二次創作小説(紙ほか)
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- デュエル・マスターズ Another Mythology
- 日時: 2016/11/05 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)
初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。
珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——
目次
プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63
16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213
59話〜119話『継承する語り手編』
>>369
『侵革新話編』
120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415
■
Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213
Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355
■
番外編
東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528
■
東鷲宮中学校放送部
第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299
■
登場人物目録
>>57
- 92話「二局目」 ( No.289 )
- 日時: 2015/11/22 07:40
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
浬の言う最後の仕上げとは、対戦だ。頭の中でデッキの動きや、他のデッキに対する考察を行っても、それは机上論に過ぎない。デッキとは、それを実際に動かして初めて、その本質が理解できる。
デッキを組みたて後は、実戦でどのように動くのかを見る。いわば試運転だ。そうして、欠点や欠陥、思うようにいかないところ、思った通りにならないところ、そういった問題点をすべて洗い出し、自分の理想へと少しずつすり合わせていく。
そうして始まった、浬と風水のデュエル。
互いにクリーチャーはなし、シールドも五枚。まだ、動きを見せていない段階だ。
「《アクア大尉 ガリレオ・ガリレイ》を召喚」
先にクリーチャーを呼び出したのは、浬の方だ。呪文のコストを下げる《ガリレオ・ガリレイ》から、次に繋げようとするが、
「あたしのターン! 呪文《超次元ガロウズ・ホール》! 《ガリレオ・ガリレイ》を手札に戻すよっ!」
《ガリレオ・ガリレイ》は、即座に手札に戻されてしまった。
「さらに、超次元ゾーンからコスト6以下の水か闇のサイキック・クリーチャーを出せるよっ! 《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンに!」
「早速来たか……」
《ガロウズ・ホール》は《ガリレオ・ガリレイ》を押し流すと共に、超次元の扉を開く。
現れたのは、闇のサイキック・クリーチャー、《ヴォルグ・サンダー》だ。
「《ヴォルグ・サンダー》の能力で、浬くんのデッキを削るよっ」
《ヴォルグ・サンダー》は登場時、自分か相手、どちらかの山札を、クリーチャーがニ体落ちるまで墓地に送る能力を持つ。
捲られたのは、クリーチャーが二体。浬の山札が二枚削られる。
「まだ三向聴……《ファンパイ》をだしても、龍解するまであと三枚かぁ。なかなかいい風、吹かないね」
唇を尖らせる風水だが、浬からすれば、そんな簡単に条件を満たされても困る。
だが、これこそが浬の発案した、相手の墓地を増やす手段だ。
水単色という基盤をそのままに、つ闇文明のカードで墓地を増やす。そんな矛盾を解決する鍵となるのが、超次元ゾーンだった。これを用いることで、デッキのカードを水文明だけにしながら、闇のサイキック・クリーチャーで相手の墓地のカードを増やすことができる。
