二次創作小説(紙ほか)

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デュエル・マスターズ Another Mythology
日時: 2016/11/05 01:36
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: U7ARsfaj)

 初めましての方は初めまして。モノクロと申す者です。
 今作品はモノクロが執筆しているもう一つの作品『デュエル・マスターズ Mythology』の外伝、いわゆるスピンオフ作品と銘打ってはいますが、ほぼ別物と化しています。
 一応今作は、本編とは違った独自のストーリーを展開しつつ、『デュエル・マスターズ Mythology』の謎を別のアプローチで解き明かしていく、というスタンスで執筆する予定です。さらに言えば、こちらはあちらの作品よりもライトで軽い作風に仕上げたいと思っています。
 カード解説は『デュエル・マスターズ Mythology』と同じ。また、オリジナルカードも登場する予定です。

 珍しく前置きがコンパクトになったところで、モノクロの新しい物語を、始めたいと思います——



目次

プロローグ「とある思考」
>>1
1話「始動」
>>4
2話「超獣世界」
>>7
3話「太陽の語り手」
>>8 >>9
4話「遊戯部」
>>12
5話「適正」
>>15
6話「賢愚の語り手」
>>16 >>17
7話「ピースタウン」
>>18 >>24
8話「月魔館」
>>27 >>28
9話「月影の語り手」
>>29 >>30
10話「北部要塞」
>>31 >>35
11話「バニラビート」
>>36 >>37
12話「幻想妖精」
>>38 >>39
13話「萌芽の語り手」
>>40 >>43
14話「デッキ構築の基本講座」
>>60
15話「従兄」
>>63

16話〜58話『ラヴァーの世界編』
>>213

59話〜119話『継承する語り手編』
>>369



『侵革新話編』

120話「侵略開始」
>>367
121話「十二新話」
>>368 >>370
122話「離散」
>>371 >>372
123話「略奪」
>>373 >>374
124話「復讐者」
>>375 >>378
125話「time reverse」
>>379 >>380 >>381
126話「賭け」
>>382 >>383 >>384 >>385
127話「砂漠の下の研究所」
>>386 >>387 >>389 >>390 >>391
128話「円筒の龍」
>>392 >>393 >>394 >>395
129話「奇襲」
>>396 >>397 >>398 >>399 >>400
130話「死の意志」
>>401 >>402 >>403 >>404
131話「殺戮の資格」
>>405 >>406
132話「煩悩欲界」
>>407 >>408 >>409 >>410 >>412
133話「革命類目」
>>413 >>414
134話「一難去って」
>>415




Another Mythology 〜烏ヶ森編〜
1話〜25話『ラヴァーの世界編』
>>213

Another Mythology —烏ヶ森新編—
26話「日向愛」
>>215
27話「■■■■」
>>221 >>225 >>229 >>337 >>338
28話「暴龍事変」
>>339 >>340 >>341 >>344 >>345 >>346 >>347 >>348 >>349 >>350 >>351 >>352 >>353
29話「焦土神剣」
>>354
30話「事変終結」
>>355




番外編

東鷲宮・烏ヶ森二校合同合宿
>>528





東鷲宮中学校放送部

第一回「空城 暁」
>>83
第二回「霧島 浬」
>>93
第三回「卯月 沙弓」
>>95
第四回「霞 柚」
>>132
第五回「日向 恋」
>>299






登場人物目録
>>57

39話「怒英雄」 ( No.139 )
日時: 2014/10/29 21:53
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

怒英雄 ガイムソウ 火文明 (7)
クリーチャー:ガイアール・コマンド・ドラゴン 7000
マナ武装7:このクリーチャーとバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに火のカードが7枚以上あれば、《怒英雄 ガイムソウ》以外の進化ではない火のクリーチャーを1体、自分の手札からバトルゾーンに出してもよい。そのクリーチャーは「スピードアタッカー」を得、ターンの終わりにバトルゾーンから自分の手札に戻す。
W・ブレイカー


「これが《怒英雄》……!」
 戦慄する暁の前に立つのは、《怒英雄 ガイムソウ》。《ガイゲンスイ》に並ぶ、火文明の英雄だ。
『うらあぁぁぁぁぁぁ! オレの能力、マナ武装7、発動ッ!』
 《ガイムソウ》が咆哮する。すると、大地が震撼し、《ガイムソウ》のマナゾーンから爆炎が噴き出し、怒り狂ったように燃え盛る。
 爆炎は《ガイムソウ》に纏われ、堅牢な鎧となった。
 そして炎の中から、一体の龍が飛び出す。
『出て来い! 《アクセル・カイザー「迅雷」》!』


アクセル・カイザー「迅雷」 火文明 (9)
クリーチャー:レッド・コマンド・ドラゴン/ハンター/エイリアン 9000
バトルゾーンにある自分のドラゴンはすべて「スピードアタッカー」を得る。
W・ブレイカー
自分のドラゴンはすべて、シールドをさらに1枚ブレイクする。


