コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ

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秘密
日時: 2020/07/02 17:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ここは皆の秘密基地。

そこに響く彼女の歌声。

これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————

〜・目次・〜
序章
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1章
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>>648->>651

138章
>>652->>655

作者の言葉
>>401

作者の言葉 2020.7.2
>>656

*参照10000 有難うございます*

これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。

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Re: 秘密 ( No.387 )
日時: 2014/10/31 19:50
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「…そう言う訳でこっちが雪白凛でこっちが灘万里花。」

屋敷を初めて抜け出したアリスは初めて会った時以上にびくびくしていた。

屋敷を出たのは初めてらしい。

特別な事情らしい。

けれど自身もアリスに隠していることがあるから深く追求はしない。

「っで、こっちがアリス。」

びくびくしているアリスは再び背の後ろに隠れた。

けれど背中にいた彼女は空を見上げていた。

星を見ていた。

まるで初めて星を見たようだ。

表情は相変わらず乏しいままだったけど、きっとその表情は目をキラキラさせているというのだろう。

けれどその時は表情は相変わらず乏しかったため、その時は全然意味が分からなかった。

気付けば彼女は背中から出て星を見上げていた。

「…綺麗ですね」

最初はビクリッと震えたが小さく微笑んだ。

笑っているというよりか苦笑い、と言った感じだ。

でもいつの間にか緊張が解けたのか軽く微笑んだ。

この頃はまだ微笑むことしかできていなかったが、それがアリスなりの精一杯の笑顔だったのだろう。

「…あ、ああ」

「行こ、アリス」

手を引いて展望台まで連れていく。

そうやって4人で星を眺めた。

アリスは本をたくさん読んでいた。

1つ1つの星の名前をためらいがちながら教えてくれた。

ポラリス、ミラ、聞いたことない星ばかりだった。

今となっては分かるがポラリスとは北極星のことだ。

「アリスって名前カッコいいですよね…私も…万里花というなら…マリーとか?」

「良いんじゃないか?」

リンがそう言うとマリーは嬉しそうに微笑んだ。

この頃から好きだったのかな。

「リン、とケイ!…気に入りました♪」

こうやって今のあだ名が定着したのだ。

それから少しずつよく会う様になった。

音楽で意気投合して作曲を始めた。

アリスの声は綺麗だったし、歌もうまかった。

そうこうしているうちに何年もたってアリスも自然に打ち解けてきた。

乏しかったはずの表情も段々と増えていき、屋敷にいる時間もどんどん少なくなってきた。

嬉しかった。

ずっと笑わせたかった。

その想いが、きっとずっと自分を支えてくれていた。

不思議な女の子だった。

何時もたわいのない話をしてその度いろんな言葉で助けてくれた。

支えてくれていた。

ずっと家で泣いている母と2人きりだった。

外に出てアリスと一緒にいるときだけ沢山の表情を身につけた。

アリスの傍はとても心地良かった。

彼女は人の出生とか全然興味が無いからとても気が楽だった。

何時だって頭に浮かぶのはアリスの顔だった。

とても心地よかったし、ありのままの姿でいられた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「ここのこと…2人は知らないのか?」

