神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-10


「っだぁあ! いつまで回ってりゃ気が済むんだコイツら!!!」
回転数にして147程をこなしたところで、ゼェゼェと息を切らせて勇は声を上げた。

玄関前は先ほどと変わらず巨大カラスの群れに覆われており、耳にタコができるほどの鳴き声合唱が響いている。

「ちくしょー……ほんと散れ!このデカカラス!! このホットチリデミグラス!!!」

と、その時、勇はふと違和感を覚えた。あの訓練中の違和感と同じ――
だが、呼吸じゃない呼吸などという具体的な感じはしない。ただ、何かがおかしい――

「まさか?!」

勇はバッと建物東側に目をやると、小さな業務用入口が目に入った。閉まっているようだが、周囲に人はいない。

「あそこから中に入れるか……?って――」


勇はふと、川島にこのことを報告するかどうか迷った。自分がバカであるということは理解している。が――



―――やめよう。


この見通しの悪い中で川島一人を見つけるのは不可能だ。そして何より――









   ――巻き込みたくない





勇は意を決して戦場を離脱すると、業務用入口を力の限り蹴った。しかし、鈍い音がするだけでびくともしない。

「くっそー、パンチとキックには自信があるんだけどなぁ……」

勇とはいっても、れっきとしたシピアー。そこらの人間とは基礎代謝は桁違いだ。
勇は再度、ドアとの距離をあけると、思いっきり助走をつけて跳び蹴りをかました。

「ホウォアチャァァァァァァァ!!!!!!」


ガキッ、とコンクリの砕ける音がすると、蝶番ごとドアは前にぶっ倒れた。そしてガッツポーズ。

「……決まった――」


決め台詞を残して、勇は屋内へと入っていった。



      -*-


「――ッチ……」
川島は舌打ちすると、両手に持っていた氷漬けのデミグラスをポイポイっと投げ捨てた。

(一個一個じゃ間に合わねぇ……ここは一気に片付けた方が……)

川島が跪き、右手のひらをぺたっと地面につけ、いよいよ新技発動かというところで、異様な光景が目に入った。




   、、、
――何かがドアをぶち破っている――――




「ッ!あの馬鹿野郎!!」

詳しく見ずとも、それが勇であることは一目瞭然だ。
川島は立ち上がると、デミグラスの群れをかきわけかきわけ、勇の後を追った。