「コスト9のドラゴンがタダで出た!?」
『これがオレの能力だぜ。手札の火のドラゴンを、スピードアタッカー付きで呼び出せる。まぁ《「迅雷」》は味方ドラゴンをすべてスピードアタッカーにするから、関係ねぇがな』
 得意気に言うガイムソウ。それだけでなく、
『さらにドラゴンのシールドブレイク数も増えるから、このターンに決めちまえば手札に戻ろうと関係ねぇ。さぁ、覚悟しやがれ!』
 《ガイムソウ》の怒声と共に、暁へと一斉にドラゴンが襲い掛かって来る。
『まずは《「迅雷」》で攻撃! Tブレイクだ!』
「……っ!」
 《アクセル・カイザー「迅雷」》が、その名の通り迅雷の如きスピードで駆け抜ける。気付けば、暁のシールドは二枚にまで減らされていた。
「やば……!」
『おらおらぁ! ボケッとしてんじゃねぇぞ! 《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》で、残りのシールドをブレイクだ!』
 続いて《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》も、暁残ったシールドをすべて引き裂く。
 これで、シールドゼロ。
『口ほどにもねぇなぁ! 最後はオレが直々にとどめを刺してやらぁ! 《怒英雄 ガイムソウ》で、ダイレクト——』
「待った! S・トリガー発動だよ!」
 《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》が割った最後のシールドが、光の束となって収束していく。
「《天守閣 龍王武陣》! 山札の上から五枚捲って、選んだ火のクリーチャーのパワー以下の相手クリーチャーを一体破壊する!」
『……チッ』
 つまらなさそうに舌打ちする《ガイムソウ》。
 《ガイムソウ》のパワーは7000、暁は捲った五枚の中から、パワー7000以上のクリーチャーを引かなくてはならない。
 《天守閣 龍王武陣》の能力で、暁の山札が捲られていく。
 《フレフレ・ピッピー》《爆速 ココッチ》《ギャノバズガ・ドラゴン》《爆竜 バトラッシュ・ナックル》——
「って、何気にパワー7000以上のクリーチャー出ないし……」
 捲れるカードはあと一枚。その一枚で、逆転に繋がるカードを引きたいところだ。
「来て、なにか来て……!」
 そう祈りながら、最後のカードが捲られる——
「——来たぁ! 《爆竜勝利 バトライオウ》だよ! 《バトライオウ》のパワーは8000、《ガイムソウ》を破壊!」
『な……っ!?』
 《天守閣 龍王武陣》から発射された《バトライオウ》が、腕に装着された剣で《ガイムソウ》を貫く。
 これで、とどめまでは届かない。
「これで凌いだ。さあ、どうする?」
「チィ……ターンエンドだ」
 そしてこのターンの終わりに、《ガイムソウ》の能力で現れた《アクセル・カイザー「迅雷」》が手札に戻る。
「さあ、私のターンだよ。《ボルシャック・NEX》を進化、《超熱血 フルボコ・ドナックル》!」
 進化して現れた《フルボコ・ドナックル》。このクリーチャーなら、相手クリーチャーを殴り倒しつつ、シールドも破ることができる。
「決めるよ! まずは《コッコ・ルピア》でシールドをブレイク! 続けて《フルボコ・ドナックル》で《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》を攻撃!」
 《フルボコ・ドナックル》の拳が、《時空の火焔ボルシャック・ドラゴン》を殴り飛ばす。その衝撃で、ガイムソウの残った二枚のシールドが吹き飛ばされる。
 同時に《フルボコ・ドナックル》もアンタップするので、そのままダイレクトアタックを決めてしまうつもりだったが、
「まだだぁ! S・トリガー《天守閣 龍王武陣》!」
 砕かれた最後のシールドから、S・トリガーが放たれる。
「でも、《フルボコ・ドナックル》のパワーは11000、そう簡単には破壊できないよ」
 いくらドラゴンのパワーが高いと言っても、非進化ドラゴン程度なら、そう簡単に10000を超えたりはしない。《フルボコ・ドナックル》が破壊される可能性は低いはずだが、
「知ったことか! 選ぶのは《真実の皇帝 アドレナリン・マックス》! こいつのパワーは12000、《フルボコ・ドナックル》を破壊だ!」
「うっそ!?」
 思いのほか、あっさりと破壊されてしまった。
「そんな、《フルボコ・ドナックル》が……」
「残念だったなぁ! てめぇなんざにやられるオレじゃねぇんだよ!」
「うぅ……」
 頼みの綱を潰され、打つ手なしとなった暁。
 もうシールドもないので、S・トリガーにも期待できない——
「……なーんてね」
 ——のは、ガイムソウの方だった。
「あ?」
「まだ私のターンは終わってないよ! 《フルボコ・ドナックル》の勝利によって——」
「《バトライオウ》か? ハンッ、今更そんな奴が出たところで、なにもできねぇよ!」
 前のターン暁は《天守閣 龍王武陣》で《バトライオウ》を手札に加えていた。よってこのタイミングで出すとしたら、《バトライオウ》だが、
「違う違う、一応《バトライオウ》も出すけど、本命はこっちだよ! おいで、コルル!」
「おうよ!」
「!」
 暁の手札から飛び出したのは、《コルル》だった。
 《コルル》は火のドラゴンとファイアー・バードの勝利に反応して現れるスピードアタッカー。《バトライオウ》にはない奇襲性と速効性がある。
「くっ、やべぇ……!」
 歯噛みするガイムソウ。しかし、シールドをすべて失った彼に、打つ手はない。
 そんな彼に、《太陽の語り手》が飛び掛かる。

「《太陽の語り手 コルル》で、ダイレクトアタック——!」



「——クソッ! 負けたぁ!」
 神話空間が閉じ、元の小部屋へと戻ってくる暁とガイムソウ。
 戻るや否や、ガイムソウは天を仰いで叫び出した。
『ガイムソウよ、分かったか』
「あぁ!?」
『まだ未熟な面もある、粗削りなところもある。しかし、暁は強い』
「…………」
『彼女はまだ、その才を完全に開花させていない。しかしその才は、儂らをもさらなる高みへと導くものだ』
「……知ったことかよ」
 諭そうとする《ガイゲンスイ》の言葉を、しかしガイムソウは正面から突っ撥ねる。
「オレはいつだって、アポロンさんに付き従う! なにがあろうと、それは曲げねぇ!」
『ガイムソウ!』
 《ガイゲンスイ》が声を荒げる。いつも物静かで、落ち着いている彼からは考えられないような、鋭い声だった。
『あの方はもういないのだ……そなたも分かっているだろう』
「だから関係ねぇつってんだろうが! あの人がいないからって、それがこの女に従う理由にはならねぇ!」
 対するガイムソウも声を荒げる。こちらはただでさえ響く声が、さらに大きく響き、同時に胸の内にも悲痛なまでに響いてくる。
 だがそんなガイムソウに対し、《ガイゲンスイ》は言う。
『ガイムソウ、そなたが本当にアポロンの意志に添うというのなら、乱れたこの世界を放っておいていいのか!?』
「っ……!」
『コルルはアポロンの後を継ぐ者、そしてその使い手である暁も、それと同じ存在だ』
 つまり、
『彼女の行動そのものが、アポロンの意志に繋がる……分かるな、ガイムソウ』
「……チッ」
 ガイムソウは舌打ちすると、次の瞬間にはカードの姿となっていた。
 そして、暁の手元へとやって来る。
「おおぅ」
『暁つったか。やっぱりオレは、てめぇのことは認めねぇ』
「え……」
 思っていたのとは違う言葉を放つガイムソウだが、
『だが少しだけてめぇに興味を持った。だから、しばらくてめぇのことを、傍で見極めるとする』
「それって……仲間になってくれる、ってことだよね?」
『勘違いすんな! てめぇがアポロンさんに匹敵するなんざありえねぇが、あの人の凄さの一割でも見出せたなら……仲間になってやらねぇこともねぇ』
「……《ドラゴ大王》といい、こういうのってなんて言うんだっけ。ツンデレ?」
 なにはともあれ。
 暁の手には、新たな英雄のカード《怒英雄 ガイムソウ》がある。
 新たなクリーチャーが、暁の仲間となったのであった。