ケイは首を縦に小さく振った。

キィッと錆ついた門を開けると変な音がした。

「前…マリーが言っていたんだ。付き合う前から。私がこの気持ちに気付く前から。
まるで恋人みたいだったり、恋人通り越して夫婦みたいだって。」

少し恥ずかしい。

「普通の仲のいい男女を通り越してるって。」

私がケイに向ける感情の根底はそもそも感謝や恩返しとか言う感じに近い。

恋とか友達とかそういう気持ではないはずだった。

一番最優先されている気持ちはケイを傷つけたくないだったと思う。

だけどそれから色んな気持ちが混ざって好きになった。

「…全く…一体何時から好きになったのかな…」

中に入ると蜘蛛の巣や埃が積もっていた。

「どうかしたか?」

「ちょっと…気になることがあって…」

牢越しにこよみと呼んでくれた。

けれどこよみの名前を使い始めたのはこの国に来てから。

じゃあ、この国に来てから会ったんじゃないのか?と思った。

つまりここで母とあったのではないだろうか、という事だ。

「ここが…牢か…」

アレクシスのせめてもの良心が痛んだのだろう。

使った覚えはない。

人の記憶とは空いたところを適当な記憶で埋める。

アニエスの牢で母に会ったときと記憶がごちゃ混ぜになった、と言う可能性もある。

「位置的にはここら辺かな…アリスと出会ったのは。」

近辺の部屋に入る。

あっ、と思わず声を挙げた。

並べられた本。

上まで吹き抜けになっていて階段がらせん状に渦巻いている。

床にも足場が無いくらいたくさんの本が合って何冊かは開かれたまま放置されている。

「…忘れていた。どうして忘れていたんだろう…」

ずっとずっと大事な記憶。

どうして…忘れていたんだろう。

こんなに沢山のことが合ったのに。

ケイと出会ったり…母とあったりしたのに…

首からロケットを外す。

コインの形をしていて中に母の写真が入っているものを。

「…ケイ。少しの間…ここにいてくれないか…?」

「どうするの…?」

「母にこれを返す。…もしかすると母だってきっとここに来るかもしれない。」

ゆっくりと階段を上る。

高鳴る鼓動を抑え込み。

深く息を吸って、一段一段階段を上る。

最上階は天井がガラス張りになっていて、夜だから今は星が良く見える。

窓もあり、その外には広大なテラスが広がっていた。

「…ママ」

小さく呟くとロケットを置いて再び階段を下りた。

大丈夫。

私には指輪がある。

これが私に…力をくれる。

ケイの過去も知った。

それにおける推論もたった。

今度はこっちの番だ。

今度は私が圭を助ける番だ。

Re: 秘密 ( No.388 )
日時: 2016/05/04 01:04
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

〜・73章 救いたい・〜

「…そして数年前、姉と出会った。姉の存在を初めて知った。」

姉の存在をそもそも知らなかった。

どうやら姉は母が父と別れる際、父方の方に引き取られたらしい。

姉と過ごした日のことは、あまり覚えていない。

本当に幼い頃しか一緒にはいなかったのだから、当たり前といえば、当たり前だ。

父はすでに再婚を済ませていて、新しい家庭が出来ていた。

新しい家庭に割り込みたくないという母なりの気遣いがあったのかもしれない。

ある程度成長した姉はともかく、まだ幼くて何もわからない自分を連れての再婚は厳しいと思ったのだろう。

久々に会った姉は確かに自分にとてもよく似ていた。

姉だと直感で分かった。

でも

「…でもすぐ仲たがいして別れたよ。」

恵まれて育った姉。

身分の差。

経験の差。

そう言ったものが2人の間には確実にあった。

本能的にも多分姉を避けていたところもあった。

…母親そっくりなのだ。

言動が。

仕草が。

性格が。

傍にいるとどうしても思い出してしまう。

首を絞められて苦しかったことが。

あの時のことが頭にフラッシュバックする。

どうしようもないことだと分かっている。

仕方ないことだと思う。

…そして姉も自身を避けていた。

理由は知らない。

避けあっている2人が上手く暮らせる訳もなかった。

そして1人暮らしを始めた。

…祖母の家とアリスには嘘を吐いた。

あそこは元姉の家だ。

姉も大学に入ってから1人暮らしを初めた。

その際、新しい家族と住んでいた家を貸し出してくれた。

「アリスのところからいなくなったのはさ、3人とも孤児院を移籍になったんだ。たらい回しって奴かな。」

知られたくなかった。

だから黙っていなくなった。

それがアリスを傷つけると知っていながら。

「…お互い避けあっていがみ合っているのに…どうして姉貴は俺の前に来たんだろう…」

Re: 秘密 ( No.389 )
日時: 2014/08/02 19:52
名前: 雪 (ID: qBE5tMSs)

