神々の戦争記

作者/はぜのき(元海底2m

第四話 「コメディを取り戻すべく旅へと出かけよう」-13


「マギス……エリエス……?」
「そうそう。あっ、ちなみにブラックロウってのはうちの組織の名前よ」

マギスは眉間にしわを寄せる勇に教えてやった。マギスは内心ほくそ笑む。


(さぁーて、ショータイムだ……)


「お前、どこから来た」
勇が聞いてきた。マギスはボリボリと頭を掻きながら背後のドアを親指で指し示した。

「あっち」

それを聞いて、勇の顔に亀裂が入ったのを、マギスは見逃さなかった。

(おーおー、怒ってる怒ってる)

マギスは頭を掻きながら続けた。
「なーんか色々斬ってきたんだけどさ、人がごちゃごちゃいて」
勇の顔色が変わる。おいおい気が早いぜ…とマギスは心の奥でつぶやいた。


「君の名前、五十嵐勇だよね?そう、五十嵐君」
勇の困惑した顔を見てマギスはせせら笑うと続けた。

「君の名前呼んでる子がいてさー。背ェ高くて結構イケメンの子」

完全にモードが移った。早くも両手に持っている棒に電流が流れ始める。


(あれ……確かヌンチャクだとかいう……)


マギスはシリアの話を思い出しながらクリアガラスの棒を見つめた。

「んで、邪魔くさいから斬っちったんだけど。あれ、もしかして君の友達?」


ニヤリと笑ってとどめの一発。




  ――さぁ見せてもらおうか





















「殺してたらゴメンね?」
『ド ッ ゴ オ オ オ オ オ ォ ォ ォ ォ ン ン!!!!!!!!!!!!!!!』



さっきの爆発を遥かに上回る爆音と共に、視界が閃光に包まれ、風が吹き、荒れ、のた打ち回った。





空が見える――

青い、青い空が――――

(天井に穴ぶち開けたのか……)


マギスは前髪に隠れた目を細めて上を見上げる。


(これが強制融合の力――)
、と――


『 ド ッ ! !』
「!!!」


物凄い衝撃で体が吹っ飛ばされると、壁際に打ち付けられる。が、寸前のところで足をつくと、マギスは笑った。


「まだ速さが足りねぇ。そんなんじゃ俺は倒せねぇよ」
『バチッ―――!!!』

言い終わらないうちに砂埃の中が一瞬光ると、光の矢がマギスめがけて飛んできた。
ひょいと避けてそれをかわす。しかし――


『ドゴオオオンッ!!!!』
「なっ!?」

大した威力ではないだろうと踏んでいた矢は、マギスの脇をすり抜けて壁に直撃。爆発音と共に壁に穴が開いた。


(速度がなくても威力がある……将来有望だなぁ)


マギスはポリポリと頭を掻いた。

その時、いつの間にか勇の姿が目の前にあった。ほとんどスキを見せずヌンチャクが振り下ろされる。



『ガキ――ンッ!!!!!』


勇のヌンチャクは、マギスの鉄の刃によって完全に動きを封じられていた。
腕自体が鉄の武器へと変形したそれは、まさしく――



「どう、驚いた???」

マギスはニヤッと笑って勇の顔を覗き込んだ。しかしその時、あることに気づく。



(こいつ――何も見えてない?いや、聞こえてもいないか???)



全身に青白い雷を纏い、鬼神のごとくヌンチャクを振り回す勇は言うまでもなく強制融合状態にある。
しかし、勇はこちらを見ることなく、ただ顔を下に向けて持ち上げない。


(余分な情報は排除するって訳か……)
マギスはヌンチャクを押さえつけながら納得した。


そして、力の限り腕を振るった。勇が吹っ飛ばされ、向こうのドアまで叩きつけられる。



マギスは無が姿を消していることを確認すると声を放った。

「言っても聞こえていないとは思うが、見ての通り俺はキザラビスタの力を継いでいる。
 まぁ、これが何を意味するかはお前には到底分からないだろうけどな」


あ、見えてもいねぇのか。
言い終わった後でマギスは気づいたが、後の祭りだ。


      フィーリング
まぁどうせ感覚で分かるでしょ。


このまま潰しちゃいたいとこだが……もう少し待つか。

マギスは適当に言い訳をつけると、さっさと引き上げた。