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- 秘密
- 日時: 2020/07/02 17:37
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
ここは皆の秘密基地。
そこに響く彼女の歌声。
これは彼女と彼女を取り巻く皆の物語———————
〜・目次・〜
序章
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137章
>>648->>651
138章
>>652->>655
作者の言葉
>>401
作者の言葉 2020.7.2
>>656
*参照10000 有難うございます*
これは自分の案を組み合わせて作ったオリジナルストーリーです。
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- Re: 秘密 ( No.547 )
- 日時: 2015/10/24 19:31
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
どうして怒鳴ってしまったのだろう。
いつもなら、笑ってかわす所だったのに。
彼女と…アリスといると…彼らを見ると…あいつ等を思い出す。
私がこちらの世界に関わってからできた、初めての友人達。
気さくで、話しやすく、良く笑っていた。
喧嘩もしたし、その分仲直りもした。
自分と彼らが違うことは、気付いていた。
出逢った時は、距離を置く様に作り笑いを浮かべた。
けれど、いつの間にか親友と呼べるほどの仲になった。
出逢ったばかりの時には思いもつかないほど、親しくなった。
その頃には夜会なんかにもちょこちょこ顔を出していた。
沢山の人の、沢山の表情を知っていた。
嘘を突こうが、騙そうが、大抵は表情を見ていれば分かった。
だから、心から一緒にいることで楽しめる相手などいなかった。
人の気持ちが分かることは、安心感と同時に嫌悪感を呼び寄せた。
それが当然のことだと思っていた。
けれど、彼らは本当に何の偽りもない様な笑顔を向けてきた。
遊んだことのないことや、聞いたこともない様な場所へ連れて来てくれた。
ずっと大人たちの中で生きてきた。
金持ちの習性や、癖は分かっていても。
同年代の子との関わりはなかった。
それはきっと、私が他の子と違うことに羨望を覚えることを控えるためだろう。
けど、その頃は羨望ではなく疎外感を覚えていた。
疎外感、とも少し違うかもしれない。
ともかく、自分が他人と違うということはよく分かっていた。
だからこそ、実感できるのだ。
私が出逢ったのが彼らで良かった、と。
能天気で、好奇心旺盛で、いつもどこかちょこまかしてて、人をからかってばかり。
なのにさりげなく気遣い屋で、自由で、優しかった。
彼らといた時に感じた想いを、私はもう感じない。
彼らを言い表す言葉は、1つでは収まらない。
でも、唯一言えるのは。
彼らは死ぬべきじゃなかった。
死ぬはずじゃなかった。
「…なんで、死んじゃったかな」
聞こえるはずがないのに、ボソリと呟いた。
彼らがいなくなってから、ずっと薄れることのない痛みが身体中をめぐっている。
でも…
アリスが彼らを見つけた時。
彼らに会った時。
彼らと話している時。
稀に。
ごく稀に。
彼らと話しているかのような感覚に襲われた。
だからこそ。
今度こそ。
間違えてほしくはないのだ。
同じ道を辿ろうとしている彼らを。
そして、私の対となるパートナーのアリスを。
好意を抱いたことがある。
けれど、嫌悪感だって何度も抱いてきた。
まるで人形の様に、自己主張がない子だったから。
自己犠牲だけで、全てを解決しようとするから。
自分を写した鏡を覗き込んだみたいだった。
とても似ているのに。
左右が逆転しているみたいに、相容れない。
けど、やっぱり根本は一緒。
アリスは、私と同じ道を歩こうとしている。
守ろうと、大事にし過ぎている。
「私はあんたに…同じ道を歩いてほしくないんだよ」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「見苦しいところを見せちゃったね。」
3人に向き合う。
「…大丈夫ですか?」
「なにがあった?」
こう言う時、躊躇わずに声をかけてくれる彼らが好きだ。
リンやマリーらしい強みだ。
本当なら真っ先に声をかけてくれる圭は、口をつぐんでいる。
私が外出前に行ったことを気にしているのだろう。
「怪我…してない?」
ようやく躊躇いがちに訪ねてきた。
「大丈夫だよ。ありがとね。」
さっき怒鳴った時に落ちた花を拾う。
あれだけ落ちない様に気を付けていたのに。
結局は全部落としてしまった。
失態だ。
花を拾うと、今度こそ落とさない様に抱え込んだ。
台所で煮詰めておかないと。
「…初めての、喧嘩だ」
エリスが私に対して大声を張ったのも。
それに対して私が怒鳴り返したのも。
思えば、マリー達とも喧嘩なんてしたことなかった。
それは、私の本質を彼らに隠しているから…?
