神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-23


  ・・・補足・・・

『シピアを使えば100m4秒を切る』


この場合でのシピアを使う、というのは、シピアを体内でエネルギーとして取り入れることです。
体内で生成、蓄積されたシピアの一部は、養分として細胞に吸収させることが出来、
それにより細胞の大幅な活性化と、エネルギーの生産が可能となります。

ので、100mを4秒で走り抜けるということもできてしまうわけです。ちなみに、最大時速は92km。
また、自然に放置して治る傷(切り傷、突き指、たんこぶなど)は、このシピア吸収によって一瞬にして治すことが可能。

ただし、どちらの場合でもシピアの浪費=体力の消耗に直結するので、ほどほどに。


100m走のように、ほとんどエネルギーを使わない運動の場合は、車のスピードまで上げられるが、
垂直跳びになると、川島の世代だとせいぜい2,3メートルが限度。
しかもそれなりにシピアを食うので、やっぱり攻撃に回すのが優先という観念が出来ています。


***


「……死んだの?」

黒御影が、蒼と朱の炎に包まれる哀れなコルピオスを冷たい視線で見つめながら聞いた。

「いや、魂はまだ生きてるはずだ。このまま燃やし続けて炙り出す」
榊は答えながらメンバーの方を向く。

と、その時、固まるメンバーの向こうから人影が近づいてくるのが分かった。


「!……荒川隊長!」

榊の声に、一同全員後ろを振り返った。
そこには、つい一時間前に挑戦状を突きつけてきた、荒川の姿があった。

「俺達、どうだったですか?」
「う、うまくやれてましたかっ!?」
「この後打ち上げとかありますか!?」

それぞれの台詞が誰のものであるかは想像してもらいたいところだが、最後の奴は荒川にグーで殴られた。

「……よくやった。正直、もう少し時間がかかるだろうと踏んでいたが」
「じゃぁ!みんなで打ち上げ――(殴(殴

同期と上司の二人から殴られる主人公を見て、榊は笑いながら言った。
「いいじゃねぇか。打ち上げ」
「さ、榊さん……」

川島が榊を見上げる。しかし、他のメンバーもわいわいと盛り上がったおかげで、流れは一気に打ち上げに向かった。


「うっしゃ行くか打ち上げ――――!!!!」
「「「「「「「おお―――!!!!」」」」」」」


メンバーの意気投合したその姿を見て、荒川は苦笑のようなものを口元に浮かべた。

「どう?新しい部下たちは」

不意に耳元にかかった声に、荒川は顔をしかめた。
その表情を読み取ったのか、隣の井上はクスクスと笑う。

「お前が部下をいじめてるって聞いたから、来てみたんだ」
「余計なお世話だ」

その不機嫌面に、井上は再び声を殺して笑う。荒川には何が面白いのかさっぱり分からない。

「まぁまぁそういわないで。で、どうなの?実際」
「もともと戦闘向きではないタイプの奴がいるからな。どう組み込んでいくかが課題だろ」

なるほどねぇ~と、意外に井上は真面目に聞いている。

「まぁ裏鉄隊だけで別メニュー組んでるし、そのうち馴染んでくるだろうよ」
「そうだといいがな」


考え込む荒川を見て、井上は微笑んだ。