神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第一話「神とか…いるわけねーじゃん」-8
『こちら荒川。聞こえるか?オーバー』
荒川からの個人連絡が入り、一瞬何かと思ったが、川島はすぐ答えた。
「こちら川島、聞こえます。オーバー」
あえて要件は聞かず、それだけ言って送信を終える。
『今から雷撃隊がケリつけてくる。が、もし最後の一発でも倒れなかったらお前が撃て』
「い、しかし誤射の可能性が」
仲間がいるのにそこに銃弾を撃ち込むのは相当熟練した狙撃手でないと不可能だ。
仮にも二等防衛士でシピアが主力の川島にとって、それは適任ではない。
それを押さえつけるかのように荒川は言った。
『今回は訓練生の実力テストだ。撃て』
荒川はこちらの言い分など聞く耳も持たず、それで通信を切ってしまった。
もう一度かけようかとも悩んだが、これ以上反発するのは悪い。
川島はほかの狙撃隊に気づかれないよう、こっそりとまた弾倉を取り付けた。
*
妖魔は沸騰していた。
体表から湯気を吹き出し、煙がその姿を取り巻いている。
「いくぞ」
水撃隊が全員撤退し、残るは雷撃隊のみ。これで締めなかったら終わりだ。
『ギャガ…』と、妖魔が小さな唸り声を発し、火球を天に飛ばす。今度は誰も何も言わない。
火球が分裂し、舞い上がった最高潮の地点で、勇は前転した。
潜り抜けるように火球をかわし、残り三人を見渡す。鈴原は頷いた。
「うおおぉぉぉぉ!!!」
伊藤は正面から突っ込み、その顔面に飛び蹴りを入れた。
伊藤の雄叫びと、青白い閃光と共に、妖魔が大きく後退する。
それを見計らって鈴原が跳び、どこから持ち出したのかわからないような金属バットを妖魔の上から振り落とす。
『グオォアッ』
弾けた爆発音と共に妖魔はひるむ。その瞬間を逃さず、若松は顔面にこぶしを叩きつける――つけた。
鈴原はもう見ない。
――攻撃を食らわせた直後にまた攻撃すれば、妖魔は反射的に倍以上のシピアを使う。それを利用しろ。
「くっ!!」
少し遅いか。いや、まだだ。
青白い閃光が飛び出し、妖魔が後ろに吹っ飛ぶ。
「終わりだッ!!!」
勇は横から突き飛ばすようにして飛び蹴りを食らわせた。
妖魔はもう悲鳴を上げない。
吹っ飛んだ妖魔はそのまま倒れこみ、静寂が訪れた――が、
『ゴアッ』
「!!?」
倒れた死体のはずの妖魔から火が噴いた。
とっさに後ろに下がる。この距離でも感ずる熱気は相当だ。
駄目だったか……
勇は唇を噛み、鈴原が無謀にも空気放電しようとしたその時――
『ズパンッ』
一発の火戦が妖魔に直撃した。炎が一瞬揺らぐ。
妖魔はズズッ、と足を引き寄せ、立ち上がった。
二発目。
妖魔はバランスを崩すも立ち続ける。
そして、3発目――
妖魔はバタリと倒れこみ、炎もろうそくの最期のように消え去った。

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