コメディ・ライト小説 ※倉庫ログ
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- 秘密
- 日時: 2020/07/02 17:37
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
ここは皆の秘密基地。
そこに響く彼女の歌声。
これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————
〜・目次・〜
序章
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>>644->>647
137章
>>648->>651
138章
>>652->>655
作者の言葉
>>401
作者の言葉 2020.7.2
>>656
*参照10000 有難うございます*
これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。
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- Re: 秘密 ( No.532 )
- 日時: 2015/08/04 15:38
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
〜・108章 父が創った国・〜
部屋を出た後、トールは私が持っていたナイフを手で弄びながら後ろをついてきた。
部屋まで送り届けるつもりなのだろう。
私は何も知らなかった。
ただ父を悪だと決めつけて、向き合うことを忘れていた。
…私には、やらなければならないことがある。
けれどその為には、私はこの国を知らなさすぎる。
「トール、少し外に出ないか?」
例外的な強さをその身に秘め、父の片腕として長年付き添ってきた。
父と同じくらいにこの国のことを詳しいだろう。
私は知識ばかりで、実際は何も知らない。
アニエスの機密情報、父の隠してきた過去。
それらを調べ知ることが出来ても、アニエスの現状までは分からない。
書面として覚えていても、実物を目に焼き付けてはいない。
考えることはできても、目にすることはできない。
なんて無力。
知らない、なんて愚かな響き。
私は変わりたい。
母がくれたこの頭と瞳で。
圭がくれた心で。
父が納め、作りあげてきたこの国を。
自分の目で確かめたい。
- Re: 秘密 ( No.533 )
- 日時: 2016/04/23 20:00
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「いいのか?私を外に出して。」
いまだに人の声が途絶えない。
アニエスの中心都市である市場では人の声が飛び交っている。
目を閉じ、聞こえてくる音に耳を澄ませる。
心地いい音だ。
瞼をあげると、笑顔の人々が目に映った。
「…素晴らしい国だな」
人は皆笑顔で、笑い声が絶えない。
周囲の国から隔離された、山の中の小さな村の様な国。
けれど、貧しさも不幸も感じさせない。
「別に、テオドールに仕えている訳じゃない。」
途中、市場のおばさんが小さな饅頭をくれた。
トールはよくこの市場に、身分を伏せてきているようだった。
すれ違う何人もの相手に挨拶をし、物を勧められたり食べ物を振る舞われていた。
時折立ち止まっては軽い冗談や世間話を交えながら、楽しそうに話していた。
何人もの相手に茶化されながら、市場を通り過ぎた。
賑やかな市場を抜けると、途端に人気がなくなり森に出た。
風の音や鳥の鳴き声が耳を癒し、緑と木々の隙間から零れる木漏れ日が目を楽しませた。
綺麗な空気だ。
「トールは何時から力を欲する様になったんだ?」
今までずっと、外を眺める窓すらもない牢にいたから。
森があることは知っていたが、ここまで美しいとは思いもしなかった。
思えば父のもとから勝手に抜け出したのは、これが初めてだ。
新鮮な空気に、ほっと息を吐く。
「覚えてないね、そんなもん。」
『力を手に入れる』『人を救う』
それがトールの掲げる行動原理だ。
トールは何時からそれを掲げ始めたのか。
どれくらいの時、それを追い続けたのか。
「人を救うために力を手に入れたのか、手に入れたから救うのか。
当初の目的なんて、とっくの昔に忘れたよ。ただ、テオドール程面白い奴は珍しい。」
何事もない様に話す。