幼い頃から、私の全てを見てきた。
生い立ちも、私の性格も、よく知っている。
万里花達には、結局私は何時も隠し事ばかりしている。
「ちょっと、台所に行ってくる。」
どうして…
どうして、怒鳴ってしまったのだろう。
知らず知らずのうちに、2人は同じことを想っていた。
無意識のうちに。
結局は、似た者同士。
- Re: 秘密 ( No.548 )
- 日時: 2015/10/30 17:12
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
〜・112章 アリアの散髪・〜
窓を開け、鍋に花を入れた。
水を加えて、ぐつぐつと煮出す。
匂いを吸いこまない様に、布巾で口を覆う。
花には毒がある。
紫陽花やオシロイバナ、水仙、鈴蘭、チューリップ、ホオズキ。
スイートピー、アネモネ、それ以外にも挙げればきりがない。
よく見かける彼岸花も、花・葉・茎・根全てに毒がある。
彼岸花にあるリコリンという物質の致死量は10g。
球根1つに15mgしか含まれていないので、大量摂取しなければ大丈夫。
食べなければ害はないので、よくネズミ避けに使われる。
彼岸花は、形が好きだ。
彼岸花は毒としてよりも、食用として使う。
水に晒せば、毒は抜ける。
勿論食べられる花…エディブルフラワーというものもある。
バラやホウセンカ、ペチュニア、パンジー、マリーゴールド、タンポポ。
城では色んな物を育てている。
だから廊下にはずらり、と鉢が並んでいる。
毎日ちゃんと手入れし、頃合いを見て摘む。
けれど、ちゃんと数は残す様にしている。
薬草園もちゃんと別に設備されている。
自然の毒の力を、余すところなく使える。
トリカブト、なんて有名だ。
あれは解毒剤もないのに、そこらに生えている。
花言葉も『あなたは私に死を与えた』
何度かかき混ぜ、丁度いい具合になると容器に移し替える。
棚には似た様な瓶が沢山置かれている。
ラベルの1つもない。
それぞれの瓶の位置や柄を覚えて、他人に不用意に使わせないため。
何の薬か分からないものを使いたがる人はいないだろう。
基本的に目につく所にある棚に入っているのは、人に害をなさないものだ。
毒薬は床下やパッと見では分からない様な所に仕舞っている。
「アリス」
布巾の下で、クスリと微笑む。
「何か用?」
女の様に細い顎。
茶髪がかった髪が少し伸びていて。
中性的な顔立ち。
圭だ。
もう普通に言葉を交わせる。
「アリス、今度王都を出る時一緒に行く。」
覚悟を決めた、顔だ。
- Re: 秘密 ( No.549 )
- 日時: 2015/10/31 19:17
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「アリスのことを知りたい。だから、ここでアリスが何をするのか知りたい。」
目を伏せる。
圭も変わろうとしている。
「…良いよ」
変わった後の圭は。
また、私に恋をしてくれるかな?
