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秘密
日時: 2020/07/02 17:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ここは皆の秘密基地。

そこに響く彼女の歌声。

これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————

〜・目次・〜
序章
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137章
>>648->>651

138章
>>652->>655

作者の言葉
>>401

作者の言葉 2020.7.2
>>656

*参照10000 有難うございます*

これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。

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Re: 秘密 ( No.597 )
日時: 2016/06/26 12:53
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「アリス!?」

慌てて扉を開けると、アリスは驚いた様にぽかんとした表情を浮かべた。

「なに?」

さっきすれ違ったアリスは寝巻用の白いワンピースを身に包んでいた。

けれど、今のアリスは違う服を着ている。

「さっき、廊下ですれ違った?」

ますます分からなさそうに、首をかしげた。

「?私はずっとここにいた。」

…やっぱり

「やっぱりあれは、アリスのお母さんだったんだ。」

「母に会ったのか。」

アリスは薄い笑みを浮かべながら、宙を仰いだ。

「やっぱりあの人は身軽だな。部屋から私が着ている寝巻を持ち出すなんて。」

知らなかったというには、あまりにも落ち着いている。

「…アリスは、知ってたの?」

「知ってたよ。母から手紙を貰っていたし、ここでも合図を受け取っていた。」

さらり、と何と言うこともなさそうに認めた。

そんなこと、聞いてない。

頭に浮かんだのはそんな言葉だった。

それほどにまで、自分がとるに足らない相手になり下がったのだろう。

それとも、はなからアリスと釣り合ってなんかいなくて…

「…合図?」

「エリスの話をした時にも合っただろう。部屋に、赤い彼岸花が。
どうしてあれが調理もされずにただ活けられていたのか…考えれば分かる。
あれは観賞用にしては縁起が悪い。」

アリスの母親はここを追いだされていたはずだ。

戻ってくるということは、如何ほどのリスクを背負うことか分かっているはずだ。

けれど、アリスの口調に変化はない。

「母は自分の意思で戻ってきた。何らかの想いを抱いて。
それは殺意かもしれないし、憎しみかもしれない。それでも戻ってきた。」

ふいっ、とこちらを見る。

「命懸けで戻ってきた母を邪魔するのは、母の意思を殺しているんじゃないかな?」

冷めた目。

自分の気持ちや情を完璧に無視して、ただ淡々としていた。

「だから、会わない。会う時は何もかもが終わってからにしたいんだ。」

Re: 秘密 ( No.598 )
日時: 2016/07/01 13:41
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「私はあなたのことがずっと憎かった。殺したいほどに。」

宝物を奪い、人生を狂わせ、挙句の果てには呆気なく捨てられた。

生きることすら辞めたくなるような絶望を植え付けた。

「どこにいてもなにをしても、あなたのことばかり考えていた。」

ぴくり、と人離れした男の眉が動く。

まるで人間の様に。

「憎かったけれど、愛してなんかいなかったけれど…
なんて不器用なんだ、ってその愚かしさや残虐さを愛しいと想った日もあった。」

殺したいほどに憎んでいた。

でも、それと同時に同じくらい大きな愛しさに包まれていた。

「きっとこれは、呪い。私の気持ちじゃない。私はあなたが憎い。
殺したいくらい。でも、あなたがいなかったら私はここにはいない。」

これを愛と呼ぶには、憎しみに満ちすぎている。

けれど愛と呼ばずに、何と呼ぼう。

これほど強烈にあなたを想う気持ちを、他に何と呼べばいい。

「憎しみって言うのは…愛に似ているのね。」

憎いと思う気持ちに、偽りはない。

生きていたのは娘の為と、この男への憎しみだけだった。

その為だけに生き続けてきた。

私はあの男に執着している。

その自覚はあった。

けれどそれが愛しさだとも、ましてや愛だとも思いはしなかった。

だって、憎む要素しかない。

私の宝を奪い、私の人生を奪い、捨てた。

一生残る様な傷を、私の胸に刻んだ。

生きるために、衣食住を整えても。

仕事に打ち込んでも。

何時だって頭に浮かぶのはあの男の顔だった。

息を潜めて、傷が少しでも薄れる様に時間が過ぎるのを待った。

何年も経った。

仕事も落ち着いた。

少し落ち着いたけれど、それでもあの男の顔はチラついた。

眠る前のふっとした時間に。

鏡を見ながら身支度を整えている時。

仕事中の僅かな時間も。

気を抜けば浮かんできた。

娘の姿を一目見れば、少しは自分の気持ちに整理がつくのかもしれない。

そんな考えがよぎった。

宝物である私の娘は…元気だろうか。

ある時、仕事場から休みをもらった。

働き詰めであった私を考慮したものだった。

今思えば、魔が差したとしか言いようがない。

私は自分の娘に会いに行った。

Re: 秘密 ( No.599 )
日時: 2016/07/07 01:17
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

