神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-4
「デカい仕事ってこのことだったのか」
勇は頭の後ろで手を組みながら言った。
「そうみたいだな」
「っていうかルティア二佐が指揮かぁ。大丈夫かな」
桐山はだるんと肩を落とした。今回だけは桐山に同情する。川島もうなずいた。
「久しぶりの地獄になりそうだ」
ルティア・O・ヴィレイトリム二等佐官は、たびたび訓練の特別講師としてやってくるのだが、それはまさに「地獄」だ。
「出発はいつになんだ?」
「さぁな。統括交番からの情報待ちだろ。それか交番に寝泊まりかな」
「うわ、それは嫌だ」
「残念だがそうなる」
あからさまにへこたれる桐山の後頭部にコンとファイルが落ちていた。
「痛った!え、る、ルティア二佐!?」
桐山をはじめとする三人全員が後ろに身を引いた。ルティアが怪訝そうな顔をする。
「なんだその戦闘態勢は。連絡の追加に来ただけだ」
「ルティア二佐が後ろから迫ってきたら戦闘態勢は常識です」
川島と桐山が唇をかんで下を向いた。明らかに笑いをかみしめている。
桐山は慣れていないのか、時々腹筋がピクッと痙攣している。バレバレだ。
「まぁどうでもよい。明日から第一グル―プはイディオットに宿泊だ。実地訓練も兼ねてな。
早朝に出発するから休めるうちにとことん休んでおけ」
「え、第二グループは…?」
勇はルティアを見上げて問いかけた。
「第二グループは後方援助だ。我々が妖魔群を確認次第、応援を要請する。つべこべ言うな!」
ルティアは桐山が「そんな」という顔をしたためなのか、最後はまくし立てて行ってしまった。
これで評価下がったらどうしてくれるつもりだ、桐山。
ルティアが階段を降りようと右折した瞬間、勇は怒鳴った。
「お前があんな顔するから!」
「だって、セコいでしょ!大体あんたが戦闘態勢とかいうから」
勇は思い出しておもわず笑みがこぼれる。しかしそれは桐山への怒りと相殺され…
「き、キモっ!何そのニヤケ顔!」
川島は盛大に吹き出し、廊下の壁をバンバンと殴り始めた。
「ち、ちがっ!これはお前の責任だろ!!」
「責任とか関係ないでしょーが――!」
「お前らちっとうるさいよー?」
鈴原、参上。
「「鈴原士長!ちょっと聞いてくださいッ!」」
「ハモった―――!!」
こうして会議室廊下は騒ぎの一時を終え、三人は荒川のもとへと強制送還されたのであった。

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