誰かを救いたい、というばかりで将来のことも考えず私のことばかり。
私はもうなににも囚われていない。
彼が恋をしたのは、弱くて美しい私。
強くて醜い私を見てはいない。
それも私の一部だというのに。
圭に見せていない私を見せる機会かもしれない。
千年の恋も冷めてしまうかもしれない。
けど、もしかするとそんな私も好きになってくれるかもしれない。
このまま私に依存していると、圭は私がいればいいと思ってしまう。
そうやって、歩きだすのをやめてしまう。
けど、私はそんな圭も愛しいと思ったこともある。
でも、やっぱりそんなことはできない。
もっと圭を知りたい。
もっと圭を見ていたい。
私もちゃんと圭の醜い所も、綺麗なところも、強い所も、弱い所も。
抱きしめた恋をしたいから。
そっと、口の横に温かいものが触れた。
布巾越しではあったけれど、それは圭の口付けだった。
迂闊だった。
突然のことで反応できなかった。
「…こう言うことやると、後で好きじゃないと気付いた時。後悔しか残らないぞ。」
好きか分からないのに、キスなんて軽々しくするものじゃない。
そうやって錯覚して、どんどん泥沼にはまって行く。
「それでもいい。好きじゃなかったとしても、後悔はしない。」
…ずるい奴。
そっと、圭の唇を指で押さえる。
「でも、駄目。私は圭にそういう風に好きになってもらいたい訳じゃない。」
こんな生い立ちだから、軽い気持ちで恋をさせたくない。
火傷を負うのは、何時だって相手の方だから。
「やすっぽいラブシーンをやってるね」
突然後ろから掛けられた声。
帰ってきたのだろう。
少し、疲れた様で何時ものツッコミもキレがない。
「まだ言う?甘すぎだって。」
冗談っぽく笑って誤魔化す。
エリスは近くの椅子を引きだすと、ドスンっと座り込んだ。
足を投げ出して、億劫そうに答えた。
「いんや、別にいい。
そこのお坊ちゃんも少しはこっちに加わる気になったみたいだしね。」
先程のやりとりを聞いていたのだろう。
一体何時から立っていたのか。
「早かったね。茶でも飲む?今ならリラックスできる香も焚けるけど。」
「…水だけでいい。飲んだらシャワー浴びて寝る。」
答えながら、化粧を慣れきった手付きで落とし始めた。
私は化粧をしないので、きっと同じことはできないだろう。
「いつも迷惑をかけるな。」
私自身のことも、父のことも。
エリスはいつも着飾って、化粧を施して出かける。
顔には笑みを浮かべるけど、決して楽しそうではない。
「なに、もう慣れた。」
心底どうでもよさそうに答えた。
私には人の気持ちなんてもの、エリスほど敏感ではない。
けど、それは本当の気がした。
「圭、席を外してくれ。」
ここからは一対一の話し合いがしたい。
- Re: 秘密 ( No.550 )
- 日時: 2015/11/04 23:59
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
話を終えて部屋を出ると、彼らのもとを訪れた。
「6月の初めには、涼風に返せると思うんだ。」
今は5月上旬。
けれど、高校2年生が4月中旬から1ヶ月近くも休んでいる。
成績面でも、将来的にもこれ以上休むのは良くない。
「アリスは?」
リンは鋭いね。
会話の些細な違和感を見抜いている。
「私はここに残る。高校には一応籍は置いておくけど、戻る予定はない。」
私は彼らと別の道を歩く。
その為の第一歩。
彼らからの自立。
「ここで、私はすべきことを見つけたんだ。」
にっこり、微笑んで見せる。
「出来る限り、電話もメールもする。私はもう大丈夫。」
その強さは、彼らから貰ったもの。
だから、私はもうここに残る。
まだすべきことがあるから。
「…本当に大丈夫ですか?」
やっぱり。
心配してくれる。
それはマリーの優しさで、想いやりで、強さなのだ。
沢山の非難の目を押しのけ、自分を貫き通した灘万里花という1人の少女。
そんな彼女みたいになりたくて。
マリーに分けてもらった気持ちや、温もり。
好きな人を一途に想い続ける強さを持ち合わせて。
それを人に分けられるような存在に。
「問題ない。マリーやリン、圭から貰ったものを。
もっとたくさんの人に、たくさんの子どもたちに、分けたいんだ。」
にこり、とほほ笑むと堂々と宣言する。