40話「呪英雄」 ( No.140 )
日時: 2014/10/23 00:42
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

 『月魔館』最奥部。
 かつてドライゼが眠っていた小さな部屋。他にも、彼の主たる神話がかつて従えていた同胞も眠る地である。
 しかしそこには、彼女の最大の側近であったドライゼすらも知らない、深淵が広がっていた——



 右も左も、上も下も、前も後も、すべての方向が有耶無耶になりそうな真っ暗闇の世界。
 その世界に足を踏み入れた、男女が一組いた。
「なんだか特別な場所って感じだったけど……《ツミトバツ》のお陰で、思ったよりも簡単に入れたわね」
 黒を基調とした意匠の、長身の少女——沙弓は、手に持った《凶英雄 ツミトバツ》のカードを仕舞いつつ呟く。
「なんというか、不気味なところだな……得体が知れないというか」
「その得体を知るために来たのよ、カイ。さてさて、あの獄卒とやらは出て来るかしら——」

 ——また来たか——

 と、どこからか声が聞こえてくる。その声がどこから発せられているのか。何の声なのかは分からない。ただ、言い様もない、重苦しい声であった。
「出て来たわね。ちょっとあなたに聞きたいことがあってね。この世界、この真っ暗な空間について。そして前に言ってた、重罪によって投獄されているっていう悪魔龍たちについて、全部」
「直球だな……」
 やや心配になる浬。前回、沙弓はこの空間で精神的にやられかけている。また同じことにならなければよいが。
 ——ここは監獄。罪を背負いし悪魔龍を封じる場所——
「じゃあ、その悪魔龍っていうのは、そもそもなんなのかしら? その罪っていうのは?」
 ——かつて、《月光神話》と謳われた者の配下たる龍だ。死線を越えた龍は、その行いのすべてが罪となる。罪には罰を。《月光神話》無き今、幽閉の罰以外を与えることは出来ぬ——
「…………」
 顎に手を添え、考えるそぶりを見せる沙弓。
(要するに、一回死んで復活させたドラゴンは、それだけで罪がある。以前、その罪に罰を与えるのは龍の主だったけど、今はその主がいないから、代わりのこの声が罰を与えている、ってことなのかしら)
 それだけではないような気がするが、表面的にはそういうことらしい。ただ、
(《月光神話》ってなにかしらね……確かドライゼの主人は《月影神話》って言ってたけど、違うクリーチャーなのかしら)
 名前は似ている。少なくともなにかしらの繋がりはありそうだ。
「ねぇドライゼ、《月光神話》って——」
 そう思ってドライゼに尋ねるが、
「…………」
「ドライゼ……?」
 彼は険しい目つきで、黙していた。何かを悔やんでいるように、過去を噛みしめるように。
 そんなドライゼにどう声を掛けようかと迷っているうちに、またあの声が聞こえる。
 ——罰の時間だ——
「え?」
 ——汝のへの罰、そして忌まわしき呪われた過去の罰。罰を与え、罰を享受する悪魔龍に応えよ——
「ちょ、ちょっと……」
「ゆみ姉、これは……」
 まずい気しかしない。そう思った刹那、沙弓の足元になにかが現れた。
「っ」
「ハニー!」
 現れたのは、錆付いた鉄の板。板はエレベーターのようにそのまま沙弓を持ち上げてたと思えば、今度は一気に四方八方へと広がった。最後に端から有刺鉄線が飛び出す。
 気付けば、一瞬にしてドーム状のコロシアムのようなものが出来上がっていた。さらに向かいには、クリーチャーと思しき影が見える。
「あれは……」
「ウラミハデスだ。かつては《呪英雄》と呼ばれたクリーチャーだな」
「英雄のクリーチャーってことね。《ツミトバツ》と同じ」
 前回は浬と戦わせられ、負けた方が投獄という無茶苦茶なルールであったが、この場にいるのは沙弓とドライゼ、そして目の前のウラミハデスのみ。
「……今度は、まともに戦えそうね。いきなり罰の時間だ、とか言われても困るけれど、これって勝てばあの子を私が貰えるのよね?」
「さてな。だが気を付けろ、相手は英雄。一筋縄じゃいかない」
「そんなことは分かってる……じゃ、始めましょうか」
「ああ!」
 次の瞬間、その空間の空気が豹変する。



「呪文《超次元リバイヴ・ホール》。《特攻人形ジェニー》を回収し、《時空の斬将オルゼキア》をバトルゾーンへ」
「《ボーンおどり・チャージャー》を発動、さらに《コッコ・ドッコ》も召喚よ」
 沙弓とウラミハデスのデュエル。
 まだお互いにシールドは五枚。序盤は墓地肥やしやハンデスなどで大きな動きも見せていないが、そろそろ場も動き始めたようだ。

「出でよ、呪われし我が身——《呪英雄 ウラミハデス》」

 禍々しき赤い大鎌と、数多の霊魂を従えた呪いの悪魔龍、《ウラミハデス》。
 そのおぞましき声により、彼のマナからさらに大量の霊魂が姿を現した。


呪英雄 ウラミハデス 闇文明 (7)
クリーチャー:デーモン・コマンド・ドラゴン 7000
マナ武装 7:このクリーチャーをバトルゾーンに出した時、自分のマナゾーンに闇のカードが7枚以上あれば、《呪英雄 ウラミハデス》以外の進化ではない闇のクリーチャーを1体、自分の墓地からバトルゾーンに出してもよい。
W・ブレイカー