目的を忘れ、ただ力を求めながら人を救う。
いまやトールに釣り合う奴もいない。
彼の才能は群を抜き、統率者となった。
輪の中心に立つことはできても、輪に混じることはできない存在。
「周囲を巻き込むのは、後味悪いからな。」
それだけの相手がいても、周りを巻き込むことを嫌う。
そんなトールは、自由に羽を伸ばせない。
戦えば、必ず誰かが巻き込まれるから。
だから彼は1人で、皆を導く道を選んだのだ。
そう言った情報も、私は知っている。
本人の行動や、言葉から知っている。
今まではずっと、知識としてしか扱ってこなかったけれど。
今なら、1人1人の人間として見ていける。
「体、無理してるんだろう?」
トールは、戦う為に色々なものを捨てた。
強くなるために体も、沢山改造している。
トールには特別な力等ない。
ごくごく普通の人間だ。
だからこそ、無茶をすれば反動で肉体にも強烈な負荷が生じる。
「俺の場合は手を伸ばせば、強くなれた。いっそ届かなければ、諦められたのにな。
もっとも、これはこれで楽しいから気にしてはいないけどな。」
森を抜けると、静かな草原が広がっている。
静かで、自然が溢れている。
外界とを隔てる崖の少し手前。
兵士が沢山立っている。
「よっ」
小さく手をあげながら通り過ぎて行く。
兵士たちはトールが通り過ぎる傍から敬礼をしている。
軍を率いているだけあってか、人望はかなりのものだ。
身軽で、誰とでも打ち解けられる奴だと。
ここに来る道中で思い知った。
私はアニエスを、もうずっと歩いていない。
生まれてから大抵の時間をこの地で過ごしたのに。
私は来たことはなかった。
涼風で過ごした時間など圭たちに出逢った6年前。
彼らが失踪するまでの短期間と、ここ数年だけ。
それ以外は、私はずっとこの国にいた。
けれど、思い出はあの場所に置いて来てしまった。
「あっちは、訓練場。それと、向こうは宿舎。こっちは療養所」
療養所では怪我をした兵士や、病人の介護をしているらしい。
訓練場では、兵士たちが弓や剣を使い武術の向上を。
そして、孤児たちを兵士に仕立てるための場所でもある。
エリスも、昔はあの中にいたのだ。
親に捨てられ、路頭に迷った子どもたち。
背も低く、腕も細く、力のない子供。
私の中に、圭との会話が甦った。
エリスの生い立ち。
そして、それに対して父がとった処置。
父はエリスを救おうとしていたのだ。
闇の世界で戦わせることで、生かそうとしていたのだ。
- Re: 秘密 ( No.534 )
- 日時: 2015/08/13 17:50
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
・・・思い出の屋敷にて、圭との会話・・・
「エリス達は飢え苦しむ子供達だった。
当時のアニエスは財力が無く、孤児を育てることを出来なかった。
それで苦しまぎれに考えだされたのが、子供たちを兵士として育てること。」
アニエスは元々人が少ない。
それでも、エリスたちの様な捨て子は稀に出る。
けれど、それを賄えるほどの資金がなかった。
身寄りのない子は、死ぬしかなかった。
「兵士不足の解消と、孤児の有効活用」
エリスの、ふざけた顔が思い浮かぶ。
世界の全てを馬鹿にするような、表情。
ただ一身に、兄弟を守ろうとした少女。
「当時のエリスも幼かったのだから、兄弟はきっと赤ん坊だったんだ。
戦力にならないからと言って、見捨てることも出来なかった。
だから人質と言った名目を掲げ、兵士に育てたのだ。」
これを聞いたら、エリスはどう思うだろう。
エリスは今の生活をそこそこ気に入っているようだった。
それでも、やっぱり心中穏やかでいられるだろうか?
「…どこで…その情報を?」
「調べた。私だってエリスだけを頼りにしてる訳じゃない。
私には私なりの情報網がある。エリスには調べさせられないこともあるからな。」
私だってエリスに劣らない。
牢に蹲っていたって、知識の吸収はしていたのだ。
外に出てからは、人脈も充分に広げた。
「孤児院を作ろうとして計画自体が頓挫した形跡があった。
国王に上り詰めたのも、国民を慮ってだ。金を動かすなら王の方がやりやすいからな。
実際王になってからは金銭的な問題はかなり改善された。」
圭の視線が変な所に向いている。
視線の先を辿ってみると、それは私の手元だった。
無意識に。
小刻みに震えていた。
私は、この事実に何を感じているのだろう。
怒り?
悲しみ?