結局…それっきり話を聞くことはできなかった。

屋敷を出て、別宅まで送ってくれると圭はそのまま帰ってしまった。

…嫌なことを聞いてしまっただろうか。

助けたい。

でも圭の中に植え付けられた母親への恐怖はきっととても根強い。

それもそうだ。

殺されかけているのだから。

ここは下手な詮索をしない方が良いのかもしれない。

でも…せっかく圭は話してくれた。

姉の顔を見るだけでもつらそうだったのに、そのうえ身の上話まで話してくれた。

…恵まれた家庭で育ったのだろう。

圭が祖母の家と嘘を付いていたあの家はとても広かった。

孤児院内でのたらい回し。

引き取り手のつかない3人はあの町の孤児院へと連れて行かれた。

そして…そこにいた姉の家に引き取られるものの上手くいかず。

姉は一人暮らしを始め、圭も高校に入って独り暮らしを始めた。

…なら圭の父や新しい母親は?

判断材料が少ない。

ここから先に踏み込むには圭の姉、秋月香からも情報を引きださなければいけない。

秋月…きっと姉の元に引き取られた際、名字が変わったのだ。

けれど圭は今はまだ秋月と言った名字を使いたがっていない。

…そう言う事だろうか?

あくまで推論の域を超えていない。

「エリス」

後ろのベットで何処から手に入れたのか、ファッション雑誌をペラペラと捲っているエリスに声をかける。

彼女は小さく鼻歌を歌っていたがそのまま続けて用件を口にする。

「秋月香の連絡先を調べて来い。」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

エリスはあっという間に情報を集め、携帯番号とメールアドレス、住所まで突き止めた。

早速電話をかけると寝ぼけているのか少し眠そうな声でもしもし、と返ってきた。

「秋月香さん、お話があります。」

声だけで誰だか理解できたのか相変わらず気だるそうな声で分かった、と答えた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「お待たせしました。」

待ち合わせた喫茶店。

柱時計を見ると待ち合わせた時間より5分ほど針が進んでいた。

「いいよ、私も今来たばかりだし。」

しかし言葉とは裏腹に彼女の手元に置いてある珈琲は既に冷めているようだった。

席に着くとそうそうに彼女は話を切り出してきた。

「…聞きたいことって?」

勝手に会っていると圭に知れたらきっと怒られる。

もしかすると傷つけるかもしれない。

でも、圭の問題から目を逸らしたくない。

何もできないとしても、どうにかしようとすることは辞めたくない。

そのためにはこの、秋月香の話が必須だ。

「…圭のことです。」

それから言い直す。

「あなたを育てた圭の父と…新しいお母さんの話を聞かせてください。」

きっとこれが全ての鍵になる。

Re: 秘密 ( No.390 )
日時: 2014/08/04 17:16
名前: 雪 (ID: 4SHNUdMD)

