神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-9


「来たぞ――!!」
誰かが叫んだ。勇と川島はとっさに上空を見上げる、その瞬間――

『ギャキイィッ!!!』
「ほわっち!」
勇の顔面に一匹のカラスが飛びかかってきた。勇はがむしゃらにそれを払いのける。
カラスは簡単に剥がれた。しかしその開けた視界に入ったものは――





―――一面の黒――




もはや戦いなどというレベルではなく荒らされている。カラス、いや、もっと大きな何かの群れが視界を覆っている。

「ちっくしょ!」
勇はヌンチャクに電撃をほとばしらせると、思いっきり左右に振った。


『ヂャバヂイィンッ!!!』

青い閃光と共に激しいショート音が耳を貫く。目の前にいた数匹の巨大カラスがボテボテと落ちていく。
声も上げなかったのか、それとも周りの音で聞こえないだけか。とにかく、何を言ってもこの騒音では聞こえないだろう。

(ちっくしょーイヤホン持ってくるべきだったな……)

これでは無線機を通した作戦も十分にいきわたらない。
――いや、問題ない。作戦はブリーフィングに従えばそれでいい。

「ッ、とにかく数こなすしかねぇ!」
勇は両手を広げると、思いっきり腕に唸りをつけて――

「サンダーミキサーッ!!!」
勇はいつかの技の名前を叫ぶと、トルネードのように回転を始めた。



      -*-


『ハッロー!こちら永遠のプリンス、マギス様でーっす!』
「……間違い電話か」
『ちょっと待て!嘘だよ、最終確認の連絡でさあ』

倉庫内。電話の向こうのマギスの声に、ため息をついたロッドはチラリと左に視線を逸らした。
そこにいるのは白毛におおわれた獣、キザラビスタ――


いや、正確にはキザラビスタの『無』――


それを確認すると、再びロッドは視線を戻して口を開いた。

「こっちはOKだ。長い年月かけた計画だ。しくじらない様に頼むぜ」
『心配すんな、任せとけって!』

心配するわ、そのバカさじゃ。

ロッドは再び溜息を吐き、携帯を閉じた。そして読んでいた新聞に目を落とし、ロッドは思う。






――まぁ、戦闘能力だけなら一品だがな