神々の戦争記
作者/海底2m

第一章 第二話 「記憶」-19
「グオオオォオォ!!!」
イディオゴンは太い雄叫びを上げ、次の瞬間――
「「「………!?」」」
勇はもちろん、全隊員が目を見張った。
ついさっきまでイディオゴンがいた場所には、いつの間にか巨大な土塊が存在している。
辺りを静寂が包み込んだ。
『…全隊員距離を置け』
それだけ告げられたルティアの無線は、勇の耳元で低く唸った。
しかし、敵の動く気配は一向にない。
数名の隊員がゆっくりと近づいていくその時。
『ギュロロロロロロッ』
「「!!」」
起きたことは、それだけだった。再び静寂が訪れる。
勇は今、何が起きているのかさっぱりわからなかった。ただわかるのは一つ。
――隊員が二人、土塊の中に消えている。
*
『こちら上蔵。後方支援部隊、只今統括交番に到着』
ルティアの耳元にそれが届いたとき、すでに対処できる段階は飛び越していた。
――完全にこちらの行動が封じられている……
「……下手に動けない。罠にはまってる状態だ。こちらで対策を打つまで待機してくれ」
『了解』
さて、どうするか。
ルティアはパチリと指先に静電気を起こした。
『こちらルティア、聞こえますか』
滝浦のイヤホンにルティアの声が入った。
「あぁ、聞こえてる…」
滝浦は後ろを振り向き、塹壕の中に戻る。
『後方支援部隊到着です。それと現在、敵は何らかの手段で地面にセンサーを張っている可能性があります』
「センサー??」
滝浦は後者の報告に引っ掛かり耳を傾けた。
『はい。重量がかかると反応して土塊を突き上げ、敵を覆います』
「だが、足を突き上げて土塊を作っているんじゃなかったのか」
滝浦は小声でつぶやく。
『アウェイか、もしくは別な攻撃方法をとっていると思われます』
滝浦は返事をしなかった。
ゆっくりと顔を上げ、敵が潜んでいるであろう巨大な土塊を睨みつける。
『……提案があるのですが』
そのタイミングでのルティアの言葉は、滝浦にとっては助け舟であった。
階級一つは結構大きい。
「…言ってみろ」
滝浦は静かに唸るようにして返答を待った。
*
「…来た」
ファレンと川島の間に挟まりながら、勇は首を持ち上げてつぶやいた。
「そのようです」
ファレンも横目で静かに、そして迅速にこちらに向かってくる列を見つめた。
「だが、今のところ打つ手はない。来てどうにかなる問題じゃないと思うが……」
川島は半分興味はなさそうだ。
「……そうとは限りません」
勇はファレンを見つめた。その眼差しは鋭く、真剣だ。
「どういう意味ですか?」
勇は問いかけた。
「今回、後方支援部の到着が遅れた、いえ、遅らせたのには理由があるんです」
「理由?ですか」
川島の質問に、ファレンが答えるまで少し時間がかかった。
「今回ネクラフ支部は、すべてのシピアに対応できる次世代兵器を開発しています」
ファレンは静かに言い放った。

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