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秘密
日時: 2020/07/02 17:37
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ここは皆の秘密基地。

そこに響く彼女の歌声。

これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————

〜・目次・〜
序章
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1章
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137章
>>648->>651

138章
>>652->>655

作者の言葉
>>401

作者の言葉 2020.7.2
>>656

*参照10000 有難うございます*

これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。

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Re: 秘密 ( No.527 )
日時: 2015/07/09 18:01
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

ぴかぴか光る携帯を押すと、自動的に留守電が再生される。

「…もしもし」

少し控え目な圭の声。

分かっていた。

圭がかけてきていたことくらい。

「アリスの言っていたこと、ちょっとだけ分かったような気がしたよ」

私の言っていたこと。

と言うことは、手紙は彼の手に渡ったのか。

もう1人のアリスは、ちゃんと仕事をしてくれたのか。

置き手紙、なんてもの初めてだった。

彼になにかのメッセージを残したのも。

「…無理をしていたのかもしれない。でも、アリスに近付けたなら。
もしそうなら、すっごく嬉しい。アリスにずっと憧れていたから。」

嬉しそうな声。

ちがう。

違うよ。

私は圭が憧れるような人間じゃない。

圭は何も分かってない。

私が言いたいのは、そう言うことじゃない。

「人間だよ、ちゃんと。アリスだって。」

…私が人間

今、圭自身が人間離れしているって言うのに。

よく言えたものだ。

「人間にさせてみせる。」

ピーと電子音が鳴った。

「消去する場合は…」

圭の声を伝えるだけ伝えると、役目を終えたかのように。

決まり切った文章を読み上げ始めた。

「…人間、ね」

指で携帯をはじくと、再びパソコンに向き直った。

もう、ちらりとも携帯の方を見なかった。

Re: 秘密 ( No.528 )
日時: 2015/07/13 18:41
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

〜・107章 父の言葉・〜
留守電を再生した後、暫くパソコンを弄ってから席を立ち窓に寄った。

センサーが仕掛けられようと、部屋にはカメラが付いていようと。

この部屋から出ることはできない訳じゃない。

私が死んで困るのならば、不用心に追いかけては来ないだろう。

小さく頷くと、窓を開け放つ。

具体的に何メートルか分からないけど、落ちれば間違いなく即死だ。

私達に残された時間は短い。

急がないと。

私にはきっと人は殺められない。

傷つけられない。

けれど、何時もの日常を捨てればそのくらい。

私はそんな覚悟を抱いた。

足が滑らない様に、靴下を脱ぎ棄てる。

窓枠に手を掛け、身を乗り出す。

黙って死のうなんて許さない。

思っていたより強い風に、体が振り落とされそうになる。

運動神経はもともと、良い方ではない。

むしろ悪い方だ。

飛び箱も、鉄棒も、球技も、どれもこれも駄目だ。

こっちに戻ってからは、色々トレーニングを重ねてはいる。

けれど、体力の無さは昔からだ。

まだ、運動音痴のまま。

パイプや、となりの部屋のベランダ、僅かな足場を踏み外さない様に。

慎重に歩きながら、振り下ろされない様にしっかりと掴まる。

何時もより気を張っている分、肩に力が入る。

後で筋肉痛になることは確定だな、と言う考えが頭によぎった。

ここまで来たら、もう後には引けない。

長い因縁に、決着を付ける時が来た。

16年もの間、ずっとずっと待ち続けていた。

この時を。

もう、迷わない。

Re: 秘密 ( No.529 )
日時: 2015/07/18 18:14
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

丁度…この辺りの位置だ。

父の部屋につくと、窓から中を覗き込む。

こちらには背を向け、机に向かっている。

部屋には父以外誰もいなかった。

勢いよく窓を開け、父の首を絞めに掛かる。

「お話があります、父上。黙って聞いていてください。」

私は今、なにを求めているのだろう。

圭たちを捨て、日常を捨て、…何が残るのだろう?