そして、相手の墓地を増やすという意味で有用なクリーチャーは、《ヴォルグ・サンダー》。いずれかのプレイヤーの山札を直接削り、墓地を肥やすクリーチャーだ。《ファンパイ》や《トンナンシャーペ》の龍解条件を満たすならば、うってつけのクリーチャーだろう。
幸いにも水文明には《超次元ガロウズ・ホール》という超次元呪文があるので、水単色でもコスト6の闇のサイキック・クリーチャーを呼び出せる。唯一ネックだった、《ヴォルグ・サンダー》がビクトリーなので、複数枚入手しにくいという問題も、風水の豪運で解決した。
今の彼女のデッキは、限りなく完成形に近い。少なくとも、《ダイスーシドラ》という切り札を、かなり生かした構築になっていることだろう。
「俺のターン。《龍素記号JJ アヴァルスペーラ》を召喚。山札の上から五枚を見て、《スペルブック・チャージャー》を手札に加える。ターン終了だ」
「あたしのターンっ! 《龍素記号Sr スペルサイクリカ》召喚! 墓地から《ガロウズ・ホール》をもう一度唱えるよっ!」
浬もよく使用している《スペルサイクリカ》。その能力は、今更説明するまでもない。
風水は、前のターンに唱えたばかりの呪文を、再び唱えた。
「《アヴァルスペーラ》を手札に戻して、二体目の《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンに! もう一回、浬くんの山札を削っちゃうよーっ!」
今度は呪文、クリーチャー。クリーチャーと、三枚のカードが山札から落ちていく。
これで、浬の墓地のカードは五枚。着々と墓地を増やされてしまっている。
だが、風水はまだドラグハートを呼び出していない。その隙を見て、浬の方から仕掛ける。
「《龍覇 M・A・S》を召喚! 《ヴォルグ・サンダー》を手札に戻し、超次元ゾーンから《龍波動空母 エビデゴラス》をバトルゾーンへ!」
先んじて、浬はドラグハートを呼び出す。
しかし、後手に回ったとしても、風水も決して遅れてはいない。
「《龍覇 トンプウ》を召喚! 《龍芭扇 ファンパイ》を装備して、ターン終了……するときにっ!」
返しのターンで、風水は《トンプウ》からの《ファンパイ》を呼ぶ。
そして、
「浬くんの墓地にカードが五枚あるから、龍解条件成立だよっ。《ファンパイ》を龍解させて、《龍脈空船 トンナンシャーペ》に!」
即座に、ウエポンだった《ファンパイ》を、フォートレスの《トンナンシャーペ》へと龍解させる。
先んじてフォートレスを呼び出したとはいえ、これではほぼ互角だ。
「再び《M・A・S》を召喚! 《ヴォルグ・サンダー》をバウンスし、《龍素戦闘機 エウクレイデス》をバトルゾーンに呼び出す! ターン終了だ」
「浬くん、墓地を増やさないために、呪文を使わないようにしてる……でも、忘れちゃダメだよ」
二つのフォートレスで、龍解を狙う。そんなプレイングを見せる浬だが、風水は浬の本心を見抜いている。
本来なら、もっと呪文を多用して、多角的に攻める浬だが、下手に墓地を増やすと《トンナンシャーペ》に龍解を許してしまう。それだけは、できる限り避けたい。
なので、呪文を使わず、クリーチャーだけで戦っているが、迷彩を施しているつもりでも、風水には浬の手牌はお見通しだ。
しかも、どれだけ浬が回し打つようにクリーチャーだけでプレイしても、風水の龍解を封じたことにはならない。
「いくら呪文を使わなくても、浬くんのデッキは呪文が多いデッキ。そして、あたしの手札にはまだ、この呪文があるんだからっ!」
そう言って、風水は手札からカードを抜き取る。
前のターンに墓地から手に入れた、超次元の扉を開く鍵となるカードを。
「呪文《超次元ガロウズ・ホール》! 《M・A・S》を手札に戻して、《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンに!」
再び《M・A・S》が、浬の手札に戻される。
さらに《ヴォルグ・サンダー》が三度登場した。山札が捲られる。クリーチャー、呪文、呪文、クリーチャーと、今度は四枚ものカードが浬の山札から墓地に送り込まれた。
これで浬の墓地に、カードは九枚となった。《トンナンシャーペ》が龍解するには、あと一枚、墓地にカードが必要だ。
