神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-36
「それで、何の為にそのスピノザとやらに行く必要があるんだ?」
黒御影が腕を組んで言った。荒川はちゃぶ台に置いてある資料の束をつかみ、パラパラとめくる。
「どうやらスピノザに志の神復活の鍵があるらしい。どうやって復活させるのかはまだ分かっていないが……」
「志の神の復活は、計画と何か関係しているんでしょうか」
真里谷が尋ねる。荒川は鼻で溜息をついた。
「分からん。ただ、さっきも言ったように志シピアのコア宝石に班のう液を散布するというのが嘘だとすれば、似たような環境を、宝石抜きで作り出す必要がある。つまり――」
「志の神を使って志シピアを大量に作り出す。そして、この世界に存在する他の全てのシピアを中和する」
氷雨が言った。部屋の中に沈黙が流れる。
しかし、その時ふと勇は思った。
「俺たちがスピノザに行けばいいんじゃないすかね?そうすれば黒鴉が来ても迎撃出来ますし」
「どうやって行くんだよ」
勇の言葉に川島が反発した。
「今、通路の秘密を知ってるのは弥生恭造ただ一人。俺たちとは何のコネクションもないぞ」
「むーん」
けど、氷雨を要求するということは何か繋がりがあるんじゃ――
資料を置いて荒川が切り出す。
「とりあえず、今ある目の前の状況を無視できない。黒鴉が支部に攻めてくる。
人質として鈴原氷雨を要求しているが、我々は防衛部とともに迎撃する事になるだろう。
防衛部の作戦がまとまるまでは一時解散だ。以上」
こうして、裏鉄隊の奇妙な作戦会議は終了した。
結局何も変わっていない気がするのは、勇の気のせいだろうか。

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