元々、彼は仕事詰めで城にいる時は書斎から出ることはほとんどなかった。

私が娘を身籠っていた時でさえも。

「…また、ここか」

けれど城中を探し回っても、娘を見つけることが出来なかった。

諦めて帰ろうとした時、私はふと牢獄を思い出した。

私が城にいた時に過ごした牢獄。

少しだけ、覗くつもりで向かった。

ダメもとだった。

いないと分かっていての、行動だった。

けれど、そこに私の娘はいた。

ボロボロの布切れを身にまとい、本に埋もれながら、冷たい床にぺたんと座っていた。

顔に血の気は無く、生気もない。

まるで決められた動作しかできない、人形の様。

私と同じ顔。

けれど、耳の形があの男に少し似ていた。

悲鳴を上げることも、泣くことすらも、知らないまま。

娘は牢に閉じ込められていた。

手を伸ばすと、能面の様な感情が空っぽな顔で不思議そうに手を伸ばしてきた。

「…こよみ」

愛しい娘の名前を呼んだ。

こよみは、日のこと。

過ぎる日も過ぎる日も、幸せに生きられる様に。

その幸せな思い出を決して忘れることがないように。

毎日、笑って生きていける様に。

そういう意味を込めて、私が付けた。

アリス、と言う名前は男が勝手につけてしまったから。

私も何か名前を付けたかった。

温もりに満ちた名前を。

「…愛してる」

あまりにも当たり前に、その言葉が口から零れでた。

その時、私は久方ぶりに胸が温かくなったのを感じた。

Re: 秘密 ( No.600 )
日時: 2016/07/09 01:08
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

〜・125章 憎しみと愛しさ・〜
僅かに交わした言葉が、愛おしい。

娘はなにも発することはできなかったけれど。

まるで言葉以外の何かが、私達の間にあったかの様に。

僅かな触れ合いで、沢山の想いを感じた。

その日を境に、私は決意を固めた。

金も、誇りも、命さえも。

全てを投げ捨ててでも、彼らの為に生きようと。

あの男に復讐し、娘を守る為に。

その為だけに生きようと。

それからは身軽さを利用し、様々なところを出入りした。

生まれつきの記憶力を活用させ、頭を使った。

この身が次第に陽の当らない所に沈んでいく実感が合った。

でも、沈んだその先にはあの男と娘がいる。

そう思えば、まだ頑張ることが出来た。

それに役目を見つけたことで、身がとても軽くなった様な気さえした。

彼と娘を失って、私は死んだように暮らしていた。

娘と会い、私は生きている実感をようやく感じられた。

生きる理由を、見つけたのだ。

娘の身柄が涼風に移され、そこで酷い家族の所をたらい回しにされていたのも知っていた。

でも、私にはなにも出来ない。

私にはまだ娘を救えるほどの力を付けてはいない。

あの男に対する憎しみは、薄れることはなかった。

私から昼を奪い、夜の世界に閉じ込めた。

憎くて憎くて、堪らなかった。

けれど、彼がいないと。

今ここにいる私は、存在しない。

私の中を占めるあの男の存在が消えたら。

私は何も残らない。

何処にいたって、あの灰色の牢に戻ってしまう。

冷たくて、心ごと凍えそうな冷たい床の感触が甦ってくる。

憎むことだけで、繋ぎとめられていた気持ち。

何時しか、その気持ちの中に少しの愛しさが生まれた。

彼のしようとしていること、していること。

それらを知ったその瞬間から。

Re: 秘密 ( No.601 )
日時: 2016/07/12 00:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

とある伝手で、私は書類を手に入れた。

書類や情報を形に残さないため。

それを理由に産み落とされた娘であったが、そんな娘にもまだ見せていない物があるはずだ。

そう思って、ずっと形になっている物を探し回った。

薄っぺらく、強く握ったら崩れてしまいそうなほど古い紙。

それは、テオドールの隠してきた優しさが書き連ねられていた。

彼が犠牲にしたもの、救ったもの。

彼の後悔と、絶望と、慟哭。

彼の一番脆く、柔らかい所が赤裸々に記されていた。

長く分厚資料を読み終えると、私は小さく息を吐いた。

彼の愚かしさや不器用さに、思わず笑みが零れた。

涙が零れた。

こんなものの為に、彼は私の未来と…娘の未来すらも奪った。

全体的に見れば彼は悪と断じられる人間だ。

如何なる理由があろうとも、彼は人を傷つけ、殺してきた。

それは覆らない。

彼が奪った私や娘の時間、他の多くの命も…決して戻って来ない。

けれど…彼には彼なりに守ろうとしたものが合ったのだ。

誰に理解されずとも。

彼の信じる理想を実現にしようと。

辛くて、誰もついて来ない様な。

一人でそんな棘の茂る道を歩いてきた。

その結果、何人もの犠牲を出しても。

一人でずっと暗闇の中、足掻き続けた。

傷つけ、殺め、切り捨て、手離してきた。

それはあまりにも、…痛々しい。

私の中には、あの男がいる。

娘がいる。

それだけで、私は一人ではない。

あの男も一緒だ。

書類を失ったことで、彼はクリスマスに娘を監禁した。

私をおびき出し、彼の歴史を綴る紙を取り返そうとしたのだろう。

そんなことをしても彼に私は捕らえられない。

私は娘の友人の八神圭を連れ、着替えと指輪を渡して送りだした。

指輪は、彼が私を捨ててから初めて自分の金で買ったもの。

ささやかな願掛けをしてある。

彼も一人ではないことを、気付かせたい。

その為に、思いっきり頬をぶん殴ってやる。

私の心をここまで陣取っておいて。

このまま一人でいられると想うなよ。

私もあいつの中を陣取って。

一生忘れられない様に、彼の胸に楔を打ち込んでやる。


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