その一枚をどうやって落とすか。答えは、《トンナンシャーペ》自身が知っている。
「《スペルサイクリカ》で、シールドを攻撃! そしてそのとき、《トンナンシャーペ》の能力も発動だよっ!」
水のクリーチャーが攻撃する時、《トンナンシャーペ》の能力が発動する。そして、相手の山札を削るのだ。
残り一枚必要な墓地を、自ら補填する。
浬の山札の一番上が墓地に置かれる。そのカードは、《理英雄 デカルトQ》。
「んー、だんだんいい風が吹いてきたけど、風向きはまだいまいちだね。でも、これで十分! さぁ、Wブレイクだよっ!」
「っ、S・トリガーだ! 《スパイラル・ゲート》で《トンプウ》をバウンス!」
《トンプウ》が手札に戻され、追撃を防ぐ浬。
それでも《トンナンシャーペ》によって、浬の墓地は十枚に達してしまった。それにより、《トンナンシャーペ》の龍解条件が満たされる。
「だが、流石にそれはもう、止めようがないな。だが……俺のターン。このターンの初めに、俺も龍解させてもらうぞ」
バッ、と浬は手札を広げた。
「俺の手札が五枚以上あるので、《エウクレイデス》を龍解! 《龍素記号Ad ユークリッド》!」
《エウクレイデス》は3D龍解し、《ユークリッド》へと成る。
「さらに《エビデゴラス》の能力で追加ドロー! 《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚! 《真理銃 エビデンス》を装備し、一枚ドロー!」
続けてドラグナーを出し、三体目のドラグハート、《エビデンス》を呼ぶ。
「《ユークリッド》で《スペルサイクリカ》を攻撃! その時、《ユークリッド》の能力で一枚ドローだ。続けて《M・A・S》で攻撃し、一枚ドロー。そして、これで《エビデゴラス》の龍解条件成立!」
ターン最初のドローと、その前の《エビデゴラス》による追加ドロー。さらに《エビデンス》でドローし、《ユークリッド》の能力でも二枚ドローしているので、その合計枚数は五枚。
《エビデゴラス》の龍解条件を達成した。
「龍解——《最終龍理 Q.E.D.+》!」
《ユークリッド》に続き、さらにフォートレスが裏返り、今度は《Q.E.D.+》が現れる。
「シールドをブレイク!」
龍解を為しつつ、《M・A・S》がシールドを割り、
「《Q.E.D.+》でも、Wブレイクだ!」
続く《Q.E.D.+》も、風水のシールドをさらに二枚割る。
浬のシールドは三枚。だが、風水のシールドは二枚だ。盤面も、シールド枚数も、浬は風水を凌ぎつつある。
しかし、
「あたしのターン! このターンのはじめに、《トンナンシャーペ》の龍解条件成立っ!」
「く……っ!」
多少の運要素はあったものの、そんなものは誤差の範囲内。相手依存になりすぎず、テンポよく、そして素早く浬の墓地を肥やし、風水は《トンナンシャーペ》を裏返し、広げる。
「3D龍解っ! 《亜空艦 ダイスーシドラ》!」
- Re: デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.290 )
- 日時: 2015/11/22 21:27
- 名前: Wild Geese ◆90lqrlyBoA (ID: 86O5cclD)
こんにちは、Wild Geeseという者です
読ませて頂きましたDM AM
言いたいことは沢山あるのですが自分は文章を書くのに非常に時間がかかってしまいますので最近の更新についての感想のみ述べさせていただきます
成程自分も昔から龍芭扇 ファンパイは使ってみたいと思ってたのですが、相手依存でイマイチ使う気になれなかったのです
結局アタックを途中でキャンセルしてATだけを無限に使いまわしてLOさせる位しか使い道が思いつかなかったのです
そこでヴォルグですか…
相手の呪文を落とすには確かにぴったりですね
私も一回使ってみたとと思います
しかし、風水ちゃんはまさかの小学生…
麻雀の用語使いまくってるし、なんだかはっちゃけたお姉さんみたいな雰囲気の話し方してますしてっきり高校生か大学生くらいだと思ってました…
自分は全く麻雀分からないのでさっぱり彼女の言ってる事は分かりません(笑)