『我が力により蘇れ《狼虎サンダー・ブレード》』
 マナ武装7により、《ウラミハデス》の墓地からさらなる悪魔が蘇る。
「やば……」
『《コッコ・ドッコ》を破壊』
 《サンダー・ブレード》に切り裂かれてしまう《コッコ・ドッコ》。これで沙弓の場に残ったのは《ブラッドレイン》のみ。
『《オルゼキア》でWブレイク』
「っぅ……!」
 さらに《ウラミハデス》はここで攻勢に転じたようで、沙弓のシールドを殴り始める。
「きっついわね……私のターン」
 相手の場には、Wブレイカーが三体。沙弓の場にはブロッカーがなく、シールドは三枚。ブロッカーを出すなりクリーチャーを破壊するなりで次ターンは防げるも、ブロッカーはおらず、能動的に除去するカードもない。
「……《コッコ・ドッコ》を召喚。さらに呪文《インフェルノ・サイン》で《黒神龍オドル・ニードル》をバトルゾーンに」
 ターン終了、と小さく呟いてターンを終える。
「おい……大丈夫か、ハニー」
「何度も言うけどハニーはやめなさい。大丈夫よ、たぶん。これで少なくとも1ターンは稼げるわ」
「だが、相手の場には《オルゼキア》がいるんだぞ……!」
 普通に《オドル・ニードル》が除去される可能性もあるが、それ以上に厄介なのは《オルゼキア》だ。このクリーチャーは、他のデーモン・コマンドが破壊されることが覚醒するサイキック・クリーチャー。しかも覚醒時に手札を二枚捨てさせる能力を持つ。
 つまり、このターン凌いでもその反撃の芽を摘まれてしまうのだ。
『我がターン。二体目の《ウラミハデス》を召喚、マナ武装7発動。蘇れ《雷鳴の悪魔龍 トラトウルフ》』
 《ウラミハデス》はさらに二体のクリーチャーを展開し、次のターンで確実にとどめを刺す準備を整えた。幸いにもマナを使い切ったため、このターンにやられることはないが。
『《ウラミハデス》で《オドル・ニードル》へ攻撃』
「《オドル・ニードル》の効果で互いに破壊ね」
 大きく鎌を振り降ろした《ウラミハデス》は、爆散した《オドル・ニードル》の棘に貫かれ、両者諸共墓地へと送り込まれたが、
『《サンダー・ブレード》でWブレイク、《オルゼキア》でシールドをブレイクだ』
「っ……!」
 砕かれたシールドの破片が散る。これで沙弓のシールドはゼロ。
 いよいよ、後がなくなってしまった。
『そしてこのターンの終わり、デーモン・コマンド・ドラゴンである《ウラミハデス》が破壊されたことで、《オルゼキア》は覚醒する——覚醒せよ、《魔刻の覚醒者 G・オルゼキア》』


魔刻の覚醒者 G(ギャラクティカ)・オルゼキア 闇文明 (14)
サイキック・クリーチャー:デーモン・コマンド 12000
このクリーチャーが覚醒した時、相手の手札を2枚見ないで選び、捨てさせる。
T・ブレイカー


『《G・オルゼキア》が覚醒したことで、手札を二枚墓地へ』
 手札まで削り取られてしまい、逆転の芽は薄くなってしまう。
「…………」
 が、しかし、
「……うん、これならまだなんとかなるかしら」
 沙弓の目からはまだ、敗北の色は見えていなかった。
「ここからならひっくり返せるわね」
「どうするんだ?」
「こうするのよ」
 あっさりと答えた沙弓は、手札のカードを返す。
 そして、彼女のマナが漆黒に染まった。

「終生に抗う英雄、龍の力をその身に纏い、罪なる罰で武装せよ——《凶英雄 ツミトバツ》!」

 黒いマナの力を得て現れた、全身を鋭利な刃物で武装した悪魔の龍。あらゆる罪と罰を司る英雄、《凶英雄 ツミトバツ》。《ブラッドレイン》と《コッコ・ドッコ》の力も借り、僅か4マナで召喚された。
 《ツミトバツ》は沙弓のマナゾーンから闇の力を吸収し、その吸収した力で武装した無数の刃物を、《ウラミハデス》のクリーチャーへと解き放つ。
「《ツミトバツ》のマナ武装7。あなたのクリーチャーのパワーはすべて、マイナス7000よ」
 これにより、ウラミハデスの場は半壊。辛うじて残ったのは《G・オルゼキア》と《トラトウルフ》のみだが、
「さらに呪文《魔狼月下城の咆哮》。《トラトウルフ》のパワーをマイナス3000、マナ武装5発動で《G・オルゼキア》を破壊」
 その残ったクリーチャーも、根絶やしにされる。
 これで、一気に戦況はひっくり返った。
「《ブラッドレイン》でシールドをブレイク……ターン終了よ」
「……我がターン。呪文《超次元ミカド・ホール》、《ブラッドレイン》のパワーをマイナス2000、破壊。さらに超次元ゾーンより《時空の封殺ディアス Z》をバトルゾーンへ」
 とはいえ、ウラミハデスもまだ価値の目が消えたわけではない。クリーチャーゼロの状態からでも、なんとか巻き返そうとするが、

「永遠なる死に逆らい、抗え——《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》!」

 時空の扉より現れた悪魔は、悪魔龍の咆哮で無残に掻き消されてしまった。
「《ツミトバツ》でWブレイク!」
「ぬぅ……《墓標の悪魔龍 グレイブモット》《西武人形ザビ・バレル》を召喚」
「残念。呪文《魔狼月下城の咆哮》、《ザビ・バレル》のパワーを落として破壊、マナ武装5で《グレイブモット》も破壊よ。そして、《ツミトバツ》でWブレイク!」
 召喚しても召喚しても、次々と墓地に追いやられてしまうクリーチャーたち。守り手すらも、その使命を全うすることなく死に向かう。
 ウラミハデスのシールドが、数多の刃物で切り裂かれる。最後の奇跡も起こらず、もはや無力な英雄に、《デッド・リュウセイ》が牙を剥く。

「《永遠の悪魔龍 デッド・リュウセイ》で、ダイレクトアタック——!」



 神話空間が閉じ、沙弓たちが戻ってきた先は、あの真っ暗な空間ではなく、『月魔館』最奥部の小部屋だった。
「……どういうカラクリなのかしらね、これ。一度戦ったらここに戻されるって」
「さあな。だが、無駄足ではなかっただろ」
「そうね……少しは、あの場所についても分かったかしら」
 実際のところはまだ何かあるような気がしてならないが、少なくとも表面的にはどういう場所かは分かった。無論、あの声が嘘をついていなければの話だが。
 この直後に、《ツミトバツ》や新しく手に入れた《ウラミハデス》のカードをかざしてみたが、あの空間へ行くことはできなかったので、二人はとりあえず、暁や柚たちと合流するために、町へ戻ることにした。

烏ヶ森編 10話「フォートレス」 ( No.141 )
日時: 2014/10/23 00:45
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

