を召喚……山札の上から三枚を墓地へ。墓地から《爆弾団 ボンバク・タイガ》を手札に加え、召喚。《ユッパール》のパワーを−3000、破壊です」
《ボンバク・タイガ》が、《ユッパール》を爆破する。
《ユッパール》が破壊された。
ガナルドナルのクリーチャーが、破壊されたのだ。
つまり、
「……《ヘルクライム》の龍解条件、達成です」
相手クリーチャーが破壊されたことで、《ヘルクライム》が再び鳴動する。
「3D龍解——《大殺壊 ヘルセカイ》」
そして、現れた。
大殺界を統べる存在が。
《大殺壊 ヘルセカイ》が。
「《ヘルセカイ》で攻撃……《ホネンビー》と《ボンバク・タイガ》を破壊します。それにより、貴方の《デス・ハンズ》と《ポーク・ビーフ》も破壊です」
柄の両端にある刃を振るい、味方を切り裂く《ヘルセカイ》。
殺されたクリーチャーの無念は、闇よりも深い怨恨となり、来たるべき運命の時を加速させる。刹那のうちまでに、その運命へと近づける。
すべての生ける者に訪れる、“死”という運命に。
運命に抗えないガナルドナルのクリーチャーたちは、否応なしにその運命を受け入れる。
即ち、すべて死に至る。
さらにはシールドも、すべて粉砕された。
この戦場には、何も残っていない。
《ヘルセカイ》という、暗黒に染まった運命の支配者を除いては。
『クソガアァァァァァァァァァァァッ! 俺様を、《憤怒の悪魔龍 ガナルドナル》を召喚ッ! 死にやがれッ! 《ヘルセカイ》ッ!』
「龍回避——《ヘルセカイ》を《ヘルクライム》へ」
怒号が響き渡る。ありったけの激憤を込めて、溢れ出る衝動のままに、すべての怒りをぶちまける。
だが、それでも、『死神』という『断罪者』には、その怒りは届かない。
微塵も響くことなく、断罪の刃を振るう。
「呪文《魔狼月下城の咆哮》……《ガナルドナル》を破壊します」
『グ、ガアァァァァァァァァァァッ!』
「3D龍解——《大殺壊 ヘルセカイ》」
《ガナルドナル》の破壊。
それは、世界潰えた後に残る宮殿を、再び突き動かす。
そして三度顕現する、《大殺壊 ヘルセカイ》。
命も、肉体も、運命すらも破壊し、闇の世界に染め上げる、世界の在り方とも言える存在。
《ヘルセカイ》は今、ライの命に応じ、すべてを壊す。
「これで……終わりです」
『が、ぐ、ぐあぁぁ……畜生ガァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!』
怒り狂った断末魔の叫び。
「《大殺壊 ヘルセカイ》——貴方の刃で、断罪を」
それが、ガナルドナルの最期だった。
「憤怒の罪、断罪しました——」
- 74話 「過ち」 ( No.258 )
- 日時: 2015/10/05 02:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「——憤怒の罪、断罪しました」
神話空間が閉じる。
そしてそこにいるのは、激情のすべてを搾り取られたかのようにやつれた悪魔龍と、大鎌を担ぐ無慈悲な断罪者だった。
「憤怒……それは、制御できぬ衝動によって突き動かされる、刹那的な罪。己が意志の薄弱さ、他者への悪しき蔑み、それらが怒りという根源の罪を、形あるものとする……」
ならば、その罪に科す罰は決まった。
「ゆえに、その罰は、激情を喚起させないこと」
それは、即ち。
「貴方の憤怒が沸き起こる根源——心を、壊します」
「あ……?」
《ヘルセカイ》によるとどめの一撃を喰らった直後で、まだ思考が回復していないガナルドナルは、まだ状況の整理が追いつかない。
ライはそんなガナルドナルのことなど意に介すことなく、大鎌を振りかざす。
彼に、罰を与えるために。
「貴方の内に満ちる怒りという感情を、すべて塗り潰します」