というかこのサイトの年齢層、DMの年齢層的に分かる方はどのくらいいるのでしょうか…
いつかご一緒に麻雀出来る日が来るといいですね
それでは
- 93話「嶺上開花」 ( No.291 )
- 日時: 2015/11/22 21:28
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
風水の手によって折り畳まれたカードが広げられ、フォートレスがドラグハート・クリーチャーへと3D龍解する。
このために改造されたデッキ。その切り札が、遂に現れたのだ。
「……来たか」
ここまで、流れとしてはそれなりに上手く嵌っていた。悪くない動きだ。改造は成功と言えるだろう。
だが、それとこれとは話が別だ。改造に上手くいって満足するだけの浬ではない。対戦において、《ダイスーシドラ》は厄介極まりないクリーチャーだ。
早急に、手を打たなければならない。
「こっから押していくよ! 《アクア呪文師 スペルビー》を二体召喚! 墓地から《スパイラル・ゲート》と《ピーピング・チャージャー》を回収っ!」
押していく、と威勢良く言ったわりには、ブロッカーで守備を固め、堅実に場を整える風水。
そして彼女は、《ダイスーシドラ》に手をかける。
「《ダイスーシドラ》で攻撃するとき、能力発動っ! 自分か相手の墓地から、呪文を唱えられるっ!」
浬はふと、自分と風水の墓地を交互に見遣る。互いの墓地に、カードはそれなりに貯まっている。呪文も少なくない。なので、《ダイスーシドラ》で唱える呪文の選択肢に苦労はしないだろう。
ただ、彼女がどのような呪文を選ぶかは、あまり見当がつかないのが不安だ。自分ならこれ、というカードはあるが、浬にとって風水は、自分の予想の斜め上を先行する。理屈と理詰めで計算した予想など、簡単に覆されてしまう。
「どーしよっかなー……風向きもよくなってきたけど、ここは安牌でいこうっ。浬くんの墓地から《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》を唱えるよっ! マナ武装7で、浬くんのクリーチャーはすべて手札に戻しちゃえ!」
「っ……! 《Q.E.D.+》は、龍回避で《エビデゴラス》に戻る!」
予想外の選択が来ると思ったら、普通に浬の想像していたカードが飛んでくる。これもまた、逆に予想外だ。ペースを乱される。
「シールドをWブレイク!」
場のクリーチャーを一掃し、《ダイスーシドラ》の攻撃が、浬のシールドを打ち砕く。これで残りシールドは一枚。
「押していくとか言っていたが、それにしては随分と安全運転だな」
「まだ、風がこっちにちゃんと向いてないからね。この前は急に風向きが変わっちゃって負けちゃったから、今日はダマで攻めるよっ!」
「……そうかよ」
抜けているように見えるが、学習能力がないわけではないようだ。以前のような大胆さが薄れている。
だが、むしろこちらの方が、浬としてはやりやすい。無難な手、理詰めの手、最善手。計算する上で組み込まれる要素で攻めてくるなら、計算しやすい。それが、浬にとっての戦いやすさにつながる。
「呪文《龍素解析》! 手札からコスト7以下の水のコマンド・ドラゴン……《スペルサイクリカ》をバトルゾーンに! 墓地から《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》を唱える!」
「わわ……っ!」
《スペルサイクリカ》の能力で、墓地から《スパイラル・ハリケーン》を唱え直す。マナ武装によって、風水の場もまとめて吹き飛ばした。
《ダイスーシドラ》は墓地の呪文を唱えるカードにしては珍しく、唱えたカードを山札などに戻さない。そのまま墓地に置いておく。そのため、どんな呪文でも、何度でも唱え続けられるのが強みだが、墓地に残してしまったために、こうして浬がそれを利用できた形となる。
「さらに、《エビデゴラス》を《Q.E.D.+》に龍解だ!」
《龍素解析》によってカードを四枚ドロー、ターン最初のドローと合わせて、浬はこのターン、カードを五枚引いた。
そのため、一度はフォートレスに戻った《エビデゴラス》が、再び《Q.E.D.+》へと龍解する。
「《Q.E.D.+》でWブレイク!」
