神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-20
「すべてのシピアに対応…?」
勇はファレンの顔を覗き込んだ。ファレンはそれを見て苦笑する。
「僕もよくわからないんですが、シピアを吸収する鉱石が存在するようです。
……コア宝石って知ってますよね?」
「あぁ、妖魔の魂が朽ちたときに残る結晶のことですよね」
川島が思い出すように言った。
勇もそれは覚えていた。いくら講義中に寝ているとて、一階級上がるにはそれぐらいの知識は常識である。
妖魔は自身のシピアが完全に切れたとき、自分の魂を固体化、結晶化させる。
それぞれのシピアごとに結晶の色が決まっており、それぞれに宝石の名前をあてはめたのがコア宝石だ。
(エンスイヒライチゲン)
炎水氷雷地幻がそれぞれ、ルビー、アクアマリン、サファイア、ペリドット、エメラルド、アメジストとなっている。
ちなみに、各宝石とコア宝石の成分等などの関係性は全くない。
このコア宝石は、魂が朽ちた瞬間に『若干』残ったシピアが凝縮されたもの。
現在、これを転用してシピア弾に使用しているのだが、なにせ魂の『余り物』であるため、効率はすこぶる悪い。
暖炉に残った灰でもう一度火を起こそうというのと同じだ。
ちなみに、先日仕留めたエリフのコア宝石で、約20発の炎シピア弾が作成できる。
シピア弾がどれだけ希少価値のあるものかがうかがえる。
「それがどうかしたんですか?」
「コア宝石は、触れると内部のシピアを発散させます。
しかし、この前北部の山脈地帯でその逆が発見されたんです」
「逆…というと?」
ファレンは少し深呼吸をした。
「つまり、触れれば外部のシピアを内部に取り込む。そういうことです」
「シピアを…取り込む……」
それはつまり、シピア弾に応用させれば、着弾した段階で敵のシピアをぐんぐん吸い取れるわけだ。
盲管(銃弾が体内に残ること)ならばなおさらだ。
「どれぐらい吸収できるのかは分かりませんが、それを運ぶためにわざわざ後方支援部が後から来たんです」
「ってことは……」
勇と川島は同時に後方支援部の列を振り返った。
10名ほどの戦闘隊員の後ろには、全長5mはあろうか、巨大な大砲がそこにはあった。
「な……」
勇は絶句する。
川島も目を皿のようにしてその兵器を見つめた。
「…小型化にはさすがに時間が足りなかったようです」
ファレンは小さく笑った。
今にもレーザーを放出しそうな巨大兵器は、直径たったの3cmの謎の鉱石を一発だけ発射するらしい。
たかが一発撃つだけで、なぜこんなにもデカくする必要があったのか理解しがたいが、なんだか逆に頼もしい。
目を輝かせる勇を見て再びファレンが笑った。
「なんにせよ、これを作った人はただものじゃありません」

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