神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-18
『班長!聞こえますか!?』
「聞こえてるわ!頼むから怒鳴るな!」
荒川はイヤホンをあわてて耳から外した。送信者は音量を間違えているのかわざとなのか。
「要件は」
『奴の足、攻撃すると地中に埋まります!おそらく土塊と地下で連結してるんじゃないかと!』
荒川はちらりと後ろの鈴原に目をやった。
鈴原はそれを見るや否や、塹壕を飛び出してこちらに向かってきた。荒川は簡単に説明を入れた。
「突き上げ攻撃は足によるダイレクトだとよ。隊長に報告してから全体無線入れてくれ」
「了解」
ダイレクトはアウェイの反義語で、体で直接シピアを放出するという意味である。
鈴原は敬礼すると、そのまま塹壕を飛び越え、トラックにダッシュで戻っていった。
荒川はせいぜい、馬鹿で無鉄砲な部下の勘を信じた。
足と土塊は連結している、という全体無線は、もちろん塹壕で銃を構えていた川島の耳にも届いた。
土塊が突き上げた瞬間、それを足と一緒に固定すればバランスが崩れるだろうという予想をもとに、
各隊員が囮に身を徹している。固定するというのは固体シピアである地か氷のみが成し得る技。
もちろん、地は敵の属性であるため効果は無に等しい。となれば――
川島は塹壕を飛び出した。
「うおおおおぉぉぉ!!」
隊員たちに課せられたもう一つの役割。それはイディオゴンに攻撃をさせ続けるということである。
イディオゴンの足は四本。つまり、四方向に同時に攻撃している間は、敵は攻撃手段がない。
その瞬間を見計らって、イディオゴンの真正面まで接近し、叩く。これが第二の方法だ。
勇は攻撃を忘れてひたすら挑発しまくった。
頭をたたいては戻りたたいては戻る。かくして「うざったらしい蚊」作戦。
当然、イディオゴンは土塊を突き上げてくるが、勇はそれをひらりとかわす。慣れてしまえばどうってことはない。
問題は四方向同時に攻撃をしなければ、それが意味をなさないことだ。
勇はかれこれ10回は攻撃をさせている。
これでも重ならないのだから敵も自分の弱点を知っているのだ。
と、その時――
『ンゴオォ!?』
突然白い放射物がイディオゴンにかかり、たちまちイディオゴンの顔は氷で覆われる。
目隠し状態だ。反射でその発生源に目を走らせると川島がいた。一秒も立たないうちに滝浦の怒鳴り声が響いた。
「総攻撃だ―――――――――――ッ!!!」
全隊員、イディオゴンめがけて火から水からなにやらまですべてを突っ込んだ。
混乱に陥ったイディオゴンはがむしゃらに土塊を突き上げてくる。
そこをうまく氷撃隊が固めると、あっという間にリンチ状態になった。
しかし、敵の反撃は早急に行われる。

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