…よく分からない。
「…全ては民の為、だ。全く、素晴らしい王様だよ。」
ふざけた様に、吐き捨てる。
きっと、自虐的に見えているんだろうな。
「エリスには、言わないでやってくれ。」
最後の最後に私はそう圭に口止めをした。
- Re: 秘密 ( No.535 )
- 日時: 2015/08/17 18:52
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
思い出の屋敷で圭に話したことを思い出した。
エリスは立派な兵士として育ち、手練手管の手段を用いてお金を集めた。
今では孤児院を建てられるくらいに。
エリスはよく孤児院を出入りし、子どもたちの世話をしているらしい。
孤児はある一定の年齢に達すると、兵士になるための訓練を施される。
決まった道を歩くことになるが、生きていられるだけでもこの国では儲けものだ。
エリスが歩いてきた道は、決して楽な道ではなかっただろう。
エリスは知らない。
孤児達を兵士にするのは、そうすることでしか生かせないからであることに。
私も。
なにも、知らない。
知らずに、ずっと憎み続けていた。
全て父がやっていたのだ。
父が国王になってからは、都は栄え人は増え、孤児も増えた。
孤児たちを1人でも生かすために兵士にして。
そしてその兵士たちを使って金を集めた。
もう二度と、飢えて死んでしまう孤児が出ない様に。
私にとって父は絶対だった。
成長するにつれ、私は自分の生い立ちの歪さに気付いた。
父が悪の権化の様に。
そんな風に思い始めた。
父は母を虐げ続けた。
私のことも、軽んじ続けた。
エリスの兄弟達も人質にされている。
嫡男だというのに、放っておかれたアレクシス。
トールだって、父に出逢わなければ生まれながらの体を弄ることもなかっただろう。
だって。
だって。
…でも、私は父の何も見てはいなかった。
何もかも捨て、家族も、仲間も、自らの身さえも切り捨てた。
さっきまで、半信半疑だったけれど。
私の質問に、迷いもなく民と答えた。
それで、やっと分かった。
ああ、これはきっと本当なんだと。
私は一体なにを見てきたのだろう。
私は一体なにをこの目に写してきただろう。
どうして、気付けなかったんだろう。
チャンスは、いくらでもあったというのに。
今度こそ、父の本質を。
私は見れているだろうか————?
- Re: 秘密 ( No.536 )
- 日時: 2015/08/23 15:36
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
〜・109章 温もりと邂逅・〜
「よっ、元気にしてるか餓鬼ども」
孤児院の中に屈託のない笑顔で割り込んだ。
手には先程市場で貰ったお菓子や果物を抱えている。
「差し入れ持ってきたぞー」
わあ、と言って子供が駆け寄ってくる。
少しやせ気味ではあるが、健康そうだ。
…多い
「アニエスみたいな小さな国から出て行こうとする大人が多いんだよ。
見知らぬ土地に行く時、子供は邪魔なんだろう。」
理由は…聞かなくても分かる。
「後がないからさ。」
よっ、と小さく近くの子供を抱き上げる。
嬉しそうにきゃっ、きゃっと笑い声をあげる。
「…捨てられた方はたまったもんじゃないのにな」
…知らない
知らなかった。
孤児がいることは分かっていた。
でも、あんなに賑やかな市場。
あんなに人がいたのに。
その陰で。
こんなにたくさんの子供たちが、捨てられていたなんて。
「おー、よしよしっ!重くなったな〜!!」
トールは慣れきった手つきで子供をあやし、1人1人にお土産を渡している。
渡すたびに名前を呼びながら、頭を撫でて。
彼はもう何十回もここに来ているのだろう。
私は知らなかった。
トンッと背中に何か柔らかいものがぶつかった感触がした。
振り返ると、小さな女の子。
着ている服はボロボロで、髪も肩くらいに短くバッサリと切られている。
鋏で切ったのか、長さはバラバラだった。
女の子は、頭を抱えてうずくまった。
「えっ…と…」
小さい子とは、目線を合わせた方がいいと聞いたことがある。
その場でしゃがみ、目を合わせる。
つぶらな瞳には僅かに怯えが混じっている。
わざわざ蹲ったのは、自己防衛だったのか。
「私はアリスよ。そこのお兄ちゃんと一緒に来たの。あなたは?」
子供の扱いと言うのは良く分からない。
けれど、遥の件も合った。
あのような感じで良いのだろうか…?
「そいつはアリア。ちょっと前に来たばっかりなんだよ。」
「…そうか」
ここにいる子どもたちは。
皆捨てられた存在。
この子たちも、将来はエリスの様に。
兵士になることが決まっている。
けれど、そうやるしか生きることも、生かすことが出来ないのだ。
バラバラの髪も、本当に鋏で乱雑に切ったものだろう。
さらっと髪をなでると腰に手を回し、グイッと持ち上げる。
意外に重くて、足元がおぼつかない。
「…っと、ととと…と」
子供ってこんなに重いものなのか。
「…わっ」
とうとう支えられなくなり、そのまま後ろに倒れ込んでしまった。
背中に鈍い痛みが走る。
幸い後ろには誰もいなかったようで、被害者はいない。
「…何やってんだか」
呆れ切った表情を向けながら、トールはまた違う子を抱っこし始めた。
一体どんな体力をしてるのか。
…それとも、私が非力なのか?
「アリア、…大丈夫?」
アリアは小さく頷いた。
頭を庇っていた手は、今はきゅっと毛先を掴んでいる。
「…良かった」
温かい。
命の温もり。
命の重さ。
それを一身に浴びている。
アリアの小さな体が。
私は彼女を捨てた親を思った。
アリアはこんなに、小さくて、温かいのに…。
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