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秘密
日時: 2020/07/02 17:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ここは皆の秘密基地。

そこに響く彼女の歌声。

これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————

〜・目次・〜
序章
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138章
>>652->>655

作者の言葉
>>401

作者の言葉 2020.7.2
>>656

*参照10000 有難うございます*

これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。

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Re: 秘密 ( No.342 )
日時: 2014/05/11 12:35
名前: 雪 (ID: A/2FXMdY)

校舎中を駆け回った。

けれどマリーは何処にもいなかった。

でも靴箱にはまだ外履きが残っていた。

校舎の中にいるはずだ。

「っ——!」

窓の外。

深々と降り積もる雪の中で傘も持たず、鞄も地面に落ちている。

植木のてっぺんを見つめる様に。

空を見上げている。

けれどパッと見彼女が泣いている様に見えた。

何も考えず駆け出した。

上履きも脱がず、何も考えず、走った。

「万里花!!」

ハッとする様に驚きの色が表情ににじみ出た。

「…リン」

「少し、話をしてもいいか?」

絞り出すように…頑張って笑った。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

万里花は何も言わずについてきた。

屋上は雪が降っているし、保健室は担当の出張の関係で空いていなかった。

仕方なく教室に向かった。

教室には雪のせいかひと1人いなかった。

勝手に暖房を付ける。

「お見苦しいところを…見せてしまいましたね。」

机の上に腰をかける。

その隣の机に同じく腰をかける。

万里花はそっぽを向いていた。

でもやっと気付いた気持ちだ。

アリスに押してもらった背中。

想いの丈を伝える。

どんなに不格好でも。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「俺、アリスに振られた。」

唐突に切り出された話題に驚いた。

「屋上でな、好きだって言ったんだけどすぐに嘘だって言っちゃった。」

彼にしては珍しくふざけた口調だった。

「でもこれできっと良かったんだ。」

バッと振り返る。

リンの顔は珍しく悲しそうにゆがんでいた。

思わず腕を伸ばし、リンを抱き寄せた。

少しだけ、震えている。

「大好きです、リン…」

そうだ。

いくら頑張って、気丈に振る舞ってもたった1人の16歳の男の子だ。

小さな存在だ。

リンは幼い頃に虐待とも呼べる扱いを受け、苦しんでいた。

何をしても構ってくれない。

食事すらもろくに与えられてこなかった。

私はリンと遊びながら色々なお菓子やご飯を食べさせた。

だがやがてリンの親は姿を眩ませ、今はこの町一番の病院の養子となっている。

彼は傷付くのを恐れている。

1人になるのを恐れている。

彼の親はそう言った感情を彼に植え付けている。

・・・大丈夫、私はずっとリンの傍にいるから・・・

最初はただの同情だった。

けれど気丈に振る舞っているリンがとてもか弱い存在であると知った。

それでも年相応の男の子の様な表情やしぐさ。

そう言ったものに段々惹かれていた。

きっと彼は誰よりも脆くて危うい。

それでもこの世界を強く生きようと頑張っていた。

それは私に必要なものだった。

誰にも必要とせず産み落とされた私。

母は私が女であることを憎んだ。

憎んだまま息を引き取った。

必要とされていない、そんなことを分かったうえでの日常はなんだかとても息苦しかった。

同じ境遇のリンと出会った。

彼はいくら辛い目に会っても生きようとあがいていた。

私に道を示してくれた。

彼の強さも脆さも危うさも。

全てに惹かれていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「…好きって言われるのって…初めてだ。」