「北部要塞でなにかの反応をキャッチしたよ」
 一騎とミシェルが部室に入って早々、氷麗はそんな言葉を発した。
「……えっと、北部要塞って、俺とミシェルが最初に行ったとこ……テインが眠ってた場所だっけ?」
「はい。そこである反応があったの」
「ある反応ってなんだ?」
「そこまでは分からないけど、龍に近いもの……もしかしたら、《焦土神話》の配下たるクリーチャーが目覚めたのかもしれない」
 《語り手》のクリーチャーが目覚めたことで、《語り手》が眠る地で共に封じられていた、神話の配下のクリーチャーも、時間が経てば目覚めるようになっている。この話自体は、一騎たちもリュンから聞いていた。
「というわけで、確かめに行きましょう」
「え、あ、うん。分かった」
「いいのかよ。お前、妹分探すんじゃなかったのか?」
「でも、テインの仲間が復活するんなら、放ってはおけないし……」
「相変わらずのお人好し……まあいいか。どうせ手探りなんだ、なにかしらの手がかりがあるかもしれないしな」
 とりあえず、今日の方針は決定した。後は誰が行くかだが、
「こんにちは……あ、四天寺先輩と剣埼先輩、葛城さんも。もう来てたんですね」
「早いですねー。でもなんで同じ一年生の夢谷君の方が遅いのでしょうかー?」
「なんでっすかね? はははっ」
 ちょうど良いタイミングで、全員が揃ったようだ。



 本日の選考の結果、北部要塞へと向かうのは固定の一騎とナビゲーターの氷麗、そしてミシェル、美琴の四人となった。
「ここが先輩方が初めて訪れた場所……なんか、少し不気味ね」
「寂れた廃墟だしな。で、その反応ってのは前と同じ」
「最奥部の小部屋。なので、もうしばらく進むよ」
 周囲に何者かの気配はないが、それでも不意に何か起こらないよう、細心の注意を払いつつ慎重に歩を進めていく。
 やがて、一騎はふとつぶやいた。
「……なにか聞こえない?」
「怖いこと言わないでください。なんですか?」
「いや、足音みたいなのが聞こえるんだけど……ちょっと止まって」
 一騎に促され、四人は足を止める。そして耳を澄ますと、確かに、微かだがなにか音が聞こえる。
「しかも遠ざかってる……? 俺たちと同じ方向に進んでいるみたい」
「よく分かりますね……」
「こんな寂れた廃墟になんの用なんだか。あたしらも人のことは言えないが、物好きだな」
「……もしかしたら」
 氷麗がぽつりと言う。
「リュンさんから聞いたことだけど、以前この場所で龍素の実験をしていたリキッド・ピープルの集団がいたって話を聞いたことがある」
「なんのために?」
「それは分からないけど……もしかしたら、その一派がまたなにかするつもりなのかも」
 さらに言えば、リキッド・ピープルは龍素の研究のために、眠りから覚めたり、封印が解けたりした、神話の遺産——《賢愚神話》の研究成果——を持ち出したこともある。ゆえにもしかしたら、今回も《焦土神話》の遺産を狙っているのかもしれない。
「それはやめてほしいなぁ……誰であってもそれは僕の仲間か、隊長の大切な武器。それをどこぞの者とも知らぬ他の文明のクリーチャーに渡すわけにはいかないよ」
「テイン……じゃあ、そのクリーチャーを止めないとね」
「普通の歩幅で、通常よりスローペースで歩いて追いつけたんだ。走ればすぐに追いつけるはずだ」
 ということで、四人は周囲への警戒を忘れないままに、一気に駆け出した。
 すると、一分もしないうちに何者かの背が見える。人型ではあるが、明らかに人間のそれではない。むしろ機械的で、ロボットかサイボーグを思わせる質感だ。
 こちらの足音に向こうも気付いたようで、そのクリーチャーらしきものはバッと振り返る。
「何者だ!」
「それはこっちの台詞。あなたはここでなにをしているの?」
「貴様らにそれを教える筋合いはない。我々の作戦の邪魔をするのであれば消えてもらうぞ」
 そのクリーチャーは、どこからともなく——というより、虚空から二丁の拳銃のような武器を出現させ、それを手に取り、その拳銃を床に向けて撃つと、今度はその弾痕から水飛沫が散り、その水が凝固する。そして凝固した水は結晶となり、水晶のように輝く、青と赤の一対の龍となった。
「我が名はガンバランダー! 我々リキッド・ピープルの新たな龍素記号、《ドロダブルBros.》と共に相手をしよう!」
 高らかに名乗りを上げ、宣言するガンバランダー。
「……おい一騎」
「なに?」
「お前先に行け」
 ミシェルはデッキを取り出しつつ、顎で一気に進むべき方向を示す。
「こんなところを一人でほっつき歩いているところから、こいつは単独行動っぽいが、仲間がいないとも限らない。ここはあたしらでなんとかするから、例の反応とやらはお前が確認しに行け」
「え、でも……」
「いいから行け。こんな奴相手に手間取ってもいられないしな」
「う、うん、分かった。ありがとう……テイン、氷麗さん」
「了解したよ、一騎」
「ミシェル先輩の言う通り。行きましょう」
 一騎とテイン、そして氷麗の三名はガンバランダーの脇を通り過ぎて、そのまま奥へと向かおうとするが、
「っ、そう簡単に行かせると思うな! ドロダブルBros.!」
 ガンバランダーの命令に応じてドロダブルBros.が一騎たちへと迫るが、一枚のカードが飛来し、その動きが止まる。
「そう簡単に止めさせもしないがな。美琴、そっちは頼んだ」
「はい! この得体の知れない者の行動、見逃せません!」
 ドロダブルBros.の動きを止めたカードと、美琴が取り出したカード、それぞれを中心に神話空間が展開される。

烏ヶ森編 10話「フォートレス」 ( No.142 )
日時: 2014/10/25 05:28
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

「《龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー》を召喚!」


龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー 水文明 (6)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 6000
相手がカードを引いた時、同じ枚数のカードを引いてもよい。
W・ブレイカー


