神々の戦争記

作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-7


「う…ぉ……」
勇は外に出て思わずつぶやいた。
無理はない、直径10mはあろうか深さ30cmぐらいのクレーターがぽっかり出現していたのである。
しかも、辺りに火球が飛び散ったのか、消火作業もむなしく轟々と燃えている。
「桜井二曹負傷!」
「木戸士長負傷!右腕重度の火傷です!」
辺りには負傷報告の声が響き渡る。勇達は駆け足で荒川達のもとへと向かった。
「おぅ、鈴原。今呼ぼうとしてたところだ。
 水撃隊は消火作業に専念すっから雷撃隊でうまく回せ」
「了解です」
鈴原は滝浦の指名に敬礼し、ほかの雷撃隊を呼びに戻った。一応、命令無視にはならなかったらしい。
ほっと安堵して勇も戻ろうとしたとき、後ろから声がかかった。
「五十嵐、お前なんでここにいるんだ?」
ビクッと振り向くと荒川だった。
「え、いや、今呼ぶところって言ってたんじゃ…」
「今呼ぼうとしてたのは鈴原だけだ!中度の命令無視!減点!!さっさと作戦考えて来いッ!」
「な――――――――!!!!」
ず、ずるいッ!士長――!!
とぼとぼ戻っていく途中で、勇はちらっと横目で戦場を見やる。
今のところ、残った水撃隊が接近を食い止めているらしかったが、そんなことはどうでもよかった。

「おっ来たな」
川島と鈴原が何やらニヤニヤ笑っていた。どうやら鈴原が察して川島に伝えたらしい。
「どうだったー?」
鈴原の完全に他人事口調がまた勇を不機嫌にさせる。
「中度の命令無視で減点です…って先に行くのが悪いでしょう!?」
「何言ってんの、俺は自分の任務を全うしただけ―」
「そうそう、勝手に出てったお前が悪い」
川島にも刺され、勇にはもはや答える気力がなかった。
「さて、冗談もこの辺にして。作戦考えるよー」
鈴原は残りの伊藤と若松を呼び、四人の作戦会議が始まった。
「電線銃はもう使ったから無駄にはできないっしょ。接近でやるか、無理やり空気通すかのどっちか」
いくらシピアの含んだ雷とはいえ、電気は電気なので、空気を通して攻撃するのは無謀だ。
「接近だな」
若松が胡坐をかきながら言う。
「そーすっとどうする。なるべく一撃で決めたいんだよなー」
水撃隊は速攻と消火、それに今の食い止めでかなりのシピアを消費している。頼ることはできない。
鈴原は頭をポリポリとかいた。
「弾薬の方はどうなってんの、川島?」
若松が問いかけた。向こうでいそいそやっていた川島は振り向いて、「あと3分の1ほど」と答える。
「今のとこ一番シピア出せんのが…」
「五十嵐と俺だ」
若松が答えた。実際そうなのだが、勇的にはあまり気が向かなかった。
「じゃぁ、まず伊藤が奴の気をひく。そこらへんにピロピロ電気流してもいい。
 したら俺と若松で後ろから蹴っ飛ばすから、様子見てお前が殴って」
全員が無言でうなずき、外から妖魔の鳴き声が聞こえた。
もう、考えている余裕はない。それは向こうもこっちもだ。
躊躇はするな、一撃で決めろ。
鈴原にしては決めた言葉にうなずき、俺は外に出た。