神々の戦争記

作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-9


「…おつかれさん」
ヘタッと座り込んでいる勇の肩に、鈴原はぽんと手を乗せた。勇はくるりと、後ろを向き、鈴原を見上げた。
「よくやった。よだれの件はこれで相殺かな?」
「あ、ありがとうございます…って!」
なんで知ってるんですか、とは聞かずに、再び顔を芝生に落とした。
鈴原が情報に敏感であることを忘れていた。
「それより」
鈴原は待機しているトラックの方を見つめて口を開いた。
「誰だったんだろうね」
「さぁ……」
勇も一つだけ開いている射撃口を見つめしばらくそこに座り込んでいた。

                  *

「よくやった!上出来だぞ川島!」
トラックから出てきて、へろへろと倒れる寸前の川島の肩を、滝浦はグイッと組み、ガハハと笑った。
荒川も苦笑してその様子を見つめる。
「二階級ぐらい昇級させるか」
「駄目です」
荒川は名物、猟眼でキッと滝浦を睨みつけた。
いくら実力テストとはいえ、二階級も進級されては荒川の立場も危うい。
その様子を見て、付き添っていた井上はクスクスと笑った。
荒川は自分でも分かるほど頭から湯気を噴き出して怒鳴った。
「何がおかしいッ!」
「お前がおかしい」
井上の率直な言葉に、荒川は返す言葉がなかった。
「さて、今回はこれで終わりか」
滝浦がポーンと川島を横に突き飛ばすと、誰にとなく尋ねた。川島はいそいそとその場を立ち去る。
「そのようですね、片付けも特に必要としないでしょう」
井上は、未だ煙を上げる原っぱを見つめながら答えた。
「消火作業は水撃隊によりほぼ完了しています。弾薬回収も必要なしです」
シピア弾は、妖魔に当たればそれでよいのだが、外れるとシピアが中に詰まったまま放置されることになる。
数が少なければさほど心配はないが、多く残っていると万が一シピアが漏れた時に危険だ。
「そうだな、『壁』の外だし人民への被害も心配ない。あとは交番に任せる」
「「帰還します!」」
両班長は敬礼するとトラックに戻った。