神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-10
気づいた時、勇は2mもあろうかという長身の男の前に尻もちをついていた。
目の前の床には、よくアニメに出てくるような六芒星が金色で描かれており、
その上に君臨と言ってもおかしくはない様子で男が腕組をしていて立っていた。
勇は思い出す。
こんなキャラクターがいたのを覚えている。イリーガルの女子生徒会長が活躍する漫画の中で現れた、
高い塔の側面にも重力に反して直立できる男――
アイツだ。間違いない。
見上げると男の周りには金色のオーラが包み込んでいた。
髪は金色に輝き、服装は白い色調でまとめたボロボロのスーツにも見える。
瞳は髪と同じ金色で、その眼光はまさに獲物を狙うチーター……
「――――ッ!!!!!!」
勇はようやく自分が立たされている状況に気付き、尻もちをついたまま物すごいスピードで後ろに下がった。
現れた長身の男がギロリとこちらを睨む。
「…かっ、かかかかかわ、しっま……どど、どうやって…戻すんだ、こ、こここコイツ……!」
勇は震える声をかろうじて振り絞って言った。
「しらねーよ……」
さすがの川島も取り乱しているように見えた。
しかし、男はこちらをじっと睨み、そして一歩足を前に踏み出した。
「ひぃっ!!!」
勇は恐怖のあまり、声を上げて慄いた。
「な、何でもしますから名前覚えなくていいですっ!すみません!!本当にごめんなさいだからおねがいころさないでーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
勇は眼を強くつぶった。もう終わりだ。殺される――
『安心しろ、吾輩は何もせぬ』
「へ?」
勇は顔を上げた。男は気まずそうな顔をして窓の方を見る。
『吾輩の冒した過ちは酷く反省している。守護の名に恥じることをしてしまった』
あ、なんだ。別に危ない奴じゃなさそうだ。
勇の警戒心はあっという間に薄れた。それと同時に体も動く。
勇はすくっと立ち上がって男の方に歩いて行った。
「お、おいっ……」
川島の声が聞こえるが、無視して男の前に立った。
改めてみると、本当にでかい。先ほどの2mは嘘ではなさそうだ。
勇は右手を差し出した。
「名前は覚えなくていいよ。ただ、聞きたいことがあって」
『ほう』
男――つまりオルグマヴォセトラは言った。マヴォセトラは続ける。
『なんでも聞くがよい。吾輩にできる範囲で答えてやろう』
「じゃぁ遠慮なく。あんたの事は何て呼べばいい?」
勇は聞いた。男は珍しい物を見たかのような目でこちらを見下ろす。
『本名はオルグ・レンゲントリッヒ・アウグスマヴォセトラだが……』
「ながっ!」
勇が驚いたのを見て、マヴォセトラは苦笑した。
『あぁ。吾輩自身も切実に思う。だが、オルグでいい。仲間からもそう呼ばれる』
「仲間? お前、仲間がいるのか?」
オルグは静かに頷いた。
『我々の世界にな』
「オルグ達の……世界……」
オルグは懐かしむように語り始めた。

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