漆黒に煌めく大鎌。彼女の瞳と同じように黒く、深く、暗い。奈落の如き黒だ。
それが、大罪たる存在へと向いている。
今、断罪の刃が、憤怒の罪を裁く——
「——ドライゼ!」
「了解だ!」
——刹那。
パァンッ! という乾いた発砲音が鳴り響く。
「——!」
振り下ろす鎌を強引に引き寄せ、ライは迫り来る凶器に備える。
襲い掛かる一発の銃弾。その軌道がこちらを向いても、今なら即座に弾くことができる体勢だ。
だが、それは軌道がこちらに向いた場合。
最初からその弾は、ライを狙ってなどいなかった。
「がはぁ!」
放たれた弾丸は、ガナルドナルの胸を貫いていた。
「あ、あ、あぁ……」
しかし、苦しそうな表情を見せたのは一瞬だけ。
ガナルドナルは、すぐに安堵したように息を吐くと、静かにその姿を光の粒子へと変えていった。
「……カード化の弾丸……」
そして、やがて憤怒の大罪は、一枚のカードとなる。
それは風に吹かれるように、沙弓の手元へと収まった。
「これは、私が預かっておくわね」
ライの対戦中に、穴の底へと降りてきた沙弓。ドライゼの力を借りてガナルドナルをカード化し、その手中に収める。
「……それは、罪そのものですよ」
「それが?」
重苦しい声で言うライだが、沙弓はどこ吹く風だ。
「それのカードを、こちらに引き渡してください」
「断るわ。これは私が預かる、そう言ったでしょう」
「しかし、それは大罪という、裁かれなければならない存在。私の使命は罪を裁き、罰を与えること。私はその使命を全うしなければならないのです」
「私の知ったことではないわね」
ライの懇願にも似た言葉も、沙弓は一蹴する。
とりつく島もないといった風だ。
「……どうしても渡さないというのであれば」
スッ、と。
ライは大鎌を構えた。その刃が向かう先は——沙弓。
「罪を庇うのも、また罪。貴女も罪なる存在とし、断罪します」
「やる気か。望むところだ」
鎌を構えるライに対し、ドライゼも銃を抜き、トリガーに手をかける。
一触即発の剣呑な空気が流れる。
刹那。
黒刃が煌めき、弾丸が飛ぶ——
「やめなさい!」
——直前に、双方の手が止まった。
「……なんだ? やらないのか?」
「当然よ。語り手どうしで戦って、私たちに得はないわ」
「確かに、罪を求めて争う。それは酷く無益で、無意味です……しかし、罪を裁く。それには、大いなる意味があります」
ゆえに私は、貴女を裁く。
そう言って、ライは再び鎌を握り直した。
「もう一度言うけど、私はあなたと戦うつもりはないわ」
「しかし、私は貴女を断罪し、罰を科す使命があります。それが私の贖罪……私は罪を贖うために、貴女を裁きます」
「ふぅん……なら、言わせてもらうけど」
沙弓は、予め考えていたかのように、その言葉を放つ。
ライの胸を穿つような、その言葉を。
「あなたは、かつての主人と同じことをするつもりかしら?」
「……っ」
ライの表情が、ほんの少しだけ歪んだ。
鉄面皮を保ち続けていた彼女の顔が、本当に、たった少しだけだが、変化が見られた。
「……どういう意味ですか?」
「そのまんまの意味よ。あなたの主人——《冥界神話》? ハーデスだっけ? ——は、ドライゼの主の力を奪った。違うかしら?」
少し前に聞いたばかりの話だが、沙弓は滔々と語る。
傍らのドライゼはやや顔を顰めていたが、しかし横槍を入れるようなことはせず、黙していた。
「……その通りです。彼は、かの神話の力を略奪した……それは決して許さない、最も罪深き大罪。そして、私がすべてを賭してでも成し遂げなければならない贖罪……」
「えぇ、そうよね。それはあなたが、今までずっと言ってきたこと……ねぇ、ドライゼ」
「なんだ?」
沙弓は、今度は急にドライゼへと話を振る。
「確か、この大罪の悪魔龍って、元々はあなたの主人の管轄下だったのよね」
