神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-9


「おいおい、いよいよ地球では通用しない言語にまで発展したぞ」
勇は冷や汗を浮かべながら言った。川島も複雑そうな表情でうーんと唸る。
「春闘大反乱は講義にも出てたな。守護副神の事はかすりもしなかったが」

え、マジ、と勇が驚くと、川島は呆れたように口を開いた。
「――まぁお前なら仕方ないか」
「おいコラ桐山を忘れるな」

ムカついて反駁すると、川島は無視して顎下に手を当てた。

「守護副神、か――。 そういえばお前、バーゼルシピア―だよな?」
「なっ、いや、それはさっ、あのー、ほら!、まぁ――」

川島が次何を言おうとするか分かり切っているので、勇は慌てて逃げる。
しかし、川島は逃がさなかった。

「一回やってみろよ、召喚術」
「し、知らねーよそんなもんッ!!!」

駄目だ駄目だ。っていうか俺の場合は雷だから副神は――







「100人死ぬぞぉぁああぁぁぁ―――――――ッ!」
「うるさい!いいから聞けって」

川島は勇を黙らせてページをめくった。そこに書いてある一言を読み上げる。


『召喚の仕方は至って簡単。左手の平を地面に向けて「開けゴマ」と呪文を唱えるだけで、どこからともなく副神は現れる。
 しかし安心してほしい。シピアは一切使用しないため、シピアの使用が禁止されている寮の一室であっても問題はない』

「この本の著者はどこだ――――ッ!?俺がメタメタのズタズタにしてやるこんちきしょーッ!!!」
「まぁまぁ、ただ『開けゴマ』言うだけだから」

川島は完全に調子に乗っている。
大体「開けゴマ」で100人殺した殺人鬼が出てくるとかこの世界どうかしてるって!!


「ほらさっさとやれ。早くしないと消し飛ばすぞ」
「脅し文句さらっと言うなッ!」


勇は最後の最後まで抵抗していたが、結局川島の力に屈してしまった。


「こんちくしょー…… 食券3枚だぞ……」
「分かった分かった」

川島に手で追い払われ、渋々勇は右手を突き出した。


「反対。左だ」
「っるっせーな分かってるわッ!」

気を取り直して左手を突き出す。そして目を閉じて、歯を食いしばり――











「ヒぃえホぁッ!!!」
「歯食いしばったら発音できねぇだろバカか!あぁバカだった」

なッ…コイツどこまでも俺を…………!!


――見返してやる。

勇は大きく息を吸い込んだ。







「ひらけ―――――――ゴマッ!!!!」


勇が叫んだ瞬間、部屋が金色の閃光に包まれた。