これで風水のシールドはゼロ。あと一撃でとどめだ。彼女の場にはクリーチャーもおらず、《Q.E.D.+》は龍回避によって、粘り強く場に残る。《エビデゴラス》の龍解も容易い。
だが、それでも風水は諦めなかった。
「ヤバいくらいのピンチだけど、ハコにならなかったらまだ終わりじゃないっ! 麻雀の終わりは、オーラスと点数がなくなったとき! デュエマの終わりは、ダイレクトアタックされたとき! シールドがなくなったときじゃないよっ!」
風水は墓地へと目を向ける。浬の墓地肥やしに力を注いでいた風水だが、自分の墓地にも、それなりにカードが溜まっている。
しかし彼女が見ているのは、単純な墓地の枚数ではない。墓地の中に含まれる、とあるカード——呪文の枚数だ。
「あたしの墓地にある五枚の呪文を山札に戻すよっ! そして、でてきてっ!」
墓地から五枚のカードを山札に戻る。さらに、マナゾーンのカードを七枚タップして、クリーチャーが現れた。
「積んで、鳴いて、染めて、待って——咲き誇れ、嶺上開花(リンシャンカイホー)! 《龍素記号Mj リンシャンカイホ》!」
龍素記号Mj リンシャンカイホ 水文明 (12)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 12000
このクリーチャーを召喚する時、自分の墓地にある呪文を好きな数、山札に加えてシャッフルしてもよい。こうして山札に加えた呪文1枚につき、このクリー チャーの召喚コストを1少なくする。ただし、コストは1より少なくならない。
T・ブレイカー
自分の水の呪文を唱えた時、バトルゾーンにあるカードを1枚選び、持ち主の手札に戻してもよい。
出て来たのは、超大型のクリスタル・コマンド・ドラゴン、《リンシャンカイホ》。
墓地の呪文をすべて山札に戻し、その数だけ召喚コストを減らすことのできるクリーチャーだ。さらに山札の中の呪文の割合を増やすことで、自身の能力を発動させやすくする。
「まずは呪文《ピーピング・チャージャー》! 浬くんのシールドはないから、そのままマナにいくけど、呪文を唱えたから《リンシャンカイホ》の能力が発動だよっ!」
《リンシャンカイホ》は呪文を唱えるたびに、バウンスを発動させるクリーチャーだ。すべての呪文に、バウンス効果が付加されると考えれば分かりやすいか。
「《スペルサイクリカ》を手札に! さらに次は、呪文《スパイラル・ゲート》! 《Q.E.D.+》を戻すよっ!」
「だが、《Q.E.D.+》は龍回避でフォートレス側に——」
「無駄だよっ! 《リンシャンカイホ》の能力は、クリーチャーじゃなくてカードを戻すの。だから、フォートレスの《エビデゴラス》を超次元ゾーンに!」
「ぐ……っ!」
《スパイラル・ゲート》でフォートレス側に戻され、そのまま《リンシャンカイホ》の能力でフォートレスごと除去されてしまう。
フォートレスの強みである除去耐性の高さを貫く《リンシャンカイホ》。これにより、浬は攻め手を一つ失ってしまった。もう《Q.E.D,.+》で強襲することはできない。
「《龍覇 メタルアベンジャー》を召喚! 《エビデゴラス》をバトルゾーンに! さらに《スパイラル・ハリケーン》で、《リンシャンカイホ》をバウンスだ!」
しかし浬は食い下がる。再び《Q.E.D.+》で強襲するべく、《エビデゴラス》を設置した。
さらに《リンシャンカイホ》を除去し、反撃の芽も摘む。《リンシャンカイホ》の素のコストは12と非常に重く、コスト軽減のために溜めておいた墓地の呪文も山札に戻るので、再召喚するためには、非常に重いコストを支払わなければならなくなる。
そのため、二度目の《エビデゴラス》の除去はないと踏んでいたのだが、
「呪文《龍脈術 落城の計》! コスト6以下のカード、《エビデゴラス》を超次元ゾーンに戻すよっ! さらに、あたしも《スパイラル・ハリケーン》で《メタルアベンジャー》を手札に! 《トンプウ》を召喚して、《ファンパイ》を装備! ターン終了するときに、《トンナンシャーペ》に龍解!」
フォートレスに対抗する力を持つ、龍脈術の呪文。《落城の計》によって、再び《エビデゴラス》が消されてしまった。
加えて、流れるように浬のクリーチャーを除去し、《トンプウ》を召喚、《ファンパイ》を装備、そして《トンナンシャーペ》へと流れるように龍解させてしまう。
