神々の戦争記

作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-3


第三会議室に入ると、もうすでにほかの隊員は来ているようだった。
「ギッリギリね」
「お前が話しかけてきたからだろ」
「静かに」
副隊長の威圧的な声で、室内はしんとなった。やがて誰かがドアを閉める。
「これから作戦会議を始める。
 時間もったいないからさっさと終わらせるぞ。
 雷撃隊は鈴原、伊藤、若松、五十嵐の四名。
 水撃隊は…」
副隊長がテキパキと編成を組む中、勇は雷撃隊に、川島は狙撃隊に、桐山は水撃隊の中に入った。
「以上、編成終わり。あとは現場行く途中で班長から聞いてくれ。移動開始!」
隊員たちは即座に地下駐車場へと降りていき、勇達もそれに続く。
基本的に車両はトラックで、班に一台用意されているのでそれを使う。
「じゃ、あとは現地で」桐山を見届けると、勇と川島は荒川班トラックに乗り込んだ」

「よーす」
「あっ、鈴原士長」
移動中、トラック内で話しかけてきたのは鈴原遼士長だ。勇や川島のよき先輩となっている。
「君ら今回3回目ぐらい?」
「…そうですね」
川島は思い出すようにして答えた。
二士以下の下等防衛員は、訓練を主としているので出動はまれである。
今回はたまたま訓練終わったところだったので「じゃぁ連れてくか」という話になったらしい。
「まぁレベル4だし大したことないでしょー」
鈴原はごろんと、トラックの壁に背中をもたれかけた。
「そのレベルってどうやって決めてるんですか?」
勇は結構前から気になってたので聞いてみた。
「単純にシピアの容量だ。あれ、講座でやってないん?」
「いや、こいつ馬鹿なもんで……」
勇は反論する前に川島に口元を押さえつけられた。
なんなんだよコイツ……!
と、勇が内心腹を立てているところに、鈴原は説明した。
「妖魔とか俺ら一人一人にはシピアの容量っつーもんがあって、まぁ基本的にそれがなくなったら死ぬってことだわ。
 んで、妖魔はその大きさで9つぐらいにレベル分けされてんだ」
「レベル1が1000以下、2が2500以下、3が4000以下、4が5000以下っていう感じだ」
優等生の川島は鈴原の説明を補足した。お前には聞いてねぇーっつーの。
「お前よく覚えてんなー、俺もうろ覚えだのに」
鈴原は本気で感心してる様子である。
「この容量は俺らにもあって、ときどき測定されるんだわ。覚えてない?」
そういえば、と勇は頭を回転させた。この前、呼び出されて色々やってたな……
確か4200とうんちゃらかんちゃら。
「あれってこれ量ってたんですか?」
「お前知らないでやってたのかよ!!」
川島は怒鳴った。鈴原はハッハッ、と笑う。
「一応訓練とか駆除作業とかでも使えるシピア量が自分の何パーセントかって決まってるらしい。
 まぁ普通はそんなこと考えないけどなー」
一人一人のシピア量と、妖魔のシピア量を見比べて、適切な編成を執るのが隊長の役割である。
その時、『比数』というものが絶対的に不可欠で、ある妖魔のシピアの種類に対する耐性みたいなものである。
例えば、ある妖魔の雷の比数が1で、シピア量が1000だった場合、こちらも1000の雷シピアを妖魔にぶつければ駆除成功となる。
また、炎の比数3だった場合はこちらは炎シピアを3000ぶつける必要があるので効率が悪い。
逆に水の比数0.5だったら水シピア500ぶつけただけでイチコロだ。今回の妖魔もこういう感じだ。
「そういうことも考えて編成組むんだから相当大変だよなー」
移動中に説明を終えた鈴原は立ち上がって、前のほうに歩いて行った。
「現場到着だ!
 狙撃隊はトラックに残って水シピア弾を使用!雷撃隊及び水撃隊は外出ろ!」
荒川の怒鳴り声で一斉にトラック内があわただしくなる。
「じゃぁな」と小銃を抱えた川島に別れを告げると、勇はよっと、トラックを飛び降りた。