神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-16


「やっぱり起きていたか、五十嵐」

ドアから出てきたのは滝浦だった。その後ろに荒川が続いている。

「ギャーギャー五月蝿いから来ちまった。その様子だと怪我はもう治ったみたいだな。すぐ支部に戻って話を聞かせてもらう」
滝浦はまくし立てながら、そのままずかずかと室内に入り込んできた。
桐山が慌ててコップを置き、両腕で滝浦を正面から突き抑えた。

「た、隊長っ、実はまだ傷が治ってなくってですねぇ・・・
 ほら、話は聞いてるんであたしが代わりに・・・」
けれでも滝浦は重機のごとく、桐山を押しのけ、オロオロする勇の手首をガシッと掴んだ。

「おら、行くぞ」
「い、しかし隊長……!」
「ギャ――――――――――――――――――ッ!!!!!!!!!」

荒川の制止も空しく、勇は滝浦の強引な腕力の餌食となった。



「……わるかった」
「棒読み!隊長それ棒読みです!」

騒ぎを嗅ぎつけた看護師により、滝浦とその部下二人は廊下に出されたが、滝浦は全く気にしていない様子だ。

「話ならあたしが聞いてますって言ったじゃないですかぁ!
 これで悪化したら隊長のせいですよ!!」
「桐山、院内では静かにしろ」

桐山は膨れて声をあげたが、荒川の軽い拳が頭に落ち、さらに膨れ上がった。

「それより、その話というのをさっさと聞かせてもらおうか」

こういう場面では意外と自己中な滝浦がさっさと話を切り替え、桐山に問い詰めた。

桐山はまだ何か言いたげだったが、渋々といった様子で勇から聞いた一連の流れを説明した。


「……なるほど。。。とりあえずその何とかを突き止めなきゃぁならんな」
「そうですね……とりあえず支部に連絡、それから三部合同会議を開きますか」
「いや、全体に情報が流れるのはまずい。報告するのは戻ってから直接だ。通信は漏れる可能性がある。
 会議は幹部陣のみでするとしたものだろう」
「それなら先に――――」

荒川と滝浦が難しい話をしている間、桐山はひとりで考えた。



もし、無が敵の組織に加わっているとしたら、それを作りだしたのは敵の目論見?
でも無は数百年に一回しか現れない……

どっちにしても、仮にも警備は徹底してる地下に敵は簡単に侵入してる。
なぜ?敵は迷わず地下に行ったのか?
地下通路に居た三人のうち、無は支部長だけを斬りつけている。

支部長を傷つけることが目的だった?

それなら、支部長が地下通路を使って逃げることを予測していた、もしくは何らかの手段で計画を知った。

誰が――どうやって――――




桐山は、何か大切な物を失いそうな気がして、頭を振って考えるのをやめた。