神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-35
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状況整理的な何か・・・
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(姓鈴原) (姓弥生)
実の父==実の母===========元夫(恭造)
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――――――― 弥生時雨
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鈴原遼 鈴原氷雨
生誕順は 時雨→遼→氷雨。
現在生きているのは、遼・氷雨。実の父母は15年前に時雨に殺害された。
恭造、時雨は現在も行方が分からない。
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メンバーは、荒川を中心として円を描くように座り込んだ。荒川が息を深く吸ってから語りだす。
「……知っている者は知っているだろう。俺は、火のバーゼルシピアーだ」
「hm――!?」
大声をあげそうになった勇の口を、川島が慌てて抑えた。
荒川がバーゼルシピアー?そんなバカな――
しかし、周りのメンバーはそう驚いている様子ではない。もしかしたら知れ渡っていることなのかも……
「元々は鈴原の父親が手にしていたバーゼルの力を、彼が亡くなってから俺が受け継いだんだ」
そういえば勇もオルグに聞いたことがあった。バーゼルシピアーは一つの属性に必ず一人存在して、
その人が死ぬと次の人間にその力が継がれる、と。
「だが、彼と俺には共通する副神がいる。そいつを通じて色々と話を聞かせてもらったんだが……」
一呼吸おいて荒川は続ける。
「どうやら、彼は『英雄』とされる六人の人間の末裔だったらしい」
「やっぱいるんだ、英雄って」
口をはさんだのは黒御影だ。右手を大きく開きながら手相でも見るかのように手のひらを天井に向けて眺めている。
確かに、それが本当だとすれば英雄の存在も確かとなり、同時に志の神封印も事実ということになる。
「ああ。彼は祖先である、火の神の力を直伝した英雄から受け継がれてきた、ある秘密を知っていた」
「それって……」
ユーフェルが不安そうな声で聞く。荒川は頷いて先を続けた。
「スピノザへの侵入法。それが、鈴原が代々受け継いできた――いや、受け継ぐはずだった秘密」
「あ、そのスピノザ、ってなんですか?」
桐山が手を挙げて聞いた。その問いに川島が答える。
「神々が住んでいた世界だ。副神も普段そこにいるらしい」
それを聞きながら勇は膨れた。――なんだよ。ついこの前知ったくせに。
しかし荒川は大きくうなずいた。
「その通りだ。スピノザは別名神々の寝床と言われているが、英雄たちは志の神封印の際、
人間界とスピノザをつなぐ『通路』を通ってスピノザに侵入、志の神を急襲した」
「ってことは氷雨ちゃんのお父さんはその通路を知っていたってわけだ」
桐山はポンと手を打った。
「そして、それを知りたがっていたのが黒鴉、という事でしょうか…」
真里谷が言うと、荒川は頷いた。
「黒鴉の目的はシピアの存在しない真の平和世界を築くこと。
そのためには、この前説明したが志シピアの大量散布が必要だ」
「でも、それはあのレーダーに映っていた宝石に反応液をかけるだけでよかったんじゃ?」
黒御影が言うと、荒川は首を振った。
「正直に言うが、あれは黒鴉が仕掛けたダミーだ。
おそらく高度なハッキング技術で探査情報を偽の物と入れ替えていると考えられる。
こちらにいかにもコア宝石があるように見せているが、実は存在しない」
「え、じゃあ何のために――」
勇は聞いたが、今度は氷雨が口を開いた。
「私たちにコア宝石の存在を示唆させて、裏鉄隊の注意をそっちに向ける。
その間に、自分たちはこっそりスピノザに入り、志の神復活の準備を進める」
「??? スピノザと繋がる通路を知ってた氷雨のお父さんは死んでるんだよな?したら入れなくないか?」
また荒川が説明を始める。
「さっきもいってただろう。鈴原の父親を殺したのは、その秘密がばらされて困る人物。つまり――」
「弥生恭造?ってことは……あ!!!」
荒川は頷いた。
弥生恭造もまた、通路の秘密を知っていた――

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