神々の戦争記

作者/海底2m

第一章  第二話 「記憶」-14


      ‐氷獣‐

「あ、雪…」
勇は空に手を差し伸べた。
煌々と照る太陽のもとで雪とは何事か。
「おい、来てるぞ」
えっ、と森の方を見つめる。…潜んでいる黒い影が見えた。
少しずつこちらへと向かってくる。氷獣の群れ。
『グルルア…』
群れの一匹が唸り声を上げた。おそらくリーダーなのだろうか。
それを合図に、ざっと50の氷獣たちは一気にこちらに走ってきた。
『ドドドドド』
鳴き声とも地響きとも聞こえる音が轟く。
「流星群ッ」
荒川の野太い声が響いた。
『ゴッ』
空中に無数の火球が現れ、それが地面めがけて急速に降下する。
「アウェイ…!」
勇は思わず叫んだ。
本来、シピアは体内から発するものなのだが、
自分から離れたところにシピアを放出することを『アウェイ』と呼ぶ。いわゆる遠距離攻撃だ。
普通、消耗するシピアの量は二倍近くなり、使えるようになるには熟練を要する。
『グハッ』
火球が一匹に命中し、後ろに倒れこんだ。
一見、適当に撃っているように見えるが、外している火球は一つもない。
「僕たちも負けてはいられないようですね」
ファレンは腕を引くと、手首から青い炎を発した。
「!…蒼い…」
勇は自分の置かれている状況を忘れてつぶやいた。
ファレンはにっこりと笑う。
「ありがとうございます」
『グルルルアァッ』
ファレンが言い終わるかどうかの瞬間、一匹が思いっきり飛び上がり、こちらに飛びかかってきた。
「焔壁!」
ファレンは両腕から渦巻く蒼炎を放射すると、それは氷獣に当たり、そこからバリアのように平たく分散した。

跳ね返された氷獣はドテっと地面に落ちると動かなくなった。
「すげぇ…」
勇は素直に感心した。しかし、いつまでも見ているだけ訳にはいかない。
「っし俺も…!」
勇は二本の鉄棒を両手に構えて突進した。
一匹の氷獣が勇の姿を見るや否やこちらに向かって突っ込んでくる。
勇は体をくるりと入れ替え、横を向いた。
 クラッシュ
「雷鎚ッ!!!」
右手を肩の後ろまで引っ張って思いっきり棒の先端を氷獣の顔面に突き刺した。
『ゴフッ!』
青白い火花と共に氷獣の顔面が歪む。
大きく後ろに後退すると、バランスを崩してぱたりと倒れた。
「やるじゃないですか」
ファレンはそういうと笑った。
勇はぐっとマッチョのポーズをとると決め台詞を言った。
「まだまだこれrkあn……噛んだ!!」