 ミシェルとドロダブルBros.のデュエル。
 現在どちらも準備段階で、シールドは五枚ずつ。ミシェルの場には《フェイト・カーペンター》が一体。ドロダブルBros.の場は、先ほど召喚した《ニュートン専用パンツァー》のみ。
「…………」
 見たところドロダブルBros.の使用文明は水と自然。マナブーストとドローを重ねてアドバンテージを取っていくデッキのように見えるが、
(マナゾーンに《ドンドン打つべしナウ》……成程、そういうデッキか)
 まだ確定はできないが、十中八九ミシェルの考えるデッキ構成だろう。
「なら、さっさと決めたいところだが……あたしのターン。ドロー——」
「《ニュートン専用パンツァー》の能力発動。相手のドローに反応し、私もドローする」
 ミシェルがカードを引くのと同時に、《ニュートン専用パンツァー》から射出された光線がドロダブルBros.のデッキトップを弾き、それがそのまま手札となる。
「こうなるんだよなぁ」
 ミシェルはこのまま一気に勝負をつけるために動きたいが、そのためにドローを重ねると相手に大量の手札を与えることとなる。かといってちまちまやっていれば、それはそれで相手の長期的なアドバンテージへと繋がる。
「……ま、もう少し様子を見るか。《白骨の守護者ホネンビー》を召喚。山札の上三枚を墓地へ送り、墓地から《トップギア》を回収。ターン終了だ」
「私のターン。呪文《ブレイン・チャージャー》、カードをドローし、チャージャーをマナゾーンへ。続けてシンパシーでコストを1軽減、呪文《エナジー・フォーメーション》、カードを二枚ドロー。ターンエンド。」
「あたしのターンだ。ドロー——」
「《ニュートン専用パンツァー》の能力でこちらもドロー」
 着々と手札を溜めていくドロダブルBros.。手札を増やすだけでそれに見合った手札消費をしていないが、しかしそのことが、ミシェルの中では自分の考えが確信に変わっていく根拠となりつつあった。
「だったら、やっぱ引けないか……《一撃奪取 トップギア》を二体召喚。ターン終了だ」
「私のターン」
 どちらも特別な行動はまだ起こしていない。精々ドロダブルBrosu.が《ニュートン専用パンツァー》を呼び出した程度だ。
 しかしここで、ドロダブルBrosに更なる追い討ちをかける。
「この私《龍素記号Tb ドロダブルBros.》を召喚!」
 《ドロダブルBros.》が繰り出すのは、《ドロダブルBros.》自身。蒼く輝き紅く煌めく、二頭一対の結晶龍だ。
 とはいえこれでマナはほとんど使い切ってしまった。《ニュートン専用パンツァー》で攻撃することもせず、《ドロダブルBros.》はそのままターンを終える。
「じゃ、あたしのターン。ドロー——」
 と、その時。ミシェルのドローに対し、二体の結晶龍が反応した。
『そのドローにより、まずは《ニュートン専用パンツァー》の能力、こちらも一枚ドロー。さらに私の能力も発動だ』


龍素記号Tb ドロダブルBros.(ブロス) 水文明 (8)
クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 8000
相手がカードを1枚引いた時、自分はカードを2枚引いてもよい。
自分の山札の最後の1枚を引く時、かわりに好きな枚数の呪文を自分の墓地から山札の一番上に好きな順序で置き、その後カードを1枚引く。
W・ブレイカー


 《ニュートン専用パンツァー》とは違い、《ドロダブルBros.》は相手のドロー一枚に対し、こちらは二枚引くことができる。つまり、手札のアドバンテージを二倍の速度で得ることができるのだ。
 そこに《ニュートン専用パンツァー》も加わり、ミシェルがターン初めにカードを引いただけで、《ドロダブルBros.》はカードを三枚も引いてしまった。
「ったく、過剰ドローだっつーの。《ホネンビー》を召喚、墓地を増やし、墓地から《日曜日よりの使者 メーテル》を回収。《トップギア》二体でコストを減らし、《メーテル》を召喚」
 ターン終了、と淡々とターンを終えるミシェル。まだ静かな動きだが、なんだかんだ、それでも彼女の場には六体のクリーチャーが並んでいる。ドローを介さずに墓地も増やし、かなり準備が整っていると言えるだろう。
 一方で、《ドロダブルBros.》は
『私のターン、ドロー』
 このドローで手札が八枚。マナは多くあるが、それでも使い切るには厳しい。しかし、それでいいのだ。
 使い切らず、手札を増やすことそのものが、《ドロダブルBros.》の狙いなのだ。
『呪文《ライフプラン・チャージャー》、山札の上から五枚を見て、その中の《偽りの名 iFormula Ⅹ》を手札に』
「……!」
 この瞬間、ほぼ確信に近い状態だったミシェルの考えは、完全に確信へと変質した。
(やっぱアイフォーミュラエクストラウィンか)
 《偽りの名 iFormula Ⅹ》は、自分の手札が十枚以上あり、ターンの終わりに《iFormula Ⅹ》がタップ状態であれば、そのままゲームに勝利するクリーチャー。その能力を生かした戦術やそのデッキを、アイフォーミュラエクストラウィンと呼ぶ。
 カードを十枚引くという点は存外難しいが、狙えば簡単だ。《ドロダブルBros.》は相手のドローを利用する戦術を取っていたが、それ以外にも単純にドロースペルを連打したり、他のゾーンのカードを纏めて回収する行為でも手札を増やせる。恐らく、そういった手札増強の手段も組み込まれているのだろう。
 しかし難しいのが、ターン終了時のタップ状態。単純に攻撃すればタップされるが、相手のシールドを割ればS・トリガーで除去される恐れがあり、また召喚してから1ターンのラグが発生する。それでは戦術として安定はしない。なので、能動的に自分のクリーチャーをタップできるカードを入れることが定石だが、最もポピュラーなのは、1コストと軽く、マナ加速と組み合わせやすい自然の呪文《ドンドン打つべしナウ》。
(はっきり言って《iFormula Ⅹ》と組み合わせることしかないような呪文だし、それが見えた瞬間そうだと思ったが、ビンゴだったな。なら)
 次のターンに決めないとまずい。
『続けて呪文《セイレーン・コンチェルト》、マナゾーンの《ドンドン打つべしナウ》を回収し、手札のカードを一枚マナゾーンへ』
 これでコンボパーツをすべて揃えた。次のターンには《ドロダブルBros.》の手札も十枚を超えるはず。となると、ミシェルに残されたターンはあと1ターン。
『さらに呪文《ストリーミング・シェイパー》、山札の上四枚を捲り……すべて水のカードなので手札へ』
 捲られた四枚は《龍素記号Bg ニュートン専用パンツァー》《龍素記号Va ジェラード》《龍脈術 水霊の計》《パーロックのミラクルフィーバー》。ものの見事にすべてが水のカード。これで手札が九枚になり、次の《ニュートン専用パンツァー》と《ドロダブルBros.》の効果で十二枚。コンボパーツの二枚を使用して、ちょうど十枚になる。
「ま、このターンに決めれば問題ない。あたしのターン、ドロー——」
『《ニュートン専用パンツァー》と《ドロダブルBros.》の能力発動、合計で三枚ドローだ』
 これで十二枚。完全に準備が完了してしまった。ハンデスカードをほぼデッキに積んでいないミシェル出は、もう止めることは不可能だ。
 ただし、だからと言って負けが確定したというわけではない。
 ミシェルはカードを引く直前、その手を止める。
「——する時、《メーテル》の効果で一枚引く代わりに二枚引く」
『ならば、こちらも引かせてもらおうか。さらに三枚ドロー』
「勝手にしろ。こっちは手札を一枚捨てるぞ」
 相手のドローに反応してドローする《ドロダブルBros.》に対し、追加ドローの代償として手札を捨てるミシェル。手札の差はどんどnついていく。
「呪文《スクランブル・タイフーン》! カードを五枚引いて三枚捨てるが、これも《メーテル》の能力でさらに五枚引き、捨てる枚数は各追加ドローごとに一枚で合計八枚だ」
『ならばこちらもドローさせてもらうぞ!』
 一気に山札を掘り進むミシェルに対し、《ドロダブルBros.》も山札がなくなるほどにドローする。
 だが、《ドロダブルBros.》の山札が切れることはない。なぜなら《ニュートン専用パンツァー》も《ドロダブルBros.》も効果は任意、加えて《ドロダブルBros.》には山札がなくなると、墓地の呪文を山札に戻す能力があるので、山札切れの心配はないのだ。
(つっても、どうせ相手は手札十枚以上をキープすればそれ以上ドローの必要はないし、それ以上引いても関係ない。こっちはこっちで好きにやらせてもらう)
 ミシェルの山札も残り二枚とかなり削られたが、しかし大量のドローしたわりに、手札はたったの三枚。それもそのはず、ドローしたカードの半分は《メーテル》の能力によるものなので、追加ドロー分のカードを捨てなければならないのだ。
 だが、これでいい。ミシェルにとって重要なのは、カードを引くことではない。カードを“墓地に送り込むこと”なのだから。
「これで墓地のカードは十分! 《トップギア》も合わせてマナコストマイナス11! 1マナでこいつを召喚だ!」
 凄まじい叫びで大地が鳴動する。絶対的な無法の力が、数多の屍を超えて、今ここに現れる。