震えそうな言葉を。

真っ白になりそうな頭を。

抑え込んで、気取られない様に言葉を紡ぐ。

「私にはあなたを憎む理由は…ないといえば嘘になります。
圭たちのこと、母のこと。やっぱり許せないと、思う。
でも、今はそんなことどうでもいいんです。」

生まれてから、ずっと。

父はこちらを見もしなかった。

そのことについては、責められることじゃないし責める気もない。

父は、誰にも成し遂げられないことをしたのだから。

「でも、総合的には色々と許容できるんだ。常識なんて関係なく。
私は自分の為にここに来た。自分の答えを、確かめるために。」

どんな極悪の状況であろうと。

どんな闇の中でも。

そこで育った私にとって、闇は心地よくはなくても不快でもない。

光ある居場所は確かに尊い。

でも、光ある場所だと実感できるのは私が闇で生きてきたからだ。

圭のことも母のことも。

勿論憎いと思う。

闇を知っているから、私は彼らを大事に。

誰よりも、愛おしく思える。

闇を知っていたから、光が神々しく見えた。

このまま、光の中で生きていきたいと思った。

でも、父の裏側を知ったら…

闇の裏側を見てしまってから。

私に迷いが生じた。

私は父がいなくなれば、もう普通に光の中で生きていけると思った。

闇に怯えることもなく、連れ戻されることにも怯えず。

いつまでも、彼らの傍にいられると。

私にとって、一番大事で温かい場所に。

ずっと居続けることが出来ると。

けど、知ってしまってから。

ずっと考えていた。

本当に、私はこのままと光の中で生きていけるだろうか。

闇で生まれて、そこで16年間居続けて、そこで育った。

いまさら、光の中で生きていけるだろうかなんてことは。

言ったらきっと、圭たちに怒られてしまう。

それでも、きっと私は闇を切り離すことが出来ない。

光の中だけで生きて行くこと。

それは私の16年を否定するもの。

あれだけのことをして、のうのうと光の中では暮らせない。

ナイフを首元に当てる。

怖いくらいに無反応だ。

それでも、首を絞める手を緩めない。

だから、私は闇にちゃんと向き合わないといけない。

「…父上がいなければ、私は普通の生活を送っていた。
牢獄ではなく、私がずっと望んでいた明るく光りある場所を。」

こんなもので、何かが変わるなんて思っていない。

こんなもので、私が生きてきた世界は変わらない。

このまま腕を折られるのも、覚悟の内だ。

「私は自分の覚悟の為に聞く。」

こんなもので、世界は変わらない。

父の答えが、どんなものであろうと。

きっと、彼のしてきたことは変わらない。

「お前は、自分の行いを正しいと思うか?」

それでも、私の中のこの気持ちが。

少しでも軽くなるかもしれない。

「君は家族を犠牲にして、その代償に民を救った。
それを君は正しいと思うか?家族より民を愛したこの道を悔いたことはあったか?」

宙ぶらりんになっていた気持ちを。

地につけることが出来るかもしれない。

「君は今、家族と民のどちらを愛している?」

Re: 秘密 ( No.530 )
日時: 2015/07/26 13:40
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

「…決まっている」

何時もの父の声。

けれど、何時もの饒舌な口調とは違う。

何処までも静かで、落ち着いている。

「…民だ」

骸骨の様な、痩せこけている。

サングラス越しでも分かる程の綺麗な顔。

かつては整っていたのだろう。

どこか哀愁を漂わせる雰囲気を纏いながら。

少しだけ口元を緩めた。

「それが間違いの訳がない。」

嬉しそうに、誇らしそうに、そして少しだけ悲しそうに。

けれど、今は人では無い様だ。

痩せ細り、頬がこけ、周りを敵に回した。

身内も、味方も。

彼は、沢山のものを捨てた。

それを彼は一切の後悔もしていない。

だってそれは。

より多くのものを、救うために行ったことだから。

「それが…、君の答えか。」

犠牲も合った。

とても、多くの。

でも、救いも確かに合ったのだ。

父は、自分の歩んだ道を否定しなかった。

父はその救いを否定しようとはしなかった。

否定してしまえば、救われた人をも否定してしまう。

それなら。

それなら、…?

Re: 秘密 ( No.531 )
日時: 2015/08/01 12:45
名前: 雪 (ID: Id9gihKa)

その時。

バタンッ、と大きく扉が開いた。

「テオドール」

腰まである長い金髪と相まって、どこか少女的な印象を受ける少年。

アニエスでも指折りの実力者。

何時もと同じ黄色と黒を基調としたぴったりとした上着とズボン。

肩には何時もと同じストールを纏っている。

トール。

会うのは随分と久しい。

いつだって力を求め、争いごとには積極的に首を突っ込んだ。

狂った感性をしている訳ではない。

ただ「戦いたい」、「人を救いたい」と言う願いの為に。

人を救うための力を手に入れる手段として、戦って経験を積んでいるだけなのだ。

「人を救いたい」

だから、彼はテオドールの元にいる。

トールはこちらを一瞥すると、迷うことなく足を振り上げた。

パシンッとトールの足が私の手に直撃し、ナイフを落とす。

トンッと。

ナイフはそのまま机に刺さった。

絶妙な角度で、父を傷つけないように気遣った蹴り方だった。

首元に当てていたナイフが、見事に父の肌に傷1つ付けていない。

ナイフを落とされて、素直に両手をあげる。

降参のポーズ。

「…父上は無事だ。まだ何もしてはいない。」

どうしてだろう。

少し、穏やかな気分だ。

怒りが無いといえば嘘になる。

やっぱり許せないという気持ちもある。

けれど、それよりもどこか温かい気持ちが。

私の心を埋めた。

「寿命が縮むぞ。」

ついっ、と部屋を出ていった。

分からない。

彼は、間違っている訳じゃない。

勿論正しい訳でもない。

誰かを救うために、誰かを犠牲にするのは間違っている。

間違ってる。

でも、それと同じくらいに正しいと思うんだ。


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