こんなにも嬉しいことだとは思わなかった。

万里花の手がとても温かい。

彼女は自分によく似ていた。

親に生まれてきたことを憎まれ、育った。

・・・大丈夫、私はずっとリンの傍にいます・・・

その言葉をかけられた時から。

この気持ちはきっと芽生えていた。

でもあまりにも近過ぎてその気持ちに気付くのにこんなにも時間がかかってしまった。

自分の存在はただ母を傷つけることしかできなかった。

母は自分を殴る度に涙を流した。

それはもう幼い記憶。

何時しか母は自分を殴ることはなくなった。

その代わり、自分に対して何もしなくなった。

冷蔵庫が空っぽになっても何も買ってこなかった。

自分がいるだけで辛そうだった。

傷つけることしかできないと思った。

自分も母の様に人を傷つけることしかできないと思った。

その母すらも自分は傷つけてきたと思った。

母はやがて姿を晦ました。

新しい再婚相手に出会い、幸せになったと風の噂で聞いた。

誰かを傷つけることしかできない自分でも万里花はずっとそばにいると言った。

その言葉が嬉しくてずっと甘えていた。

彼女の存在は周りから取れば憎しみの象徴だった。

彼女は周りから憎まれながらも笑い、自分を助けた。

強い女だと思った。

でも知っていた。

気丈に振る舞う彼女が1人で泣いていること。

やっぱり小さな女の子であること。

けれど自分にとっては誰よりも…大事な存在だということ。

そのことに…何年もたってようやく気付いた。

出会ってから10年はたっていた。

随分遠まわりをした。

「俺も…万里花が好きだ。」

きっともう覚えてないくらいずっと前から。

「やっと気付いたんだ。今日1日万里花がいないだけで頭がおかしくなりそうだった!
10年間ずっとそばにいたからずっと大事な気持ちに気付かなかった!!」

吐き出すように言葉を連ねる。

「でも…分かったんだ…やっと…」

ずっとそばで笑ってくれていた。

「今日1日で今まで少しずつ積み重ねてきた全てが無駄に見えた!…万里花がいなかったから…
やっと気付いたんだ!万里花が誰よりも大事だって!!
気付いたらまた失うのが怖くなった!!万里花が傍にいなかったらこの世界の全てが意味が無かった!!
やっと見つけたんだ…もう絶対に手放したくない…!
何に代えても絶対に手放したくない!!何もかも捨てても構わない!!」

吐きだしても吐き出してもまだまだ足りない。

ずっと抱えていた想い。

そっと万里花の手が頬に触れた。

気付けば涙を流していた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

気付かなかった。

ずっと。

私はこんなにもリンに想われていた。

これは私が悪かった。

リンの涙をぬぐう様に頬を撫でる。

彼の涙を見たのは…何時振りだろう。

ずっと背を伸ばして大人になろうと頑張っていた。

でももう頑張らなくても良い。

「ごめんね、凛。」

私も凛という存在を失いたくなかった。

それがいなかったらこの世界の全て、意味が無い様に思えた。

「私も…凛が好きです。大好きです。」

噛み締めるように反芻する。

「私も凛がいなかったらこの世界の全てが意味を持たなくなる。
凛がいてこそ私の世界は輝いているんです。この気持ちに気付いてから私はずっと凛だけを見てきました。
大丈夫、私は何処にも行きません。ずっと凛の傍にいます。」

これから先ずっと隣にいたい。

「これからも凛の傍にいさせてください。」

顔を合わせてくすりっと笑った。

10年たって、やっと大きな一歩を踏み出せた。

Re: 秘密 ( No.343 )
日時: 2014/05/06 15:32
名前: 雪 (ID: GjHPlWkU)

