神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-28


「……つまり、爆発的なシピア反応を使って、妖魔――いや、シピアーのシピアをも吸収し尽くすと、そういうことだな?」
ヴィータが聞くと、氷雨は頷いた。「せこい戦い方だ」とヴィータが吐き捨てる。

「全容量のシピアを吸収し尽くせば、人も妖魔も死ぬ。
 だから、もしこの世に存在する志シピア以外の全シピアを吸収できたとしたら――」

メンバー全員が息を飲む。



「…――文字通り、『真の平和』が訪れる」


長い沈黙の後、勇はふと思った。吸収したとしても、そのシピアは――
「宝石の中に閉じ込められて……どうなるんだ???」

勇は思わず声に出した。全員の視線が勇に向けられる。


――何言ってんだコイツ
――アホ…なの……?
――主旨が分からん
――終わってるな
――脳味噌空っぽ?

  ……勝手に人の心情を分析してみたが、答えは勇には分からない。ただ、そんな気配もしなくもない。

だが、それに反して氷雨は言った。

「もし、ここまで計画がうまく行けば、黒鴉は必ず宝石を回収する。
 今地球上に存在するシピアの容量はおよそ80兆だから、エネルギーで換算すれば核爆弾240発分。
 液体を垂らすだけで激しく反応するから、下手をすれば――いや、確実に世界を我が物にできる」


……シピアがなくなった世界。しかしそれをすべて爆弾として利用される。
  全世界が脅されることはまず間違いないし、そんなものが一度でも使われたら、世界は終わる…


「小さいようで、とてつもなく巨大な目的。それが黒鴉の計画であって、最終目標」

まさにその通りだ。

「で、何で私たちは敵拠点を制圧することになるんだ?その鉱石に敵を近づけなけりゃいいんじゃ?」
黒御影が言う。しかし、あたかも答えを用意していたかのように、氷雨は言った。

「それは、やってみれば分かる」
「「「やってみる???」」」

勇を含めた数人が聞き返した。一体何をするというのか。

氷雨は依然レーダーが表示されているウィンドウを閉じて、先ほどの動画サイトを開いた。
再生し終わった動画の下に、説明文とコメントがずらりと並んでいる。

氷雨はその説明文の一部にカーソルを合わせた。


   『ppp3154@blacrow』


それは一つのメールアドレスだった。そういえば――

「動画の中で、仲間になりたければ連絡をしてほしいと言っていた。から、ここにメールを送る」
「ちょっと待ってください、それって……スパイ、ってことですか?」

ユーフェルが聞くと、氷雨は頷いた。すかさずファレンが聞く。
「だ、誰が……」

氷雨は全員を見渡すようにして答える。

「それは、またあと」


その時、終了を告げるかのように、室内に朝の鐘が鳴り響いた。