神々の戦争記

作者/海底2m

第一章  第二話 「記憶」-7


「青木一佐」
少年たちと別れた後、青木は声をかけられた。
振り返ると、あの時の研究員であったことが分かり、頬が緩む。
「久しぶりだね。どうしたんだい?」
「あ、あの。21108番の精密検査、もう一度行いますか?」
21108番、あの少年か。青木は横に首を振った。
「今度イディオットで作戦があるし、ここで体調を崩されては悪い。また今度にしよう」
「了解です」
研究員はまた来た方へと戻っていった。青木は考える。
ネクラフに三人……多いな。
セリアムに一人いるとかいう噂を聞いたことがあるが…
青木はしばらく顎に手を当て、考えた。
いや、今は自分のやるべきことを全うすべきだ。考えても仕方がない。後で荒川を呼べば済むことだ。
青木は再び歩き始めた。

            *

「クッソ!なんだこのクソみてぇなクソ道は!!」
「…お前、今クソって三回言ったぞ?」
「うるせぇッ!」
勇は「あ゙――」と唸り声を上げると、膝に手を当てて歩みを止めた。
「止まるな五十嵐ッ!後ろが詰まるだろうが!!」
勇は後方の荒川に怒鳴られてクワッと目を剥いた。
「角度が45度ある山道歩いて止まるのはあたりまえだろうがです!」
「敬語が無理やりになってるけど」
こちらは鈴原。汗ひとつたらすことなく黙々と前方を進んでいく。
「大体!交番がこんな山奥深くにあるなんて聞いてませんッ!」
勇はまくし立てるとため息をついた。今朝のことである。

荷造りをして正面玄関の前に第一部隊が集合し、いざトラックに乗って出発。と、行きたっかったのだが。
「んじゃ、トラック乗って。2時間ぐらいかかって行って、んで後は1時間山の中歩きだから」
「はっ!?」
素っ頓狂な声を上げたのは言うまでもなく勇だけだ。
歩きなんて聞いてね――――――――!
叫ぼうとする勇の口をふさいだのは川島で、睨みつけるのは毎度荒川だ。

「んなこと言っても、作戦会議の地図で交番思いっきり山の中だったろ」
川島が頭の後ろをポリポリと掻く。
「俺に地図を読めってのか?あぁん!?」
「地図読めないやつが喧嘩売るな!」
荒川に怒鳴られて、勇は再び足を運んだ。
「にしても、さすがにこれを1時間はちっときついな」
「だろ!?だろ!?ほら、川島だって言ってます!」
「お前は甘えすぎだなー。川島は一回も止まってないぞー」
鈴原にくぎを刺され、言葉を失う。と、その時、先頭を歩いている滝浦から無線が入った。
『総員に告ぐ、現在前方に交番を確認。繰り返す。前方に交番を確認。
 地図も読めないで甘えてる馬鹿はもう少し頑張れ』
「隊長――――――!!!」
勇は見えない滝浦に叫んだ。隣で鈴原が笑う。
「隊長は耳がいいからな」

結局、滝浦は耳だけではなく目もいいため、前方に確認された交番は遥か彼方。
それから交番まで30分かかったのだった。