「今日は疲れたから、もう寝よっか。続きは明日。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
翌日、圭とマリーとリンを連れて孤児院に向かった。
圭に連れて行って欲しいと言われていたが、元々全員を連れて行くつもりだった。
「この子がアリア。ここにいるのは、そのほとんどが孤児なんだ。
アニエスの財政難を嘆いて、祖国を捨てるために子どもを捨てるんだ。」
私も聞きかじったばかりのことだけど。
トールに連れて来られてから、毎日。
通って、子どもたちの笑顔を見た。
「今日こそ髪を切ろっか。お姉ちゃん、勉強してきた!」
次に来たときに切る、と言ったはものの髪など切ったことはない。
だから少し待ってくれ、と毎日の様に引き延ばしてきた。
「マリーは、髪の切り方知ってる?結んだりするのは出来るよね」
髪を結ぶのは相変わらず苦手。
アリアの髪を整えたら、少し髪を弄ってほしいのだ。
「こうした方が良いってアドバイスがあったら、言ってほしいんだ。」
なにせ、人の髪を切るのは初めてだ。
失敗したら、申し訳ない。
アリアに玩具を手渡す。
「遊んでれば、直ぐ終わるよ。」
無闇に首や顔を動かさない様に、玩具で気を引く。
布を首周りに羽織らせる。
「参ります」
ジャキンッと想像以上に大きな音がした。
髪を梳きながら、整える。
本を見て、それを真似ているだけだけど。
この能力には、そう言う使い方もある。
それを、示したい。
「…どう?」
しばらく髪を切り、鏡で確認する。
髪に城から持ってきた花を挿す。
元々あった可愛らしい顔がなかなか映えている。
バラバラだった髪が綺麗にまとまっている。
前よりもこっちの方が断然いい。
「アリア、終わったよ。」
鏡を渡すと、ニカッと笑った。
アリアは相変わらず無口で、喋らない。
けれど、表情は少しずつ変わりつつある。
いつの日か、楽しそうに言葉を語る日が来るのだろうか。
それを、見届けられたら…きっと…
「アリスにしては…上出来です」
とても、幸せだろうな。
- Re: 秘密 ( No.551 )
- 日時: 2015/11/08 18:47
- 名前: 雪 (ID: Id9gihKa)
「ここにいるのは、孤児だ。規定年齢を越すと、兵士になる準備をする。」
アリアの頭をなでると、圭たちに向き合う。
子どもたちはその場にいるが、構わず話す。
幼くてまだ分からない、と言う意味ではない。
隠しても仕方がないのだ。
アリア達には、幸せと一緒に残酷な世界も見せていかなければいけない。
残酷なんだよ。
そう言う世界にいるんだよ、と幼いうちから伝えておきたい。
「銃を持ち、ナイフを手にする。人の裏側を知る術を知り、人を騙すことを覚える。」
辛く、残酷なものである。
だからこそ、光を見つけた時、その希望から手を離してはいけない。
絶対に諦めてはいけない。
「…私は暗闇の中で、光を放ち導きたい。」
何処までも暗く、底がない世界でも。
少しでもその闇を淡くする努力は辞めたくない。
「だから私はここで、王になって少しでもこの国をよくしたいんだ。」
そうやって、少しでも…
「父の…意思を継ぎたいんだ。」
誰よりもこの国を愛していた父。
憎まれても、虐げられても、傷つけられても。
身を斬る様な痛みを伴いながら、犠牲を払い…僅かにアニエスに光を灯した。
周りに理解されずとも、それでも豊かな国を作りあげた。
父を許すことはできない。
今でも、憎い。
私にとっての母も、同じくらい大事だったから。
圭たちと引き離されて、涙にくれた日もあった。
けど…だからこそ、私は強くなれた。
圭たちだけの世界から、出ることが出来た。
「…だから、私は涼風には帰らない。ここで、私のすべきことをする。」
進路とか全然決まってない。
自分から何かしたい、何かになりたい、なんて思ったことなかった。
私が初めてなりたい、と思った。
父の様に。
憎まれても、人を愛せる様な人になりたい。
心の底から蔑まれても、誰かの為に泥をかぶれる人。
不思議。
私も父のことを憎んでいるのに、父の様になりたい。
「大好きだよ、マリー、リン、圭」
名前を呼ぶ度、愛しさがこみあげてくる。
胸が温かな気持ちで包まれる。
「自分の道を歩こう。」
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