神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第五話 「裏鉄隊と残された一匹」-14


頭が痛い。瞼が重い。体が動かない――
いいようのない苦痛が勇を襲った。動きたくとも動けず、必死に目を開こうとする。


「お、気づいたな」


どこかで声が響いた。なんで、まだ目開いてねぇぞ……

朦朧とする意識の中で、勇の視界に徐々に光が戻り始めた。
淡いオレンジと白が混じった色。交差するようにその二つが混じりあい、それが形になった時は、
ぼんやりながらもハッキリとしていた。


かっ……かわしま……

言葉は声にならない。口が動かない。
しかし、川島はそれを分かっているかのように頷いた。

ここどこ?、いま何時?、一体どうなった?、俺何した?

聞きたいことは山ほどあった。しかし、体がそれを許さない。



「心配すんな」
川島は言った。


それだけ聞いて、勇は再び闇へと落ちた。



-*-



次に目が覚めた時は、朝だった。
窓から気持ちいいぐらいの朝日が差し込んでくる。

しかし、窓を見上げたつもりが、全く光は目に当たらない。


あれ、なんで、と顔を上げると、普段見る部屋とは違う光景だった。
まず、本来左にあるはずの窓が右側にある。そして右のはずのドアは反対の左だ。



――あべこべ世界にでも来ちゃったのかな


そんな事を考えているうちに、ふと、向こう側のベッドが気になった。
なんだかいつも見る景色と違う気がするのは確かなのだが……



しかし、その時なぞが解けた。


本来、あのちゃぶ台の向こう側のベッドが勇の物なのだ。
そうだとしたら頭がこっちで左が――

そんな事を考えていた時、ガチャリと音を立ててドアが開いた。とっさに寝たふりを演出する。


「朝礼だ、行くぞ」
「……へ?」

現れたのは制服姿の川島だった。がばっと起き上がって事情を聞く。

「何があったんだ……?」
「聞きたいのはこっちだよ!」

川島は声を荒げて勇の目線まで腰を下ろす。

「いきなり叫び声あげやがって。しかも一瞬真っ白に光ったんだぞ。
 そりゃぁお前がバーゼルだって知ってる奴ならだれでも慌てるぞ、実際俺も死ぬかと思ったしな」
「ちょっちょ、マジ何の話してる???」

話についていけない勇に、唖然とした表情で川島が口をあけた。

「お前、なんも覚えてないのか?」
「い、いや…声が聞こえたとこまでは…」

そういうと川島は驚いたように目を見開く。

「お前、暴走寸前だったんだぞ?」


――確かに、調子に乗るなよ、と怒っていたのは覚えている。


しかしその時、朝礼招集のアナウンスが入り、勇は慌てて着替えて朝礼に向かった。