〜・62章 この気持ち・〜
「思ったのですが、何時から私のこと好きになりましたか?」

くすりっと意地悪する様に笑った。

少し憎らしいが憎めない。

小さいときから変わらない。

憎まれながらも笑って人を救える。

「きっと…覚えてないくらいずっと前から…」

思わず俯く。

歯の浮くような言葉だと自分でも分かっている。

「私もです。」

静かに悟る様なマリーの返事。

そうだ。

もうずっとそばにいる。

「私も、覚えてないくらいずっと前から好きでした。」

にっこりとほほ笑む。

多分出会って10年で一番距離が近い気がする。

じゃあ、と続けた。

「何時からアリスが好きだったのですか?」

少しだけ気まずさそうに俯いた。

「そ、それは…その…多分最初から好きじゃなかったんだと思う…」

今だから思う、と凛は続けた。

「多分…ケイに負けたくないだけなのかもって。」

小さい頃から何もかも恵まれているケイ。

ケイと出会ったのはもうすでに養子になった後だった。

だからアリスの心を射止めたのも…勉強で自分の上に行くのもただ悔しかった。

万里花の心すらも射止めたように思えた。

・・・そんなにケイばっかり見てたらケイにばれるぞ・・・

・・・えっ?私そんなに分かりやすいですか?・・・

そんなやり取りがあった。

きっとその時ケイのことが好きだと思い込んだ。

それで対抗しようとアリスを好きになろうとした…気もする。

だから思ったんだ。

何時から自分を見ていたか。

「万里花は何時から…ケイが好きだったんだ?」

「何言ってるんですか?」

事の顛末を話すとああ、と覚えていたのかすぐに納得したような表情をした。

「あれ、ケイの誕生日プレゼントが思いつかなくて好きなものないかなぁ〜って見ていただけですよ!」

開いた口がふさがらなかった。

呆気を取られたとはこういう事を言うのかと初めて実感した。

ははっ、と小さく笑った。

「なんだ、そう言う事か…」

つまりは対抗してアリスを好きになろうと思い込んでいただけだ。

思えば屋上でアリスに想いを告げかけた時、心はすでにアリスには囚われていなかった。

もう万里花でいっぱいだった。

あの告白もどきは自分の中でのけじめを付けたかっただけなのかもしれない。

あの屋上で…いやその前からきっともうアリスのことなどどうでもよくなっていた。

「何を考えていますか?」

にこりっと笑いながら自分の顔を覗き込む。

「いや…なんでもない。」

ふふっ、と笑う。

「どうせ私とアリスのことを考えているのでしょう?」

図星だ。

「リンは圭以上に分かりやすいですから。」

くすくすと笑う。

何時も笑っているが、今日もよく笑う。

これからずっと隣で笑っていてくれる。

Re: 秘密 ( No.344 )
日時: 2014/05/06 21:11
名前: 雪 (ID: GjHPlWkU)

「結局ついさっきまでどこにいたんだ?」

今日は移動授業もそれなりに会ったし、あんなに目立つ場所にいたら教師に見つかっている。

「それは…その…」

はぁ、と小さく溜め息を吐くと覚悟したように話し始めた。

「朝のあれがあった後…リンと顔が合しづらくて…」

頬が染まっている。

よっぽど恥ずかしかったらしい。

10年間であんなに大声を出すマリーは初めてかもしれない。

「それで保健室に向かったのですが…保険の先生が出張で仕方なく…屋上でやり過ごそうと…」

今日は1日中雪だ。

コートを着ていても骨まで沁みるような寒さだった。

段々頬が染まっていく。

その仕草がなんとなくかわいらしかった。

「今日は雪ですので生徒会も中止になってリンが帰るまでやり過ごそうと思っていました…」

アリスもそう推理したのか。

生徒会室からの道筋で屋上へと続く階段がある。

「でも…アリスが来たんです…」

Re: 秘密 ( No.345 )
日時: 2014/05/11 12:56
名前: 雪 (ID: A/2FXMdY)