「ん……あぁ、確かにそうだな。アルテミス嬢の手下というかペットというか……まあ、そんな奴らだ」
つまり、これらの悪魔龍はすべて、元々はアルテミスなる神話の支配下にあるクリーチャーだ。
それが、どのような意味を持つか。
「今、神話のクリーチャーはこの世界にいない。つまり、ドライゼの主人のクリーチャーは、ドライゼのクリーチャー——即ち、私のクリーチャーってことよね」
「あ……? あー、そうなる、のか……?」
「…………」
困惑したようなドライゼ。確かに、所有権が移っていくなら、そういう理屈になるが、そんな簡単な話なのだろうかと、首を捻っている。
だが沙弓は、この主張を持って、ライに突きつける。
「あなたは、このカードを渡せと言うけど、これを力ずくで私から奪えば、あなたのやってることは、かつての主人と同じよ。あなたは、最も罪深いと言う、自分の主と同じ過ちを繰り返すの?」
「…………」
ライは黙っていた。
確かに、カード化したクリーチャーは、沙弓の力と言ってもいいだろう。それを無理やり奪い取るということは、やがて断罪するとはいえ、その所業はかつての《冥界神話》と同じ。
断罪と贖罪。
それらの使命に囚われすぎて、本当の目的を見失ってはいけない。
自分は、主のようになってはいけないのだと。
「……そう言われてしまえば、引き下がらざるを得ませんね……」
そう言って、ライは鎌を下した。
明らかな屁理屈だったが、沙弓の説得は成功したようだ。
「……しかし、困りました……私の贖罪と、貴女の力の蒐集、二つの目的がぶつかってしまいます……如何いたしましょうか」
鎌を収めつつ、ライは本当に困ったように言う。
表情はまったく変わらないが、それでも彼女の乏しすぎる感情の起伏が、ほんの少しだけ分かる。
そんな、気がしてきた。
「残るは、邪淫と嫉妬の罪……最もかの神話と関わりが深いとされる邪淫、存在すらも曖昧模糊とされる嫉妬……私は次の地に進むつもりですが……」
「……このまま、ずっと一緒ってわけにもいかないかしらね」
今回もそうだが、明らかにライの所業と、沙弓たちのスタンスは対立している。加えて、沙弓がわざと対立するように細工したのも、問題だ。
このまま一緒に行動を続けても、ライはこちらに刃を向けることはないだろう。それでも、軋轢が生まれるだろうことは、否めない。
「……なぁ。ちょっといいか?」
「なんでしょうか?」
「あんたさっき、アルテミス嬢と最もかかわりが深いって言ってなかったか?」
「確かに、言いました……邪淫の大罪。肉欲に塗れた、最も穢れた罪……」
「それがどうかしたの、ドライゼ?」
ドライゼを覗き込む沙弓。
彼はどこかうわ言のように、独り言のように、呟くように、言った。
「それが、アルテミス嬢と深く関わっている……もしかしたら、そこに俺の神核があるかもしれない……」
「あ……」
成程、と手を打ちそうになる。
いまだに神核を持たない沙弓とドライゼ。
神核は、それぞれの神話と関わりの深いところに存在しているのが、今までのパターンだった。
邪淫の大罪が本当にかの神話と深く関係しているなら、確かにそこに神核が存在しているかもしれない。
少なくとも、それを確かめる価値はあった。
「……決まりましたか」
「えぇ。残念だけど、ここからは別行動ね」
「わかりました……それでは私は、存在しているかすら定かでないとされる、嫉妬の大罪を、断罪しに参りましょう……」
それが、この時の、ライの最後の言葉だった。
この時を境に、ライとは別れを告げる。
また出会うときはあるだろう。それまでの別れだった。
そして、歩み出し、進む。
目的の地へ。
邪淫の地——ラストダンジョンへ。
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