「そこまで辿り着くとはね…」

圭には姉を避ける訳がある。

でも姉である秋月には圭を避ける訳が無い。

身分の違いなどを気にする人だとは思えない。

そもそも気にしているのなら一緒に暮らそうと試みる訳ない。

暮らすまでの過程に何度か会っているはずだ。

それでも暮らすまでにこぎつけたんだ。

先に出ていって一人暮らししたということは姉には圭を避ける理由があった。

「あなたには圭を避ける明確な理由があった。」

「…本当にそうかな?」

「分からない。単なる推測だ。」

私はあくまで推論をたてることしかできない。

後は実際に言葉を交わして予測する。

「けれど、確かにあなたの中の何かが変わったはずだ。」

そうじゃなければ急に家を出る訳が無い。

…圭の話を聞くだけだと。

「私は圭を救いたい。」

どうしても。

知らなければならないことがある。

「…お願いします。」

あっ、と小さな声が聞こえた。

頭を下げるのはきっと初めてだ。

絶対に知らなければいけないことだ。

「…失いたくない。圭は私にとってとっても大事な人なんだ。」

分かんなければいけない。

「知らなければいけない。だから私は知りたい。…そのためにあなたの話を聞かせてください。」

お願いします、ともう1度繰り返した。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

こんなにプライドが高そうな子…

圭の為に頭を下げている。

それくらい大事に想っている。

想って。

想われている。

「…圭のこと、大事に想ってるんだね」

「…ええ。」

圭とこの子の間に何があったかは知らない。

でも何かが確実にあったんだ。

お互いがお互いを想い合える。

なんだか羨ましい。

…私はそんな相手に、出会ったことが無いって言うのに。

「…話さないなんていってないよ。」

何時かは話さなければいけないことだと、分かっていたから。

「可愛い女の子が軽々しく頭を下げるもんじゃないよ、アリスちゃん。」

Re: 秘密 ( No.391 )
日時: 2014/08/05 16:38
名前: 雪 (ID: Dn4Rc0M6)

「…私の実の父親って奴はさ、昔は優しい人だったらしいんだけどね。
少なくとも再婚してからは暴力をふるう様になったんだよ。」

秋月は本当に事情を話しだした。

そう口にしてからちょっとだけ口をつぐんだ。

「圭と私の両親、2人はまぁ…大恋愛って言うのをして。」

大…恋愛…

圭の話からは信じられない話だった。

けれど確かに一度は夫婦になったのだから別におかしい話ではないのかもしれない。

「でもまぁ、色々あって2人は別れたんだ。ここら辺は誰も話したがらないから良く分からないんだけど。」

秋月の顔は少しだけ悲しげに歪んだ。

「別れても未練があったのかな。母は再婚もせずに圭に暴力をふるっていた。
そして父もすぐに私を想ってか再婚した。…元々相手がいたのかもしれないけど」

秋月は自虐的に笑った。

彼女は彼女で悲しい人生を歩んできたのだろう。

「再婚のせいかもしれないけど父が暴力をふるう様になった。
新しい母はとても優しい人だった…けれど父が本当に自分を愛しているのか、疑問に思った。」

当たり前だ。

結婚してから酒癖が悪くなって暴力をふるう。

きっと…圭の母を忘れられなかったんだ。

「そう思って苦しんでいた。父の酒癖はどんどん悪くなっていった。
やがて母は病に倒れ、亡くなった。」

目を伏せた。

泣きそうな悲しそうなおかしな顔。

でも、少しだけ彼女は笑っていた。

悲しそうだけど。

笑っていた。

「私は元の母も新しい母も好きだった。父だって好きだった。圭だって好きだった。」

でも、と彼女は続けた。

「…父を憎んだこともあった。もし、父と母が離婚しなければ。
圭と離れることもなく笑いあって暮らせていたんじゃないか、って。
母を無くすこともなく、普通に暮らせたんじゃないかって。」

…その気持ちも分かる。

もし再婚しなければ。

新しい母と出会う事もなく。

失う苦しみも味わわずに済む。

彼女はずっと虐げられてきた。

「圭に会った。数年ぶりに会った圭は感情を失っていた。
…圭も辛い目にあってるのは知らなかった。」

…分かった。

「…分かったぞ。お前は…」

秋月が。

どうして圭を避けたのか。

「お前は…圭を守りたかったんだ。」

心に傷を負った圭に。

これ以上傷を負わせたくなくて…

でもまた来たという事は…

「…父が死んだのか?」

コクリっと笑った。

穏やかな笑顔だった。

「圭を憎んでいたのも事実だよ。圭は愛されていたから。」

…愛されていた?

そのようなことを言っているのだろう。

「…どうして2人は別れたのだろう。」

確かに今まで一番の疑問だ。

「…知りたいか?」

えっ、と小さな声が漏れる。

頬杖を付いて少し身を乗り出す。

挑むように。

「私ならそれを調べられる。」

間が大事だ。

絶妙なタイミングで。

切り出す。

「代わりに圭に話して欲しい。圭は今もそのことに苦しんでいる。
…あなたから、話して欲しい。」

「どうして…?」

くすりっと笑う。

不敵に。

圭が救ってくれた時の様に。

「放っておけないんだよ。圭のこともそうだけどさ…」

ニヤリっと笑った。

「あなたと私は似ているんだよ、香さん。」


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