「暴走せし無法の龍よ、すべての弱者を焼き尽くせ——《暴走龍 5000GT》!」

 地に降り立つ《5000GT》。彼が叫びをあげた瞬間、ミシェルのクリーチャーが一瞬で消し飛んだ。
「《5000GT》の能力でパワー5000以下のクリーチャーは生存できなくなる。だからあたしのクリーチャーは消し炭になるが、こいつはスピードアタッカーのTブレイカーだ。さらにG・ゼロ発動! 《百万超邪 クロスファイア》を召喚!」
『っ、だが、まだ打点は足りない——』
「どうだかな。このターン、あたしはカードを六枚以上引いている。さらにG・ゼロで《天災超邪 クロスファイア 2ed》召喚!」
 これでスピードアタッカーのTブレイカーが一体、Wブレイカーが二体。五枚のシールドを突き破り、とどめを刺すだけの戦力が揃った。
「さあ、これで決めるぞ! 《5000GT》でTブレイク!」
『ぐ……S・トリガー《アクア・サーファー》——』
「それは無理だ。さっき言ったろ、《5000GT》がいる限り、弱者は生き残れない。パワー5000以下のクリーチャーは召喚できない!」
 残りのシールドからS・トリガーが出ることもなく、《ドロダブルBros.》のすべてのシールドが粉砕された。
 そして、とどめの一撃が放たれる。

「《クロスファイア》で、ダイレクトアタック!」

烏ヶ森編 10話「フォートレス ( No.143 )
日時: 2014/10/28 20:41
名前: モノクロ ◆QpSaO9ekaY (ID: UrB7UrBs)

「《アクア監視員 リツイート》を召喚! 《アクア戦士 バットマスク》でシールドをブレイク!」
「《電脳封魔マクスヴァル》を召喚! コストを1軽減して《暗黒秘宝ザマル》も召喚!」
 美琴とガンバランダーのデュエルは、序盤から活発な動きを見せ始めていた。ガンバランダーは小型クリーチャーでビートダウンを開始し、美琴もやや出遅れたがクリーチャーを並べ始める。
「行くぞ! この私《龍覇 ガンバランダー》を召喚!」
 そんな折、いち早く自分自身を呼び出す《ガンバランダー》。さらに、それにより超次元の彼方より一対の銃が飛来する。
「私の能力で、超次元ゾーンよりドラグハート・ウエポン、《二丁龍銃 マルチプライ》を呼び出し、私に装備!」


二丁龍銃 マルチプライ 水文明 (2)
ドラグハート・ウエポン
これを装備したクリーチャーはブロックされない。
龍解:自分のターンの終わりに、これを装備したクリーチャーがタップされていれば、このドラグハートをクリーチャー側に裏返し、アンタップする。


 《ガンバランダー》は超次元の彼方より飛んできた、龍を模した二丁の拳銃を掴み取る。
「さらに《リツイート》で攻撃! 1枚ドローしシールドをブレイク!」
 じわりじわりとアドバンテージを稼ぎつつ攻めてくる《ガンバランダー》。しかし、美琴も押されてばかりではない。
「《マクスヴァル》でコストを下げ、《死神の影デスプルーフ》《死神亡者ボーン・アミーゴ》《死神盗掘男》を召喚!」
 手札を使い切り、一気にクリーチャーを展開。さらに、攻撃も開始する。
「《ザマル》で攻撃! その時、相手の手札を一枚墓地へ!」
 シールドを割りつつ、手札を削ることで相手のハンドアドバンテージを±0に抑える美琴。とはいえ、相手はドローが得意な水文明、±0では相手のドローが圧倒的に速い。
『私のターン。《アクア操縦士 ニュートン》を召喚、マナ武装3で一枚ドロー! さらにシンパシーでコストを軽減し、1マナで《エナジー・フォーメーション》を発動、二枚ドロー! さらにもう一度《エナジー・フォーメーション》! 二枚ドロー!』
 一気に手札を補充する《ガンバランダー》は、さらに、
『私でシールドをブレイク! 《マルチプライ》を装備した私はブロックされない!』
「くっ、S・トリガーは……ない」
 拳銃から放たれた銃撃が美琴のシールドを砕くが、トリガーは出ず。
『《リツイート》で攻撃、一枚ドロー!』
「《ボーン・アミーゴ》でブロック! 《デスプルーフ》の効果で私の死神はスレイヤー化しているから、相打ちよ!」
 さらに死神が破壊されたことで《死神盗掘男》の能力で一枚ドロー。先ほど消費した手札を補填する。
 だがしかし、このターンで《ガンバランダー》を除去できなかったことは痛い。このターン終了時、《マルチプライ》を装備した《ガンバランダー》はタップ状態。
 それにより、
『《マルチプライ》の龍解条件成立! 《二丁龍銃 マルチプライ》龍解!』
 《ガンバランダー》は両手で構えた《マルチプライ》を空高く放り投げる。二つの拳銃が交錯する瞬間、その二つは変形し始めた。

