神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-21


突然の事態に、勇は訳が分からず辺りをキョロキョロと見回した。
しかし、他の隊員たちは眉ひとつ動かすことなく前を見つめている。

どうやら事情を知らないのは勇たち三人だけのようだ。

荒川は続ける。


「聞かされていないメンバーもいるだろう。裏鉄隊の説明をさせてもらう」
荒川は隊員たちを見回して説明を続けた。

「裏鉄隊とは、強力な敵、もしくは長期的計画性の高い作戦が生じた際に招集される特殊遊撃部隊のことだ。
 その招集率は数百年に一回。前期裏鉄隊は約200年前といわれている。
 諸君はゼンザスネクラフ支部が発足してから8回目のメンバーということだ」

シンとした空気は続き、窓の外の木々がざわざわと揺れる。荒川は続けた。

「過去の招集メンバーについては記録が残っていない。しかし、ただ一つ明らかなのは――」

勇はなんとなく、荒川がこちらを見たような気がした。

「――メンバーがエリート戦闘員であったということだ」


…………はぁ。


「そしてそれは、諸君がエリートである必要があるということだ」
「ちょ、ちょっと待ってください」

荒川を制止する女子の声に辺りがざわついた。勇も声のした方、左斜め前を見つめた。

その防衛員は視線を一気に集めたが、遠慮がちに口を開いた。


「あの、他の人たちはともかく…… あたしはエリートなんかじゃないと思うんですけど……」

荒川は静かにその問いに答えた。
「ただ戦闘能力が強ければいいという訳ではない。他もそうだ。自分がなぜここに招集されているのか、考えろ」


再び部屋はしんとなったが、荒川は説明を続ける。

「では、諸君がここに招集された本来の目的についてだが…………
 諸君も知っているように、先日多数の小型飛行型妖魔の奇襲を受けた。
 が、何人かの証言により、これがとある組織による計画的作戦と判明、急遽研究部に問い合わせ、これを確認させた。
 
 それによって明らかになったのが、『黒鴉(ブラックロウ)』という妖魔賛同組織。
 諸君の最終目標は、この組織の崩壊と抹消。そのための多数の任務を独立して遂行してもらう」

荒川はそこで言葉を区切り、一呼吸置くと続けた。

「詳しくは追って資料を配布する。今回はここまでだ。各部隊の訓練に向かってくれ」

その時、タイミング良く訓練招集の放送が入り、勇たちは第五会議室を出た。