神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-13
『こちら上蔵。現在イディオット麓に待機中』
突然に入った上蔵からの入電に、ルティアはあわてることなく無線機を取り出した。
「こちらルティア。今第一群を清掃し終えたところだ。装備が整い次第すぐ上がってこい」
『装備はとっくに整ってる』
上蔵の苦笑い混じりの通電を最後に、無線機は音を発しなくなった。
ルティアはふーっと深いため息をついた。
ヒジュウ
「氷獣か…やっかいだな」
荒川はぴくっと鼻を動かした。
「どした?」
隣の井上が瞬時に荒川の表情を読み取る。
「冷気が……来てる」
荒川は遠くの木々が生い茂る森を見つめた。
井上は少しだけ首をかしげると笑った。
「そういう勘で、お前に勝てたことないもんね」
「ったりめーだ」
井上と荒川では根本的に――違う。
「んで、どういうの?」
井上は腕を組みながら聞いた。
荒川は分からん、と一蹴してから静かに呟いた。
「氷獣だ。それもかなり多い」
わずかながら感じる冷たい風。紛れもなく氷獣の発するものだ。
「わかってんじゃん」
井上は笑いながら肘で荒川を小突いた。
「うわ、なんかサブくなってきた」
勇はブルルッと身震いした。
「氷獣のようですね…結構厳しくなりそうです」
隣に並んだファレンが言った。
「え、なんでわかるんですか?てか氷獣って?」
「なんとなく、ですかね?」
ファレンが笑うと、後ろから川島が説明を加えた。
「氷獣。冷気を扱う獣で有名な妖魔だ。氷シピアの代表といっても言い過ぎじゃない。
群れで生活することが多く、氷の洞窟を作ってコロニーを広げる。
吐く息の温度を極端に下げられ、敵を凍死させる」
「こわっ」
勇は思わずつぶやく。隣のファレンが顔を上げた。
「来ます」

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