神々の戦争記
作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-14
目を開けると、白い景色が広がっていた。
スキー場にでも来たのかな、と勇は季節はずれな見当をつけると、瞬きをする。
そして、今自分が屋内にいて、白いそれは天井であることが徐々にわかってきた。
仰向けになっているらしいが、首を動かそうとしてもビクともしない。目線はなんとかキョロキョロできる。
自分の視界の限界まで眼球を回すと、人影が目に入った。
(……桐山…………???)
声に出したはずの言葉は、口をパクパクさせただけで出てこなかった。
桐山は勇に背を向けるようにして椅子にもたれかかっており、本か何かを読んでいるようだ。
(あー、あー、あれ???ヤベェな声がでねぇ……)
「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!」
「キャ―――――――――――――――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!」
二つの絶叫が、反響する。
勇はニヤッと笑って天井を仰ぎ見た。
「やった!声でた!!」
「うるさいわねバカ心臓発作で死んだらどうしてくれんのよっ!!」
桐山は持っていた雑誌で勇の頭を盛大にたたいた。勇はヘラヘラと笑う。
「お前……何してんの?」
「なっ、何してんのってあんた……」
桐山は息を吸い込み、そして一気にたたみかけた。
「あばら7本折れてて血まみれになってるあんたの方が何してたのよ!!
昨日丸一日手術でもう助からないかもって言われたのよ!
ったくこっちがどれだけ心配してると思ってんのよどいつもこいつも……!!!大体――」
勇は聞きながら思った。
あー、俺、一体何してあばら七本折ったんだっけ。
思い出そうとするもズキズキと頭痛が走り、勇は顔をしかめた。
「――とにかく!一体何があったわけ?」
「分からん」
「即答かい!」
いやだって分かんねぇもん、と口に出しかけたところでふとあることに気づいた。
「そういやここどこ?」
「病院に決まってるでしょあんたアホ!?」
あー、だから俺は寝てるのかーなどと考えていたとき、思い出してきた。
(俺……ハンバーグか何かと戦ってた気がするんだよな……)
勇は記憶のピースを集め、そして繋ぎ合わせる。
(嫌な予感がして、んで訓練の時に……ってあれ?なんかおかしいな)
「あんた、一人で駐車場に行ってたって話だけど」
(駐車場?あぁ、そんなところもあったっけ。地下だよな……んでドア開けて――)
「――――――――――――――――そうか、俺、人傷つけたんだ」
「は?????」
いや、なんか正確には違う気がする……
血のイメージはあるんだけど……それと一緒に……こう……
その瞬間、すべてが頭の中に吸い込まれるようにして入ってきた。
無がいた。無が人を斬り、俺は戦い、吹っ飛び、叩きつけられて、そっから――
「―――――――――――――――――――ッ!川島はっ!?!?」
「ど、どうしたのよ。川島なら隣の病室にいるけど」
勇は我を忘れてガバッと上半身を起き上がらせた。
「ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!」
「バカ!起き上がってんじゃないわよっ!!!」
強烈な痛みと共に、勇は再び倒れた。もふっという感触が体を包む。
「……ゆっくり、話して」
桐山に促され、勇は全てを語った。

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