「呪文《ブレイン・チャージャー》、そして《スペルサイクリカ》を召喚! 墓地から《スパイラル・ハリケーン》を唱え、《トンプウ》をバウンスし、ターン終了……!」
「……決まりだね。トップ目はあたしがもらったよっ!」
風水はクリーチャーを除去され、このターンの初めに、動けるクリーチャーはいない。
いや、いなかった。
要塞となっていた、フォートレスの姿となっていたクリーチャーが、龍解するまでは。
《トンナンシャーペ》に手をかけ、風水は、片手でそのカードを広げる。
「3D龍解っ! 《亜空艦 ダイスーシドラ》!」
- デュエル・マスターズ Another Mythology ( No.292 )
- 日時: 2015/11/23 01:36
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
Wild Geeseさん
こんにちは。いやさ時間的にはこんばんはですね。コメントありがとうございます。見逃してしまい、申し訳ないです……
こんな長ったらしい作品を読んで、感想まで頂けるだなんて、恐悦至極です。
しかし、ワイルドギースとはイカしてますね。元はごちうさでしょうか。それかその元ネタの映画か、傭兵部隊か……なんにせよ、チョイスがなかなかいいですね。
《ファンパイ》は本来なら、闇文明なんかも絡めて……というか、《ニンジャリバン》を使う闇単などに挿して使う方が現実的だと思います。
しかしモノクロは、水単色でこいつを使いたかったんですよね。作品的な意味で。
そこで《ヴォルグ》ですよ。
水単色で《ファンパイ》を使いたい自分が考え出した手段です。ちょうど《ガロウズ・ホール》で呼べるので、単色でも案外出せます。それでも、十枚溜めるのはきついですけどね。
それに、《英知と追撃の宝剣》とか、アドバンテージを稼げるカードは他の文明に多いので、やっぱり他の文明を足す方が強いんですけどね。
風水は小学生ですね……何気に小学生のキャラ書いたのは初めてです。
結構、彼女の年齢に騙された人は多いみたいですね。言葉の端々とかにも、ひらがなを多用したりして、幼さを表現したつもりだったんですけど。
まあ、やっぱ麻雀って、メジャーなものに比べるとマイナーゲームですよね……四人いて、牌と卓かマットないとできませんし。麻雀牌も結構高価ですしね。
しかし水文明のドラゴンで、麻雀由来のネーミングをされたクリーチャーが出て来たら、それを使わないわけにはいかないです。モノクロはクリーチャーの名前と絡めた描写をよくするので、これを使わない手はないです。
……まあ、やっぱり通じなかったみたいですけど。それはそれで仕方ないですが。
久々のコメントで元気出ました。ありがとうございます。
ではでは。
- 94話 「オーラス」 ( No.293 )
- 日時: 2015/12/01 01:02
- 名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: arA4JUne)
「また来たか……!」
再び龍解を成す《ダイスーシドラ》。スピードアタッカーでこそないが、このターンに攻撃可能な、風水のアタッカー。
浬の場にブロッカーはいない。仮にいたとしても、墓地にある除去呪文で消し飛ばされるだけだ。
「《スペルビー》を召喚っ! 墓地から《ガロウズ・ホール》を手札に加えて、そのまま唱えるよっ! 《スペルサイクリカ》を手札に戻して、《ヴォルグ・サンダー》をバトルゾーンに! 浬くんのデッキを墓地へ!」
クリーチャーが二体、浬の山札から落とされる。
しかし、それすらも些末なことである。
今の浬のシールドはゼロ。ブロッカーもいない。
「いっくよーっ! 《ダイスーシドラ》で攻撃するとき、浬くんの墓地から《龍素解析》を唱えるよっ! 手札を山札に戻して、カードを引いて……《龍素記号d2 リャンペーコ》! バトルゾーンにだして、二枚ドロー!」
風水に新たなクリーチャーが呼ばれる。意識しているのかいないのかは分からないが、きっと意識していない。それでも、きっちり《ダイスーシドラ》の力を余すことなく行使し、増援を呼び込む。
シールドとブロッカー、双方ともに失った浬は、この一撃で終わらせられる。《ダイスーシドラ》の攻撃が届いた瞬間、敗北が確定する。
