神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-21


「のわっちょっちょ!!」

バランスを崩しながらも、勇は何とか姿勢を立て直して地面を踏みしめた。
地面が小刻みに上下に揺れて、勇は目の前にぐっさり突き刺さったコルピオスの尻尾を見つめる。


「また下か!?」

勇はイディオゴン戦を思い出してズサッと後ろに飛び退いた。

脚を地面の下に潜り込ませ、標的を下から突き上げる――
勇が経験した討伐作戦の中で、最も犠牲者が多かった作戦だ。忘れるわけがない。


コルピオスは、全部の足をぐっと折り曲げて、重心を下げた。
ギチギチッとビニールが擦れたような音が響く。


(――!!違う――……)



気付いた時には遅かった。

最大限まで重心を下げたコルピオスは、それを溜めにして飛び跳ねるように空へと舞った。
しかし、尻尾は地面に突き刺さったままだ。

その姿は、某マ○オブラザーズに出てくる、あの木の杭に鎖で繋がれた鉄球を思い出させる。

地面とは尻尾一本で繋がり、コルピオスは重力に負け始めて、ついに空中で停止した。
まぶしい日差しに目を細めて空を見上げると、コルピオスは無防備にその腹部を露出している――


「やれやれやりまくれーーーーー!!!!!」

突然榊の声が響いて、周りでメンバーの数人がコルピオスの後に続いて飛び跳ねた。

「そうか!あいつは腹が弱点だった!!」


勇も遅れて地面を蹴った。空中で徐々にコルピオスとの距離が縮まる。
勇はヌンチャクに電気を帯びさせて、体をひねる。しかし――


『ギュォ…………』



それはかすかな音だった。しかし、確実に何かが起きている。


「危ないっ!!!」

下から峰の声が響いて、勇は我に返った。
目の前にはコルピオスの顔。その両方のハサミ間に、白く輝く光の球が浮かんでいる。










「!」『ガッキンッ!!』




一瞬だった。


勇はコルピオスが口元から発した白球を、ギリギリヌンチャクで弾き返すと、反動で空を見つめたまま落ちていく。
落下の間にも、コルピオスは次の白球を作り出していた。そして――









『ズドッドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドオオォォォ!!!!!!!!!!!!!』









マシンガンのように、コルピオスの口元からエネルギー弾が発射された。

『ガキィンッ!』
「っとあぁッ!?」

落下の間にも、白球は勇の方に直撃した。が、かろうじてヌンチャクで弾き飛ばす。


ドフッと、勇は地面に背中を打ち付けた。落下しきったのだ。
その間にも、コルピオスは白球を発射し続けている。

向こうの方で巨大な土の壁が現れた。おそらく、真里谷がバリヤとして作ったものだろう。
しかし、今の体勢からこの弾幕を横切ってそこまでたどり着くのは不可能だ。


「くそっ!!」

勇は這いつくばるようにして身をかがめると、強く目を閉じた。

不意にふっ、と地響きの音が弱まる。見上げると、氷の壁が視界を覆っていた。


「川島!?」
「長くはもたねぇ!動けるか!?」

隣にいた川島は叫んだ。もはや叫ばないと言葉は聞き取れない。
強くうなずいたその時、氷のバリアがバキィンと割れて、再び爆音が耳をつんざいた。


時折直撃する白球を弾き返しながら二人はグラウンドを突っ走り、
そしてようやく土壁の後ろにダイビングして隠れこんだ。