神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-19


次の日、勇と川島は退院して支部へと戻った。
廊下で川島と顔を合わせるとき、勇は気まずそうに片手を挙げた。

「よ、よう、久しぶり」
「あぁ……」

川島はそれだけ言うと勇に背中を見せてエントランスの方へと歩いて行った。
片手を下ろし、はぁと溜息をついたところで、勇は思いっきり壁に叩きつけられた。

「!?」

わけがわからず前を見ると、さっき背を見せていた川島が勇の胸ぐらをつかんでいた。
そして、病院の中の常識を無視する声で怒鳴る。

「どこにも連絡しないで単独行動に出るとかお前は馬鹿か!!
 班長にはっ飛ばされなかっただけ奇跡と思え!」

いや、もはやお前が班長と化してるよ。


そう考えた時、体がどさりと床に落ちた。ゲホッと咳を二、三度すると、川島が説明を始めた。

話によると、勇が目を覚ましていない昨日の時点で、荒川と滝浦が獅子奮迅の勢いで勇の病室に入ろうとしていたのを、
川島が説得してどうにかなだめたらしい。

あぁ、だからあの時の二人はしかめっ面だったのかと、いまさら納得する。
勇が起きるまで、川島は沸騰寸前のやかんに蓋をしていたということだ。


「ごめん……」

うつむいて呟いた勇の頭に、川島の手がポンと乗った。



「って痛ッてええええええええええええええぇぇぇ!!!!
 なにすんだ離せ!!髪引っ張んなぁぁあああ!!!!!!」
「うるせぇ!これぐらいの刑罰に値する罪だぞ!いや、軽いぐらいだ!なんならこのまま全部抜いてやろうか?」


川島とギャーギャーやりながら、桐山・荒川・滝浦の付き添いで、二人は支部へと帰還した。

支部に戻ると、エントランスは昨日の試験結果発表でざわついていた。
番号を見つけ、歓喜をあげる声や、はたまたガックリ肩を落とす姿。

勇と川島は入院で試験を受けていないので、しれっとそのまま通り過ぎようとする。

「あ、ちょっと待って!あたしのあるか見てくる!」
と、桐山がホワイトボードの方に駆けた。瞬間、勇が声を上げる。

「んな!?てめぇ人が入院してるってのに自分だけ…………!!」

今にも殴りかかりそうな勇の肩に、川島は静かに手を載せた。
「落ち着け、今にわかる」

そう言われて、20秒。桐山のウキウキとした姿で戻ってきた。
あぁ、受かったんだな、と勇があからさまにがっかりすると、そこに追い打ちをかけるように桐山はピースをした。


「落 ち て た ☆」

「えええええええええーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」


勇は信じられないといった様子で後ろに倒れたが、川島は当然のように肩をすくめた。

「ま、しょうがねぇな」


後で点数を聞いたところ、合格ラインには今一歩、というところだったそうである。


ちょうど昼食が終わった頃合いだったので、三人はガランとした食堂で軽い食事をとった。

そろそろ訓練招集の放送が流れるかなぁと思っていた時、向かいに座る川島がはっとした様子で腰のあたりをまさぐった。

「??? どうかしたか?」
「いや、無線が」

川島はそういうと無線機を耳に当てて何やら会話をし始めた。


しばらくして、「了解しました、今すぐ」と言って川島が無線を切って立ち上がった。

「「何何、だれだれ??」」
「だからハモるな」

首を長くした勇と桐山を蹴ると、川島はトレイを持って口を開いた。

「荒川二曹がお呼びだ。第五会議室に来いとさ」
「第五会議室ぅ?だいぶ小さい部屋よね、あそこ」

第五会議室は、通常の任務で使われることは少ない部屋だ。ただ机といすが並んでいるだけだし、資料を表示させる板もない。
そんなところに集合とは一体どういうことか。

謎を抱えたまま、三人は会議室が並ぶ二階へと足を運んだ。