「これでおしまいっ! 《ダイスーシドラ》でとどめ——」
「——ニンジャ・ストライク!」
しかし、その一撃は届かなかった。
「《斬隠オロチ》で、《ダイスーシドラ》を超次元ゾーンへ!」
最後の防御札。浬の手札から《オロチ》が飛び出し、《ダイスーシドラ》を山札の下——には行かないので、超次元ゾーン——へ送り込む。
それにより《ダイスーシドラ》の攻撃は中断され、浬は間一髪、九死に一生を得た。
「シノビかぁ……あーぁ、頭ハネみたいな気分だよ」
なんとか窮地を凌いだ浬。勝利を確信していただけに、風水は不満そうに唇を尖らせている。
「……でも」
その表情は、すぐに綻ぶ。
口元が緩み、不敵な微笑を見せた。
「けっこーいい風、吹いてきたよ?」
現れたのは、英雄の姿。
《術英雄 チュレンテンホウ》だ。
「この子がいれば、ちょっとやそっとの攻撃は通らないよ。どんな打牌も撃ち抜いちゃうんだからっ」
「よりよって、そいつか……」
《チュレンテンホウ》は、攻防共にこなす、水文明の英雄。手札のS・トリガーを放つため、浬がいくら攻撃しようとも、その攻撃は防がれてしまうだろう。
さらに、《チュレンテンホウ》が存在する限り、風水が唱えた呪文の効力は二倍になるので、展開したクリーチャーも、あっという間に除去されてしまうだろう。
攻めてもそれを防ぎ、守ってもそれを崩す。ここ一番で、浬は最悪のクリーチャーを引かせてしまったのかもしれなかった。
「もうすぐオーラスだけど、浬くんはどこまでたえられるかな?」
余裕綽々に言う風水。彼女もシールドゼロで、敗北の条件は同じはずだが、やはり場の状況が違う。
浬の場にはなにもないが、風水の場には、《スペルビー》《ヴォルグ・サンダー》《リャンペーコ》《チュレンテンホウ》と、四体のクリーチャー。アタッカーが三体、ブロッカーが二体と、実質的にこちらの攻撃を封じる《チュレンテンホウ》が一体。攻撃するクリーチャーが三体いて、攻撃を防ぐクリーチャーも三体いる。
この盤面をひっくり返すことは難しい。仮に《スパイラル・ハリケーン》などでまとめて除去しても、バウンスなので時間稼ぎにしかならない。
しかも《ヴォルグ・サンダー》で浬は山札を削られている。対する風水は《リンシャンカイホ》によって山札を回復しているため、長期戦になると山札切れの危険が付きまとう。そうなれば、浬がどんどん不利になる。
早期決着をつけたい場面だが、それも難しい局面である。
「……いや」
だが、浬はそれを否定する。
「このターンで、終わらせる」
そして、宣言した。
そのまますぐにカードを引き、マナチャージ。これでマナゾーンのカードの枚数は、13枚。
「これでマナが溜まった……《龍素記号JJ アヴァルスペーラ》を召喚」
山札の上からカードを五枚捲る浬。呪文を手札に加えることなく、五枚すべてを山札に戻した。
その中に有用なカードがなかったのか。いや、そんなことは関係ない。その中にどんな呪文があろうとも、浬がそれを手札に加える必要性も、意義も、皆無だった。
不要なカードは切り捨てる。そして、必要なカードは、そのまま唱えればいい。
「浬の知識よ、累乗せよ——《甲型龍帝式 キリコ3》!」
このクリーチャーの力を借りて。
召喚したばかりの《アヴァルスペーラ》の上に、《キリコ3》が重ねられる。それを見て、風水は露骨に嫌そうな表情を見せた。
「う、そのカードって……」
どころか呻き声を上げて、《キリコ3》を指さす始末。トラウマにでもなっているのだろうか。
前回の対戦でも、浬の勝利に一役買った、浬のもう一つのエースクリーチャー《キリコ3》。
このクリーチャーが場に出た瞬間、浬は持っている手札をすべて山札に戻す。そしてこの手札を炸薬に、山札から呪文を三発唱えることができる。
さらに、言うまでもないが、《キリコ3》は進化クリーチャーだ。
つまり、
「このターン、即座に攻撃可能なクリーチャーってことだ。さらに、能力で呪文を三枚唱えられるということは」
除去呪文を引き当てることで、風水を守るクリーチャーを排除することができる。
風水のブロッカーは二体。《スペルビー》と《リャンペーコ》だ。さらに、ブロッカーではないが《チュレンテンホウ》も風水への攻撃を防ぐクリーチャーである。
