神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-5


「……どうしたの」
「え?あ、あぁ、そうそう!」

しばらく黙り込んでいた氷雨に言われて、勇はようやく自分の本来の目的を思い出した。

「あのだなぁ、昨日の夜このカラスが…ってえぇッ!?!?」

勇は自分の肩からカラスを下ろそうと思ったのだが、なんとそのカラスはそこにいなかった。
慌てふためいてあたりを見回すも、見つかる様子はない。

「あれっ、おっかしいなぁ……確かにさっきはここに…」
くっそなんでいなくなるんだよっ!!
と、内心悪態をつきながら机の下などを見てみるも、やはり見つからない。

しかし、その時、青い空からボッと黒い――




「I N S E K I DAAAAAAAAAッ!!!!!」

勇は叫んだ。隕石だ。叫んで何が悪い。

「ちょちょっとヤバイって!は、早く逃げないとマジでマジでマジでマジであ゙ああああああぁぁぁぁッ!!!!!!」

黒い隕石は同じく黒い尾を引きながら、ものすごい速度で部屋に向かって落ちてきている。
勇は眼をつむって机の下にもぐりこんだ。

あの速度なら今に窓ガラスを突き破るだろう。
そしてそのまま部屋に突撃、何もかもが燃え尽きて今までの研究成果は無駄になり、防衛部は敵襲と考えて全面戦争に突入、裏鉄隊だかなんだか知らないが多数の犠牲が続出、挙句の果てに――






































「って……え……???」



いくら待っても、勇が吹っ飛ぶことはなかった。
勇は恐る恐るといった様子で机の下から顔を上げ、外の様子を窺おうとする。――と、

「ッ!! お前っ!」

なんと、机の上にカラスがちょこんと立っていた。
慌ててあたりを見回すが、どこも隕石にやられた様子はない。

「ど、どどどどういう……」


混乱する勇を見てか、氷雨はくいっと指でこちらに来るように指示すると、奥の部屋に入って行った。