ガチャッと扉の開く音がして思わず身構えた。

リンだと思っていたから。

自意識過剰とはこのことだろう。

「…アリス」

でも立っていた人影はリンよりも背が低く、金髪で整った顔立ちだった。

「やっぱり、ここにいたんだ。」

分かっていたような口ぶりだった。

アリスはゆっくりと近づいてきて手すりから校庭を見下ろしていた。

「リン、心配してたよ。」

触れたくない話題であった。

「…リンに会いに行きな、マリー。」

何時までも逃げられるとは思ってはいない。

でも今日だけでも顔を合わせたくない。

「リンはマリーを探している。話さなくていい。せめて無事だってことくらい伝えておけ。」

アリスなりの気遣いなのだろう。

返事は出来なかった。

「はい。」

差し出されたのは見覚えがある。

昨日アリスが選んでいたチョコの包装紙だ。

故に中身も簡単に想像が出来る。

「自分でラッピングしたから形は少し悪いが…味は変わらないだろう。」

朝から何も食べていない。

お腹がすいているので、食べてみた。

やけに甘く感じた。

「…昨日作った時より甘くなっていませんか…?」

リンもケイも特に甘いのが好きという訳じゃない。

だから程良い甘さにしておいたのだが、これは相当甘い。

「万里花用だから。甘めにしてみた。」

ニヤリと笑ったアリスの顔を見て思わずふふっと笑ってしまった。

「リンならきっとマリーを見つけるよ。」

本題に入った途端。

自分でも表情が固まったのを感じた。

「…今日1日かかっても見つけられなかったのに?」

「それでも見つけられる。だってリンだもの。」

そっと手を伸ばして手首を掴んだ。

引っ張る様に。

励ますように。

「私達4人には絶対に欠かせない、大事な仲間だもの。でも…今はその言葉より有効な言葉があるね。」

わざと区切りを付ける。

そしてその言葉を口にした。

「マリーが好きになったリンだもの。世界でたった1人、マリーが好きになったリンだもの。
そんなリンがマリーを見つけられないと思ってる?」

私が好きな…リン…

誤解されやすいが別に冷たくもなんともない。

よく冷血だとか冷酷とか言われがちだけど、そんなのうわべだけだ。

冷静でリーダーシップが合って、ちょっと生意気で、でも本当は優しくて強く生きている。

感情をそこまで露骨に表さないだけ。

優しくて…私に生きる道を示してくれた。

「行ってきな、マリー。」

そう告げられて駆け出して屋上を後にした。

探し回った。

けれど見つからなくて…丁度タイミングが悪かったのだろう。

それで外に出た。

あの木の下で休憩程度で立ち止まった。

見上げて雪を浴びていると今までのリンの記憶がよみがえった。

何時だって私の手を引いてくれた。

アリスと再会してから1日たりとも離れたことのなかった。

自分のつまらない意地のせいでリンを傷つけた。

そのことが辛かった。

そしてあんなにやさしくて強いリンの傍に入れないことが悲しかった。

そんな時だった。

リンの声が聞こえたのは。

「万里花!!」

その時私の中でアリスの声がした。

・・・リンならきっと見つけてくれる・・・

叶わないな、と思った。

Re: 秘密 ( No.346 )
日時: 2016/05/15 21:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

昔話に思わず少しだけ胃を痛めた。

まるで自分ののろけを聞かされているようで、かなり恥ずかしい。

「まぁ…そう言う訳で今に至っているのです。」

「あ、ああ…」

くすくすと笑う万里花の顔を見る限り、相当顔が赤いのだろう。

帰り道、2人並んで帰るのはずっとの習慣だった。

生徒会で遅れて帰ることになっても待っていてくれる。

今日だて帰るまでずっと待っていた。

お屋敷の前につく。

何時もと同じ。

お屋敷の前まで万里花を送る。

でも気持ちが通じ合っていると分かっているだけでこんなにも景色が違う。

「じゃあな。」

これで終わりだと思うと少し寂しい。

思えば毎日少し心細く思っていた。

もっと語りたい、そう思わされる。

でも別に気にしない。

明日も明後日も1年後だって、万里花は隣にいる。

「凛!!!」

背を向けた後で万里花が声をかけるのは珍しい。

記憶の中でもそう何度もあることじゃない。

思わず振り返った。

振り返るといつも以上に幸せそうに笑う万里花の顔。

「不思議ですけど…出会った時より、離れたくないという思いが強くなっている気がするんです。」

ニヤリ、と笑う。

その表情がアリスに似てきた。

自信満々で失敗するなんて夢にも思わない。

賭けをする時のアリスの表情に似ていた。

「俺も。」

満面の笑みを浮かべ、顔を赤らめながら近づいてきた。

その時は何の警戒心も抱かなかった。

チュッ

小さな音がした。

頬に優しくて温かい感触がした。

キス。

そう理解するのには数秒用いた。

「私はこれからも凛だけを見ていきます。」

そういって何時もの様に微笑んだ。

本当に…万里花には敵わないと思った。


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