神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-4
トラックを降りると鈴原が待っていた。こっちこっちと手招きされるがままかけていくと、遠くの方を指差した。
「あーれ、見えるか」
勇は鈴原の指の先を雑草が生い茂る原までずーっと追いかけていく、と、
「……なんだ?」
500m程離れた所に、何やら動く影があった。何かとじっと目を見張っていると、
「あれが今回のターゲットだ。典型的な二足歩行の恐竜種で、鋭い歯による攻撃と火球を吐きかけてくる。注意しろ」
「うわっ!?って、は、班長!」
勇は思わず前のめりに倒れた。
勇と鈴原の間に、後ろからひょっこりと荒川が顔を覗かせていた。
「どうした、俺はただ警告をしただけだぞ」
いや、だからそれが怖ェんだよ!
クククと笑う鈴原を見て、ますます機嫌が悪くなる。
「こっちから仕掛けますか」
「そうだな、向こうから向かってくる様子はねぇし、速攻で行った方が手っ取り早い。
何しろ「今日は君らの実力検査だからね」
荒川は怪訝な顔をした。
荒川の言葉を奪ってやってきたのは
「あー!!井上班長ぉ!」
桐山がいかにも可愛子ぶって手を振ってきた。
ま、またお前か……
勇はさっき倒れていたことも幸い、まさに「orz」な状態となった。
井上は桐山に苦笑いしてこちらを向きなおした。
「何してる。お前らの班統率しなくていいのか」
荒川は妙に不機嫌だ。
「こっちは滝浦隊長が仕切ってくれてるからね。こっちの班見て来いって」
「それはたいそうなお節介だな」
お前が言うかそのセリフをッ!!!
勇は顔だけ上げると荒川をキッと睨みつけた。
「とりあえず、始めますか」
「…そうだな」
鈴原の言葉で、荒川は腰につけた無線機を手にした。
「こちら荒川。これより雷撃隊、及び水撃隊による速攻を行います、オーバー」
『こちら滝浦。了解、速攻隊の指揮はお前に任せる。オーバー」
「了解」
えー、お前が仕切んのかーと、内心不満全開の勇には目もくれず、荒川はまた無線機を操作した。
「雷撃隊及び水撃隊へ。只今より先方の妖魔への速攻作戦を開始する。
雷撃隊を先頭にして突っ走れ。気づかれたら鈴原、伊藤のみ電線銃準備。
水撃隊は後ろから吹っ飛ばすまで攻撃し続けろ。
合図を出したら放水止め。水撃隊は全員後ろにはけ、雷撃隊の残り二人は直接ぶん殴れ。電線銃も発射許可。
水撃隊は絶対に水に触れるな。そこまでやったらあとは徐々に前に引きつつ狙撃隊と合同で叩く」
そこまで言って、荒川は無線を切り、向こうの方へ走って行った。
「士長、電線銃ってなんですか?」
勇が尋ねると、鈴原は腰に差していた少し大きめの銃を取り出した。
「これだ。発射すると、さきっちょにかぎ爪付きついた鎖が出てくる。
銃本体は地面にさせるようになってて、あとは鎖通して電気流すの」
「なるほど……」
勇が感心していると無線が入った。
『速攻を開始する、全員位置につけ!』
さっき雷撃隊が先頭っていったっけ…などと記憶をたどりながら、水撃隊が待機しているところに走っていく。
「緊張する~?」
鈴原が聞いてきた。一見馬鹿にしているように聞こえるが、これが普通なのだ。
「まぁ、慣れるもんじゃないデス」
「はは」
と、話しているうちに『準備!』という短い無線が入る。
二人は黙って前を見据えた。敵はまだ気づいていない。勇はぐっと足に力を入れた。
『走れッ!!』

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