『——《龍素記号nb ライプニッツ》!』


龍素記号nb ライプニッツ 水文明 (5)
ドラグハート・クリーチャー:クリスタル・コマンド・ドラゴン 5000
このクリーチャーは攻撃もブロックもされない。


 落下してきた拳銃は既に《マルチプライ》ではなくなっていた。空中で分解し、合体した二丁拳銃は双頭の龍の姿となり、地に降り立つ。
『ターン終了だ』
「むぅ……私のターン」
 美琴のデッキは決してブロッカーが多いわけでも、除去が多いわけでもない。相手の手札を削りながらビートダウンして、一方的に攻める戦術を基礎としている。
 なのでこうなってくると、巻き返すのはやや厳しい。
「《死神ギガアニマ》《死神の邪険デスライオス》を召喚! 《デスライオス》の効果で自身を破壊。あなたも一体破壊して」
『《バットマスク》を破壊する』
「さらに《ギガアニマ》の効果で墓地から《ボーン・アミーゴ》を回収。そして《ザマル》でシールドをブレイク! 《死神盗掘男》でシールドをブレイク!」
 《ガンバランダー》に負けじとシールドを削っていく美琴。現状では互角の様相を呈している。場だけを見れば。
 しかし、《ガンバランダー》は既に決着の一手を持っていた。
『私のターンだ! シンパシーコストを軽減し、呪文《スパイラル・フォーメーション》! 《死神ギガアニマ》を手札へ! さらにもう一枚、呪文《スパイラル・フォーメーション》! 《死神盗掘男》を手札へ! そして——』
 残った4マナをすべて使い切ると、どこからともなく《ガンバランダー》たちに後光が差す。
 閃光のような、眩い煌めきが発せられる。
『——呪文《閃攻のヒーローラッシュ》! これで私の水クリーチャーはすべてブロックされなくなる!』
「っ!」
 《ライプニッツ》と《ニュートン》はもとより、《ガンバランダー》もブロックされなくなったため、《マクスヴァル》では残り二枚のシールドを守れなくなってしまった。
『《ライプニッツ》でシールドをブレイク!』
 多銃口のハンドマシンガンから大量の弾丸が放たれ、美琴のシールドが一枚、砕け散る。
『私でシールドをブレイク! さあ、これでとどめだ! 《ニュートン》でダイレクト——』
 とどめの一撃を繰り出すその直前、砕かれた美琴のシールドから、漆黒の魔手が伸びる。
「S・トリガー発動《地獄門デス・ゲート》! 《ニュートン》を破壊して、墓地から《デスプルーフ》をバトルゾーンへ!」
 なんとか《ガンバランダー》の攻撃を食い止める美琴。しかも同時にクリーチャーを復活できたため、かなり美味しい展開だ。
 現状《ガンバランダー》のシールドは二枚。対する美琴のアタッカーは《暗黒秘宝ザマル》と二体の《デスプルーフ》、三打点ある。
 つまり返しのターンに、すべてのシールドを割ってとどめまで刺せる戦力が揃ったのだ。
『ぐ、ぬぅ……』
「私のターン。《ボーン・アミーゴ》を召喚、そしてそのまま進化!」
 だがしかし、美琴はここで更なる手を打っておく。コストを軽減して出した《ボーン・アミーゴ》をすぐさま進化元とし、死神の頂点に立つ悪魔神を降臨させるのだ。

「死神よ、戦場に蘇れ! 《死神明王バロム・モナーク》!」

 これでとどめを刺すには十分すぎる打点が揃ったが、そのすべてをシールドに向ける必要はない。
「《バロム・モナーク》で《ガンバランダー》を攻撃!」
 本来ならパワーのより高い《ライプニッツ》を破壊したいところだが、《ライプニッツ》は攻撃されないため、仕方なくドラグナーの方を破壊する。
「私の死神がバトルに勝ったことで、墓地から《死神盗掘男》をバトルゾーンへ! そして《ザマル》でシールドをブレイク!」
 《ザマル》の魔手が《ガンバランダー》のシールドを砕く。あと二回の攻撃で、美琴の勝ちだ。
 しかし、その砕かれたシールドが、光の束となり収束する。
「っ、来た! S・トリガー発動《龍素記号St フラスコビーカ》を召喚!」
「!」
「残念だったな! これで貴様はこのターン攻め切れない! 勝ち目はなくなったぞ!」
 《ライプニッツ》は攻撃もブロックもされないクリーチャー。カードの効果で除去するしかないため、もうどうしようもない。S・トリガーに賭けることも不可能だ。
「くっ……《デスプルーフ》でシールドをブレイク!」
「無駄な足掻きだ。《フラスコビーカ》でブロック!」
 残った一枚のシールドはもう一体の《デスプルーフ》がブレイクし、シールドの数はどちらもゼロとなったが、
「このターンで終わりだ! やれ《ライプニッツ》! とどめだ——」
 と、《ライプニッツ》が銃口を美琴に向けた刹那、

 《ライプニッツ》の首が飛んだ。

「は……?」
 唖然とするガンバランダー。どうやら《ライプニッツ》が破壊されたらしいが、あらゆる障害をすり抜け、相手から感知されない《ライプニッツ》が破壊されることなどそうあることではない。
 一体なにが、と思ったところに飛び込んできたのは、蛙のような姿のクリーチャー。
「……ニンジャ・ストライク《威牙の幻ハンゾウ》。アンブロッカブルが残って確実に決められると思って油断したわね。《ライプニッツ》は攻撃もブロックもされないけれど、アンタッチャブルじゃないから“選ぶこと”はできる。選べるなら、カードの効果で破壊できるわ」
 ともあれ、これでガンバランダーはこのターン、とどめが刺せなくなった。
 そして逆に、美琴のとどめを防ぐ手段が彼にはない。

「《バロム・モナーク》で、ダイレクトアタック!」


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