さあ、ここからは運試しだ。
「俺が呪文を三枚引き、その中のカードでお前のクリーチャーを除去しきることができるかどうか。除去しきったら俺の勝ち、できなかったらお前の勝ち。実にシンプルで分かりやすい」
「むぅ……」
あまり満足げではない、どころか風水は不服そうだ。
「風……吹いてないよ」
ボソッと、彼女は呟く。浬はそれを聞き逃さなかった。
風が吹いていない。風向きが悪いとか、いい風じゃないとか、そうではなく、風が吹かない。つまりは無風。
それは運気が流れていない、と見るべきだろう。前提として運気の流れを信じるのならば、そう推測できる。
つまり今の状況は、どちらもフェアな状態というわけだ。以前のように、風水に都合の良い引き運で痛い目を見ることもない。今現在のデッキに残っている呪文の枚数と種類を概算しても、三枚引いて三体のクリーチャーを退かすことのできる確率は、大体50%といったところ。
勝率50%、同時に敗北の確率も50%。
単純明快にして、純粋な天運に任せた勝負だ。
浬は山札を捲る。
「一枚目——」
最初の呪文が、ヒットした。
捲ったカードを、ゆっくりと公開する。
「——《幾何学艦隊ピタゴラス》」
「っ、う……!」
「《スペルビー》と《リャンペーコ》を手札に」
最初に捲った呪文は、除去カードの《ピタゴラス》。マナ武装5もあり、一度に二体のブロッカーを排除する。
ここで《チュレンテンホウ》を戻さなかったのは、風水の手札にS・トリガーの除去呪文がないこと——つまり、風水が《チュレンテンホウ》の能力が使えない手札であることを想定してだ。とはいえ、潤沢な手札と、呪文と密接に関係するクリーチャーを操る風水だ。手札にそういったカードが一枚もないということは考えにくいので、あくまで保険だが。
なにはともあれ、残っている守り手は《チュレンテンホウ》のみ。残り二枚引ける呪文から、一枚でも除去札が来れば、浬の勝ちだ。
「二枚目——」
次のカードを捲る。
《ピタゴラス》に続き、捲られた呪文は、
「——《連唱 ハルカス・ドロー》」
「やた……っ!」
「くっ……!」
風水が小さくガッツポーズを決めるのが見えた。
二枚目の呪文は《ハルカス・ドロー》。浬はカードを引くだけに終わる。
しかも引いたカードが、《英雄奥義 スパイラル・ハリケーン》だ。デッキ内の除去カードがまた一枚減ってしまった。
デッキ内の除去呪文と、そうでない呪文の比率は、大体半々だが、少しだけその比率が、そうでない呪文へと傾く。
泣いても笑っても、次の一枚。最後の呪文で、勝敗が決まる。
そして、浬は再び山札を捲っていった。
「三枚目——」
残り少ない山札のほとんどが捲られ、デッキが残り数枚になった。
そこで、浬は一枚のカードを引き当てる。
呪文のカード。この対戦の勝敗を左右する、たった一枚のカードだ。
浬が引き当てた、最後の呪文。それは——
「——《龍素知新》」
「やっ……うん? え?」
二枚目の呪文と同じように、ガッツポーズを決めそうになる風水だが、すぐに首を捻る。
浬が引いた最後の呪文は、除去カードではない。墓地の呪文を唱え直す呪文、《龍素知新》だ。
そのカード単体では、なんの効力もない。クリーチャーの除去などできるカードではない。
だが、それは《龍素知新》だけを見た場合だ。
「《龍素知新》を発動。墓地からコスト7以下の呪文を唱えるぞ」
つまり、墓地に落とされたり、既に使用した呪文が戻ってくるのだ。
浬には、《ヴォルグ・サンダー》によって墓地に落とされた呪文が何枚もある。さらに、自分でも呪文は唱えていた。
除去カードの一枚や二枚、簡単に呼び戻すことができる。
「墓地から《スパイラル・ゲート》を唱える。《チュレンテンホウ》を手札に!」
「えぇ!? やばいよ……!」
最後の守りを失った風水。ブロッカーはいない。《チュレンテンホウ》もいないので、手札からトリガーを唱えることもできない。
そして浬の場には、このターンに出されたばかりの《キリコ3》がいる。
決着だった。
浬は《キリコ3》に手をかけ、横に倒す。
「《甲型龍帝式 キリコ3》で、ダイレクトアタック!」
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